映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

片腕マシンガール 《正気で観てはいけない映画とポスター》

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映画の点数…65点
ポスターの点数…80点

 

正気を取り戻さない


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は片腕マシンガールです。


映画ファンの間ではかなり高めな知名度を持つ作品だと思うのですが、何がそんなに評価されているんでしょうか。


僕はこの世には「制作者が正気を失ってしまっているからこそ評価されている作品」ってのがあると思っていて。


別にバカにしているわけではなくって、普通の人だったら「こりゃあ無しだな」というラインを躊躇せずに飛び越えていく人達っていると思うんですよ。


その代表例が「ジョジョの奇妙な冒険」だと思うし、マルセル・デュシャンなんかもそう。


今作の監督・井口監督もまさに正気を失いっぱなしで作った一作のように感じます。


「何も考えてない」ということではなく、「真剣に緻密に作られているが、そもそもの前提として住むべき世界観が違う」という感じです。

映画の感想


まず、脚本とか演出はひどいんですよ。


それはもうハッキリとひどい。


井口監督はAV作品もたくさん監督されてるのですが、作りは確かにAVに似ているとも言えて。


低予算だからとかそういうことよりも、撮り方自体がAV的というか。


いつ主人公達が全裸になるのかヒヤヒヤしましたがそんなことは(残念ながら)無く。


とにかくこの映画は【セーラー服】の【隻腕】【女子高生】が【マシンガン】を片手につけて【ヤクザ】【忍者】に弟の【復讐】をするという。


復讐方法は銃殺・串刺し・断首なんでもあり。


いかにグロく派手に殺害するかが大事。


このいかにも「男の妄想全開」要素だけを盛り込んだだけの映画で、それを邪魔するようであれば多少の脚本くらいどうでもいいわけです。

 

というよりも、この映画はアメリカ資本なのでアメリカ人が見てみたい日本的要素」をぶちこみまくったって事ですね。


例えば主人公はセーラー服を着ているわけですが、物語の序盤を除いて学校なんて全く行ってないわけですよ。


セーラー服でいる必然性は全く無い。パンツ見えるし。


でも映画においては必然なんですよね。


「だってセーラー服の子がマシンガン付ける方がいいに決まってるじゃん」という必然。


全体的にこんな映画です。

 

映画の不満点


先に不満点を書いておくと「あまりにも演技が下手な人達の映像って、こちらが思っている以上に観るのが苦痛」という点ですね。


映画やドラマを見ていて「この人演技が下手だなぁ」とか思うことはありますが、この映画の場合「全体的にみんな下手」なんですよ。


それをまともに見続けるのはけっこう大変でした。


予算のことはあるんでしょうけど、もうちょっとだけでも演技指導するか演技が出来る人を集められなかったかなと思います。


まぁあとは演出がおかしいとかカメラがおかしいとか色々あるんですけど、演技レベルほどは気になりませんでした。

 

映画の良かった点


この映画が評価されたのは「誰も観たことがなかったもの」を具現化できていたからだと思います。


それも、「誰もが頭の中ではイメージできる範囲」というバランスで実現しているから面白いのでしょう。


セーラー服と機関銃】や【一騎当千】みたいに、セーラー服の女の子がメチャクチャに暴れるというジャンルは昔からあって。


そのジャンルにおける究極系がこの片腕マシンガールなのでしょう。


僕自身がこの映画を「大好きだ!」と思うことはないのですが、少なくともずっと忘れることの出来ない一作であることは間違いなくって。


そういう映画って誰がどう言おうが「勝ち」だと思うんですよ。


思っていたよりもエロ要素は抑えめなのも良かったですね。


映画的に必要ない場面でおっぱいがポロンポロン出てくるようだと悪い意味でのB級映画感が加速したのだろうなと。


ちなみに映画中で一番演技が安定していたのは元AV女優の穂花さんだったような気がします。

 

ポスターの感想


ポスターがこれまたブレていなくって微笑ましいですね。


外連味だけで構成されたと言っても過言ではないというか。

 

なんていうんですかね、ビジュアルの全てが大サビみたいな感じですね。

 

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これだけ観てもどんな映画かなんて分からないけど、「きっと自分の予期しない何かが起こる」というのは分かります。


あえて50年くらい前のポスターデザインにしているのですが、それだけで十分にギャグというか。


そんなわけねーだろ感はものすごい感じますね。


この映画全体に言えることですが、ギャグなのか真剣なのかの境目をずっとユラユラしている魅力があって。


このポスターからはその揺らぎを感じて面白いです。

 

江口寿史


さらに、江口寿史さんのイラストによるバージョンもあります。

 

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このポスターが制作されたことからも分かるのですが、やはり制作側は「セーラー服と銃器というフェチズム」というものを理解したうえでこの映画に取り組んでいるようです。


江口寿史さんという存在自体が一種のフェチズムの代表みたいなものですからね。


これらをまとめて「萌え」なんて言うのは勿体なくて、もっとエッジのある、なんならモロに性的な匂いを感じさせることに目的があって。


もちろんそういう思想に嫌悪感を抱く方もいるのは分かるんですけど、その嫌悪感も含めての一つのアートなんだと思います。

 

まとめ


一言で言うなら「観といた方がいいっすよ」という映画です。


好きか嫌いか大きく分かれるし、なんなら嫌いな人の方が多いと思う。


というか、この映画を好きだという人が日本中に溢れていたらもう日本は終わりだよ。


ただ、好きでも嫌いでも「感情を揺さぶってくる」映画ではあると思っています。


誰かこういう究極系の映画監督がいないと、分野の拡大ってしないわけでさ。


自分の気付かないところで、こうやって誰かが表現の可能性を広げていってくれてるんだと思います。


それを見届けるだけでも映画ファンとしてはとても幸せなことだと思いますよ。

 

それでは、また。

 

 

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イントゥ・ザ・ストーム 《映画もポスターも捨てがたい一作》

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映画の点数…73点
ポスターの点数…75点

 

あれ?面白い。。


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《イントゥ・ザ・ストーム 》2014 です。


元々「なんか真面目に映画観るつもりもないから、気楽に楽しめるやつがいいな」という動機でチョイスした一作です。


どうせ「竜巻がドーンときて、無謀にも突っ込んでいく奴がいたり、逃げてるうちにイチャついたり、子どもが絶叫するのをパパがダイブで助けたりする映画でしょ」と思っていたわけです。


まぁ確かに竜巻に突っ込んでいったりイチャついたりする場面はあります。


そんな全く期待していなかった一作なのですが。。

 

あれ…面白いぞ。

 

というのが正直な感想です。


ナメてましたすみません。

 

映画の内容


ストーリーは非常に単純です。


アメリカの片田舎に突如として大型の竜巻が発生します。


竜巻を撮影したいストームチェイサーや、生徒や息子を無事に竜巻から守りたい高校の副校長、好きな子とレポート提出の撮影のために不幸にも竜巻の発生現場に行ってしまう高校生など、様々な視点から描かれる群像劇です。


それらの人物が物語の後半で交差しあう時に浮かび上がってくるものとはーーー
みたいな感じです。


こんなこと言っては失礼ですが、意外と人間描写がちゃんと描かれているんですよね。
親子の葛藤を抱えていたり、好きな子に話しかけられない童貞くささだったり、竜巻を撮影することにカタルシスを感じる人とそうでない人など。


竜巻が本来の魅力(もちろん映画としてですよ)を発揮して大暴れするのも楽しいですし、逆に竜巻が人間関係を変化させるための舞台装置として活躍したり。


今回の竜巻さんはなかなかに気がきいてるな、良い奴だなという印象です(けっこう死者は出たけど)

 

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映画の良かった点


人物達の葛藤なんかは、けっこうフォーマット通りではあるんですよ。


他の映画で観たようなキャラクターのコピペみたいな。


それでも一定以上のレベルで面白いなと感じたのは、それらのキャラクターの描き方がしっかりしていたからでしょう。


登場人物達は高校の卒業式にあたっての「将来の自分へ」のムービーを撮影しているのですが、その設定のおかげで

誰がどのように考え、変化し、成長するのかがスッキリ分かりやすくなっています。


そのムービーがあるおかげで、よくあるパニック映画の演出で「そこに危険が迫っているのにダラダラと過去の話を掘り下げたり、泣いたり叫んだり」といった描写がグッと抑えられています。


最初の方でスマートにキャラクターの描き分けが出来ているので、あとは竜巻との対決に集中出来るようになっています。


竜巻との対決もスッキリしていて、あくまでも突発的な自然災害であるということからはみ出したりはしません。


悪い映画のパターンだと、まるで災害自身に人格があるような扱いをすることもあるのですが今回の竜巻はそんなことないです。


「あ、やべえ竜巻だ逃げろ!」か「やっほーい!竜巻だ追いかけろ!」の二択しかありません。


そういった無駄な要素を抜いたおかげでわずか90分程度のちょうどいいサイズの映画に仕上がっています。


非常に最適な時間配分だったなぁと感心しましたよ。

 

悪かった点


ほとんど悪い点はないと言ってもいいのですが、あえて言えば二点。


一つは、もう少しだけ竜巻の大暴れ感を足して欲しかった。


映像的な迫力は十分にあったのですが、もう少しだけ「これはもう、とんでもないことになった…」ということが実感できる破壊描写が観たかったですね。


逆に、映画のラストがちょっと余計だったかなと思います。


せっかく今までスマートな映画だったのに「かけがえのないものを失ったけど、家族の大切さが分かった」とか「毎日毎日を大事に生きるよ」とかわざわざ入れなくて良かったと思うんですよね。


「そんなもん映画を観てたら分かったわい!」ということなので。

 

ポスターの感想


映画も佳作ならば、ポスターもまた佳作といっていい良いポスターでした。

 

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スター俳優が登場しない映画であることを逆手にとって、竜巻を真ん中にドーンと持ってきたデザイン。

 

とにかく「竜巻が主役ですよ」という開き直りを感じます。

 

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例えばですけど、同じパニック・災害映画でもタイタニックのパッケージにディカプリオを出さないとかアルマゲドンのパッケージにブルース・ウィルスを出さないとかは考えられないですからね。


ここまで思い切りのいいデザインだとやはり惹かれるものがあります。


それと、ポスターの全体的な色味もなかなかいいですね。


薄暗い青っぽい空が不穏さを演出しています。


竜巻が起こる悪天候なのだから当たり前といえば当たり前なのですが、これは物語の最終盤で「竜巻が終わる=空が晴れ渡る」時とのギャップにも役立っています。

 


