映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

女王陛下のお気に入り《快作、怪作。余裕すら感じる映画とポスター》

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映画の点数…87点
ポスターの点数…90点

 

トップ女優達の殴り合い


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げるは女王陛下のお気に入りです。


原題もズバリ《ザ・フェイバリット(お気に入り)》ですね。


先日のアカデミー賞では主演のオリヴィア・コールマンが主演女優賞を獲得しています。


オスカー俳優3人(オリヴィア、エマ・ストーンレイチェル・ワイズ)の豪華共演、というと聞こえはいいですが、実際は3女優による殴り合いのような映画ですね。


スター女優や美しいセットの数々にうっとりする気持ちで楽しむのも悪くないですが、どちらかと言えばフジテレビの昼ドラの超拡大版みたいな姿勢が良いのではないでしょうか。


文字通り命をかけた女同士のドロドロと、命がけだからこその滑稽さを面白がる映画です。

 

映画のストーリー


1700年代初頭の(今の)イギリスの宮廷が舞台になっています。


とはいえ難しい設定はあまり理解してなくても全然オーケーで、「自分の国が戦争していることもいまいち分からないアン女王」と「アン王女に取り入り事実上国家を動かす権力を持った愛人(女)」と「召使いから貴族まで上り詰めることを画策する女」の戦いこそがメインです。


やってること自体は「私の方がアン王女が好きよ!」「私の方が好きよ!」「私を二人が取り合うなんていや~ん嬉しい困っちゃう!」みたいなことなんで。


あとから史実と照らし合わせてみると「え!これは本当の話なの?!」みたいな箇所が事実だったりもして。


バカな支配者を持つと国民は困りますなぁなんてあたりは今も通用する概念ではありますね。

 

映画の良かった点


あえて男性達は「バカで下品な役立たず」として描くくらい割り切っているのですが、全体的にその割り切り方がうまくいっているように思います。


話し方は現代語風になっていたり、時代的におかしい箇所も「映画のバランスがとれるなら」いくらでも改変しているようで。


そもそも男性がかつらをかぶって化粧をしている時代の話ですから、画面全体からはフィクショナルな雰囲気なんですよね。


ただし画面がフィクショナルな分、演じる主演3人の女優の鬼気迫る演技がより浮かび上がってくるというか。


並の俳優だったら衣装や雰囲気に負けてしまうのでしょうが、それを跳ね返すだけの演技力とパワーがあります。


当然といえば当然なのですが、この3人のうち誰か一人でもレベルが下がるようだと映画の質が一気に悪くなるわけですから。


オスカーのノミネートも受賞も納得の素晴らしいアンサンブルでした。


その演出に成功した監督の手腕もまた評価されるべきですね。

 

雰囲気のいい映画


映画を評価するときに「雰囲気が好きなんだよね~」というほどバカな感想はないのですが、この映画、雰囲気がいいんですよね笑


開幕すぐの極端な口角レンズによる絵作りからすぐに「あ、面白い予感がする」と感じます。


もちろんそこから「画面が綺麗なだけの中身のない映画」になる可能性も十分にあったのですが、この映画に関してはそんなことは一切なく。


画面はものすごく綺麗なのに、胃がキリキリするような暴力とイジメとマウンティング笑


つまりサイコーということなんですけど。


外国の宮廷の話という自分と最も遠い世界の物語でありながらもリアリティを感じることが出来るのは映画の作りがうまいからに他ならないですよね。

 

ポスターの感想


いわゆる商業映画とは少し違うためか、ポスターもかなり自由度の高さが感じられます。

 

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一言で言えばお洒落なポスターということなのですが、少ない情報ながらも映画全体の禍々しさは伝わってきますね。


まず手前にいるエマ・ストーンのやたら演出めいた不機嫌でぶっきらぼうな表情と、全体のゴージャスで華麗な衣装とのギャップが面白いです。


オリヴィアやレイチェルもすました顔はしてるんですけど構図が大概におかしいですし。


「好きか嫌いかは見てみないと分からんが、エッジのきいた映画ではあるんだろうな」というのはすぐに分かります。


その時点でこのポスターはある程度「勝ち」ではないでしょうか。


映画に興味を向ける層と、見て貰いたい側の意志がかなり近いポスターだと思うんですよ。


実際これだけ攻めたレイアウトのポスターでありながらも世界的にヒットし評価されたわけですからね。


映画同様に実にセンスを感じるポスターです。

 

別案


とはいえ僕はこっちのポスターの方が大好きです。

 

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まぁこっちのポスターをメインにしちゃったらいよいよお客さんは半減しそうですが、家に飾りたくなるくらいのカッコイイポスターだなと思いますよ。


先ほどのポスターよりもより禍々しさが強く、なんなら不快感すら感じるくらいですね。

 

日本語版ポスター


今回、日本語版ポスターはかなりいいんじゃないかなと思っています。

 

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全体のレイアウトは本国版と同じなのですが、まず全体の色味を黄色から赤に変更しました。


ノスタルジックな雰囲気は後退しましたが、より女性的な印象が強まっています。


女性=赤色というのは単純な記号化かも知れませんが、柔らかいピンクというよりはやはり少しダークさのあるピンクにしているのがうまいです。


また、キャッチコピーも主張しすぎずさりげなく添えられているのですが内容はというとシャレがきいてて皮肉っぽさがあるいいコピーだなと。


このキャッチコピーがあるおかげで「ちょっとコメディでもあるのかな」と予感すると思うんですよ。


この「ごめんあそばせ」の一言が映画全体の軽やかさと禍々しさをうまく表現できていますよね。


とてもいいポスターではないでしょうか。

 

まとめ


呆れちゃうくらいのダークなコメディ映画といった感じで。


画面で起こっていることはドロドロしっぱなしなのですが、実際に見終わってみると不思議と軽やかな余韻が残るいい映画だったなと思います。


ポスターの方もその映画のテンションに近くて、良い意味で引きずらず軽やかなタッチを感じます。


監督の手腕だと片付けるのもいいですが、この映画に関わった方の多くが影響し合っての傑作になったような気がします。


万人にまではお勧めしませんが、映画に少しでも興味があったらすぐさま鑑賞することをお勧めしますよ。


それでは、また。

 

 

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スターウォーズ Ep.9 《ポスターから読み解く最新作》

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映画を観る前のポスターの点数…75点

公開迫る、スターウォーズ


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回は年末に公開を控えているスターウォーズ エピソードⅨ スカイウォーカーの夜明け》の公式ポスターが届きましたので、そのお話をしようかと思います。


一応、サーガ(スピンオフとかではなく正式なタイトル)としては今作でお終いということになります。


こういう言い方はあれですが、俳優達の年齢などもふまえると「ルーク・スカイウォーカーから始まったスターウォーズの終わり」とも言えると思います。

 


これからいくつかの予想や仮設をお話しますが、あくまでも“ポスターから見えてくる映画”のお話です。


ファンの多いシリーズですし、異論反論もちろんオーケー


世界中みんなでギャーギャー言い合ってるくらいが楽しいと思いますしね。

 

僕とスターウォーズ


まず、僕とスターウォーズとの距離感を少し説明します。


世界中にいるマニアと呼ばれる方々には遠く及ばないですが、シリーズのファンだとは思っています。


年齢的にはスターウォーズは完全に後追い世代ですので、映画館で初めてみたのはエピソードⅦ(フォース・アウェイクン)からです。


その頃にはすっかりファンでしたので、オープニングの「バーーーーン!!!」のタイトルの時点で号泣したのを覚えております。


「やっとスターウォーズを映画館で観ることが出来る!!」という感動ですね。


とはいえ別にスターウォーズ前面支持とかそういうことでもなく、作品によって好き嫌いは当然あります。


一番好きなのはエピソードⅦですね。


この時点で「はぁ!!?」と言われる方も多そうですが、とにかく【レイ】という主人公が好きすぎるからというか。


そもそも女性としてタイプなだけな気もしますが、とにかくまぁⅦが好きなんです。


そのあとはⅣ→Ⅴ→Ⅲとかそういう感じですかね。


一番嫌いというか、一生許すことが出来そうにないくらい怒り狂っているのは前作のⅧ(ラスト・ジェダイ)です。


おかげさまで正直に申し上げて、エピソードⅨへの期待値もかなり低いんですよ。


可能であればエピソードⅧは無かったことにして「うんゴメンゴメン、あれ嘘だわ。ちょっと作り直すから一旦忘れて」と言ってくれないかなと今でも思うくらいです。


そうはいっても再来月にはエピソードⅨは公開されますし、どうせ観るのは間違いないんだし。


とりあえず向き合ってみようと思いますよ。

 

パッと見た印象


それではポスターを具体的に見ていきます。

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まず全体的な色味に注目ですね。


パッと見たときに、「青いポスターである」と言えると思います。


画面の7割くらいを青が占める。


これはかなり重要な要素でして、今シリーズ1作目のエピソードⅦでは青と赤が半々となっていました。

 

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そして前作のⅧでは画面全体が赤い色で支配されています。

 

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説明不要なくらいですが、ご存じの通り「青=ジェダイ(正義)」「赤=シス(ダークサイド)」を象徴する色ですよね。


ここから読み解くと「正義と悪の均衡(Ⅶ)→悪の勝利(Ⅷ)→正義の勝利(Ⅸ)」となるのではないでしょうか。


まぁ普通に考えてそういうストーリーになるであろうことは予想つくのですが、ポスターの色味からもそういう情報が見えてきそうです。

 

レイの扱い


今作の主人公レイですが、Ⅶの時点でのポスターでは武器と赤いライトセーバーが重なりあって描かれることで「ダークサイド(悪)に転がり落ちそうな危うさのある人物」を予感させていました。

 

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Ⅷのポスターではよりそれが顕著になり「ルーク(正義)カイロ・レン(悪)の狭間にいる」人物を思わせます。

 

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ですが今作のポスターでは完全に青いトーンで描かれており、まるで「悪(赤い部分)からの侵略を正義の力で食い止めている」ようなビジュアルにも見えますよね。

 

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エピソードⅧではあまりにも影の薄かったレイさんですが、次作ではついに大暴れするんでしょうか。


アベンジャーズ・エンドゲームが「みんなの力でサノスを倒す!」という話だったのに対し、ライズ・オブ・スカイウォーカーでは「最後はレイが銀河を救う」という話になるのかも知れませんね。


衣装もよく見ると全体的に白っぽくなっています。


ルークがそうであったように「だんだん黒っぽい服装になる→ダークサイドに引き寄せられる」という演出だとするなら、レイはやはりジェダイ側の人間なんだと思わせるメッセージが込められているのではないでしょうか。

 

レイとカイロ・レンの戦い


画面下部では、レイとカイロ・レンが一騎打ちをしているようなビジュアルが窺えます。


これが「イメージ」なのか実際にある戦闘画面の一つなのかは分かりませんが、レイとカイロ・レンの決闘が今作のキーポイントになるというのは間違いないでしょう。


ちゃんと背景が赤と青の境目になっているというのも細かくていいですね。


それにしてもなんでカイロ・レンはなんでマスクを作り直したんでしょうね。


直したといっても、赤いラインは残っており格安の板金屋さんに頼んで大失敗したみたいになっております。


金欠だったのでしょうか、カイロ・レン。

 

背景の宇宙船について


背景に見える宇宙船の位置にも注目です。

 

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正義側のミレニアム・ファルコンは敵側の赤い方へ、一方敵側のスターデストロイヤーなどは青い側へ戦略してきており、「戦争は始まっている!」というような雰囲気を感じますね。


これが、それぞれ自分側に戦闘機があるようだと「これから戦争だ!」という雰囲気になるはずです。


細かい違いですが、受ける印象は違ってきます。

 

もう一枚のポスター


こういうバージョンのポスターもあるのですが、こっちの特徴はなんといっても背後にいる「あいつ」ですね。

 

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彼が映画にどのように関わってくるのか分かりませんが、ランドも含めていよいよ旧作のキャスト全員集合感が強まってきましたね(面白くなるかは別の話ですが)。


それにしても右手に持っているのってライトセー………??

