映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

日産自動車のロゴが変わるよというお話

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日産自動車がブランドロゴの変更を発表しました。


現行の立体型ロゴは19年間使用したとのことで、ゴーン体制を象徴するロゴからの脱却を図ったとの見方もあるようです。


ゴーンさんがどうのこうのはここでは触れませんが、「イメージを変えたい!」という時にロゴを変更するのはよくあることで、洋服のブランドで言えばGU、バレンシアガ、バーバリーなんかはロゴを変えた後から業績が好調になった印象もあります。


近年日産が業績が悪かったというのは周知のことですが、このタイミングでのロゴの変更は基本的には前向きな発想だったと言えるのではないでしょうか。


まぁそのへんの経済のお話は他の方にお任せするとして、僕はデザイナーとしてちょっとお話しようと思います。

 

ロゴ変更の評判


さて、変更されたロゴですが、ちらっとSNSなんかで感想を見る限り「ダサくなった」「迷走がうかがえる」「弱々しい」などの意見がチラリはらり。


こういうロゴの変更があった時には必ずこういう拒否反応が出るので予想の範囲内ではあるのですが、良い意味でも悪い意味でもしばらくたつとロゴの変化なんてみんな忘れるものです。


ブランドのロゴというのは「イメージの象徴」なのであって、ロゴ自体が極端に目立つことを目的としているものではありません。


いずれは世間に受け入れられていくことになると思います。

 

フラットなデザイン


今回のロゴの変更、車好きな人、あるいはデザイナーなんかからするとある意味では「まぁそうなるよね」という予想の範囲内の変更だったと思います。


というのも既に海外の車メーカーなんかでは「ロゴのシンプル化、フラット化」はすすんでおり、例えばドイツのBMWやMINI、フォルクスワーゲンなんかは先んじてロゴの変更を行っております。

 

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あるいはイタリアのアルファロメオなんかも変更を予定しているとか。
また、イタリアの名門サッカーチーム“ユベントス”なんかもロゴマークを大幅に変更しております。

 

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全てに共通して言えるのはやはりシンプル化とフラット化。


好みは人それぞれでしょうが、このフラット化の流れはこれからも主流として続くと思われます。


日本の車メーカーも、三菱自動車あたりを除けば変更の可能性も十分にあるんじゃないかなと思っております。

 

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フラット化の理由


何故これほどまでにロゴのフラット化がすすむのか。


理由はいくつかあるのですが、ここでは二点挙げます。


まず一つはスマホという巨大メディアへの対応。


現在我々はスマホを通じてありとあらゆる情報を収集しています。


自動車の情報すらもスマホで確認、あるいはスマホで購入なんてことも珍しくないでしょう。


10㎝5㎝のスマホで全ての情報を収集する人に何かを発信するとしたら、デザインはより「わかりやすく、シンプルに」なっていくのは自然なことです。


画面内にうつる5㎜くらいのロゴでも「あ、日産だ」と認識できるくらいのロゴは力強く見やすくないといけないわけですね。

 

 

もう一つの理由は、ロゴマークの価値観の変化です。


数百年も昔から、ロゴマーク、家紋などは権威とオリジナリティの象徴で有り続けました。


よって昔のロゴほど複雑で複製しにくく威厳にあふれたデザインだったわけです。


簡単に真似されちゃ困りますしね。


ところが現在においては、誰でもボタン一つでコピーできるしイラレフォトショップでパクったり加工したり自由に取り扱えるようになってしまいました。


ロゴマークの持つ権威が残念ながら無くなってしまったんですね。


誰にでも取り扱えるようになったというのならば、いっそのこと「子どもでも書けるようなデザイン」にして視認性や可読性を増そうと考えるのもまたデザインとしては自然なことです。


一見すると「ただパソコンで字を打っただけ」のようなデザインこそが、より多くの人にストレートに届くデザインになり得るわけです。


(このパソコンで字を打っただけのようなデザインこそがいかに難しいかはいくらでも説明したい気分なのですが、そんなの見てる人には関係ないですよね)

 

技術の進化


これは見た目のデザインというよりも機能性としてのデザインの話なのですが、どうやら現在の車には車のエンブレム部あたりに追突防止機能のレーダーなんかを取り付けることが多いようです。


その結果、エンブレム付近はよりすっきりしたデザインが好まれるようです。


そういった事情からもロゴマークがより取り扱いしやすいデザインになるのはこれからもしばらく続きそうです。

 

まとめ


駆け足の説明でしたが、日産のロゴマークの変更が「世界的な流れとしてはごく普通」というのは少し分かっていただけたんではないでしょうか。


あくまで個人的には車の車体にあまりロゴマークを入れて欲しくないのですが、仕方なくでも入るとしたら今のシンプル化の流れは歓迎したい仕様であります。


ここから日産が立て直すのか、スマッシュヒットとなる車を作り出せるのか分かりませんが、引き続きゴーン去りし後の日産に注目していきたいと思います。