まとめ


「これはすごい傑作だ!」なんて言いませんが、それでも「いや、ナメてたらダメだぞ」というくらいには面白い作品でした。


こういうサイズ感の映画での良作って意外と存在しないので、こういう作品がもっと増えてもくれたら嬉しいなあと思う次第。


何よりも、映画は観てみないと面白いかどうかなんて分からないものですね。


それでは、また。


イントゥ・ザ・ストーム [Blu-ray]

 

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スパイダーマン(2002) 《心意気、それは十分に買った》

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映画の点数…68点
ポスターの点数…80点

 

哀しいニュース


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はスパイダーマン(2002)》です。


サム・ライミ監督、トビー・マグワイアによる記念すべき第一作。


これが初の作品化ではないとはいえ、この時期に制作されたX-MENと共に「ヒーロー映画って真剣に金かけて作れば、ちゃんと面白くなるぞ」というのを確立させた一本であるのは間違いないでしょうね。


この一本が制作されていなかったら、今のアベンジャーズはきっと違う形、もしくは存在していなかったでしょう。


そんななかで哀しいニュースが入ってきました。

 

www.cinematoday.jp

 

スパイダーマンMCUから離脱するとの報道です。


シヴィル・ウォーからようやくMCUに参戦したスパイダーマン


今ではアイアンマンの意志を継ぐもののような扱いになっており、これからのMCUの核の一人になったはずなのですが。。。


雑に言うと「金で揉めて、出て行った」というあたりがなんともハリウッド的というかディズニー的というか。。


個人的にはトム・ホランドスパイダーマンMCUシリーズ全体でも1、2番目に好きなキャラクターだったので非常に残念、というか諦めきれてない。


どうにかこうにか話し合いを続けてもらってトムホのスパイダーマンは続投させてほしいですね。
(あとMJが可愛すぎるのでもう一度観たいというのもある)


そんなわけで、なんとなくスパイダーマンモードに入った僕は改めてサム・ライミ版のスパイダーマンを観ることにしたのでした。

 

ポスターの感想


まず映画ポスターから振り返ってみます。


印象的なビジュアルなので記憶にある方も多いでしょう。


このビジュアルですね。

 

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2002年当時としても現在としてもCGのクオリティは高く、古さをそこまで感じないクオリティは感じます。


ただタイトルなどのフォントに関しては少し時代の流れを感じますね。


こういうグラデーションって最近はほとんど見かけない気がします。


さて、このポスターを観て今一番思うことは何かというと。。。

 

暗い!


暗いですねー、スパイダーマン


ちなみに最新のスパイダーマンのポスターはこちら。

 

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逆にお前は明るすぎる。


緊張感を持て。


さて、こんな暗いポスター。


当然時代背景が影響しているのは間違いありません。


当時の世界において、そしてアメリカにおいて「変なコスプレを着たヒーロー」というものにリアリティが感じられなかったのは間違いないでしょう。


別に同時多発テロなどに絡めた政治的な話を持ち出したいわけではなく、単純に「そういう映画が当時あまり無かったから」です。


こういうアメコミ映画を大の大人に真剣に観てもらうためには、制作側が今よりもはるかに気をつかう必要があったはずです。


そこでこのポスターでは、大人な雰囲気「夕暮れの摩天楼」というものをメインビジュアルに選びました。


「大丈夫!大人が観ても面白いよ!」と観客にお知らせをしているようです。


結果的には当然ながら大成功だったのでしょう。


子どもの観客だけでは到底到達しない大大大ヒットを飛ばしました


特に公開初週の観客の入りは当時の最高記録だったらしく、多くの観客は公開前のCMで「ビル群をビュンビュン飛び回る映像」に度肝を抜かれたのでしょうが、その頭の片隅の潜在意識にこのポスターがあったのは間違いないと思います。

 

映画の感想


2002年の映画とはいえ……ちょっとノイズの多かった映画のようにも思いました。


「リアリティのある映画にしたい」ということと「ヒーローやヴィランの出てくるファンタジー要素」のバランスがいまいち取れていません。


例えばスパイダーマンやグリーンゴブリンは用が済んだらどこかに帰っていっちゃうのですが、何故全く監視カメラなどにおさえられていないのでしょうか。


変にリアリティを意識させられると、そういったディティールのところが気になってきちゃうというか。


グリーンゴブリンのノーマンさんが、大変優秀にも関わらずクビになる理由も全く分からなかったり。


なので彼が復讐のためにグリーンゴブリンになるのもイマイチ納得ができなくて。


「いやぁ、他にやりようがあったろう。。。」と思ってしまうので、バトルでもあまり共感できなかったり。。

 

MJという問題


これは当時から言われていたことのようですが、ヒロインであるMJが残念ながら。。。


まったく魅力的じゃありません!


可愛いとかブスとかは別として、キャラクター自身に魅力がないのは致命的でした。。。


男をなんとなくコロコロ変えるという謎のモテキャラであること意外には何ひとつ特徴が無く、事件に巻き込まれ始めるとキャーキャー騒ぐだけという。。


これは誰も悪くないのですが、このキャーキャー声がけっこううるさくって。


「もう分かったから少し黙っていてくれないか?」と思うこともしばしば。。。

 

映画の良かった点


いやいや、色々ツッコミどころはあるけれど、やはりこの映画は偉大であるのは間違いなくって。


この映画、印象として「なんだか暗いヒーローもの」といったイメージだったんですけど、今観るとそれなりにちゃんとヒーロー賛歌でもあって。


ピーターが初めて能力に自覚したあたりは「ひゃっほー」感をちゃんと表現できていると思うんですよね。


ヒーロー映画で絶対に外してはいけない要素は「ヒーロー最高!!!」という瞬間を描くかどうかだと思っていて。


だとしたら、短い時間だったかも知れないけどそこはちゃんと描けていたなと思いました。

 

まとめ


古さを感じない、とはさすがに言えない年数がたってしまいましたが。


それでも感じるのは制作陣、特にサム・ライミ「俺!スパイダーマンの映画作ってるぜーーー!!!!」という愛情です。


こういう映画において実はそれって欠かせないピースだったりすると思うんです。


「俺はスパイダーマンが好きだ!だからお前もきっと好きになるはずだ!」という厚かましさと図々しさ。


そういう熱量がうまいこと広がった一作だったのではないかなと思いました。


さて、今度は観客が熱いメッセージを伝える番です。

 

トムホ・スパイダーマンよ!
どうにか復活してくれ!!!

 

それでは、また。


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羊たちの沈黙 《映画史に残る作品、そしてポスター》

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映画の点数…80点
ポスターの点数…95点

 

ポスターのインパク


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は羊たちの沈黙です。


ジョナサン・デミ監督による1991年の作品。


このブログでは映画の感想と一緒にポスターワークについても記述しているのですが、そのなかでも絶対に取り上げないといけない一作がこの羊たちの沈黙です。


もし映画を観たことがないとしても、ポスターのこのビジュアルを知らない方はほとんどいないのではないでしょうか?


アカデミー賞において主要5部門を独占したこの映画が、映画の内容において突出しているのは言うまでもありません。


ただ、多くの観客を映画館に向かわせたであろうこの強烈なビジュアルのポスターもまた同様に評価されてもいいのになと思っています。


今回はそのポスターワークについてお話します。

 

ちなみにですけど、子どもの頃僕が住んでいた町のユニクロにこの《羊たちの沈黙》のポスターが飾ってあったんですよ。
今みたいにスタイリッシュになる前のユニクロですね。
今では考えられないですよねぇ。
でも子どもながらに「お洒落なポスターだなぁ」と思っていた記憶があります。

 

映画のストーリー


FBIアカデミーのクラリスジョディ・フォスター)は、猟奇殺人事件の解決に乗り出すが、その過程で元精神科医の殺人犯ハンニバル・レクターアンソニー・ホプキンス)の協力を求めに行く。


レクターは捜査への協力と引き換えに、クラリスの過去のトラウマを聞かせることを条件に出すー


みたいな感じです。


映画を観たことなくとも「異常なカリスマを持った犯人が出てくる話」くらいには知っているのではないでしょうか。


公開から30年近くたとうとしている今でもレクター博士はオマージュされたりパロディにされたりと大忙しなキャラクターです。


それだけアンソニー・ホプキンスの演技がズバ抜けていたということなんでしょうね。


まさか彼が後にアスガルドの王にまで上り詰めるとはこのときは思いもしなかったですマイティ・ソーより)

ポスターの感想


何をおいてもまず目に入るのは口元に餓がいるというこのレイアウトです。


口と餓という、可能な限りセットでお見かけしたくない組み合わせですがそれによって鮮烈なインパクトを与えています。


もちろんこれが単に悪趣味なB級映画的な発想からきているとしたら失敗だったでしょう。


しかしこの映画では《被害者の口の中に餓が詰め込まれていた》とか《口を塞いでいる》とか《沈黙する》ということが非常に大きな意味を持っています。


ただインパクトがあるだけではなくて、ちゃんと映画的な意味があって採用されているわけですね。


また、このポスターにおいては非常に重要なことなのですが、この映画公開時のジョディ・フォスターがとにかく天使みたいに綺麗なんですよねぇ。


「こんなに綺麗な人がこんな大変な目に!!」とか「こんなに綺麗な人の口元に餓が!!」みたいなギャップが良いというのも大きいです。

 

ダリの作品


口元にある蛾がとても不気味な模様をしています。


有名な話ですが、これは芸術家ダリの作品で女体を組み合わせてドクロの形を作っています。

 

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この不穏なドクロの形をしたじ女性は、劇中で殺害された被害者達を思わせます。


どこまでが意図的かは分かりませんが、ダリの作品というのも興味深いですね。


殺人を楽しんでいるかのような犯人《バッファロー・ビル》と、世の中に対して常に皮肉な視点を持っていたダリは、善と悪という極端な姿勢の違いがあるもののどこかで共通したものがあるのかも知れません。

 

タイトル


ここでちょっと問題になるのが、タイトルの印象です。


英語だとかなり縦に長いフォントを使ってスタイリッシュな印象を感じます。

 

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キャストの名前なども共通したフォントを使用しており、読みやすさというよりもポスターの美しさの方を重視しているようです。


ところが日本のポスターになると少し条件が変わります。


太めの明朝体で、少しかすれたような処理がされたタイトルです。

 