 

まとめ


新キャラなんかも画面に登場しているのですが、この辺の予想は割愛しますね。


もし当たってたりしたらイヤですから笑


以上のように、ポスターから見えてくる新作のお話でした。


少なくともポスターから感じるのは「今作はレイが戦うぞ!」というメッセージは感じるのでそこは期待したいと思いますよ。


グラフィックデザイナーとしての見方としては「ワクワクするような期待感はあまり感じないが、映画の意図は感じるポスター」といったところでしょうか。


どっちみち映画を観たらまた評価も変わるでしょう。


それでは、また、公開のその日まで。

 

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来る 《映画としては良いが、ホラーとしては・・・》

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映画の点数…58点
ポスターの点数…15点

 

なんだったのかよく分からない


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《来る》です。


嫌われ松子の一生や告白で知られる中島哲也監督が手がけるホラー映画。


主演には岡田准一妻夫木聡黒木華、そして松たか子さんらが揃います。


なんだかんだで中島哲也さんの作品は大抵チェックしてますし、好きな作品も嫌いな作品も含め何かしら心を揺さぶってくる監督だと思います。


好き嫌いが分かれるのは当然という作家性の強い作品群であるのは間違いないし、今作も「中島哲也さんに作らせたらどうなるだろう」という前提を踏まえた上での映画化だったと思います。


そんな作品の僕の感想としては「なんだったのかよく分からない」でした笑


点数自体は低めにしてますが、理由は後述します。


ただし、見なくて良かったなんて全く思って無くて、むしろ鑑賞自体はとても楽しめました。


観て良かったなと素直に思っていますよ。

 

映画のストーリー


韓国映画の傑作「コクソン」や、それこそ老舗「エクソシスト」などとも共通する「なんか娘が呪われちゃったっぽい」というホラー映画です。


もちろんそれぞれ設定に差異はたくさんあるんですけど、王道のストーリーではあります。


物語は三部構成になっていて、「過去にお化け的なものと遭遇した気がする妻夫木聡パパ」の話。


その妻で「家族という地獄を渇望し、絶望している黒木華ママ」の話。


そして「事件の解決に首を突っ込んだものの、余裕ぶってるのは最初だけで後半はオロオロしているだけの岡田准一ライター」の話、です。


前半は正体不明の「あれ」に次々と妻夫木聡パパ周辺の人間が襲われていくという展開、後半は岡田准一松たか子さんを中心に「あれ」との対決へとすすんでいきます。


映画全体の特徴として、段落ごとにバッサリと映画自体の雰囲気が変わるというか、特に後半からは「違う映画が始まったのかな」くらいにテンションが変わります。


もっと言っちゃえば「前半はホラー、後半はダークコメディー」というくらい違う映画です。


もちろんこういう仕掛けのある映画も大好きですし、「今何をやってるんだろう」と振り回される感覚がこの映画の魅力だと感じました。

 

 

映画の良かった点


これはもうやっぱり後半の「除霊フェスティバル」ですよ。


大ボスの松たか子さんのビジュアルがまずいいですね。


褒め言葉なのですが、一番松たか子さんが不細工に見えるヘアメイクとかをわざわざチョイスしている感じとかが役者として素晴らしい姿勢だなと。


その松たか子さんを中心に、おそらく日本全国から「我、除霊に自信あり!」という猛者達がマンションに集まってきまして。


集まる途中でもどうやらバタバタと戦死していくという過酷な状況の中、ついに除霊フェスティバルの開幕ですよ。


ルールは武器使用・流派問わずの時間無制限デスマッチ。


お経から舞踏から科学から巫女からなんでもありのスペクタクル。


しかし敵も黙っちゃいない。


姿こそ見えないものの、次々とフェスティバル参加者達を惨殺しながら突き進みます(どこに突き進んでいるかは映画を見終わってもよく分からないんだけど、とにかく進んでいる)。


このブラックコメディーな演出が見られただけでも監督に中島哲也さんを起用したのが大正解だし、逆に言えばこの除霊フェスが無かったら映画全体がどうなっていたか不安でもありますが笑

 

映画の不満点


これは映画を見る前から気になっていた点だったのですが、中島哲也さんとホラー映画という組み合わせが“基本的には”悪いんですよね。


中島監督の最大の特徴はやはり「超現実的なサイケデリックな画面演出」だと思うんですよ。


一方でホラー映画の大原則は「カメラの存在すら忘れるくらい可能な限り演出を感じさせずに撮る」ことです。


そっちの方がよりリアリティを感じて恐怖が増しますからね。


そのお互いに相反する特徴をどう埋めてくるのかなと思っていたのですが。。。


残念ですが、別に埋まっていないというか埋めるつもりも無かったようで。
やはり先ほど褒めた「除霊フェス」のシーンこそが映画のキモだとして中島哲也を起用したのでしょう。


その代償として「ホラーとしての怖さ」は犠牲になってしまいました。


はっきり言っちゃうと、一回も怖いとは思いませんでした。


それでホラー映画と名乗られるとどうかなというか。


僕がこの映画に感じる不満点はすべて「ホラー映画なのに怖くない」という点につきます。

 

細かい描写


例えばですが、松たか子さんはスーパーな除霊士だという設定にもかかわらずラーメンを食べ、ビールを飲み、ケータイでゲームをしています。


意図としては「ギャップがあって面白いでしょ」ということなのでしょうが、僕はそれよりもホラー映画の演出としてのマイナス点の方が大きかったと思います。


「得体の知れない強い人」として描きたいのであればやはり飲食シーンは避けるべきだし日常描写も避けるべきだと思うんですよ。


映画全体的にこういうホラー映画としての恐怖を遠ざけるような描写が多くて。


岡田准一さんの花柄のシャツとか小松菜奈さんのエロい格好とか、画面内に邪魔な情報も多すぎるし。。。


細かい積み重ねが無いとホラー映画は機能しないと思うんですが。


僕はこの映画を「怖い気持ちになるため」鑑賞したのであって、それが出来ていない以上は合格点ではないよなーという次第。


いいところもたくさんある映画だけに残念です。

 

ポスターの感想


けっこう複雑な思いもあるポスターです。


というのも、ビジュアルだったりアイデアであったりユーモアだったりは非常にあるのかなと思うわけです。

 

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おそらく何回も会議したのだろうし、フォントのひとつにまで気をくばったデザインです。


とはいえどうしても僕がこのポスターを評価しきれないのは「全然怖そうじゃ無い」ということです。


配給側はおそらく「あんまりホラー色を出すとライトな観客が来ないでしょ」と判断したのではないでしょうか。


そしてそれはきっと正解なんです。


ポスターに散りばめられたポップなコピーの数々。

 

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「あの、ポップでキラキラした絵作りが得意な中島哲也監督の映画です!!!」というのを隠す気も無く前面に訴えています。


僕はそのやり方が納得いきません。


だったらホラー映画なんて作らなきゃいいじゃないですか。


「トラウマになるくらいの恐怖を与えてやるぞ」という気持ちがないなら、そこから逃げるなら初めからやらなきゃいいんですよ。


このポスターを作った人達に、そんな気持ちは無かったはずです。


前述通り、ビジュアルはお洒落でかっこいいです。


でもやっぱり僕はこのポスターが嫌いですね。

 

タイトル文字


こういう洒落たデザインはとてもいいと思うんです。

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わずかに切ってズラした文字になっていますね。


これは劇中「あれ」に襲われた際の様子や、お守りが切り取られた際の様子を表現しているのでしょう。


シンプルでいて、可読性も高く、映画との関係性もしっかりしているというタイトルは理想の形です。


だからこそ、ポスター内に入れる情報(文字)に無駄なものが多いことが悔やまれますね。

 

関連ポスター

 

こういう遊びはとても好きだし楽しいですね。

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いいぞもっとやれ。

とはいえ、やっぱりこれもわざわざ映画を恐怖から遠ざけることになってるんですけど。

 

まとめ


時間がたてばたつほど「愉快な映画だったな」と思います。


鑑賞してない人には素直におすすめできます。


ただし「心の底からびびりたい人」にとっては無関係な作品でしょう。
それでいいのかと思ってしまいますが、ともあれこういう映画体験もいいもんですね。
それでは、また。

 

ターミネーター ジェネシス《これじゃない感しかない映画》

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映画の点数…40点
ポスターの点数…25点

 

シンプルに、駄作


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はターミネーター ジェネシスです。


来月にはターミネーターの最新作、シュワルツェネッガーリンダ・ハミルトンが出演する《ニュー・フェイト》が公開されます。


公開前に復習をしておこうと現在のところの最新作、ジェネシスを見直したのですが。。。


映画館で観たにも関わらず、ほとんど内容を忘れていました。


細かいストーリーを忘れるとかいうレベルでなく、断片的なアクションシーンとかもほぼ覚えていませんでして。


覚えていたのはエミリア・クラークさんの美しい裸体くらいなもので我ながら情けない気持ちでございます。


とはいえ改めて観てみると「こりゃ忘れてしまっても仕方ないな」という部分もいくつかあり、言い訳も込みで宣言するなら【シンプルに、駄作】なんじゃないでしょうかといった感想です。

 

映画のストーリー


オープニングからしばらく観ていると「ターミネーター第一作目の、ジョン・コナーとカイル・リース視点から描いた話」というのが分かります。


そのまま普通にターミネーターのリブートみたいになるかと思いきや、未来と過去に少しずつ差が出てきていて今まで観てきたターミネーターシリーズとズレはじめる………みたいな内容です。


最終的にスカイネットの暴走を阻止することが目的というのは変わりないのですが、そのための舞台や倒すべきターミネーターの型式なんかも違うみたいな感じですかね。


つまり、少なくともターミネーターの第1作、良ければ2作目までは観ていないと理解出来ない点が多すぎると思います。


とはいえさすがにここまでの有名作ですから、観ていない人はいないという前提で作るのは今回はアリだとは思います。


とはいえ、ストーリーを知っているからこそ引っかかるポイントもあるのですが。。

 

映画の不満点


別に自分の知能指数が高いとは思っていませんが、いくらなんでも「今何やってんの?」という場面が多すぎます。


途中でカイルをサラ・コナーが救出しに来て「お、今回はそういうパターンか」というところまでは分かったのですが、そのあとサラ・コナーが[このあと何をしなければいけないのか]という目的をいまいち説明しないままにストーリーが進行していきます。


観客達を不安にさせる、という効果を狙っているのは分かりますがおかげで本当に何をやっているのかが分からないんですよね。


「ん?とりあえず未来にもう一回移動するのね?」となんとなく理解した頃に「この作戦は間違っていた!」と言い出したり、もう何がなんだか。


これだけ未来や過去がグチャグチャになるのなら当然「結局自分が生きている世界が幸せならいいんじゃない??」と思っちゃったり。


どれだけジタバタしてもどこかの次元では相変わらずカタストロフが起こるんでしょ?


となると、やっぱりタイムトラベルという設定自体が無理があったんじゃないでしょうか。


今いる自分たち(つまり観客)が死の局面にあるという状況でないと、登場人物達がどれだけ頑張ってても「まぁ頑張ってくれたまえ」くらいにしか思えないですね。

 

ターミネーターの設定


シュワルツェネッガーターミネーターが、皮膚とかが老いていくという設定は問題ないんですけど、だんだんと不具合が発生するみたいな設定は何故追加されたんでしょうか。


せめて「あと何年くらいでシャットダウンする」くらいの説明がないとこちらも応援のしがいがないですよね。


少しずつ老いていくならば、最終決戦あたりで「もうそろそろお別れの時が近づいている」くらいの設定もあって良かったんじゃないですか。


これじゃどうみても「シュワちゃんが老けたからそういう設定にした」という理由しか見えないですよね。


やはり「ターミネーターは劣化する」という設定自体がマズイと思うんです。


何故なら「じゃあ他のターミネーターもいつか止まるんだよね」と思ってしまうし、そうなると急にターミネーターの無機質な恐怖感が無くなってしまいます。


そして敵キャラのターミネーター達ですが、今回も非常に残念な結果だったと思います。


はっきり言って全然怖くない。


イ・ビョンホンさんは頑張っていたと思いますが、ジョン・コナー役のジェイソン・クラークさんターミネーターは本当に怖くない。


ターミネーターの怖さって「意思の疎通がとれない」ことと「自分を殺す以外の目的がない」こと、そして「延々と追いかけてくる」という点でしょう。


そのいずれもが無くなっています。


ベラベラ喋るし会話も出来るし、世界を征服する目的を具体的に持っているし、追いかけるというよりはむしろ追いかけられる方が多いくらい。


いや、いいんですよ、新しい設定のターミネーターがいても。


でもそれが怖くないなら失敗でしょう。

 

映画全体に対して


今回、今までのストーリーと大きく変えて「ジョン・コナーが敵役に!」というサプライズを持ってきました。


たしかにサプライズは成功とは思います。


でもやっぱり、それはやってはいけない禁じ手だったと思います。


ここでジョン・コナーが敵だとするならば、今まで築き上げてきた映画シリーズの冒険がすべて無駄になっちゃうんですよ。


もしスターウォーズで「実はルークがいたせいで宇宙のフォースがおかしくなったんだ」なんて設定を用意したら、長年のファンはそれを許さないと思うんです。


それと同じで「ジョン・コナーを守るための物語」というのはターミネーターという映画のルールそのものです。


最低限のルールは守ったうえで続編なりスピンオフは作るべきじゃないですかね。

 

ポスターの感想


日本版や海外版も含めて共通するのは「やっぱりシュワちゃんがドカンとでっかく登場していて、目が赤く光っていないとダメ」という点でしょう。

 

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たしかにそれでこそターミネーターだと思うし、そこは問題ないんですけど。


それにしたって全体的にやる気がない感じがするのは何故でしょうか笑


登場人物をパラパラと配置して、背景に大都会をのせとけばオーケーみたいな。


ターミネーターほどの歴史ある大作なのに、そこらへんの凡百の映画ポスターと同じとは寂しくないですか?


