映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

凪待ち《最低なキャッチコピーにうんざり》

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映画の点数…79点
ポスターの点数…30点

 

最低なキャッチコピー


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《凪待ち》です。


元スマップの香取慎吾さんを主演に、現役監督として油乗りまくりな白石一彌さんが監督。


東日本大震災の傷跡の消えきらない福島で起こる、一件の殺人事件とそこに生きる人々の姿をうつした一本。


香取慎吾さん主演という時点で映画ファンもそうでない方も「どれどれ、どんなものかしら」と身構えるものだと思うものでしょう。

 

映画として


まず映画としては非常に楽しめました。


元アイドルとは思えないくらいダウナーで暗い主役をキッチリ演じきった香取慎吾さんと、脇を固める新人&ベテラン達の演技はいずれも良かったです。


部分的に「それはセリフで説明しなくてもいいじゃん…」とか「もっともっと深く掘り下げてよ」みたいな不満はあったりするんですけど、そいうのは映画を楽しめているからこその感想だったりするので。


それよりも「どうしても、どうしても、どうしてもダメな人間っていうのはこの世にいるし、そもそも人間って何かから逃げ続けているものなのでは?」という胸が痛い映画を見ることが出来ただけで十分に良かったなと思ってます。

 

ポスターのひどさ

 

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それよりも今回腹がたっているのは映画ポスターです。


唯一、香取慎吾さんのどアップの表情はいいです。


これで30点で、あとはダメですね。


まず後ろにゴチャゴチャ人を配置しすぎです。


申し訳ないけど、誰もいらないでしょう。


映画の登場人物達はいずれも「何かから逃げているか、何かを諦めている」人達なのですが、それを全て背負い込んでいるのが香取慎吾さんです。


この映画は香取慎吾さんのもので、香取慎吾さんのみ観ているだけで自然とまわりの人間の実態も見えてくるようにちゃんと出来ています。


わざわざキャストを並べることもないでしょう。

 

デザイン自体も全然良くないです。


映画は全体的にずーーっと薄暗かったり雨が降っていたりするのに、なんでポスターでは青空なんでうすか?


僕が映画から感じる空とは全く違います。


映画のニュアンスすらもポスターは表現出来ていません。

 

キャッチコピー


何よりひどい、ひどいというか怒りが沸いてくるんですけど、キャッチコピーのひどさですね。


「誰が殺したのか?なぜ殺したのか?」


いや、そういう映画じゃないじゃん、どう観ても。


確かに劇中死んでしまう人がいて、それをキッカケに色んな人の人生が狂い出します。
でもあくまで殺人自体は映画におけるキッカケでしかなくって、主題は前述の通り「人間の業」を描いたヒューマンドラマなんですよ。


それを何故わざわざ違うテーマに置き換えてしまうのか。


そういう殺人ミステリーの方が観客を呼び込めるから?


だったらもうコピーライターや広報担当は仕事を誰か他の人に任すべきでしたよ。


ちゃんと主題に合ったコピーを考え、それでいて観客を呼び込めるコピーを作るべきでしょ?


出来ないんなら降りるべき。


僕は別に「自分だったら出来る!」なんて傲慢なことが言いたいわけではないです。


ですが観客を騙すような真似はしません。


何故ならその行為は結果として映画ファンを失うと考えるからです。

 

まとめ


せっかくいい映画なのに、ポスターが大きく足を引っ張っていると感じました。


もっと正々堂々とした姿勢を見せて欲しかったです。


目先の観客動員でなく、長く愛される映画を目指すことを自ら諦めているように感じました。


残念です。