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英語版と文字の色まで同じであるにも関わらず、全く違った印象を感じます。


とはいえ《羊たちの沈黙》をブロック体で表現するのもなかなか難しいとは思います。

 


試しに簡単にやってみましたが、やはりちょっと固すぎる気がしますね。

 

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羊たちの沈黙という邦題自体はとてもいい成功例だと思っているのですが、それをタイトルにする際に少し苦労のあとが見えるなあという感想です。

 

映画の感想


10年以上前に初見で観た際には相当な衝撃をくらったのですが、それはやはりアンソニー・ホプキンスという役者の素晴らしさが8割くらいあったような気がします。


改めて見なおしてみると、けっこうレクター博士の計画もいい加減なもんだなと思うこともチラホラ(笑)。


見張りの警官の数とか配置とか、エレベーターの構造とか救急隊員の行動とか、かなり相手まかせな運のある脱出劇だなと思ったり。


まぁそれすらも楽しんでいる犯人ということですかね。

 

まとめ


映画自体は今観ると少し粗が見える作品だとは思います。


これも結局、今観ると、の話ですが。


映画自体はアンソニー・ホプキンスの超絶演技で持って行った部分は大きいでしょうし、ポスターワークもインパクト重視で大成功していると思います。


推理ものでありながらこれほど長く愛される作品として定着しているのは、もはや映画を越えてキャラクターやポスターがアイコン化してしまうほどのエネルギーに満ちた作品だからでしょう。


作品も一級、ポスターも一級という非常に幸運な一作だと思います。


それでは、また。


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300 《帝国の進撃》 映画もポスターも《地方自治体の牛歩》

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映画の点数…35点

ポスターの点数…75点

 

傑作の続編

 

こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は、300《スリーハンドレッド 帝国の進撃》です。


ザック・スナイダーの代表作である《300》の続編。


好き嫌いの分かれる作品ではあるものの、その後のアクション映画界の表現手法に大きすぎる影響を与えた《300》。


僕自身も初めて映画館で観た時には「なんじゃこりゃ」と衝撃を受けたものです。


相当なインパクトのあった同作、皮肉にもその後ありとあらゆる作品で真似されパクられ隅々まで解体されつくした感がありました。


結果的には今《300》的な手法は「最も古くさいアクション表現」になったわけですね。


それでは続編にあたる《帝国の進撃》はいかにして前作のインパクトを越えてくるのか。


何かしら新しい表現方法があるのか。


注目ポイントはそこに集約されていきます。

 

ダメでした(^o^)/


はい、ダメでした。


これはなかなかにダメな続編でしたね。。。


ターミネーター3くらいダメだったんじゃないかと思うくらいダメ続編。


何て言うんですかね、見事なくらいに前作の良かった点を無くし、不必要な点を引き延ばした感じです。


観ながらずーっと「ああ!そっちじゃない!そっちじゃないよ!!」とハラハラしながら観ていました。


そういう意味ではとても緊張感のある作品でしたね。


はい全然褒めていませんよ。

 

良かった点を台無しに


前作《300》の魅力って「300人vs1000000人」というバカげた戦争に果敢に挑んでいく「愛すべきマッチョISMのスパルタ人」という点にあったと思うんですよ。


設定もバカだしキャラクターもバカ。


でもバカとバカがスパークした瞬間に映画としてのカタルシスが大爆発するみたいな感じ。


それを過剰に過剰に映像的な迫力で押し切る点が笑っちゃうくらい見事だったんですよね。


ところが今作ですよ。


まず、「何人vs何人の戦争なのかサッパリ良く分からない」んですよ。


多勢に無勢だというのは見たら分かりますよ、そりゃ。


でも「300人vs1000000人」みたいなバカバカしさの提示は絶対に必要だったと思うんです。


ていうかまずタイトルを変えようよ。


主人公側がどのくらい強くて、敵側がどのくらい弱いのか全然よく分からないまま話が進むんですよね。


強さが分からないと言えば、前作の《300》ではオープニングが始まってすぐに「スパルタ人ってこんなに野蛮な人達なんですよ」ってのをあらかじめ提示していたんですよ。


今回は何故かそれがないので、特に思い入れのない人達が無謀な戦争にまんまと突っ込んでいくだけなんですよね。


「はぁ?そりゃ貴方たち死んじゃいますよ」としか思えないですよね。。。

 

不必要な点を引き延ばした


先ほど言ったように、前作《300》では序盤で「スパルタ人ってこんなに勇敢でたくましい!でも現代ではありえない常識で生きている人達」というのをちゃんと見せてくれます。


なので映画内では女性が飾り物のような扱いを受けていても「まぁそういう時代だしね」くらいで済むというか。


ところが今作では最近のポリコレを意識してか「ところどころで女性が活躍する」という要素を入れてるんですよね。


ごめんなさい、この映画にはそういう要素はいらないです。。。


エヴァ・グリーンが演じた女隊長はとてもいいんですよ。


キャラクターとして間違いなくカッコイイ。


でも、最終的には結局男に力負けしちゃってるし、そんな設定でいいんだったら出さない方が良かった気がしちゃって。


「色々頑張ってはみたけど、最後には男に力で負ける」ってそんなの最悪じゃないですか。


あと名前も出したくないけど王妃様みたいな人が急にしゃしゃり出てきて先陣切って大騒ぎとか。。。。


色々と残念な結果になってましたよ。

 

僕は女性差別男性差別は大嫌いですが、あくまでも史実をもとにした映画でこういう展開が相応しいとは思わなかったですねぇ。。

 

 

ポスターの感想


残念な映画には残念なポスターがつきものということで。。。


といいつつも、こちらのポスターはなかなか出来がよろしいです。

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前作のジェラルト・バトラーがドーーーンと載っているポスターは、とにかく男らしさ、というかオスらしさ全開の肉肉ポスターでした。

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これはカッコ良くて映画のテイストにも合っています。

 

良い感じでバカバカしさもあって好ましいです。


ところが今回のポスターは一ひねりしてきました。


主人公テミストクレスさんが、一人うつむいてたたずんでいます。


光すら当たっていないので全体的に暗い印象で、前作のレオニダス王とは大違いですね。


映画を観ると分かるのですが、今作の主人公テミストクレスさんは戦争にそこまで積極的な姿勢ではありません。


むしろ彼なりに悩みながら戦うタイプの将軍です。


その彼の心情をうまく表現出来ていると思います。


しかし、彼の後方にはうねる波が押し寄せています。


波はまるで血に染まったように赤くなっており、激戦がまさに目の前に迫っていることを予感させます。


この映画は海戦が舞台なので、海の要素を入れるのも必然と言えます。


前作ほどの迫力は無くとも、「キャラクターの心情」「舞台の説明」「激戦の予感」をうまく取り入れたよく出来たポスターと言えそうです。


まぁ、実際に仕上がった映画はそこが不満なわけなのですが。。

まとめ


映画そのものはかなり残念だったと思ってます。


そもそも続編自体が不要だったと。


下手に続編を作ると、結果として傑作だった前作の値段すらも下げることになるのですから。


それはそうと、映画の内容と反比例でポスターワークはなかなか良かったというのも興味深いです。


おそらくはこのポスターで表現されているような内容を映画でやりたかったのでしょう。


だとしたらもっと面白くなった可能性もありますね。。。


それでは、また。

 

 

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プライベート・ライアン 《映画はクラシック・ポスターは気の抜けた炭酸》

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映画の点数…92点
ポスターの点数…30点

 

戦争映画クラシック


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はプライベート・ライアンです。


終戦の日の前後にはついつい戦争にまつわる映画を観ることが多いのですが、今年はプライベート・ライアンを観ました。


あらかじめ断っておくと、僕は別にアメリカの正義の戦争イエーイ!!」みたいなノリでこの作品を好きなわけではありません。


この作品に対し「アメリカの戦争賛歌だ!」と怒る人がいるのも分かるし、それを否定するつもりは別にありません。


右と左で見え方が違ってくる映画だとは思うし、そのような視点から映画を楽しむのは人それぞれです。


僕がこの映画を良い映画であると思うのは「戦争で死ぬのは嫌だな」と実感するからです。


有名な話ですが、この映画の冒頭のノルマンディー上陸作戦のシーンは映画史に大きな影響を与えました。


もはやプライベートライアン以前と以後」で戦争映画の歴史そのものが変わったと言えます。


1998年というまだ20年しかたっていない映画ですが、すでに戦争映画としてはクラシックとも言える影響力を持った一作です。


あまりにもリアリティーのある表現を観て、かつてノルマンディーで戦った兵士の方でさえ驚いたというエピソードも残っています。


それくらい「ああ、人が目の前でバタバタと死んでいく」と実感するほどの映像的説得力がありました。


だから僕はこの映画を観ます。


右だろうと左だろうと、戦争という形で命を落とす事態になるのは防ぐべきだと思うから。


少なくとも僕はこの映画を「反戦映画」でなくとも「戦争には行きたくないよな、やっぱり映画」として鑑賞しています。

 

映画のあらすじ


有名な映画なのであらすじは少しだけ。


冒頭の《史上最大の作戦》ノルマンディー上陸作戦によって敵地に乗り込んだミラー(トム・ハンクス)は、兄弟すべて失ったというライアン二等兵マット・デイモン)をアメリカ本国に移送するため、部隊を率いてライアンを探しに行くことになる。


たった一人の兵隊を救出するために8人もの兵士が行動することに反発するメンバーもいるなか、果たしてライアンを無事に救うことは出来るのかーーー


みたいな感じです。


第二次大戦という人類史上最も大きな戦争にあって、極めてミニマムな話を映画化してあるので3時間近い映画ながら非常にスッキリしています。

 

映画の感想


まず何をおいても冒頭のノルマンディー上陸作戦こそがこの映画のハイライトでしょう。


イヤな見方をすると、とにかくスピルバーグうまいなぁ!!!」と感心するばかりで。


早撮りで有名なスピルバーグですが、このシーンは神がかっていてどうしてここまでの映像が撮れたのか分からないレベルなんですよね。


船の中にいるシーンをじっくりと見せたあとに、その船が解放された瞬間からドイツ軍の銃撃によりバタバタと殺戮されていく兵隊達。


視点が徐々に広がって、今まさに「地獄にやってきたのだ」と思わせる凄惨きわめるビーチでの戦闘。


一人一人の行動はスッキリとして見やすいにも関わらず、現場がカオスになっていることは十分に伝わる描写の連続。


冒頭のこのシーンだけで「人は戦争によって一瞬で死ぬ」ことを強烈に印象づけるため、その後の「ライアン救出作戦」においても「どんなに崇高なミッションだとしても、それでも人はあっけなく死ぬ」という緊張感がすぐそばで伝わってくるんですよね。