日本版のキャッチコピーの「未来を取り戻せ。」とかも珈琲1杯飲み終わる前に思いついたくらいの感じしかしなくって。


そんなキャッチコピーなら別に映画版ドラえもんでもつけれちゃいますよ。


悪いポスターとまでは言いませんが、いくらなんでも気合いがなさ過ぎますよ。。。


唯一の希望といえばエミリア・クラークさんですかね。


さすが男性の選ぶ「理想的な女性」ナンバーワン女優ですよ。


あからさまに胸や尻が強調された立ち姿でポスターに登場しています。


僕だって男ですから、そりゃ彼女に性的な魅力は当然感じます。


とはいえ「サラ・コナーとして」という前提があるならこのポスターではダメでしょう。


もはや世界中のオッサン達しか相手にしていないかのようなポスターを見ちゃうと悲しくなっちゃいますけどね。。

 

まとめ


はっきりと残念な一作だったと思います。


ジェームス・キャメロンリップサービスで「今回の続編は面白いよ!」と言っていましたが、今から考えると正真正銘のリップサービスだったのでしょうな。


仕方なくなのかもう一度ジェームス・キャメロンが強く関わる形で続編が作られることになったのですから。


希望を言うならば、X-MENシリーズのローガンに該当するような渋めの映画に仕上がっていたらいいなぁなんて思っています。


それでは、また。

 

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ミッション・インポッシブル フォールアウト 《大人げないけど、評価は出来ない》

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映画の点数…70点
ポスターの点数…40点

 

面白い!けどね…


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《ミッション・インポッシブル フォールアウト》です。


前作《ローグネイション》がシリーズ最高の出来だった手応えはトムクルーズにもあったのでしょう。


シリーズでは初となる前作と同じ監督で作られた続編です。


トムクルーズが本当に素晴らしい映画人だなと感心するのは、「前作が良かった。じゃあ次はもっと面白いのを撮らないとね」というスタンスをずっと続けていることです。


今作フォールアウトは明らかに前作以上の肉体的な見せ場を加速させようとしているのは見て分かるし、映画の文脈とは関係のないところでグッときてしまうほどです。


非常に面白かった。とても笑わせてもらった。


そのうえでフェアに評価をしたいと思うのですが、残念ながら手放しで楽しめた映画とは思えませんでした。

 

トムクルーズという男


ここから先映画の不満点もいくつか書いていくのですが、大前提として僕はトムクルーズという俳優が大好きですし、尊敬してます。


映画史における自分の立ち位置や役回りを正しく理解し、全力で実践していく姿は人として憧れます。


なので今回の映画もトムクルーズとイーサン・ハントという人物に対する評価はもちろん100点です。

 

映画の良かった点


まず映画の良かった点から。


それは間違いなく「狂気すら感じるアクションシーンの連続」でしょう。


ビルからビルに飛び移り(というよりほぼ墜落)、高高度の飛行機からダイビングし(というよりほぼスーサイド)、古いBMWをパリで暴走させ、バイクを運転しては事故を起こし、ヘリを運転しては今度こそ墜落する男。


それがイーサン・ハント。


そのシーンの羅列だけでとりあえず映画を見に来た甲斐はあるわけですよ。


ていうかそんなシーンを見ることが出来て1800円でしょ。安い安い。


今回も「ある程度は」仲間との連携で敵を追い詰めていくという展開はとても良かったと思います。

 

映画の不満点


ただしこの映画、良い点だけを追いかけるには少し不満箇所の目立つ映画だったとも思います。

 

脚本の破綻


今作は特に、「まずアクションシーンを撮ってしまってから映画の脚本を作る」という方法をとっているのですがそれがさすがにうまくいっていません。


あまりにも強引にシーンとシーンが連結されているので「結局この人は味方か敵か分からない」というレベルでストーリーが頭に入ってきません。


特に初見時は人物の名前や顔がちゃんと頭に入っていない状態なので「なんでこの人は敵だったに最後は味方みたいな感じになってるの」といった混乱が続きました。


また「このスイッチを押さないと原爆が発射される」みたいな場面にもかかわらず延々と格闘をしていたりスイッチを崖から落としそうになってみたり。


行動に合わせてストーリーを作っているのでやはりところどころが破綻していて見辛いのです。


ストーリーが破綻するとどういう現象が起こるかというと、退屈してきちゃうんですよね。


今何をやっているのかが曖昧になってくると、なんかどうでも良くなってきちゃうというか。


アクション映画において「今何やってるのか分からない」という状況は可能な限り避けるべきだなと思い直しました。

 

映画のテーマ


今回のサブタイトルは「フォールアウト」です。


もちろん落下シーンが非常に多いからというのあるのですが、明らかにこれはダブルネーミングですね。


フォールアウトは死の灰の事もあらわしています。


つまり核によって地球は滅亡させることが敵側の作戦で、それを止めるのがイーサンチームの役割なのですが…


それにしても核の描写があまりにもいい加減すぎます。


プルトニウム素手で掴んでみたり、川から汚染させて放射線物質を流そうとしてみたり。


「核って、そういうもんじゃないんですよ」という場面がかなり連続します。


「この件は大目にみよう」となんとかやり過ごしても、再度またあまり練られていないシーンが出てきたり。


ハリウッド映画において、雑な核兵器描写なんていくらでもあります。


ただ、今はもう2019年ですよ。


いい加減、核兵器についての一定のリテラシーは共有してほしいなと思ってしまいます。


原爆を含めいくつかの放射能による死傷者を出したことがある日本としては、その都度「おいおいちょっと待てよ」とツッコミを入れ続ける必要はあると思うんですけどね。

 

ポスターの評価


今回ポスターも正直良くないというか。

 

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映画のタイトルとトムクルーズのビジュアル自体はあっていますよ。


まさにフォールアウトって感じです。


トムクルーズが肉体的なアプローチでこの映画に挑んでいるのは当然知っているのですが、今となってはこれくらいのビジュアルでは観た人は全く驚くことが出来ないんですよね。


CGによって何も驚くことが出来なくなった時代なので、それに見合った工夫が必要なのですがそれがうまくいっていないかなと。


前作ローグネイションでは「飛行機にしがみつく」というビジュアル自体がフレッシュだったので良かったんですけどね。

 

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まとめ


全体的に不満点も見られた本作でした。


ただそれも前作が良かったからそう思ってしまう部分が大きいのも事実で。


この映画に価値があることなんて当然も当然の話です。


次作が公開されるとき、トムは還暦を迎えているのでしょうか。。。


また違うアプローチでのMI7を楽しみに待っています。


それでは、また。

 

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100円の恋 《何かを成仏させるような映画》

 

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映画の点数…82点
ポスターの点数…85点

肝臓にくる映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《100円の恋》です。


主演には安藤サクラさんと、キーマンに新井浩文さん。


クズ役やくせ者役をやらせたらずば抜けた2人の共演なので、その時点である程度の成功は見えていたとは思います。


見てみると案の定というか、肝臓あたりにズッシリくる映画でしたよ。

新井浩文さんについて


この映画の中において、新井浩文さんが実際に起こした事件をイメージしてしまうような描写が一部ありました(劇中で行為を行ったのは別の役者さんですが)。


密室での出来事なので、新井浩文さんがどこまで自覚的に女性を傷つけたのかなどは裁判の結果にしたがって判断しようと思います。


ともあれ過去に公開された映画に罪はないと僕は考える方なので、この文中では事件は存在していないという前提で書いております。


現実世界と映画の世界をどこまでリンクさせて考えるかはいつも難しいですね。

映画のストーリー


未婚、職歴無し、実家暮らしのイチコ(安藤サクラ)さんが、自分の人生を取り戻そうとバイトを探し、恋に落ち、ボクシングに目覚めていく様子を描いた映画です。


ボクシング(スポーツ)を通じて自分の人生をやり直すというタイプの映画は無数にありますが、その中でも一番「見たくないもの」まで描いた映画ではないでしょうか。


ボクシング映画の最高峰の「ロッキー」のように、誰しもが人生を取り戻すことは出来ないというのが現実なわけで。


この映画のイチコが、ボクシングをしたからといって何かが好転することなんてほとんど無いというのは観てたら分かるわけですよ。


就職が決まることは当然ないし、プロボクサーとして一定の稼ぎを得ることも100%無理でしょう。


世界は何も変わらないんですよね。


ただし、自分だけは変わることができる。


そういう映画だったんじゃないかなと思ってます。


もちろん、もっと分かりやすく提示されているようなシーンもあるんですよ。


新井浩文さんとの交流が今後も続くかも知れないという着地でもあるし。


個人の捉え方でしかないのですが、僕は「何かを成仏させるための映画」だと思いました。



何かを成仏させるような映画


何かを成仏させる、という何だか分かりにくい表現でしか言えないのが歯がゆいですが。


ロッキーやスターウォーズのルークなんかは「自分の中に眠っていたもう一人の自分」みたいなものを呼び起こすような話だと思うんです。


とても希望に溢れた話だと思うし、僕も含めて世界中の人に夢を与えたと思います。


でもそういう映画とは違って、イチコの場合は「もうとっくに死んでいる」ものを一度成仏させるしかないという状況なんじゃないかなと。


ボクシングという競技を通じて、というよりはもっと単純に「暴力」というツールを使って自分や誰かを傷つけること。


それで自分自身を一度成仏させてしまうというか。


正しいとか正しくないとかは分かりませんが。


コメディな演出も多い映画ですが、痛烈なメッセージも絶望も含んだ映画だったと思います。

ポスターの感想


ポスターが滅茶苦茶いいですよね。

 

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あの、なんていうんですかね、非常に言いにくいんですが。


少なくともこのポスターの安藤サクラさんは、全然綺麗でも可愛くもないじゃないですか。


メイクも衣装もひどいもので。


ここまで無防備なビジュアルって、ハリウッドですらやらないと思うんですよ。


まるでインスタントカメラで撮ったかのようなチープな素材感や、ピントがいまいちきてない感じ。


このポスター作ってるとき、デザイナーさんは楽しかっただろうなーと想像つきます。


とにかくカッコイイビジュアルを作ることと、映画のメッセージがバッチリ決まる瞬間っていつだって楽しいですから。


希望としては、もう少しだけ文字色のピンクをシアンも混ぜたような濁った色で観たかったくらいですかね。

まとめ


万人向けの映画ではないし、とても地味な作品とは思いますよ。


ただし、万人に届く、届きすぎる映画だとも思ってます。


もし未見の方がいたら、とりあえず鑑賞することをすすめます。


安藤サクラさんの作品としては万引き家族よりも強いメッセージのある作品かもよ、なんて思ったり。


それでは、また。

 

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ミッション・インポッシブル ローグネイション 《未だ最前線の男・トム》

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映画の点数…92点
ポスターの点数…65点

 

世界一カッコイイ男


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《ミッション・インポッシブル ローグネイション》です。


昨年シリーズ最新作《フォールアウト》が公開されてそちらも最高でしたが、個人的には今回取り上げる《ローグネイション》ミッション・インポッシブルシリーズの最高傑作だと思っています。


全然関係ないですけど、トム・クルーズが出演している映画で一番好きなのはハスラー2です。


ミッション・インポッシブルシリーズに関してはどの作品が一番出来がいいかはあまり重要ではないと思っていて。


「どのトムが一番カッコイイか」とか「どのアクションが好きか」とか「どのバイクが良かった」とか、自分が引っかかったポイントで好き嫌いを決めたらいいと思うんですよ。


僕がローグネイションを最高だと思う理由はバランスの良さです。


アクションのレベルの高さ、敵キャラの凶悪さ、そしてトム・クルーズの格好良さがトップレベルだったのがローグネイションではないでしょうか。


トム・クルーズは撮影時点で50歳を超えていますからね。。。


確かに30~40代の頃に、「もうトムクルーズはいいよ」という飽きられた時期はあると思うんです。


でもブームが去って飽きられただけであって、トムクルーズ自身はいつだってハイパフォーマンスな男だったわけで。


そして今また60手前にしてアクションシーンの最前線にいるのですから。


ジョン・ウィックとして大暴れしているキアヌ・リーブスといい、呆れるくらいカッコイイ男というのは観ていて笑ってしまいます。

 

