映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

100円の恋 《何かを成仏させるような映画》

 

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映画の点数…82点
ポスターの点数…85点

肝臓にくる映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《100円の恋》です。


主演には安藤サクラさんと、キーマンに新井浩文さん。


クズ役やくせ者役をやらせたらずば抜けた2人の共演なので、その時点である程度の成功は見えていたとは思います。


見てみると案の定というか、肝臓あたりにズッシリくる映画でしたよ。

新井浩文さんについて


この映画の中において、新井浩文さんが実際に起こした事件をイメージしてしまうような描写が一部ありました(劇中で行為を行ったのは別の役者さんですが)。


密室での出来事なので、新井浩文さんがどこまで自覚的に女性を傷つけたのかなどは裁判の結果にしたがって判断しようと思います。


ともあれ過去に公開された映画に罪はないと僕は考える方なので、この文中では事件は存在していないという前提で書いております。


現実世界と映画の世界をどこまでリンクさせて考えるかはいつも難しいですね。

映画のストーリー


未婚、職歴無し、実家暮らしのイチコ(安藤サクラ)さんが、自分の人生を取り戻そうとバイトを探し、恋に落ち、ボクシングに目覚めていく様子を描いた映画です。


ボクシング(スポーツ)を通じて自分の人生をやり直すというタイプの映画は無数にありますが、その中でも一番「見たくないもの」まで描いた映画ではないでしょうか。


ボクシング映画の最高峰の「ロッキー」のように、誰しもが人生を取り戻すことは出来ないというのが現実なわけで。


この映画のイチコが、ボクシングをしたからといって何かが好転することなんてほとんど無いというのは観てたら分かるわけですよ。


就職が決まることは当然ないし、プロボクサーとして一定の稼ぎを得ることも100%無理でしょう。


世界は何も変わらないんですよね。


ただし、自分だけは変わることができる。


そういう映画だったんじゃないかなと思ってます。


もちろん、もっと分かりやすく提示されているようなシーンもあるんですよ。


新井浩文さんとの交流が今後も続くかも知れないという着地でもあるし。


個人の捉え方でしかないのですが、僕は「何かを成仏させるための映画」だと思いました。



何かを成仏させるような映画


何かを成仏させる、という何だか分かりにくい表現でしか言えないのが歯がゆいですが。


ロッキーやスターウォーズのルークなんかは「自分の中に眠っていたもう一人の自分」みたいなものを呼び起こすような話だと思うんです。


とても希望に溢れた話だと思うし、僕も含めて世界中の人に夢を与えたと思います。


でもそういう映画とは違って、イチコの場合は「もうとっくに死んでいる」ものを一度成仏させるしかないという状況なんじゃないかなと。


ボクシングという競技を通じて、というよりはもっと単純に「暴力」というツールを使って自分や誰かを傷つけること。


それで自分自身を一度成仏させてしまうというか。


正しいとか正しくないとかは分かりませんが。


コメディな演出も多い映画ですが、痛烈なメッセージも絶望も含んだ映画だったと思います。

ポスターの感想


ポスターが滅茶苦茶いいですよね。

 

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あの、なんていうんですかね、非常に言いにくいんですが。


少なくともこのポスターの安藤サクラさんは、全然綺麗でも可愛くもないじゃないですか。


メイクも衣装もひどいもので。


ここまで無防備なビジュアルって、ハリウッドですらやらないと思うんですよ。


まるでインスタントカメラで撮ったかのようなチープな素材感や、ピントがいまいちきてない感じ。


このポスター作ってるとき、デザイナーさんは楽しかっただろうなーと想像つきます。


とにかくカッコイイビジュアルを作ることと、映画のメッセージがバッチリ決まる瞬間っていつだって楽しいですから。


希望としては、もう少しだけ文字色のピンクをシアンも混ぜたような濁った色で観たかったくらいですかね。

まとめ


万人向けの映画ではないし、とても地味な作品とは思いますよ。


ただし、万人に届く、届きすぎる映画だとも思ってます。


もし未見の方がいたら、とりあえず鑑賞することをすすめます。


安藤サクラさんの作品としては万引き家族よりも強いメッセージのある作品かもよ、なんて思ったり。


それでは、また。

 

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