中盤以降、戦闘シーンが大幅に減るにも関わらず退屈しないのは「死ぬときは死ぬ」ということが常に頭にあるからでしょう。


冒頭が一番映画として面白いのは間違いないと思いますが、それでも後半までこの面白さだけで引っ張っていけているのが素晴らしいです。

 

ポスターの感想


映画はとても素晴らしいです。大好きです。


ところがポスターが何故かイケてないのがこのプライベートライアンなんですよね。。。

 


草原地帯に一人の兵士が立っている。シルエットになっていてどのような人物かは分からない。


これはもちろん、マット・デイモン演じるライアンがどのような人物なのか分からないというのを表現しているのですが、これがなんとも見にくい。。。


そこにトム・ハンクスとかの顔がかぶっているので、パッと見てシルエットに目がいかないんですよね。

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だったらもう少しシルエットを下げるとか出来たと思うんですが。。。


そしてトム・ハンクス達の表情がなんとも中途半端です。


強い意思も感じないし、絶望も感じない。


ただ幽霊みたいにボンヤリと背景にいるだけで、この映画の良さを伝えてくれているとはとても言えません。


勇ましい顔はこの映画には合っていないのでしょうが、それならばせめて疲れ切った顔や、何かを探しているような首の角度とかやれることはあったとは思うんですよね。。。


傑作だけにもったいないです。。

 

キャッチコピー

しかし、このポスターにもいいところはありました。

《The Mission is a man》と一言添えてあるキャッチ。

 

「ミッションは、一人の男」=「たった一人の兵隊を救うというのがミッションだ」というミクロな視点の映画であるということがキャッチコピーからも伝わってきます。

 

日本語で訳すのが難しいほど切れ味の鋭いキャッチコピーはうまいなと感心しました。

 

まとめ


映画としてはやはりこれ以上の戦争映画はそうないと言っていいレベルです。


観る度に新しい発見があり、今後も定期的に鑑賞することでしょう。


だからこそ惜しむらくはポスターの出来です。


これだけの映画にも関わらず、なんだか気の抜けたポスター、DVDにパッケージに萎えて映画を観ていない人がいるのではないかと疑ってしまうほど。


スピルバーグ作品はちょくちょく気の抜けたポスターが目立つので、そこら辺までまわりがカバーしてくれたら今以上のレジェンドに。。。というのは考えすぎですかね。


それでは、また。


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パラノーマル・アクティビティ 《出来はともかく、結果は大成功》

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映画の点数…70点

ポスターの点数…50点

 

夏だ、ホラーだ、B級映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はパラノーマル・アクティビティです。


もう10年以上前の映画になるんですねぇ。


僕はもともとホラー映画は苦手なのであまり詳しくありません。


このパラノーマル・アクティビティはどうやら「ホラー映画を普段から観る人」ほど酷評している印象でして。


僕のようなホラー苦手な人間からすると「いや、十分に怖かったけどね」という感じなのです。


初心者向けのホラー映画というのは間違いないのでしょうが、そういう映画も当然必要なのではないでしょうか。


良くも悪くも話題になったし有名な作品でもあるので、ホラー映画の入口としては最適な映画かも知れません。


僕は入口に入ってすぐにまた出ることにしましたけど。

やっぱホラーは毎回苦手です。


とはいえやっぱり夏と言えば、ホラーとB級映画の季節ですよね(断定)。


こんな暑い夜には適度にお寒い映画を観るのが一番でございます。

 

映画のあらすじ


今更あらすじを言うまでもないくらい有名な作品ですが一応。


ケイティとミカ(男性の名前です)は恋人同士で同棲中。


ケイティさんは子どもの頃から【この世のモノではないもの】にまとわりつかれており、その正体が何なのか探るべくミカはハンディカムでの撮影を開始。


しかしそこには予想を超えた事態が待ち受けておりーーー
みたいな感じです。


特別なアイデアがある等は別になくって、モキュメンタリー形式でホラーを撮ったら予算に対して思わぬ傑作が撮れたみたいな感じですかね。

 

低予算映画、からの世紀の大ヒット


この映画、予算が150万円程度で作られたと言われています。


撮影場所は監督の自宅で、キャストもメインが2人、他にも3人程度しか出ない上にみんな無名。


こんな言い方は失礼ですが、ヒロインのケイティさんも巨乳は巨乳なんだけど体型が少しだらしない感じというか。


男性諸君のハートをしっかりと掴みつつも、良い意味で素人感を出すのには成功しているなぁといった絶妙な配役。


モキュメンタリー形式の映画、つまり「たまたま撮影していた映像が世の中に流出しちゃった」系のホラーであるので、不出来な点も観客側がある程度頭の中でカバー出来るというのが映画強みなんですね。


そんなこんなでこの映画、誰しもが予想しない規模で大ヒットしまして。


最終的には2000億円くらいの売り上げを叩きだしたみたいですね。


ディス・イズ・ハリウッド!

 

映画の良かった点


前述の通り、個人的にはしっかり怖かったです。


ホラー映画なのですから、怖かったならそりゃあ合格だと言ってもいいでしょう。


ご飯屋さんに言った、おいしかった、合格!!


みたいな感じですよ。


平場のシーンとホラーシーンの緩急もしっかりついていたと思いますし、後半に行くにつれ事態が加速していくのは良かったと思います。


ケイティさんの恋人のミカさんがウザくてバカすぎるという意見も目にしましたが、僕はアリな範囲のウザさとバカだったとは思ってますけどね。


むしろ彼がウザいからこそストーリーが進むわけですからね。

 

映画の不満点


とはいえ映画として極めて良く出来ているというわけでは決してなくて。


先ほども言ったように多少の不出来さも含めての映画の魅力でもあるのですが、それはそうだとしてもやっぱりおかしな点も多いです。


先ほどミカさんがバカだとは言いましたが、登場人物達がバカなのはまだ許せるんですよ。


でも、明らかに映画の都合上で行動しているような箇所が丸わかりで。


「今まさに悪魔に襲われてる!!」みたいなシーンだとしてもしっかりカメラは持ち歩いていたり、やたらと撮影箇所が的確だったり。


悪魔側も「お前、カメラの位置知ってるだろ」みたいな行動をわざわざとってくれるんですよね。


そんなことされちゃうと逆に観ている側は冷めちゃうというか。


こちらとしても「これが作られたものだと言うのは知っている、でもそれをお前がバラしちゃったらこっちは騙された気持ちになれないだろう」と思っちゃうわけです。


騙すんならちゃんと騙すってことですね。

 

ポスターの感想


映画ポスターは、本国バージョンはそこそこうまくいっていると思います。

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たまたま撮ったものを動画サイトにアップした、みたいな雰囲気をギリギリ保っています。


こういうタイプライターみたいなフォントや、ドライなくらいにザックリと入れたタイトルが良い雰囲気を出しています。

 

ただし日本語版ポスターはその真逆をいっています。

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明らかに「作られたポスター感」を出していますね。


血糊のような文字がタイトルにドーーンときているので「たまたま撮られた感じ」は全くと言っていいほど無くなりました。


売り出し方としてはドキュメンタリー性やサスペンスの要素は完全に無視してきました。


ホラー映画としての表情のみで売り出そうというわけですね。


それが正しかったどうかは分かりませんが、観客のハートを掴むのはかなり早かったのだなとは思います。


それはそれでやっぱり成功と言えるのでしょうね。

 

まとめ


映画もポスターも、意外なまでに「ちゃんとやってる」なという印象です。


そのうえでどこまでを映画のクオリティとして求めるかは人それぞれだとは思いますが、個人的にはやっぱり「なんだかんだ言っても大成功したんだから勝ちだよな」と思ってます。


たまにはこういうハリウッドドリームがあってもいいじゃないですか。


SNS時代の今となっては、それがうまくいくもうまくいかないもコントロールしずらい部分はあると思いますが。


それでは、また。

 


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Song of the sea 《美麗な映画に対してポスターは控えめ…》

映画の点数…83点
ポスターの点数…45点

 

アイルランド発のアニメーション


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はアイルランド発のアニメーション作品《song of the sea 海のうた》です。


直訳するほどの英語でもないだろうと思いますがそれはそれでいいとして。


アイルランドの映画が何故話題になったかで言えばやはりアカデミー賞にノミネートされたからでしょう。


その年はかぐや姫の物語が候補作品にのぼっていて、結局はどっちも受賞できずにベイマックスがオスカーを持っていったんですけどね。


ベイマックスベイマックスで好きなんですけど、映画賞を与えるというのであればこのソング・オブ・ザ・シーやかぐや姫みたいな作品にあげてもいいのになぁなんて思ったり。


というのも、この両者の作品は共通して「見たことのない映画を見せてくれる」魅力があるからです。

 

見たことのない映画


かぐや姫の物語は、筆のタッチで画面いっぱい踊るように描いた映像的傑作でした。


手法の一つとしては究極までいった作品だと思っているし、今後100年歴史的価値を持つことになると思ってます。


同時にソング・オブ・ザ・シーも同様の魅力を持った傑作だと思います。


ソング・オブ・ザ・シーの手法は言葉で説明しづらいのですが、極端に平面化された人物や背景がだまし絵のように動き回ります。


リアリティとは対局にある表現ではあるのですが、それが映画全体の持つ「おとぎ話」のようなテイストと見事にマッチしています。


この作品がアイルランドの作品だと知らずに観たとしても「なんとなく北欧っぽい」という鮮やかな色彩感覚をうまく用いながら、独特としか表現しようのない幻想的でありながら生き生きとした映像を楽しませてくれます。


かぐや姫の物語もソング・オブ・ザ・シーも、映画の題材に合わせてこれ以外には考えられない表現方法の極致を導き出したなと感じます。


ベイマックスが素晴らしい作品なのは何一つ否定しませんが、全く新しい表現技法があった映画とは思えなかったので。


せっかくアニメに対してのアカデミー賞があるのなら、そこは評価すべきポイントなんじゃないかなーと愚痴を言ってみたり。

 