映画のストーリー


もしミッション・インポッシブルを観たことがないという人がいたら、ストーリー自体はもう大体一緒なんですぐに覚えられます。


大体が「巨大なシンジゲートが登場する」→「味方と思っていた組織にすら狙われる」→「もはや俺たちだけでシンジゲートをやっつけるしかない!」→「愉快な仲間達と敵の組織に忍び込んだりバイクか車で逃げたりする」→「最終的にトムクルーズが勝つ!」

 

これがミッション・インポッシブルの全てでしょう笑


毎回これっちゃこれなんで、飽きるとかそういう問題じゃなくて。


「今回はどんなスパイセットが登場するんだろう」とか「トムがどんな無茶をするんだろう」とかそういう楽しみ方なんですよね。


ただし今作が大好きな理由の一つでもあるのですが、話のオチに関してもう一ひねりしてあります。

 

映画の良かった点


実は映画を見始めて5分でけっこう不安になったんですよ。


映画のアバンタイトル(映画冒頭のワンアクションシーン)で颯爽とトムクルーズが登場するのは良かったのですが、そのあとすぐに「飛行機しがみつきシーン」になるんですよね。

 

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このシーンが一番CMやポスターで使われていた見せ場です。


つまり「この映画一番のお薦めポイント」とも言えるわけで、冒頭5分でそのシーンがきちゃうと「え、ここがピークって事はここから映画のテンションは下がるのでは??」と不安になったんですよ。


ですがそんな不安を感じた僕がバカヤローでしたね。


そこから上質なアクションシーンは何度も何度も展開されますし、そのいずれもがフレッシュな演出に溢れています。


この映画にも一応ヒロインにあたる人物がいるのですが、ラブロマンス方向のシーンは極力削って「お前達が欲しがっている美味しいところの組み合わせ」シーンが盛り盛りなんですね。


ジョン・ウィックシリーズが「物語の部分を削ってでもアクションシーンを増やす」という方向のサービス精神だったのに対し、ミッション・インポッシブルはアクションシーンに加えて【スパイものとしての魅力】もあります。


一本の映画としての完成度、満足度が高くなるのは当然だと思います。

 

ラストシーン


オチの展開は伏せますが、今回の映画の大好きなポイントはラストシーンにあります。


最後はもちろん「敵をやっつける」場面なわけですが、ここがもう最高。


大体こういう映画のオチは、主人公が敵を殴ってやっつける、もしくは銃で華麗にやっつけるというのが多いですよね。


もちろんそういう映画は大好きですし、それはそれでいいんです。


ですがミッション・インポッシブルに関しては、あくまでチームで動いています。


今作のラストは、チームの連携を活かして敵をやっつけるんですね。


その時の敵の悔しそうな顔ときたらもう。


まぁ気分の良かったことよ。


「いつ打ち合わせしたんだよ笑」とか「どこで調達したんだよ笑」とかいうツッコミは当然あります。


でもあえて言いましょう。


そんなこと、どうでも良くない?


だってカッコイイんだから!

 

ポスターの点数


先ほども触れましたが、映画の冒頭シーンをそのままポスターにしています。

 

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ただしこのポスターに関しては注意すべき点があって。


それは「本当にトムクルーズが飛行機にしがみついているってのを知っているか?」ということです。


そう、このアクションシーン、トムクルーズは本当に飛行機にしがみついて離陸させて撮影してるんですよね(ハーネスは当然ついてますが)。


そのトムのアクションバカっぷり。


というかハッキリとクレイジーな考え方。


映画のアクションシーンは自分で演じることに強すぎるこだわりを持っていることを知っているからこそ、僕たちはさらにトムクルーズに惚れ直すんですよね。


ですが、そのことを知らずに観ると(CGでしょ)としか思わないかも知れません。


すべての人間に「これは実際にトムクルーズが飛行機にしがみついてですね~」と説明するわけにはいきません。


むしろ観客は「気軽な気持ちで観れる」ことをミッション・インポッシブルに求めている可能性もあるわけです。


そんな方にまでトムクルーズの意気込みを押しつけるのも間違っているでしょう。

 

デザイン面


それはそうと、ポスターは素直にカッコイイデザインです。


画面の傾きに沿ってタイトルも傾いているのですが、シンプルなアイデアですがこの映画のテンションに合っています。


別に洗練されたグラフィックをファンは求めていないでしょうから、まずは映画の雰囲気を優先するのは当然だったと思います。

 

別案


こっちはよりシリアスなポスターですね。

 

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誰一人目線が合っておらず、表情からも感情が伝わってきません。


ある意味クラシックなポスターデザインでビジュアルとしては好みなのですが、映画の魅力を伝えるという点においては今ひとつ機能していないようにも思います。

 

まとめ


今のところ最高傑作だと思うミッション・インポッシブル ローグネイション。


今後トムはトップガンの新作を撮るらしいのですが、それはどうなるんでしょうね笑


なんというか、トムクルーズとスタローンは「いい映画でも悪い映画でも手当たり次第手をつける」という点がむしろ魅力になっているなと思います。


トムクルーズがいくら地球最高にカッコイイからって、駄作も山ほどあるわけですよ。


でもそういう姿勢も好きだなぁと改めて思ったり。


もはや「どんな映画でも一応目を通すから、どんどん出てくれ」という気持ちですよ。


それでは、また。

 

 

 

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ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル 《真正面から面白い作品》

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映画の点数…87点
ポスターの点数…65点

 

正統ではない続編映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル》です。


1995年に制作されたジュマンジの、一応の続編となります。


とはいえ未見でも何も問題ないので1作目として楽しむことも出来るのですが。


そもそも前作のジュマンジと今作ジュマンジでは、作られる意図が全く違います。


前作のジュマンジは1995年という、まさにCGが映画界を革新している真っ最中の映画だったわけです。


2年前にはジュラシックパーク、同年にはトイ・ストーリーと、今までの映画界の常識を丸ごとひっくり返す傑作が出てきた時期です。


ジュマンジが劇中でやったことは「現実“っぽい”動物を出す」とか「現実“っぽい”ハリケーンを起こす」とかそういう方向でのCGの使い方をしています。


それはそれで当時としてはフレッシュな表現だったわけで、ジュマンジが映画界にもたらした功績は興行成績以上のものがあるのではないでしょうか。


さて、では今作のジュマンジはどうなのか。


今となっては「観客は何が映画内で起きても驚かない」という条件下での続編です。


そこで制作陣は、初めから「CGの革新性で人を驚かせたりはしない」という、前作の意図を無視した映画を制作しました。


つまり、「面白いアクションコメディ映画を作る」という極めて正攻法で攻めたわけですね。


結果としてそれが大成功だったと思います。

 

映画のストーリー


予告などを観れば一発で分かる通り、“普段は仲が良いわけではない”高校生4人が同じテレビゲームの中に閉じ込められてしまいます。


それぞれのゲームのアバター(主人公のキャラはドウェイン・ジョンソン)を使いこなし、ゲームをクリアして現実世界に戻るというのが目的です。


ストーリー自体はありふれた設定をそのまま借りているとも言えます。


少なくとも前作のジュマンジのゲームとは全く違いますし、「これのどこが続編なんだ!」と言われればまぁそうですよねとしか言えませんが。


ただしそれでもこの映画には恒久的な普遍性に溢れている魅力があると思いますし、どの年代が観ても楽しめる器の大きさもあります。

 

映画の良かった点


何よりもまず、設定がうまかったと思います。


いわゆるスクールカーストでは格差のある4人が一つのゲームに飛び込み、強制的にお互いに向き合う必要があるという設定を持ち込みました。


同時に、自分自身もアバターに変身するため必然的に自分自身とも向き合わなければなりません。


その設定が説教くさくなることなく自然と物語を牽引していきます。


「協調性が大事だ」とか「勇気がなければどこにも進めない」とかをセリフで説明することもなく自然とそういう状況を映画内で用意しています。


やってることはほとんどコメディなのですが、映画として非常に正統派なんですよね。


少年少女の成長映画としてのツボはしっかりと抑えています。

 

ドウェイン・ジョンソンの役者としての魅力


ワイルド・スピードなどでは硬派な役をこなしている彼ですが、本作では内側に高校生が入っている役。


しかも観客は演じているのがドウェイン・ジョンソンであるというのを踏まえた上で鑑賞するという意外と複雑な役です。


元レスターという本職役者ではないドウェインですが、この無茶ぶりに非常に的確に応えています。


うまいですよね、すごく。


ちゃんと中に高校生が入っているように見えたし、時々ドウェイン・ジョンソン本人に見えて笑ってしまいます。


彼がバッチリ演技を成立させたことがこの映画の成功の秘訣だったのではないでしょうか。

 

ポスターの感想


映画は普通に一流エンタメだったと思うのですが、日本語版ポスターがどうにもセンスがいただけません。

 

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あまりにもキッズ〜高校生向けなデザインです。


大人が鑑賞しても十分な魅力のある作品なのですから、もう少し上品な飾り立てで良かったのではないでしょうか。


この例で言うと、あまりにもキャッチコピーなどの文字情報が多すぎます。


わざわざ「その名は…」とか「生きて帰れ」とか全く必要ないでしょう。


小さい面積ですがこういうゴチャゴチャした要素が入ると途端にデザインは子どもっぽくなってしまいます。


もちろんティーンの観客を呼び込むこと自体は大賛成なのですが、だとしても上記のようなコピーは不要ではないでしょうか。

 

アメリカ版


アメリカ版だとこのように大分スッキリしたデザインになります。

 

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同時にワクワク感やコメディ感はグッと抑えられてしまい、どちらかと言えばトゥームレイダーインディ・ジョーンズのような雰囲気が強いですね。


これはこれで日本の観客は混乱するでしょうから良いデザインとも言いがたいところなのですが。。

 

まとめ


はっきり言って舐めてかかってた映画でした。


ちょっとした時間潰し程度の面白さを期待したのですが、十分すぎるほどに傑作でしたね。


87点という高得点をつけましたが、決して「歴史に残る超大作」というわけではありません。


人生最後に観る映画にチョイスすることも絶対にないでしょう。


それでもこの映画を高く評価したいのは、いつ誰が観ても、一定の感動と興奮を与えることに真面目に取り組んだ映画だからです。


そういった「正統派エンタテインメント」はもっと高く評価されてもいいんじゃないかなと思った次第です。


それでは、また。

 

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レディ・バード 《映画とポスターの乖離が気になる作品》

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映画の点数…90点
ポスターの点数…45点

 

予想を超えた傑作


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はレディ・バードです。


正直ですね、この映画観るつもりなかったんですよ。


それはもうハッキリと、ポスタービジュアルのせいです。


後で詳しく書きますが、とても自分と相性の悪そうな映画だと思ったんですね。


ところがゴールデングローブ賞は受賞したしアカデミー賞もいくつかノミネートされたし、ロッテントマトでも評価が高いし。。。


イチかバチか観てみるかということで鑑賞。


いやー、そういう冒険もしてみるものですね。


90分の小粒な作品ながらも傑作でございました。

 

映画のストーリー


あらすじを書いているだけで具合が悪くなりそうですが、「ここではないどこかへ」を夢見る高校生の女の子クリステインレディバードが繰り広げる日常が舞台の映画です。


サクラメントという田舎とも都会とも言えない街で暮らすレディバード


基本的には(日本でいうところの)高校3年生の1年間を通じて、親との確執、友達との関係性、恋とリビドー、そして大学進学と街との別れ。


一言で言えば「青春映画」には間違いないのですが、生ぬるいスイーツ映画とは違って胸をギリギリと締め付けてくる映画です。


コメディタッチの演出で何度も劇中笑ってしまう場面はあったのですが、当の本人達はいたって真面目に行動してるんですよね。


そこがさらに面白いし、ホラーでもあるというか。


まるでかつての自分を観ながら「バカだなぁこいつは」なんて言いながら笑っているかのよう。

 

映画の良かった点


監督自身の体験も織り込まれているそうですが、一つ一つの行動がかつての自分を観ているようで胸が痛いというか。


自分のことを“レディバード”と名乗るのも痛々しいし、クラスのイケてる女の子に寄り添っていくのも見てられないし。


自意識を剥き出しにしていることを自己表現と勘違いしているあたりが、なんとも大人の心を激しく動揺させます。


でもそれはそれとして、まずは普通に楽しい映画なんですよね。


なんでももともと6時間くらいになりそうだった映画を90分にしてあるということで非常にテンポが良くサクサク進みます。


まず冒頭の母親との痴話げんか→車から突然のダイブ→母親の絶叫→タイトル、という流れが非常に心地よくって。


そこだけですでに「はい、これ傑作の予感」というくらい。


こういう、そもそも楽しい映画なんだけども心臓にグサグサくる映画というのは大好きなジャンルで。


「シング・ストリート」や「勝手にふるえてろ」、「横道世之介」なんかが思い浮かびます。


置かれている状況なんかは細かく違いますが、【大人になる、その瞬間】を描いている点では一部共通するのではないでしょうか。

 

レディ・バードの焦点


映画評論家さんのレビューでは「これこそが自分のなりたい自分だと暴走しては、派手に失敗する」と書かれていました。


その意見は否定しないんですけど、個人的には「ただ単に、今の自分を否定したくて言い訳を並べているだけ」の人物としてレディバードを観ていました。


「今の自分がつまらないのは、田舎のせい、母親のせい、恋人がいないせい、友達がイケてない女の子のせい」という。


そこから離脱するためにジタバタしてるだけで、自分の本質は何も成長していないという悪循環にハマる様子を描いていると思いました。


まぁ多分、自分がそうだったからそう見えるのでしょう。


「ここではないどこかへ」という点は同じでも、前向きな姿勢なのか逃げ出したいだけなのかはちょっと違うと思うんですよね。


かなりテンポの良い映画で具体的な描写を省いているところも多い分、観る人によって感想が変化するような映画なのだと思います。


そういう映画って素晴らしいですよね。

 

ポスターの感想


さて、今まで映画を褒めてきたのですが、映画ポスターにはちょっと文句がございます。


僕はこのポスターを観てこの映画を今までスルーしてきたのですから。

 

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まず、ビジュアル面については言うこと無しです、100点ですよ。


斬新なレイアウトだし、彩度の抑え方やフォントの使い方までどれをとっても素晴らしい。


でもですね、映画ポスターとしてはどうなんだろうと思うわけです。

 

映画のテーマと乖離していないか


冒頭でお話しましたが、僕はこのポスターを観て「これは相性が悪そうだ」と感じたんですよ。


特に日本語版ポスター。


まだ映画を観ていない前提で言うと、涼しげな顔をして神を赤く染めた女性。


後ろには十字架がうっすら見えていて宗教的な雰囲気も強い。


まっすぐ前を見ているけど、何も観ていないかのように空虚な顔をしている。


そしてキャッチコピーが「羽ばたけ、自分」。


これはまずい、非常に危険な臭いがする。


これらの情報から僕が判断したのはアメリとかに代表される、ちょっとイっちゃった女性を主人公に、見た目だけがゴージャスで、雰囲気だけがお洒落で、見た目だけの恋人が出てきて、ふんわり・ふんわり・ふんわりとした映画」だと思ったんですよ。


セカイ系という言い方でもスイーツ系という言い方でもいいのですが、とにかく観ている間中こっちが恥ずかしくなるような映画。


どうでしょうか?


そのような映画のポスターにも見えてきませんか?


実際の映画はもっと泥臭くて血のにおいもするような映画なのに。


主演のシアーシャさんはあえてニキビも隠すことなく映画に出ているのに、何故ポスターではツルンと陶器のような横顔なのでしょうか。


少なくとも映画内に出てくる彼女とポスターの彼女はあまりに乖離していると思います。

 

キャッチコピー


先ほど日本語版ポスターのキャッチコピーがマズイと言いました。


「羽ばたけ、自分」。

 

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一見悪くなさそうなキャッチですが、僕はいまいちだと思います。


まず、英語版でのキャッチコピーは【Fly Away Home】です。


羽ばたけ、は良いとしても【自分】と【Home=家】では意味が違ってくるでしょう。


レディバードは、自分自身を羽ばたかせることではなく、とにかく今いる場所から逃げ出したい人物のように見えます。


なので【Fly Away Home】はしっくりくるのです。


たしかに「羽ばたけ、家から」では良くないとは思いますが、それならば「逃げ出せ、自分」「私から、羽ばたけ」とかの方が良いのではないでしょうか。


こちらの方がより生々しさを感じるので映画に沿った言葉のように思うのですが。。。

 


まとめ


ビジュアルがカッコイイポスターだっただけに、映画との内容の乖離が非常に残念です。


もしもこのポスターを観て映画を借りた人は「なんかスイーツな感じがあんまりしない」と逆に不満に思うのではないでしょうか。


映画を観て欲しい客層と、実際に観てしまう客層が合致しなくなるポスターだと思います。


もう少しどうにかならなかったのかなぁ。


映画はお薦めです!!


それでは、また。

 

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64(ろくよん) 《豪華な素材を全部黒焦げに料理した映画》

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映画の点数…35点
ポスターの点数…25点

 

とにかく食材が豪華な映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《64(ロクヨン)》です。


横山秀夫さんの原作小説のミステリー映画(一応)で、それより何より出演者の豪華絢爛さが売りの映画と言っても過言ではないでしょう。


主要なキャラ以外にもドッカンドッカン主演クラスの俳優を揃えに揃まくった作品。


撮影期間中は日本から俳優が消えたんじゃないかしらん。


料理で例えるならば、メニューは旅館の会席料理(=本格派ミステリー)食材(=俳優)は日本中から新鮮なものから高級なものまで集めてきました。


そこでさぁ料理長に任されたのは瀬々監督。


どんな仕上がりになるのかなと期待していたら。。。。


出てきたのは全部同じフライパンで黒焦げにしたような料理でした。

 

映画のアウトライン


元々原作自体がそうなのですが、この映画にはいくつかのテーマが重なりあっています。

 

  • まずはメインテーマの「昭和64年に起きた幼女誘拐殺人事件の犯人は誰なのか」という問題。

  • 次に「事件の隠蔽や不自然な人事など、警察内部のゴタゴタ」という問題。

  • そして「広報部とメディアの記者達との確執」という問題。

  • さらには「家出をして行方の知れない娘との親子関係」という問題。


これらのテーマが重なり合いながら人間ドラマを描いていく。。。


というのが目的だったのでしょう。


だとしたら、少なくとも映画ではそれがうまくいっているとはとても思えませんでしたよ。。。


このあたりがこ「食材同士が料理全体の味を引き立て合う」ということでなく「全部混ぜてフライパンで黒焦げにする」との違いなんだと思います。

 

映画の良かった点


もちろん良かった点もあります。


大前提として、4時間の映画を見続けることは出来るくらいには映画は完成しています。


本当に下手な監督ならば、そんなに長時間画面を観ることすら出来ない仕上がりになるはずですから。


そしてなんだかんだ、豪華な俳優陣を集めた一種のパーティー感というのは華やかでいいと思いますよ。


映画の魅力とつながっていたとは思いませんが、少なくとも皆さん実力のある俳優ですので観ていて飽きません。

 

映画の不満点


まず何より、「映画化できてない」気がしました。


つまり、なんか小説をそのまま読んでいるような感覚なんですよ。


登場人物達はやたらと大げさな口調で全てセリフで説明してしまいます。


「組織ぐるみでの隠蔽!!」とか「魂まで売ったつもりはありません」とか「これが県警の答えですかーーー?」みたいなセリフ。


言わないでしょ、そんなセリフを日常では。


そういう日常から離れたセリフが連続しちゃうと、どんどん画面にうつっているものが現実のものではないと分断されていっちゃうんですよね。


それってこの手のミステリーにおいては致命的なミスじゃないですか。


せっかく画面のある映画なんだから、セリフ以外の仕草や目線だけでいくらでも表現のやり方があったと思うんですよね。


何せ実力派の俳優はいくらでもいるんですからね。


映画全体を通してとにかく役者同士がワーワー言ってるシーンが無駄に多くって。


「殺人事件」と「新聞屋とのケンカ」が全く同じテンションで語られるので、何を制作者は伝えたいのか全然分からなかったです。

 

脚本に問題あり


いくら原作小説があるからとはいえ、映画の前編と後編に分けるのがうまくいっていないと思います。


前編のラストで「第二のロクヨン事件が発生した??」というのは良かったと思います。


ただそれでも、一応2時間の映画が終わるわけですから一箇所くらいはスカッとする場面は入れた方がいいんじゃないですかね。


例えば「ネチネチ言ってくる上司の不正を暴いてやっつける」とか「元刑事部としての能力が炸裂して、行き詰まっていた事件を一つ解決する」とかさ。


この映画では「新聞屋との確執が少し雪解けする」というだけですよね。


いや、そんなのこっちは全然どうでもいいから。


道を歩いていて、他人と他人がケンカしていたけどちょっと仲直りした、とか見たとしても「だから何?」としか思わないでしょう。


その仲直りの仕方も「上司の命令を無視して独断で情報を解禁する」とかいうもので。


個人的には、そんな勝手な判断を個人でしてしまう警察の方がよっぽど怖いですけどね。

 

ミステリーとしてダメ


小説だといいんですけど、やっぱりこの映画化のやり方には少し無理があったと思うんですよ。


全員顔も名前も知っているような俳優が出てくるので、出てくるタイミングやセリフの扱いなんかを見てるだけで「この人が犯人なんじゃないの」という予想がついて。


しかもそれが特に裏切られることもなくやっぱり犯人だったりしました。


どうやって犯人が分かったか、の推理をする前に犯人が予想できちゃう作りってのはどうかと思うんですけどね。


犯人のYさんが電話で「つぎの・・・信号を・・・・右に曲がれ・・・」とか指示してるシーンなんか普通に笑っちゃいましたけどね。


ただのギャグシーンにしか見えませんでした。


可哀想なYさん。


最近、損な役しかやってない気がするんだけど気のせいかしら。

 

真犯人がダメ


これかなり大事だと思うんですけど。


あのー、事件の犯人、後編にしか出てませんよね。。??


それってミステリーとしてどうなんですか?


映画を観ていると、後編から急にビッグネームな俳優さんが登場するんですよ。


それってもう、犯人以外にありえなくないですか???


僕はさすがにそんなことはありえないだろうと思ってたんですけど、まさかのそのまま犯人。


そういう意味じゃ確かに予想外の人が犯人でしたよ。


でもそれってどうなの????

 

ポスターの感想


やっぱりこういうポスターにした方がお客さんが呼び込めるからそうしてるんでしょうね。

 

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可能な限りスッキリさせているし見にくいということはないんですけど。


ただやっぱりこういうポスターって「金かけて俳優集めたっすよ〜」とか「犯人はこの中の誰かですよ〜」とかそういう意図しか見えてこなくって。


僕はやっぱりポスターの役割は「この映画、面白いですよ。絶対に見た方がいいですよ」というメッセージを届けることだと思うんですね。


それを放棄したようなポスターはどうしても好きになれないです。


キャッチコピーはシンプルだけどいいですよね。


「犯人は、まだ昭和にいる」という。


少なくとも「どんな映画なんだろう」くらいは気になりますね。

 

別案


後編に合わせたポスターのようです。

 

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うん、こっちのビジュアルはカッコイイですね。

 


何か重苦しい真実が隠されていそうなビジュアルです。


けど。。。。


ネタバレしすぎじゃないですか・・・・???


前編の時点ですでに登場していたこの電話ボックス。


その電話ボックスがこうやってポスターにされるってことは、「あの件の犯人」は。。。


ちょっと想像したら予想ついちゃうんですけど。。。


あと、こちらのキャッチコピーは0点ですね。


「映画史に残る傑作の誕生 慟哭の結末を見逃すな」


いやー、実に0点。


すがすがしいくらいですね。


あのねぇ、どんなに大きくこんなキャッチコピーを書いても、これを読んで「なんだって?歴史に残る傑作なのか?!」と思う人、いません。


傑作かどうかはこっちが決める。


自分で言わないでよそんなこと。。。

 

まとめ


なんていうんですかね。


面白くなる要素、素材はたくさんあった映画だと思いますよ。


でもここまで調理を間違えちゃうと、もはや素材の方にまで文句をつけたくなるという状況です。


素材は悪くないのに、素材が悪く見えちゃうなんて一番不幸じゃないですか。


綾野剛さんって、あんなに演技下手じゃないでしょう。


料理の仕方を間違えるとあんなに下手に見えるんですね。


一事が万事そういう映画だったように思います。


見終わったあと、悔しさすら感じた作品でした。


それでは、また。

 

 

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アクアマン 《ポスターからは期待が高まったけど。。》

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映画の点数…37点
ポスターの点数…80点

 

結局のところいつものDC


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《アクアマン》です。


さっきザッと調べた感じだと、映画全体の世界興行収入では22位にランキングしているみたいで。


これはジャスティスリーグよりもはるかに上で(それもどうかと思うが)、近年のDCヒーローものでは大健闘した作品と言えます。


数字の上でも、映画の内容的にもマーベルに先を行かれるDCですが、ようやく一矢報いた感じでしょうか。


ジェイソン・モモアという、まだ一般的にはスーパースターとは言えない彼を主役にして一本の映画を作りきったあたりからも気合いが感じられました。


ジェイソンさんは大ヒットドラマ「ゲームオブスローンズ」に出演していたイメージですね。


割と序盤で退場するので彼の代表作ということではないのでしょうが、ゲースロの成功を受けての抜擢だったのはあるんじゃないでしょうか。


まぁゲースロ出身の俳優はマーベルやDC問わず今やハリウッド映画に欠かせないくらい大活躍されているんですけどね。


ゲースロの話は置いておいて、ここまで大ヒットを飛ばしたアクアマン。


この映画の魅力はなんだったのでしょうかと僕なりに振り返ってみると………


いや、全然いつものDC映画と同じじゃねえか!!