映画のストーリー


神話や言い伝えを元にしたストーリーらしく、海にいる間はあざらし、陸の上では人間になるセルキーと言われる種族のお話です。


妹の誕生と共にセルキーである母を失った主人公ベンが、母と同じくセルキーとしての能力を身につけた妹と共に冒険に巻き込まれていく
というようなストーリーです。


細かい脚本があるような作品ではなく、それよりもやはり場面の移り変わりや歌を歌うシーンでの映像の煌びやかさを楽しむタイプの映画と言えそうです。


アイルランドの神話なんて当然僕も知りませんでしたが、それはあまり気にしなくても映画の面白さには影響しないと思います。


心情の変化や場面で起こっている事態は全て映像と音楽が情報としてフォローしてくれるので置いてけぼりをくらうことはないでしょう。

 

「妖精なのか、人なのか」みたいな展開は不思議とかぐや姫の物語と共通する点がありますね。

 

映画の良かった点


言うまでも無く、映像です。


目に見えているものは平面的なキャラクターや舞台なのですが、それをダイナミックにグワングワンと動かしてくれるのでとても大きな世界観を感じます。


とはいえ設定上の舞台は小さな港だったり町だったりで、その閉鎖的な空気感というものもちゃんとパッケージングされています。


だからこそ妖精の国での冒険や海の中のシーンなどでは巨大で圧倒的なスケールを対比的に描けています。


映像的なトリックで世界観を表現できるということが実写と違いアニメ作品の大きなメリットです。


アニメ作品であることを最大限に活かしたアイデアの数々を見るだけでも大変感心しました。

 

音楽


また、音楽もこの映画のキーワードです。


タイトルがソング・オブ・ザ・シーなので当たり前なのですが、歌や音楽がかかるシーンはとても楽しかったですね。


おそらくアイルランドの音楽感というものに馴染みがないからなのでしょうが、初めて聞くような音楽体験ができて。


音楽映画としてもとても良い作品だなと思ったり。

 

映画の難点


アイルランド発のおとぎ話を扱った映画と言いましたが、最初の5分くらいでその話は一気に説明しきってしまいます。


僕のように最初ボーーーっと観ていた人はその後に戸惑うことは必至です。


せめて用語説明だけでも後々出てくるキャラクターにさせても良かったのではないかと思いました。


知らないワードが急に飛び交ったりするので「マカって誰のことだっけ。。。」とか考えちゃうシーンがいくつかありましたね。

 

 

ポスターの感想


映画の良さにたいして何故かポスターがイマイチなのが今作の残念な点です。

 

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うーん。


なんでこのようなポスターになったのかちょっと不明ですね。


映画の方では本当に生き生きとした映像が楽しくてしょうがないのですが、ポスターは何故かのっぺりと平面なだけ。


海の話だから海をポスターにするのは問題ないんですけど、それにしたってちょっと暗すぎる。


このビジュアルでは作品の神話性もあまり感じないというか。


キャラクターの魅力にしたって、繊細に書き込まれた緻密な背景があるからこそシンプルな線で描かれた顔とかが引き立つんですよね。


でもうこういう構図で見せられるとただ単に地味なイラストに見えちゃう。


非常に勿体ないなと思います。


キャラクターは小さくても問題ないから、もっと世界観の美しさをポスターの画面いっぱい大きく見せた方が良かったと思いますけどねぇ。。。

 

別バージョン


こちらのポスターはまだ少し良い気がします。

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ただそれでもやっぱり物足りないかな。。


映画やストーリーを理解している人でないと、中央にいる「なんか白っぽいフードをかぶった女の子」にしか見えないですよね。


あと何故このポージングなのかよく分からない。。。


彼女はアザラシであって歌い手でもあるのだから、そのどちらかを表現したビジュアルの方が良かったのではないでしょうか。


いずれにせよ、やっぱりもうちょっとレイアウトを考えた方が良かったと思います。

 

まとめ


ビジュアルが最高の映画だからって、ポスターまで最高になるとは限らない一例になってしまいました。


同年にアカデミー賞を獲得したベイマックスは、本国版と日本版で似ても似つかないポスターに変更したことが話題になりました。

 

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別にズルをするということではなく、物語をどの部分をポスターにするのかというのはやはり特別に大事な作業だと思うんですよ。


そのビジュアルが映画を鑑賞した人の映画の思い出そのものになりかねないんですから。


素晴らしい映画だっただけに、少し残念な気持ちです。


それでは、また。


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夜空はいつでも最高密度の青色だ 《映画はともかく…ポスターは最高》

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映画の点数…45点
ポスターの点数…90点

 

詩集を原案とした映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は夜空はいつでも最高密度の青色だです。


最果タヒさんの同名の詩集を《舟を編む》で知られる石井裕也さんが監督した作品。


詩集が原案というか、もう本当にストーリーの中で登場人物達が詩を読む=セリフを言うというような仕組みになっていて。


なのでセリフとしてはハッキリと不自然だしおかしな点もあるんですけど、それも踏まえて楽しむタイプの映画と言えます。


主人公には石橋静河さんと池松壮亮さん、脇には松田龍平さんや田中哲さんら実力派が揃ってます。

 

映画のストーリー


看護師として働く傍ら、ガールズバーでバイトをしている美香(石橋)。


日雇いとして建築現場で働く慎二(池松)。


偶然の出会いから二人の交流が始まり、お互いの心を通わせていく話です。


少し踏み込んだ言い方をすると、自分のことを肯定できないタイプの主人公達が、生きることの意味や死ぬことの意味に向き合いながら少しずつ前向きな心を育んでいく、みたいな解釈でしょうか。


自律神経症のような症状を持っている慎二(劇中では自身のことを「俺はおかしいから」みたいな言い方をしている)は、ものすごくお喋りな時と全く何も喋らない時の差が激しい人。


それに対して美香は、すべての事象や心情を言葉にして整理したい人。


その手段として詩が登場します。


大きな事件が起こるというよりは、主人公達が自分に向き合って正直な気持ちを取り戻すようなシーンが多いですね。

 

映画の良かった点


詩を映画にするという、そのチャレンジングな姿勢はやっぱり良かったと思います。


観たことのない映画体験が出来るという意味では観る価値が絶対にある映画ですね。


画面全体の作りがザラザラしていて湿っぽい感触というのも良かったです。


目線が「世界全体」に向かないように、内側内側に迫っていくような演出は観ている側に対してとても親切な作りだったなと思います。

 

映画の不満点


とはいえ、正直僕は映画全体は苦手でした。。。


とにかくあらゆるシーンが「それっぽーい」くらいで止まってるんですよね。


「日雇い労働者=社会の底辺」とか「水商売で働いている=心が貧しい」とか「親との関係が悪い、あるいは死別している=その後の人生に暗い影を落とす」とか。


どこかで見たことあるような設定の人物達がウロウロ悩んだりしているので「それって偏見なんじゃないの?」と反発したくなっちゃって。


そうじゃなくって、「まわりの人から見るとどう考えても不幸な要素は見当たらない」のに自己肯定が出来ない人物達にした方が良かったと思うんですけどね。


どの人達も、才能がないかお金がないかだけの問題で、例えば宝くじが当たってしまえば悩みなんて全部無くなるような人たちなんですよね。


だったら別に映画で見なくてもいいかなーなんて。
特に不満だったのは、池松さんが演じる慎二を少し障害のある人のように描いていること。
言葉は少し不自由だけど、心はとても純粋!みたいな感じ。


ものすごく嫌いな発想に思えちゃうんですけど。。。。


平成の終わりにそんな表現しちゃう?みたいに思っちゃいました。

 

そもそも詩集は。。。


そもそもの問題ですが、詩集を題材に映画を作ることの意義。


意義はあったと思います。


姿勢は買います。


でもやっぱり。。。。うまくはいってなかったかと思います。


詩を喋っている間、どうしても映画の時間が止まるんですよね。


詩の意味を考えながら映像を追っているため、どうしてもワンテンポからツーテンポ映画としておかしな間が出来てしまう。


それにやっぱり詩は活字として読んでこそ成立する媒体なんだと思いましたよ。


自分のペースで、自分で映像を作りながら、自分の言葉で読んでいくからこそ感動的なのであって。


誰かのペースで、映画の映像を観ながら、人が呼んでいるのを聞いてもそりゃ感動しないなって思います。


残念ですけど、肝心の詩を読み上げるシーンこそが一番退屈だと思ってしまいました。

 

ポスターの感想


ところがどっこい。


この映画、ポスターがとてもいいんですよ。


4色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのフルカラーのこと)で作ったポスターはこちら。

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まぁ、これはこれでいいんですけどそうじゃなくってもう一案の方。


3色(特定の色を組み合わせた3色)印刷で作ったポスターがこちらです。

 

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かっこいい!

 

こういう印刷って、本来は「お金がないとき」に使う方法なんですよ。

 

例えばスーパーのチラシとか。

週末の数日しか使わないチラシに大きなお金はかけられません。

だから印刷に使うインクの種類を絞って安く済ませるんですよね。

 

当然ながら、映画のポスターなどに用いることはほぼありません。

 

見てもらうと分かる通り、人物の顔も一色で塗りつぶされるので表現の幅が狭まりますからね。

 

ですが今回のポスターはそれを逆手にとりました。

 

色の足りない安っぽいビジュアルが新鮮です。

 

そしてその表現自体がこの映画のニュアンスを非常にうまく伝えてくれています。

 

どこか頼りなく東京で暮らすこの二人にとって世界はこのように偏った見え方をしているのではないか。

 

そんな二人が重なるとき《赤と青が重なるとき》に何か違った色が見えてくるのではないか。

 

見た目がおしゃれであるのと同時に、映画の内容にマッチしたとても良いビジュアルに仕上がっています。

 

まとめ

 

仕事をしているとついつい「予算もねぇのにマシな仕事は出来ねぇよ」と思ってしまうんですけど、こういういいポスターを見てしまうと甘ったれたこと言ってられねえなと思いなおします。

 

イデア次第で捻り出せる可能性はまだまだあるんだろうなと。

 

映画監督にとって嬉しい言葉ではないかも知れませんが、このポスターを見た後に映画を観ると補完して良く見えて来る部分すらあります。

 

ポスターの魅力ってまだまだあるよなぁと思った次第。

 

それでは、また。

 


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この世界の片隅に 《映画もポスターも理想的》

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映画の点数…97点
ポスターの点数…90点

 