 

映画のストーリー


映画の設定自体は、無数にある物語と同じと言えます。


人間の父親と、海の王国の女王様のハーフとして生まれたアーサー。


アーサーがたくましく大人へと成長したその頃、海を汚し続ける人間に怒ったアーサーの弟オームは、地上を滅ぼそうと攻撃を開始した。


弟オームの暴走を止めるべく、伝説の武器を求めて海中へとアーサーは帰っていく。


果たして勝つのは人間とのハーフ・アーサーか、純血の王オームか。。。


みたいな感じですかね。


この映画の目的は「弟の暴走を止めること」と言えるわけです。


それだけで終わってればまだ良かったんだけど。。。

 

映画の良かった点


先に映画の魅力から触れておきます。


いいとこももちろんあるので。


まず、お話自体が明るいです。


バットマンビギンズからずーーーーーーーっととにかく暗いDC映画ですが、本作はザックスナイダー色が薄めで話のトーンが基本的には明るいです。


明確なギャグシーンも織り込まれるなど、今までのDCシリーズとはひと味違う印象。


それと平行して、やたらと宗教くさかった他の作品とは距離をおいているのも特徴です。


不用意に「神がどうしたこうした」と言わなくなった分、DC映画の悪いところだった「途中から何を言っているのか分からなくなる」ような現象はありませんでした。


そしてもちろんジェイソン・モモアさんはアクアマンというヒーローも見事に体現出来ていて、そこは手放しで賞賛できます。


ただ……

 

映画の不満点


すごく単純に、ストーリーが陳腐すぎませんかね???


バカな弟を止めに行く兄→失敗してやられる兄→伝説の武器を手に入れるため探し回る兄→偶然にもお母さんと再会ヒャッハー→伝説の武器を使って弟をこらしめる→俺が王様だ!と言い始める


これがストーリーの全てですよね。


いくらなんでも2019年にこれをやられるとキツいんですけど。。。


別にストーリーは陳腐でもいいですよ。


だったら他の箇所で補わないとダメですよね。


これからそれも述べますが、それも全く出来ていないんですよ。


だからストーリー全体がアホっぽくなってしまうんですよね。

 

設定がガバガバ


まず、伝説の武器さえあれば弟を倒せるという設定自体がひどすぎます。


結局最終的には武器があればいいってこと?


それじゃ強国が原爆を保持する理由と同じで、「強い武器を持ってる方が偉いんだよ」という以外の理由がまるでありません。


せめて「最も慈悲深い者だけが手にすることの出来る武器」とか嘘でも設定を加えようよ。


でも無理ですよね。


そもそもこの伝説の武器を作った昔の王様こそが、支配欲に取り憑かれて国を滅ぼしたくらいなんですから。


伝説の武器というよりも呪われた武器という方がふさわしいでしょ。

 

最低最悪の君主制


最終的にアーサーが王様になるというストーリーもひどいです。


弟が悪い奴だから、やっつけて王様になるっている。


ケンカが強い方が王様なのね。

 


くだらん!!!!


じゃあ、また弟がケンカを挑んできて負けたら王様交代なんだよね?


なんなのそれ。


国民とかはほとんど画面にも出てこないけど、国民のことをなんだと思ってるの。


せめて国民からは絶大なる支持をアーサーは得ているとかないわけ?


なんならアーサーが戦ってた時ブーイングされてたけど。


まわりの何人かが「こいつの方が王様として良さそうだから応援しよう」ってしてただけじゃない。


こういうのって、クーデターって言うんだよ。


アトランティス王国からしたら、王様が交代したのって悲劇なんじゃないの?


最後に王様になったアーサーのセリフが「すさまじい重圧だが、この国の為に尽くそう」とかではなく「がははは、面白そうだ」だって。


暗殺されろお前なんか。

 

脚本が意味不明


脚本もひどかったですね。


アーサーが伝説の武器を手にするために旅をするんですけど。。。。


その課程が丸ごと無駄なんですよ。


まず巻物みたいなアイテムを手に入れて、それを手がかりにサハラ砂漠に行って、そこからシチリアに武器があるらしいって情報を手に入れて。。。。


どれか一個にしろよ!!


なんでウロウロするの。


シチリアとか、ただアクションシーンと綺麗な景色の映像が撮りたかっただけでしょ?


なんでこんなにウロウロするのに腹がたつのかというと、このウロウロしている間にアーサーはなんにも成長しないからなんですよ。


「王というのはこういうことなのか」とか「こんな気持ちでは弟に到底勝てない!」とかなんにもない。


ただ文字通りウロウロして武器をさがしているだけ。


なんかしょうもない王女様メラと恋に落ちるとか、メチャクチャ不細工なロボットの敵をやっつけるとかそれだけ。


つまり映画の1時間近く無駄なんですよね。

 

デザインがひどい


これは監督の責任とまでは言えませんが、映画全体のデザインがとにかくひどかったですね。


まずストームトルーパー的な敵が登場したときに「かっこわる!」と思いました。


そのイヤな予感はほぼ全部のデザインに共通します。


水中船みたいなのもかっこ悪い。


敵のボスのデザインもかっこ悪い(ていうか他のキャラと見分けがつかないんだよ、デザインとして大失敗でしょ)。


メラの衣装もひどい(おっぱい出てるだけ)。


何よりもひどかったのは母親役のニコールキッドマンの衣装ですね。


もはやごっつええ感じ」のトカゲのおっさんレベルでしたよ。マジで。

 

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あれじゃあまりにも可哀想でしょう。


CGはものすごく頑張っている分そこで演じている人間達がバカにしか見えないって、こんなのCGの使い方として最もダメなんじゃないですかね?


これも全て、ストーリー全体がうまくいっていないからキャラクターに対する思い入れが出来ずにコスプレに見えちゃうんですよね。

 

ポスターの感想


「いつものDCだ!」と思ったのはこれが理由なんですが、相変わらず「ポスター“は”レベルが高い」んですよ。

 

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余計な情報は加えずに、深海でポーズを決めるアクアマン。


キャッチコピーもシンプルに「HOME IS CALLING(海が呼んでいる)」の一言。


切れ味最高、とてもいいポスターですね。


適度に左右対称にされたレイアウトと、画面の奥の方にうっすら広がっている王国、すっきりしていながらも観ていて飽きないデザインになっています。


アーサーの表情も不敵な力強さを感じます。

 

日本語版ポスター


けっこう叩かれてたイメージの日本語版ポスター。

 

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まぁ確かにキャッチコピーは改悪だと思うし、色をかなり明るめに調整したのもダサいと思いますよ。


ただ近年の大改造からの大改悪に比べたら控えめなんで、このくらいなら別にどうでもいいんじゃない?というのが感想。


だってそれよりまず映画がひどいんだもん。

 

まとめ


期待していたぶん、けっこう残念な気持ちですね。


このレベルの映画をいくら量産しても、まだマーベルの天下は続きそうです。


もしくは《JOKER》のようにクロスオーバーを意識しないで単体の映画のレベルを上げるか考えた方がいいんじゃないでしょうか。


今更話のつながりの矛盾とかをファンは意識しなんじゃないかと思うんですがいかがでしょう。


それでは、また。

 

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愚行録 《映画は大傑作!!ポスターがもったいない。。》

映画の点数…96点
ポスターの点数…15点

 

久しぶりにきた邦画の大傑作


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《愚行録》2017です。


貫井徳郎さんの小説「愚行録」を実写化。


監督はこの映画で長編デビューとなる石川慶さん。


主演には妻夫木聡さん、満島ひかりさんらスター俳優を配置したのと同時に、役柄の大きさや小ささに関係なく的確なキャスティングがされている印象です。


最初に結論から言っちゃうと。。。。


本年度ベスト級に大好きな映画になりました。


2017年の映画を今更僕が評価したところでしょうがないのですが、この映画に出会うのが2年遅れたことが非常に腹立たしい気持ちでございます。


なぜ今まで観ることが無かったのかは後で書こうと思いますが、早いところ観ておけば良かったのに。。

 

映画のストーリー


週刊誌の記者として働く主人公(妻夫木聡)が、1年前に起きた親子3人惨殺事件の再調査を始めるという話です。


被害者(小出恵介松本若菜)の交友関係を一通り探っていくうちに、複雑な人間関係が見えてきて。。。


みたいな話です。


一応映画のジャンルとしてはミステリー(犯人は誰だ?もの)になるのでしょうが、個人的にはミステリーの部分よりも人間関係のドラマとして楽しかった印象です。


世間的な評判がそこまで高くないのが歯がゆいのですが、もしかしたらミステリーとしてそこまで楽しくなかったという印象があるからではないでしょうか。


実際に僕も、一家惨殺事件の犯人自体は中盤くらいでなんとなく分かってしまったので犯人捜しものとして楽しんだ訳ではありません。


それよりも「なぜ、この人達は殺される必要があったのか」「なぜ、この人は殺す必要があったのか」の方が興味深かったんですよね。

 

映画の良かった点


今回はとにかく僕がこの映画をべた褒めするという内容になってしまうのですが、個別に色々書いてみようと思います。

俳優達の魅力


この映画の魅力の一つは俳優さんたちのベストアクトというものがあります。


僕自身は正直妻夫木聡さんは「好きでも嫌いでもないハンサムな俳優さん」みたいなイメージしか無かったんですよ(すいません)。


やたらと泣きの演技をするか、ニコニコした軽そうなキャラクターというイメージ。


でも今作の妻夫木聡さんは非常に良かったですねぇ。。。


愚行録での役柄は「軽い」というよりも「浅い」んですよね。


働いているときも会話をしているときも生活しているときも、いつも心は空っぽで適当にやり過ごしている浅さを感じます。


当然その人物の浅い感じは映画のストーリーとリンクしているのですが。

ずっとつまらなそうで、人生どうでもよさそうな感じ。


これって妻夫木さん自体の新しい魅力なんじゃないかなと思いました。


妻夫木さんの人間的に浅くてつまらなそうな人間をこれからドンドン観てみたいと思いましたよ。


そういう役を主役でやれる俳優ってそんなに多くいないですからね。

 

非常に不愉快さを感じるキャラクターなので妻夫木聡さんにもリスクはあったと思いますが、間違いなく今まで観てきた中で一番良かったです。

 


そしてその他の俳優さん達も非常に良かったです。


小出恵介さんの演じたクズで卑怯な、でも間違いなく純粋な役というのも最高に良かった。


名前も知らない役者さんも多かったのに皆さん本当に良かったですね。


これはキャスティングの時点で大成功だったんじゃないでしょうか。


正直、演技のレベルが少し低いかなと感じた方もいたのですが、それすらも演出としてコントロールされていた感じがします。


あ、満島ひかりさんはもういいです笑


彼女がレベルが違いすぎるのはいつものことなんで。


むしろ満島さんは「いつも通り」くらいの感じでしたよ。

 

演出が良い


先ほども触れましたが、演出がとても優れていた映画ですね。


例を挙げるなら冒頭、妻夫木さんがバスの車内でとある「引いてしまうような行動」をとるのですが、そのシーンで妻夫木さんはほぼ一言も声を出さないんですよ。


ですがたっぷりと時間をかけた長回し、画面全体を覆う雨の雰囲気、目線のやりとりなどだけで「いやーーーーーな気持ち」にさせられます。


このワンシーンだけで「はい出た、この映画面白いぞ」という予感はビンビンですね。


基本的にはしっかり落ち着いた画面作りなのですが、別に頑固に「自然体に撮るぞ」みたいな意地もなく、効果的なポイントではスローモーションを入れたり手ぶれカメラを入れたりワンカット固定長回しの撮影をしたり。


さらには「暗闇で無数の手に襲われる」みたいなフィクショナルな演出も使われます。


映画にとってどのくらいの演出がちょうどいいのか的確に判断できる監督さんなのでしょうね。

 

人間関係が面白い


とにかく2時間ずーーっとイヤな気持ちになるんですよ。


基本的には「死んだ人の悪口」を聞いて回るような展開になるので。


大学内でのマウンティングの話や、一人の女をヤる道具としてしか観ていないような会話であるとか、売春を斡旋しているような描写であるとか。


明確に「今、いやなことを言っています」みたいなセリフはないものの、空気全体から感じる攻撃的なメッセージがうまいなぁと。


僕としてはこういう友達がいなくて良かったなぁと思う一方、ずっとこの人達を観ていたいという野次馬根性みたいなものが否定できない気持ちもあります。

 

オチが面白い


先ほども言ったように、この映画のオチ自体(犯人は誰か)はけっこう簡単に分かると思うんですよ。


それとは無関係に個人的に良かったと思うのは、「殺人の理由すらくだらないものだった」という点なんですね。


普通映画の中での殺人というのは「緻密な計算でアリバイを作る」とか「殺人者になってしまうまでを丁寧に説明する」とかがセオリーだと思うんです。


ですがそれって殺人の理想化に過ぎないというか。


現実世界で起きる殺人ってもっと「しょうもない」じゃないですか。


計画も何もなく思いつきで人を殺したり、他に解決の手段がまだあるのに殺したり。


人が人を殺す理由なんて、実際のところはそんなもんというか。


この愚行録の中では非常に丁寧に「この人が殺されなければならなかった理由」を説明するんですけど、実際の殺人自体はかなり衝動的で偶然的な感じがあって。


映画のミステリーとして台無しと言われれば別に否定はしませんが、個人的にはこのくらい「いい加減な理由でいきなり殺したり殺されたり」の方が好きですね。

 

だって世の中はもっと不条理なのだから。


別に映画の中での殺人の理由にすべて納得したいわけでもないんですよね。

 

ポスターの感想


ここまでたくさん映画を褒めてきましたが。。。


ここからは残念ながら否定的なことを書かねばなりません。


ポスターが、全然ダメだーーー!!!!