日本映画史上の傑作


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はこの世界の片隅にです。


先日NHKでアニメ版が放送されていて話題になりましたが、元々はマンガ原作で2007年に連載開始しています。


その後テレビドラマになったりもしたのですが、一躍名を挙げたのは2016年の片淵監督によるアニメ映画がきっかけでしょう。


僕自身もアニメ映画を観てひっくり返って、映画館からすぐさま本屋に向かってこうの史代さんの原作をまとめ買いした記憶があります。


金額のことを言うのもあれですが、クラウドファウンディングで資金調達しても制作費は2.5億円程度。。。。


それだけであのレベルの作品を作り上げたのだとしたらちょっと恐ろしさすら感じます。
そのくらい衝撃的な映画だったと思っていますし、マンガ原作もやはり大大大傑作だと思っています。


とても思い入れのある作品ですが、それを少し紐解いてみようと思います。

 

映画(マンガ)のストーリー


まずおおまかなストーリーですが、1943年から1945年の広島・呉を舞台にした作品です。


それ以前の話も描かれるし最高なのですが、一応ここでは省略します。


戦争末期に嫁入りした主人公・すずの目線から当時の呉の様子を繊細かつユーモラスに描いた作品です。


あくまでもすずさんの視点からしか描かれないので、戦争のハイライトでもある東京大空襲広島市内の空爆戦艦大和の轟沈などは直接的な描写はありません。


さらには原爆投下の様子すらも「呉からみた原爆」にとどまっており、俯瞰した視点からみた戦争映画ではなく【1945年に呉にいた女性のドキュメンタリー】みたいな感じ。


この作品が反戦を描いているかそうでないかは議論が耐えないのですが、個人的には「押しつけがましくないだけ」でやっぱり反戦映画、あるいは「嫌戦映画」だと思ってます。

 

ポスターの感想


まずポスターの方から振り返ってみたいのですが、主人公すずさんが花を摘んでいる様子をビジュアルにしています。

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これは原作マンガの表紙と同じポージングの別シーンになっているんですね。

 

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どちらにも共通しているのは「すずさんの日常生活」を切り取ったシーンというだけで、全く戦争の気配を感じないんですよね。


着ている洋服などからは時代性を感じるのですが、これが単純な戦争映画や戦争マンガからは距離をおいていることは明確です。


例えば「火垂るの墓」なんかはビジュアルに戦争の気配を残しています。

 

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少なくとも「この世界の片隅に」においてはその要素は排除してありますね。

 

すずさんの顔・表情


それよりも注目すべきはやっぱり、すずさんの表情であり笑顔だと思います。


これが戦争を取り扱った作品とは思えないですよね。


特にこの表情……非常に艶っぽくないですか?

 

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すずさんは明るく朗らかな女性ではあるんですけど、同時に20歳相当の女性としての色っぽさ、言い換えれば性的な魅力も持った女性として描かれます。


マンガや映画において度々登場する「天使のような女性」として描かれているわけではなく、とても肉体的で実在感のある存在です。


この表情を見るだけでも「この女性はこの世に存在している」と思わせるパワーを感じます。


それは原作者のこうのさんは当然のことながら、映画にあたって作画を務めたスタッフ達の技術と才能と愛情があってこそ実現できた表現なのでしょう。


この世界の片隅にという作品において、すずさんに実在感があるかどうかは絶対!絶対な条件であるので、そこをクリアできた時点である意味この映画は成功しているのでしょうね。


「すずさんは、本当にいた気がする」という人が多いからこそ、作品の聖地巡礼のような現象が実際に起こったのですから。

 

あ、言うまでもなく声優を務めたのんさんの偉大な功績もあります。

完璧な配役でした。

 

コピーについて


ポスター内にあるコピーを見ても、どこにも「戦争」というワードは使用されていません。


ただし、「昭和20年、広島」という言葉が使われており、それだけで日本人なら条件反射で緊張してしまうパワーは持っています。


その言葉だけで十分だと判断したのでしょう。


さらに、そのあとに続く言葉は「わたしは ここで 生きている」です。


「では、そのあとは。。。? 8月以降も生きているの?」という不安にかき立てられるようなキャッチコピーですね。


さらにこのキャッチコピー自体が「この映画は戦争映画ではなくって、この主人公を描いたお話ですよ」というお知らせにもなっています。


シンプルですが、とてもいいキャッチコピーだと思います。

 

映画の感想


戦争映画として珍しい表現ではないのですが、この映画は徐々に徐々に8月6日、あるいは8月15日に向かってストーリーが進行していくのでそれだけで緊張感が高まるのが効果的です。


特にこの映画は繰り返し言っているように人物の実在感がものすごく高い作品です。


だからこそ、笑顔の多かったすずさんが徐々に生気を失っていくのが本当に辛くって。


映画でこんな風に思うのはそうないのですが「もう、いい。ここで映画を止めてくれ。すずさん達の暮らす町に原爆を落とさないでくれ」と本気で思いました。


映画にのめり込むなんてよく言いますが、この作品はその最たるモノでしょうね。


劇中、隣に座っていたおじさんと一緒にオイオイと号泣しながら観たのはいい思い出です。

 

映画の良かった点


戦争を題材にした映画って、観る際に一種の緊張があるんですよ。


それは、かなり説明くさくって説教くさくって、とにかく政府が悪いか敵国が悪いかで、民衆が常に犠牲になっているんだーみたいな価値観を押しつけてくる作品が多いからです。


そういう映画の必要性は分かります。


ただし、戦争の凄惨さだけを抽出したり、時には嘘をついてまで権力者を悪者にしても意味なんてないと思うんでよね。


そうではなくってもっと立体的に戦争の構造を描かないとリアリティが無くなってしまうし、戦争を 生み出さないための知恵にならないと思うんです。


この世界の片隅に】ではそのあたりをキチンと抑えていて、徐々に主人公すずさんが(現代でいうところの)右翼的思想に変化していくのを描いていますし、市井の人々が「戦争のある世界を受け入れていく」様子を描いています。


目の前にあるものが少しずつ少しずつ戦争によって姿を変えていくことをフェアな目線で描いているからこそ「ああ、戦争って怖いな」と自ら気付いていく工夫がされているんですね。


余計はセリフでの「戦争は愚かだ!」みたいな主張ではなく、自分自身の考えで戦争というものに向きあう機会を与えてくれている作品です。

 

「さらにいくつもの」公開


そんな大傑作だった本作ですが、今年の冬には劇中で描かれなかったシーンを追加した「この正解のさらにいくつもの片隅に」の公開が決まっています。

 

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映画内ではそこまで出番の多くなかったリンさんのエピソードが描かれるのでしょう。


その映画も楽しみであるのと同時に、この映画が世代を超えてより多くの人に伝わればいいなと思っています。


映画、ポスター、合わせて完璧です。


それでは、また。


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SUPER 8 《情熱は感じる映画と、0点のポスター》

映画の点数…72点
ポスターの点数…0点(日本版)

 

ザ・ザ・スピルバーグ


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はJ.J.エイブラムスのSUPER 8です。


J.J.エイブラムス監督は好きな人はすごく好き、嫌いな人は嫌いと評価が分かれがちな人だと思ってるんですけど。


僕は「けっこう好きだよ」くらいのテンションでして。


彼の作品の中ではスターウォーズ フォースの覚醒」とんでもなく好き!!で、あとのMI3とかクローバーフィールドとかは「うん、面白かったよ!俺は」くらいな感じ。


なんていうんですかね。


とても無邪気な人なのかなと思っていて。


「俺、こういう映画が大好きだから、こういう映画作りたいんだ!」みたいなバカ正直な感じ。


そのかわり、脚本や細かいディテールの部分で結構いい加減なところもあるなと。


僕はそのバカ正直な感じが好きなので細かい部分は許しちゃうんですけど、そのあたりで評価が分かれるのかなぁなんて思ってます。


で、今回のスーパー8ですが、なんともまぁ究極に無邪気な一作です。


とにかく前半はスピルバーグっぽい感じ!!!」だけでアクセルべた踏みした映画でした。

 

映画の感想


身も蓋もない言い方をしちゃえば、未知との遭遇E.T.とスタンドバイミーとグーニーズを混ぜた映画ですよ。


パクリというよりは、「そういう映画を作りたい」というコンセプトのもとに作られているので全体的に無邪気さを感じます。


おそらくスピルバーグを全く知らない人がこの映画を観ても「あら面白い映画ね」となると思います。


ただ残念な展開が後半に待っていて、何故でしょうか、これらの作品群にクローバーフィールド」も一緒に混ぜちゃった感じなんですよね。


なんで混ぜちゃったかな。


今までジュブナイルものとして楽しんでいた映画の中に急にハードコアな殺人エイリアンが紛れ込んできちゃうわけですからね。


でも冷静に映画全体を見渡してみると、このエイリアンだけではなくて他にも色々とアンバランスさが目立ってた作品かなという印象です。

 

映画の良かった点


J.J.がスピルバーグへのリスペクト全開で作った箇所はやはり面白かったです。

 

そりゃそういう映画なんだからそこが面白くなかったら意味ないんですけど。

 

キャラクター設定がものすごく定型分的で、中性的な主人公と威張ってるデブと発明が好きなチビと影の薄いノッポ。

 

はいはい、どこかで見たことあるわという「俺たちの分身」と、どっからどうみても釣り合わない綺麗なヒロイン。

 

ウマの合わない親との確執や、必要以上には登場しない「オトナ」達。

 

こうやって見ていくといかにスピルバーグが優れた監督なのか逆説的に浮かび上がってきて、それを確認するだけで愉快です。

 

そしてこの映画の面白さのピークってつまりは「スピルバーグらしさ」だけでもあるんですけど。。。

 

映画の不満点

 

やっぱり脚本が甘いよなぁというのが気になります。

 

キャラクター達が「親との確執を抱えてる」とかの設定が、「スピルバーグの映画ってそういうものでしょ?」という以上のことはなくて。

 

ストーリーが進むうちに気づくんですが、そもそも確執が特にないんですよね。

 

母親が死んじゃって父親との関係がギクシャクしてるっていう悩みは、別にエイリアンの登場と何にも関係なくって。

 

そういうのは「父親が頑張れよバカ」としか思わないですよね。

 

そもそもエイリアン

 

もっと言うと。。。。

そもそもエイリアンって必要だった???