 

なんなんでしょうか、このただ登場人物達を切って貼ったみたいなポスターは。

 

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当然意図は分かりますよ。


これらの人物達の中に実は犯人がいるっていうことですよね。


でももうちょっとどうにかならないんですかね。。。


僕がこの映画を今まで観なかった理由が実はこれなんです。


こういうレイアウトのポスターの映画に良い作品がないというイメージです。


例えば近年だけでもこれらの作品があります。

 

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たまたまですけど《怒り》には妻夫木さんが出ていますね。


この《怒り》《64》も、ただキャストが豪華なだけで人物の描写が全然出来ていない映画だったと思っています。


登場人物が多いので仕方なくやたらとオーバーアクションでキャラクターの描き分けをしていたり、やたらと感情的なセリフを多用したり。


駄作だったとまでは言いませんが、「こんなんだったら小説のままの方がいいじゃん」みたいな印象が強いです。


わざわざポスターまではここに貼りませんが、三谷幸喜作品のポスターは全部これですよね。。。


ただ有名な俳優をポスター内に並べるだけでゴージャスな映画に見えるっていうことなんでしょうね。


それらの映画と愚行録が同じ扱いというのは非常に残念だなぁと思います。

 

オリエント急行殺人事件のポスターなんかはひとひねりしてありますね。

 

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全員がカメラ目線というかなり作られたデザインになっています。


もちろんオリエント急行殺人事件の場合は“全員が同じ空間にいる”という設定の話ですのでこれでいいのですが、全員が違う場所にいる愚行録では同じ手法は使えませんけどね。

 

キャッチコピーもひどい


キャッチコピーもかなりひどいなぁと。


「仕掛けられた3度の衝撃。あなたの日常が壊される。」

 

はぁ??

 

 

え、まさか映画を配給する側からの目線の話なの?


「この映画はですね、驚きのポイントが3つもあるんですよ!」ってことね。


そんなもん自分から言うなよ、ダッセーな!!!!


「あなたの日常が壊される」???


だからそんなの自分から言うなよ。


あのさぁ、映画を観て日常生活に何かしらの影響を与えるなんて、そんなの当たり前に決まってんじゃん。


それを求めにお金を払って映画を観るわけでしょう。


貴方たちにそんなこと言われなくてもこっちは元からそのつもりなんだよ。


わざわざ言葉でそれを言われちゃうと冷めるだけだからね。


たまに「あなたは必ずこの映画に騙される」みたいな宣伝もあるけどさ。


それと同じかそれ以上にダサいです。


がっかり。

 

韓国版のポスター


偶然拾った韓国版のポスターがこちらです。


これが一番いいじゃないですか!!!

 

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この映画全体は「妻夫木聡から観た話」が元になっているので、妻夫木さん一人に焦点を絞るのも不自然ではありません。


ズンと沈んだ表情と配色は映画全体の暗いトーンを見事に表現できています。


何よりこの変なレイアウトですよね。


ここまで大胆なレイアウトは日本ではほとんど見かけません。


このレイアウトだけで「こいつは何か嘘をついている」という感じがしますよね。。。


キャッチコピーには「真実が明らかになる瞬間、偽りと対面した」と書いてあるそうですよ。


キャッチコピーも完璧じゃないですか!!!


「真実と偽り」という対極にある言葉を並べることで興味を呼び立てるし、映画を見終わったあとにもう一度読むとさらにゾッとします。


このポスターを作った方が日本人か韓国人か分かりませんが、見事ですよね。


うらやましいなぁ。


このポスターだったら僕ももっとこの映画を早くに観ていたのに。

 

まとめ


というわけで、映画は最高、ポスターは最低というお話でした。


僕みたいに「ポスターを観て映画が面白いか決める」なんて人は少人数だとは思いますよ。


でも、少人数でも存在はするんですよ。


そういう人がこの映画に出会う機会を奪うってのは映画ポスターとしてあってはいけないことでしょう。


少なくとも今回のポスターははっきり言って「だいたいこんな感じで」って作ったとしか思えません。


もしくは映画自体を観ていないかです。


予算がどうとか色々あるかも知れませんが、せめてあと1時間長く打ち合わせをしてください、あと3回は校正してください。


もっともっとマシになる余地のあったポスターだと思います。


これよりひどいポスターなんていくらでもありますが、この映画にふさわしいポスターとは到底思えませんでした。


皆さんも、もし未見でしたら何も考えずに是非映画の方は見てくださいね。


そして監督最新作である蜜蜂と遠雷


これも絶対に観に行きます!


それでは、また。

 

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JOKER《まぎれもない傑作……だけど》

映画の点数…89点
ポスターの点数…97点

 

話題度はこの秋筆頭


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《JOKER》です。


正直なところマーベル派の僕なので、バットマンやジョーカー自体には特に興味はありません。


ヒース・レジャージャック・ニコルソンのジョーカーも当然大好きですし、もっとも魅力的なヴィランであるというのは百も承知ですが、特段のファンというわけではなく。


ただここまで公開前から「これはすごい映画だぞ!」と煽られるとそりゃあまぁ観に行くでしょうということで。


主演がホアキン・フェニックス、監督がトッド・フィリップス、しかもロバート・デニーロが出演となると何かしらの事件は起こるのは予想できますよね。


実際の映画はどうだったかと言うと、、、、


もちろん面白かったです!

 

映画のストーリー


映画の内容自体は「いかにして最強のヴィラン・ジョーカーが誕生したか」です。


仕事がうまくいかない、母親の介護が必要、恋人もいない、かつ精神的、肉体的な障害も抱えているという主人公アーサーがジョーカーへと傾いていく様を丁寧に描いています。


今作のジョーカーは特に「まるでヒーローのよう」な側面もあり、一種のヒーロー誕の映画でもあります。


身も蓋もない言い方をすると「どんな悪役にも悲しい過去があるのさ」的な映画でもあるため、バットマンやジョーカーのファンである人ほど悩ましい気持ちになったりもするのかも知れませんね。

映画の良かった点


とにかくまず、映画が面白いんですよ。


言ってるとバカみたいなんですけど、丁寧な脚本、トーンを抑えた大人な撮影、音楽や効果音、そして役者陣の演技。


どれをとっても最高レベルでしたね。


主人公アーサーを丁寧に丁寧に追い詰めていき、ジョーカーとして精神状態が狂っていくまでをじっくりと時間をかけて描いています。


観ている間にこちらもアーサーに思わず入り込んでしまうため、まるで同時にジョーカー側へ転んでしまいそうな錯覚を覚えます。


少なくとも近年のDC絡みの作品の中では間違いなく最高傑作でしょう。


ジャスティスリーグヒース・レジャーダークナイトを合わせても一番面白いと思いましたね。


とても満足しています。


しかし、、、、、


傑作と言い切りたい本作ですが、個人的には引っかかることがありました。

 

ロバート・デニーロの出演


今作ではゲスト扱いではなくがっつりとロバート・デニーロが出演しています。


出演の意図はもちろん彼の代表作である「タクシードライバー」と「キングオブコメディ」の影響をかなり受けた作品であるからですね。


「社会の中に自分の価値を見いだせない主人公が次第に狂っていく」タクシードライバー、「人を笑顔にするということをはき違え、テレビに出演することに取り憑かれてしまった」キングオブコメディ


デニーロが出演するとなった時点で、もちろんこれらの作品と比べて鑑賞することになります。


監督も「あの映画と比べても負けることはない」というチャレンジングな気持ちがあったのでしょう。


そういう姿勢はもちろん支持するし、とても良かったと思います。


ただし僕自身は……やっぱりタクシードライバーキングオブコメディの方が上なんじゃないかなと思ったんですよね。


上、というのは主人公の持つ狂気のことです。


ホアキン・フェニックスのジョーカーは、丁寧に丁寧に狂っていく様を描いているため「どこかで引き返せたのではないか」とか考えてしまうんですよね。


でもタクシードライバーなんかは「ああ、もうこの人とは会話が出来ない」という狂気を感じるんです。


その差って小さくないですよね。


ジョーカーという存在に何を求めているかという話になりますが、個人的には「絶対にわかり合えない正義感の違い」なんですよ。


分かり合える余地のあるジョーカーって。。。。


僕はそこまでの魅力を感じなかったです。

 

ジョーカーを抜きにすると


上記のことと重なるのですが、ではこの映画が「JOKER」ではなかったとしたらどうでしょうか。


つまり、名前や設定がジョーカーではなく「普通の青年が殺人者になるまで」の映画だとしたら。


これは結構マズイんじゃないでしょうか。


僕たちは当然「このジョーカーが後々バットマンと対峙していく」という前提で映画を観ています。


だからこそ面白い部分というのは当然あって。


その前提がが無いのだとしたら、けっこう内容が薄めの映画になる気がしたんですよね。


それでもホアキンの演技があるからグイグイ観れちゃうんですけどね。。。

 

 

ポスターの評価

 

ポスターはですね、もはや言うことなしですね。


久々に「はいでた完璧〜」なポスターに巡り会えたと思ってテンション上がっております。


今回はさすがに自信作だけあって気合いが入っているのでしょう、たくさんポスターが作られています。


そのいずれも作品のテーマにバッチリと合っていて素晴らしかったです。

 

 

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いずれのポスターも基本的なルールとしては「ジョーカーしか画面内に登場しない」こと、「JOKERというタイトルの大きさは大体同じにしてあること」、そして「過剰な演出はしないこと」です。


この「過剰な演出をしない」というのは非常に今回大事で、例えばヒース・レジャーのポスターを参考に見てみます。

 

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舞台は同じゴッサムシティであるにも関わらず、まるで全く別世界のようですね


ノーラン監督ダークナイトの監督)は、ゴッサムシティ、およびジョーカーという存在を表現するためにゴッサムシティ全体が壊滅したかのような表現をしています。


あ、もちろんノーラン監督がポスターを作ったわけじゃないんですけど、便宜上。


さらに画面全体を傾けることでジョーカーの持つ狂気のようなものを演出していますね。


では改めて今作のジョーカーはというと、ポスターのレイアウトだけ見るとただ単に「街の中にいるピエロ」といった構図になっています。


今作のジョーカーはゴッサムシティという“社会”から生まれ出てきた存在です。


ヒース・レジャーのジョーカーが街や社会全体を破壊する存在だったのに対し、ホアキンジョーカーは社会によって破壊された存在なんですね。


だから、街=社会自体はドシンとそのまま存在しているポスターの方がより今作のテーマとして相応しいわけです。


制作者もそれを意識してか、空まで伸びる高い壁に挟まれて窮屈な構図をわざわざチョイスしているようです。

 

日本語版ポスター


今回は日本語版ポスターも本国版とほとんど変更しないで作成されました。

 

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ハリウッド側に「勝手に変えるなよ」と睨まれたのかどうかは不明ですが、英断だったと思います。


「本当の悪は笑顔の中にある」というキャッチコピーは「ん??大丈夫か??」とちょっと不安になりますが(それだったら「本当の悪は笑顔から生まれる」の方が良かったのでは?)。


わざわざ改変してまで変なポスターにするくらいなら、本国バージョンをそのまま使用するのも悪くないんじゃないですか?