っていうことなんですよね。。。。

 

これも結局、未知との遭遇E.T.らしさの記号でしかなくって、別に「殺人犯が出た!」とかでも良くって。

 

未知との遭遇E.T.では、エイリアンとの交流を通じて主人公達の人生が決定的に変化するんですけど、今回のキャラクター達にとってはほとんど関係ないんですよ。

 

だとしたらやっぱりキャラクター達のドラマこそを大事にしなきゃいけなかったんですよね。。

 

それが出来てないから、どうしてもエイリアンの方の不出来が気になっちゃって。

 

ポスターの感想

 

まず、本国版のポスターはものすごくいいです。

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スピルバーグっぽいポスターとは違うんですけど、ジュブナイルものとしてのビジュアルとしてはピカイチにかっこいい。

 

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このポスターからも分かるのは、やはりキャラクター達こそが主人公という点ですよね。

 

未知との遭遇E.T.もキャラクター達こそが主人公です。

 

そのバランスをとても理解できているポスターと思います。

 

ところがです。。

 

日本語コピーポスター

 

ダメだこりゃ!!!!!!

 

 

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ここまでダメなポスターもそうそう見ないよなと思います。。。

 

ビジュアルは完全に未知との遭遇ですね。

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もうこれだけで

「はーーーい、宇宙人でまーーーーす」って感じです。

バカなのかしらん???

 

この映画を見たとき、そして人に勧めるときにどうしてこのビジュアルになるんでしょうか。

 

最低なのはキャッチコピーですね。

 

「僕たちは、ひとりじゃない。

世界の秘密を目撃した、あの夏

その出逢いは、永遠に忘れない」

 

長い、ダサい、そして意味分かんない

 

まず、エイリアンに対して言っている言葉なのだとしたらこのコピーを書いた人は狂っています。

 

それか、映画を見てる途中で寝ちゃったかです。


 「いやいや、実はこれは友人達との体験のことを指しているんだよ」としてもひどいですよ。

 

なんで子ども時代の永遠なる一瞬をこんな陳腐なコピーにしちゃうんですか。

 

どんなにいい映画だとしても「それ、一番言っちゃダメなやつだよね」という代表的なコピーじゃないですか。

 

「この映画、面白いです!!」って映画のコピーに使わないですよね。

それに等しいと思うんですけどね。。。

 

まとめ

 

この映画を傑作とは思いませんけど、でもやっぱり僕はJ.J.の映画は好きですよ。

 

それはやっぱり「好きで作ってる」無邪気さを感じるからだと思います。

 

それがエゴになってしまうと急に嫌悪感が出ちゃうんですけど、J.J.はあくまでも「みんなもきっと楽しいはず!」と思いながら作ってそうなんですよね。

 

そういう作品はやっぱり一定の爽快感を持ってると思うし、実際に僕はそう感じたし。

 

さて、彼には今年の12月、スターウォーズ ライズオブスカイウォーカーという大役が残っています。

 

その作品次第で彼の評価は大きく変わりそうですけど、それはそれで別の話として。。。

 

それでは、また。


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バトルシップ 《絶滅危惧種のあがき》

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映画の点数…65点
ポスターの点数…50点

 

絶滅危惧種


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はバトルシップ2012です。


この映画を特に理屈はなくいい加減な気持ちで分別すると「マイケルベイとかエメリッヒみたいなテンション映画で、船を舞台にしたトランスフォーマーということだと思うんです。


最近イコライザーやジョンウィックなど、70年代な香りを残すアクション映画の傑作が連続していました。


そんな中にあって、いわゆるアルマゲドンインデペンデンスデイなんかの「大味な筋肉アクション映画(金はかけれるだけかける)」みたいな映画って絶滅危惧種になっていると思うんです。


流行したものが時間の流れと共に最もダサくなるというのはしょうがない事なのですが、個人的にはそういう筋肉映画を観て育った部分もあるので少し寂しい気もするわけです。


そしてこのバトルシップは、その筋肉アクション映画の復権を志した一作でもあり、無念にも惨敗した作品なのです(興行的に)。


そんな愛すべき沈没船バトルシップを、今日はわざわざ引き上げて振り返ってみたいと思います。
(そもそも鑑賞した理由は、なんか暑いな!海っぽい映画観ようか!みたいなバカな理由からです)

 

映画の感想


まず最初に言っちゃうと、決して悪い映画ではないですよ。


むしろ微笑ましく楽しく観られました。


正直、もっと脚本がズタズタで映像もグチャグチャだと思ってたんですよ。


そしたらそれは結構大丈夫でした(結構、だけど)。


むしろ、その「バカっぽいところ」は制作側が自覚して作っている印象でした。


例えば「入隊後すぐに艦長クラスになる主人公」とか「高性能な技術を持っているくせにやたらとアナログな特攻を仕掛けてくるエイリアン」とか、むちゃくちゃな設定はたくさんあるんですよね。


でもそういうむちゃくちゃからは「だってさぁ!そういう設定の方が面白くない?!」っていう制作者の開き直りを感じるんですよね。


コソコソしていない。むしろ堂々とクレイジー


その意気込み、僕は買いましたよ。


そのかわり、自分が見せたいシーンはたぁっぷりと時間をかけて演出します。


例えば「70年前の戦艦を動かすべく集まってきた老兵達」や「宇宙人と拳と拳で愛し合う退役軍人の勇士」なんかはスローモーションでじっくり見せるわけです。


思わず笑っちゃいましたけね。


いいぞ!俺、そういうのイケる口だよ!


つまり、全体としては間違いなく「筋肉バカ映画」なんですけど、何も考えていない映画ではなくてむしろ「ここはちゃんとやろう」という場面ではしっかりコントロール出来ているなと感じました。

 

映画の良かった点


実際の理屈は抜きとして、ちゃんと戦争映画をやろうという志は感じました。


特にブイを使ったソナーボードゲームなんかは見応えたっぷり。


あえて敵艦を写さないことで緊張感を高めていく演出も好印象。


ドッカンドッカンと力技だけで押し切るような映画とは違うんだぞというのが分かります。


上記のブイ作戦もそうですし、太陽が弱点の敵にはサングラスを破壊するなどそれなりに工夫をしているのが分かります。


「Aという事情があるからBという作戦を使う」というのを、それなりにちゃんとやってるんですよね。


そんなの当たり前という気もするのですが、この手の映画ではそれを全く無視した作品が多いのも現実です。


こういう工夫がないとどうしても観客の集中力が切れるので、無視してはいけない要素だと思います。

 

映画の不満点


雑な脚本にはあえて何も言わないにせよ、やっぱりちょっと見逃せない点もあります。


それは「エイリアンに魅力がない」という点でしょう。


インデペンデンスデイやパシフィックリムもそうなんですけど、なんとなーく敵が侵略してきただけでまるでドラマ性が無くって。


いや、主義主張が必要というわけではありません。


必要なのは「個性」です。


今回は船上や海での戦闘が90%。


だったら「こいつら、海の上では強すぎる!」みたいな個性があったり、魚類を思わせるビジュアルがあったりしても良かったと思うんですけど。

 

ポスターの感想


まぁ。。。こういう映画にはこういうポスターというテンプレートのようなポスターですな。

 

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とにかくギラギラしてて迫力重視。


ロゴもゴッツゴツだしテッカテカ。


明朝体なんてクソくらえ!


そう、これでいいのです。


実際にお客が入っていない以上、失敗だとは思います。


でもこの映画を正しく表現するのであればやはりこのビジュアルでなければならないわけです。


うーん、ジレンマ。

 

これは映画の感想とも同じなのですが、やはりここでも敵側のキャラの弱さが致命的ですね。

 

まぁよく考えたらトランスフォーマーも敵キャラどころか味方キャラも何が何だか分からない映画だったような。。

 

まとめ

 

映画のテンション自体は良かったと思うんです。

 

こういう映画は定期的に出てきてもいいよなと。

 

何年かに一回、みんなでお金で集めてドンチャン騒ぎをするというお祭り映画。

 

ま、それはそれでお客が入らないのかな。。。

 

それでは、また。


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シン・ゴジラ 《シン・ウルトラマン公開決定記念》

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映画の点数…95点
ポスターの点数…95点

 

シン・ウルトラマン公開記念


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はシン・ゴジラです。


シン・ゴジラを手がけた樋口・庵野コンビでの《シン・ウルトラマン》の公開が決定しました。


そもそも僕自身はシン・ゴジラを観たきっかけは「話題になってたから」でしかなく、正直なとろこ樋口監督、庵野さんの作品は苦手なものが多かったです。


ましてやゴジラなどの特撮に対する愛もほとんどない状態だったのですが実際に仕上がった映画を観るとまさに大傑作。


シン・ウルトラマンが面白いかは分からないにせよ、絶対に鑑賞するだろうしかなり期待しています。


今回はそんなシン・ゴジラをポスターと一緒に振り返ってみようと思います。

 

ポスターの魅力


シン・ゴジラの大ヒットの要因の一つは、間違いなく秀逸なアートワークにあったでしょう。


公開当時日本中で見かけた真っ赤なあのポスターです。

 

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真っ赤な背景に、ゴジラのシルエット(正確に言うとシルエットではなく、かなり明度を落とした写真なんですが)。


かなり無骨なタイトル文字。


キャッチコピーには意味深に「ニッポン対ゴジラ。」の一言。


かなり豪華な俳優陣を揃えながら、ポスターに名前が載っているのは三名のみ。


削れるだけの情報は全て削り、アートワークとしての完成度の高さを優先させた覚悟を感じます。


一言で言っちゃえば「めちゃくちゃカッコイイ」で済むのですが、このポスターの中でもいくつかの工夫が見られるので読み解いていきます。

 

タイトル文字


タイトルのシン・ゴジラというゴツゴツしたフォント。


これは1954年の初代ゴジラのタイトルと同じ文字を再現しています

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つまりこれは「ゴジラを再び誕生させる」という宣言であり、「60年前にゴジラを生み出した方達への敬意」のあらわれでしょう。


クラシックな雰囲気を出しつつもそれが新しさを感じるというのも制作側の意図でしょうね。

 

その他の箇所のフォントは、詳しく調べてませんが「マティス」というフォントでしょうかね。


これはエヴァンゲリオンのタイトルなどで多用されたフォントで、「庵野さんといえばマティス」というくらいイメージが定着しているフォントです。(違ってたらごめんなさい)

 

シルエット


ゴジラがシルエット(風)になっているのは何故でしょうか。


別にシン・ゴジラのビジュアルがマスコミに伏せられていたわけではありません。


結構早い段階からテレビなどでもビジュアルは公開されていましたし、そもそもゴジラという生物は日本中の誰もがビジュアルを知っているスーパースターです。


それをわざわざシルエットで隠したのだとしたらそこには何かの意図があります。


その意図は「今までのゴジラと同じだと思わないでね」というメッセージでしょう。


「どんな顔をしてるんだろう」「今までとは違うのかな」と興味を持たせることで観客を刺激しています。

 

ポスターデザイン


これは明らかに今までとの差を意識しています。


生頼範義さんを代表に、今までのゴジラ映画は賑やかなポスターがほとんどでした。

 

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より子ども向けにしたものや大人向けにしたデザインの差はあれど、基本的にはポスター内にたくさんの要素が詰め込まれていました。


それを逆手にとって、今回はゴジラ以外の何も画面にのせないという方法で斬新なポスターを作り上げています。


これが今作に関しては大正解でしたね。


世代間を問わずに大ヒットとなったのは、これほどまでにシンプルなデザインに成功したのは大きかったでしょう。

 

ポスターのまとめ


映画のヒットのウラには、うまくいっているポスターもそうでいないポスターもあると思いますが、


今作に関してはほぼほぼ最高点の出来ではなかったでしょうか。


ただマイナス5点としたのは、こちらのポスターにある「現実(ニッポン)対 虚構(ゴジラ)。」というキャッチコピーが少し頭でっかちな気がしたためです。

 

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別に注釈いれなくても良かったと思うんですけどね。

 

 

映画の感想


もう散々語られ尽くした感のある映画なので詳細は省きますが、とにかく大好きな一作です。


セリフが聞き取りづらいとか、石原さとみがウザいとか、最後の作戦が地味とか、政府が無能すぎとか、石原さとみがウザいとか、これじゃエヴァの作り直しとか、石原さとみがウザいとか色々な意見はありますが、それら全部ひっくるめてこの映画の良さだと僕は思ったんですけどね。


そもそも石原さとみは可愛い。


細かい点がおかしいとかは結構どうでも良くって、大の大人達がウシシシ言いながら自分たちのやりたいことをやりきったという結果を楽しんだという感じです。


それで惨敗したのであればそれは全て本人達の責任というリスクもあったわけですが、見事にそれを突破してみせたなと感動しました。


石原さとみさんは可愛いですよ。

 

まとめ


何はともあれ注目すべきシン・ウルトラマンですが、それと同時にポスターも楽しみだなぁと個人的には楽しみにしております。


それまでに10回くらいはゴジラの方を楽しめそうです。


それでは、また。


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ペット 《売れたのは売れたらしいけど。。》

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映画の点数…40点
ポスターの点数…60点

 

これでいいのか、イルミネーション


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は、第二作の公開を間近に控えた《ペット》です。


原題は《シークレット ライフ オブ ペッツ》とあるように、「人間の見えていないところでのペットってどんな生活してるのかな」みたいな映画ですね。


スタジオはSINGや怪盗グルーで知られるイルミネーション。


というよりも、今はもはや「ミニオンズ達の」イルミネーションみたいな感じですね。


そんなイケイケな会社が手がけるペット。


動物や擬人化された生き物の描写に関してはピカイチの会社なので、ある程度の期待はしていたのですが。。。

 

トイストーリーじゃん


一人暮らしの女性の元で楽しく幸せに暮らしていた飼い犬マックス。


そんな彼の生活に、保健所からやってきたデュークが加わって大騒ぎ!みたいな話です。


いや、別にいいんですよ、どんな設定でも。


でも明らかに今回の作りだと「ウッディとバズの関係性」をすぐに連想してしまいます。


いがみ合っている二人だけど、最後にはうまくいくんだろうなと思っていたら、やっぱりうまくいくという。


どこからどう見てもトイストーリー1作目でしかなかったですね。。


一度そういう目線になってしまうと、そこから先は「こいつはトイストーリーでいうと◎◎だな」という考え方になってしまって。


映画の楽しみ方としてすごく損だとは思うのですが、そういう見方をした人も多かったのではないでしょうか。

 

映画の感想


映画のCMを見る限りは「実はペットって普段はこんなことしてる」という部分を楽しんだり、「そうそう、犬ってこんな感じ」というあるあるネタを楽しむ映画だと思ったんですよね。


そういうテンションは20分くらいで終わっちゃって。


良くも悪くも驚いたんですが、そこからかなり荒唐無稽な話になった印象。


ウサギやブタが人間からトラックを盗んだり、人間の殺害を本気で考えたりとあるあるネタからは大幅に逸れていきましたね。


それで映画自体が面白くなるなら全く問題ないんですけど。


そういう感じでも別になかったかなぁと思います。

 

 

定型文的な物語展開

 

そうやって「思っていた映画と違う」ってなるのは別にいいんですよ。


でも、そこで破綻した割にはそこからの物語は本当に定型文的で。


最初の段階で「こうなるのかな」と思った展開通り。


最初は仲良くなかった飼い犬二匹(まんまウッディとバズ)が、危機を越えて仲良くなっていきます。これは予想通り。


保健所から連れてきたイジワルな犬には、元々大好きな飼い主がいたという過去が明かされる(まんまジェシーやロッツォ)。これも予想通り。


命の危機に直面するが、敵対していたウサギが改心して助けてくれる。これも予想通り。


ディスニーとの違いは、少し毒っ気の多いブラックコメディも出来ることなのですからそこを活かせば良かったと思うんですよね。


せっかく「死」とかも扱うのなら、車に跳ねられて無残にも死んでしまうペットとか描いても良かったと思うんですよ。


そっちの方が「生き物を大事にしなきゃ」って思うじゃないですか。


ぶっ飛んだ物語に見えるけど、実はそこまででも無かったという印象でした。

 

 

ポスターの感想


日本版も本国版も共通デザインです。

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例えばディズニーのズートピアと比べると、動物の質感表現では一歩遅れてしまいます。


その分をデザインで補えているのは良い手段だなと思います。


ディズニーがどうしてもゴチャゴチャしがちなポスターを作ってしまうのにたいして、このようなシンプルなデザインにする方がイルミネーションスタジオの気風に合っているのかも知れません。

 

思えばディズニーが「よりリアルな表現を」と努力しているのに対し、イルミネーションは初めから「CGで出来るアニメーションの面白さ」を追求しているイメージがあります。


ポスターに描かれるニューヨークの街並みのいかにもCGっぽい質感も、フィクション性を際立たせるには役にたっていると言えそうです。

 

まとめ

 

決して好みの作品ではなかったんですけど。。。

 

でもちゃんとヒットはしてるし2作目も公開されるわけですからね。

 

毒にも薬にもなりにくい映画なのだとは思いますけど、そういう映画こそがヒットするというのも分からないではありません。

 

これでペット2が大成功の可能性もあるわけだし、その際にはまたウォッチしてみようと思います。

 

ポスターからは内容がうかがい知れませんが、今回もアイデアの効いたデザインだなと思いますよ。

 

それでは、また。


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アドレナリン 《映画はご陽気、でもポスターは??》

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映画の点数…80点

ポスターの点数…35点

 

ハイ!ハイテンション!

 

こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。

 

今回取り上げる映画は《アドレナリン》2006です。

 

最近のジェイソン・ステイサムのイメージは、パワフルで最強の男でありながらもどこか知的なキャラクターが多いと思います。

 

ですが今作はそういった知的なイメージは皆無。

 

とにかく目の前の事象に行き当たりバッタリで対処するクレイジーな乱暴者です。

 

どれが正解なんて当然ないのですが、一種突き抜けた爽快さをもつ本作はジェイソン・ステイサム出演作でも筆頭の面白さだと思います。

 

 

開始1秒からハイテンション

 

映画の概要は、心臓が止まるドラッグを注入された主人公が、とにかくアドレナリンを出し続けることで心臓を止めないように奔走する話です。

 

その合間に注射を打ったギャングを襲ったり、恋人と連れ添ったりと色々です。

 

まず間違いなく映画が作られた背景は「とにかく最初から最後まで走りっぱなしの映画をつくろう」という概要から脚本が作られたはずで、実際にストーリーはハイテンションな仕上がり。

 

余計な説明なんて全くないままに映画はいきなり始まって、すぐさま大暴れが始まります。

 

映画の良かった点

 

これはもうそのまま、とにかくハイテンションであることが最大の美点だしそこをこそ楽しむ映画です。

 

映画の途中で人が死んだり車が壊れたりするですがそんなことは絶対に振り返りません。

 

人に迷惑をかけた代償とかは気にしてられません。

 

とにかく走ります。

 

冷静に考えればおかしな点は多いのでしょうが、冷静に考える方が間違ってるとばかりに映画は疾走し続けます。

 

素っ裸で白バイを盗んだり、中華街でおっぱじめたりとサイテーな映像も続きますが、このあたりのナンセンスなコメディはイギリスっぽいなぁなんて思ったり。

 

好みの問題ではありますがジェイソン・ステイサム作品では一番好きな作品です。

 

 

映画の難点

 

ただ惜しいのは、終盤でテンションが力つきることです。

 

おそらくですが、単純にネタがつきたのかなと。

 

シーンとしては「最後に主人公が覚悟を決めて最後の敵に立ち向かう」みたいなことなのでしょうけど。

 

そこで冷静になられると急に「今までの犯罪はどうするのよ?」とかが際立ってきちゃって。

 

そういう細かいことを考えさせる前にササッと映画を終わらせた方が後味が良かったのだろうなと思います。

 

あと10分映画を削っても問題なく面白かったと思います。

 

 

ポスターの感想

 

せっかくのハイテンションな映画なのに、ポスターがちょっといただけないです。

 

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日本版も本国版も共通して何故か大人しめなんですよね。

 

一言で言えば、よくあるB級映画らしいポスターに納まっちゃってる。

 

もっとスタイリッシュで突き抜けたビジュアルにしてもキザにはならなかったと思います。

 

こういう映画でこそ遊び心のあるポスターを見て見たいんですけどね。

 

 

 まとめ

映画が超速で楽しかった分、それを削ぐような演出やポスターがもったいなかったなと思います。

 

逆に言えば、制作側の期待を大幅に上回る面白い映画に仕上がったとも言えるのかもしれませんが。

 

スカッと楽しむには十分だし、何回リピートしても面白い魅力はあると思います。

 

それでは、また。

 


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