 

まとめ


何はともあれ見た方がいい映画です。


それだけは約束します。


ホアキンがオスカーを受賞してもなんら不思議ではないですね。


可能な限り音響のいい映画館で浴びるように鑑賞するべき映画です。


いくつか愚痴めいたことは書きましたが、今年マストな映画であることは間違いなし。


今年も終盤ですが、まだいくつかの傑作に巡り会えたらいいなぁなんて思ったり。


それでは、また。

 

 

 

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銀魂《あれ?普通に良くなかった映画とポスター》

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映画の点数…8点
ポスターの点数…15点

 

評判に期待しすぎた


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は銀魂一作目です。


ジャンプマンガの実写化ということでなかなか地雷の雰囲気を感じていたのですが、まわりの評判やネットの評判を観る限り「いや、意外と悪くないよ」との声がチラホラ。


2作目まで公開されたことも考えると、なるほど成功作なのかも知れないなと思い。


せっかくなので観てみることにしたのですよ。


ちなみにマンガの方は40巻くらいまでは読んでます。


そのうちまとめて最後まで読もうと思ってます、くらいにはファンですね。


映画化された箇所のエピソードもうっすら覚えていたくらいは覚えてました。


というわけで、基本的に好意的に鑑賞したのですが。。。。


あれ。


普通に面白くないぞ。。。。

 

映画の内容


マンガ原作もそうなのですが、あらゆる意味でメタ視点が楽しい作品です。


主人公達は幕末から維新後の譲位志士や新撰組のパロディー。


黒船来航(=宇宙人の侵略)によって激変した日本が舞台になっています。


登場人物達は頻繁に第4の壁を破ってきて「原作を知らない人もいるんだからさぁ」とか「映画の内容が変わっちゃうから」なんて口にします。


基本的にはギャグマンガベースでありながら、シリアスなシーンも書き分けることが出来る希有なマンガ原作であり、映画もそれを目指した作りになっていました。


楽しみ方としては


●宇宙人が普通にいる世界観の表現
●ギャグシーンで笑えるかどうか
●シリアスシーンがうまく撮れているか
●マンガ原作を関係なしに、映画として成立しているか


がポイントだといえそうですが。。。。

 

基本的に大失敗


誤解されそうであれなんですけど、僕は別にこの映画を嫌いだとか怒っているとかではなくって。


「普通に観て、普通にダメだと思う」くらいのテンションです。


前述した「抑えるべきポイント」を順にあげていくと

 

宇宙人が普通にいる世界観の表現


これがまず良くなかったと思います。


映画冒頭から「完全に着ぐるみでーす」とか「ダンボールで作ってまーす」みたいな宇宙人描写なんですよね。


これは今作銀魂の福田監督の代表作である「勇者ヨシヒコ」シリーズの手法です。


おそらくこの手法ありきでの監督の抜擢だったのでしょう。


ですが、ドラマではまだ良かったこの手法もこの映画においてはうまくいっていません。


勇者ヨシヒコの場合は、ドラゴンクエストという「一歩間違えば命を落とす冒険活劇」というベースを活かした上での外し演出だから面白かったんですよね。


何より主演の山田孝之さんは、自分自身は大真面目に冒険しているというキャラだからこそのアンバランスさが楽しかった。


ですが銀魂の場合だと、そもそもギャグマンガがベースです。


ギャグマンガの実写化で、しかもビジュアルがチープだと学芸会しか感じなくて。


予算の問題はあれど、ここは「ビジュアルはやけにリアル」な演出じゃないとコメディにならないでしょう。


その予算がとれないのであれば、やはり実写化自体が無謀だったと思います。

 

ギャグシーンで笑えるかどうか


これが個人的には一番キツかったです。


まったく笑えませんでした。


理由は2つあって、一つはマンガをそのまま実写化しちゃってること。


銀魂というマンガの面白さは「多くのキャラがボケとツッコミが出来る」こと、「ボケもツッコミも以上にしつこくしつこく長文で繰り返す」ことです。


それが実写化にとても合っていなかったですね。


みんなボケたりツッコんだりしてるのでキャラクターが飲み込みづらいままに2時間たってしまいます。


登場時間はそれぞれ限られているのに無理矢理ボケやツッコミを入れるので、ただの頭のおかしい人達にしか見えないんですよ。


それともう一つは、役者さんの演出の問題です。


役者さんが悪いとはいいませんが、全然コメディとして面白くなかったです。


佐藤二朗さんなんかは、基本的にコメディが上手なので安心して見ていられるんですが、明らかに実力と不釣り合いな方が多数出演されていて。。。


その方達がコメディな演技をする度に「ああ、、、こっちが恥ずかしい」みたいな微妙な感情になってしまいました。


実力がないならないで、せめてやたらとマンガチックなセリフを変更するとか演出を変えるとか色々やり方はあったでしょうに。。。


特に橋本さんと菜々緒さんはちょっと。。。つらかったです。

 

シリアスシーンがうまく撮れているか


これもうまくいっていません。


そもそもテーマが散らかりすぎです。


解決するべき問題が多すぎるんですよ。


刀鍛冶兄弟のお話、刀に取り憑かれた男の話、革命家・堂本剛の話。


それぞれに解決する為の方法が違うのに、まとめて同じ舞台で解決しようとするので何がなんだか分からなくなります。


最終的には銀さんが“ちょっとだけいいこと風なこと”を言って相手をぶん殴って解決×3です。


あんなにキャラがたくさん出てきたのに全員役にもたちやしない。


新撰組とか今回は出さない方がよっぽど良かったと思いますけどね。


キャラや問題がゴチャゴチャしている分最後は暴力で解決するしかないって、そりゃいくら少年マンガとはいえどうかと思いますけどね。。。(連載の場合はいいんですよ。読む間に時間がたつから。2時間の映画の中で詰め込むから問題なんです)

 

マンガ原作を関係なしに、映画として成立しているか


そして最後にこの問題。


そもそも映画として成立しているか。


今まで読んでいただいたなら分かる通り、そう、映画として全然ダメだと思いました。


銀魂という作品がメタ視点込みの映画・マンガだというのは百も承知です。


映画という枠を飛び越えようとしたチャレンジはもちろん買います。


ただし、それは「2時間の映画として面白いかどうか」をクリアしていればという前提の話です。


今回はその課程をクリア出来ていないと思うんですね。


映画が面白くない。


だからその他の要素が気になってくるというか腹がたつというか。


どういう課程で制作されたのか不明ですが、企画の段階ですでに間違えていたんじゃないかなと思ってしまいます。

 

良かった点


一応、一応最後に触れておきます。


この映画を8点としましたが、唯一良かったなと思うのは岡田将生さんです。


一番「この映画の狂っている部分」と「狂った演技」のバランスが良かったと思います。


リーガルハイなんかもそうでしたが、岡田将生さんはクレイジーなハイテンションキャラをやらせると光りますね。

 

ポスターの感想


映画ポスターに関しては特に言うこともないというか。。。


一番ダメな邦画ポスターの代表みたいな感じですね。

 

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キャラ全部のせで、しかもそれぞれが特にいい表情もしてないしレイアウトもうまくない。


特に小栗旬さんをなぜあの表情で使ったのか本当に謎。


これで面白そうな映画に見えますかね。。。?


このポスターから感じるのは「原作マンガファンへのファンムービー」であることと「好きな俳優が出てればなんでもいい」というミーハーな方だけに向けた映画であるということですね。


そこまで考えると、ちょっとでも「面白いかも」と考えた僕が悪かった気がしてきましたよ。

 

まとめ


もうなんだかんだ言いましたが、結局は「制作陣がみせたいもの」と「銀魂の映画化を観たい人」と「僕」の姿勢が全然噛み合っていなかったということだと思います。


すませんでした、僕が悪かったです。


なのでもう「銀魂2」を観ることはないですが、今後とも皆さんがんばっていきましょう。


僕もがんばります(投げやり)。


それでは、また。

 

 

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愛しのアイリーン《観る人を不安にさせる映画とポスター》

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映画の点数…81点
ポスターの点数…80点

 

吉田恵輔監督作


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は愛しのアイリーンです。


ここ最近ようやく吉田恵輔監督の魅力に気付いた周回遅れの私ですが、愛しのアイリーンもとても楽しみにしていた作品です。


原作マンガの方は未読なのですが、以前監督されたヒメアノ〜ルのクオリティの高さなどを考えると原作未読でも特に問題はないかと思います。


というのも脚本→監督までこなされるのも関係があるのか、原作を2時間の映画にパッケージするのが非常にうまいので。


もちろん今作も2時間の映画としてバッチリな編集をされてましたよ。


これはあくまで個人の趣味の範囲ですが、近作である犬猿よりははるかに面白く、ヒメアノ〜ルには届かなかったかなという感じです。


ただしこれは好みの問題であって、映画としてのクオリティの高さは今作の《愛しのアイリーン》が最も映画として完成度が高いと思いました。


まぁ森田剛さんや窪田正孝さんのようなスター俳優が出演しているような映画ではないし、一般受けするタイプの映画とはとても言えませんが、色んな意味で多くの方に観てもらいたい魅力のある作品だと思います。

 

映画の内容


田舎暮らし、安定した職にもつけていない、彼女いない、実家暮らし、コミュ障、車は軽トラという42歳の主人公・岩男のお話です。


こういう設定が用意されたキャラクターは、普通ここから「夢を取り戻し走り出す」とか「運命の恋に落ちて人生をリスタートする」とか、逆に「世界に復讐するために暴走する」とかなっていくと思うんですよ。


ただし岩男はそういう映画の主人公とは違って、映画の始まりから終わりまで基本的に成長しないんですよね。


明日のことなんて考えていないし、人に優しくなんて出来ないし、目の前の性欲にかられて生きてはいるけどレイプしたりするような人間でもない。


魅力なんて何もないキャラクターです。


そんな彼が、やはり後先考えずにフィリピーナを300万程度で“購入”して結婚することでストーリーは動き出します(ストーリーは動くけど、岩男自体は変わらない)。

 

映画の良かった点


この映画、とにかく観ている間中ずっと不安な気持ちにさせられます。


「どういう感情で観たらいいのか分からない」から不安になるんですね。


ただし、「どういう感情で観たらいいのか分からない」けどいい映画と、悪い映画の二種類あると思っていて。


悪い映画の方は《踊る大捜査線》みたいな「感動させようとしているのだろうが、そこに至る演出がメチャクチャであるため気持ちがついていかない」ようなタイプです。


一方で今作のような映画は「主人公が歩く暗闇の中に同化してしまって、自分がどこに向かっているのか分からなくなる」ような不安からくる面白さがあります。


それって実際の人生とも同じですよね。


自分が今何をしているのかは分かっているつもりだけど、その結果がどうなるのかは結局のところ分からない不安感。


岩男ほどクズ人間の人はそうそういないとは思いますが、言葉に出来ない不安を噛みしめている人には無性に響いてくるような映画だと思います。

 

結局岩男って


話のオチは伏せますが、岩男という人間が結局なんだったのかは物語上では完全には理解できないままに終わります。


僕の感想でしかないですけど、岩男は「愛したい人間」だったんじゃないかなと思います。


「誰かに愛されたい」主人公はたくさん映画に出てきますけど、人でも物でも金でもいいから、とにかく無性に愛したいという欲望にかられた主人公が岩男だったのではないかと。


でも、それが出来ないもどかしさみたいなものも分かる気がします。


ストレートに愛を表現するのって、とても難しいことだと思うので。


そういうことが素直に出来る人は羨ましいなぁといつも思っています。

 


ポスターの感想


映画ポスターもなかなか興味深いです。

 

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マゼンタがキーカラーになったサイケデリックな背景の中に、花婿と花嫁の二人がいます。


ビジュアルだけでもカッコイイとは思うのですが、このポスターの中からも映画の設定がいくつか隠れているように感じます。


分かりやすいところから言えば、いくつもの鏡にうつしだされた自分たちの姿です。


結婚自体が多面的な意味のある結婚だったし、それぞれのキャラクターが考えていることも分かりにくくしてある映画です。


目の前で観ている画面が全てではないということの表現によく鏡は使われます。


また、結婚いている二人も一応抱き合ってはいますがとても幸せそうな表情には見えません。


お互いに見つめ合うでもなく、画面の真正面を向いています。


これも、お互いが実はそれぞれ自分のことしか考えていないような人間に見える効果があります。


もうこのビジュアルだけでも一通り成立していると思うので「地獄のバージンロード」とかキャッチコピーは余計だったんじゃないかなと思いました。


余計な文字情報なんかは極力なくした方がストレートに映画の魅力を感じることが出来たと思いますよ。

 

まとめ


自分の趣味の範囲の映画ではないんですけど、どうあれパンチのある映画だとは強く思いました。


観た人それぞれがきっと何かを「くらう」映画です。


もし未見の方がいましたらおすすめできます。


その時は、是非岩男と一緒に人生を不安に生きてください。


それでは、また。

 

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