映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

ジョン・ウィック2 《理想的な2作目の映画とポスター》

 

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映画の点数…88点
ポスターの点数…90点

 

理想的な続編


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はジョン・ウィック チャプター2》です。


今週にはシリーズ3作目の公開を控えております。


個人的には《ジョーカー》と《ジョン・ウィック》のどちらを先に見に行くべきか頭を抱えております。


心待ちにしていたジョン・ウィックですので面白かったら嬉しいのですが、映画の続編やシリーズ化というのは必ずしも成功するとは限りません。


そのなかにあって、かなり理想に近い形での続編だったのがこのチャプター2でした。


さらには当ブログのテーマでもある映画ポスターまでかなり良い出来だったのも素晴らしいですね。


それでは少し振り返ってみたいと想います。

 

映画のあらすじ


前作で愛犬殺しのロシアンコックサッカーを壊滅させたジョン・ウィックでしたが、今回は愛車を取り戻すために敵地に乗り込みます。


当然のように敵軍を壊滅させたあと、さあ仕事は終わりだと締めくくった瞬間。


かつて手を借りた相手から無茶な要求を受けて殺し屋稼業に再び手を染めます。


あとは色々とはしょって、世界十の殺し屋からジョン・ウィックは追われることになって映画は終わります。


とても楽しんだとは言えないあらすじを書いてしまいましたが、とてもシンプルな脚本で楽しい映画でした。


第一作目の始まりが「犬を殺したチンピラに復讐する」だったのが、気付けば世界中の殺し屋から監視されるという激アツな展開になっています。


一寸先は闇にもほどがある。

 


映画の良かった点


映画の続編の良い点は、さほどキャラクターの紹介に時間をかけなくて良い点にあります。


前作では前半の15分くらいで自己紹介、その後の15分で「実はとんでもなくヤバい奴」の説明だったようなイメージですが、今回はある程度すっとばしてオーケー。


前半10分で大暴れに暴れてビル一つ壊滅させてしまいます。


これで自己紹介おしまい。


そこからゆっくりストーリーに入れるため、とにかく映画全体の加速が素晴らしいですね。


逆に言えば、基本的にずっとドンパチしているのでそれを退屈だと考える人がいても仕方ないかなと思いますが。


個人的にはとても楽しかったです。

 

この手のアクション映画はアイデアが尽きたりネタバレした途端につまらなくなるのが宿命なのですが、少なくともこのジョン・ウィックではかなり理想的な続編になったと思っています。


下手な撮り方をすればただのB級映画だったであろう作品を、豊富な経験と優れたアイデアで見事にA級映画にしています。


何よりも制作側、特にキアヌ・リーブスがこの作品を愛しているということが伝わってきます。

 

ポスターの感想


前作は「いい映画なのに、ポスターワークがサラッとしすぎていてもったいない」という感想でした。

 

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ですが今作ではその反省を活かしたのか、かなり良いデザインになっていると思います。

 

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かなりグラフィカルで、フィクション性の高いデザインですね。


ですがそのくらいのバランスがこのジョン・ウィックという作品の「クールでハチャメチャ」な雰囲気とバッチリ合っています。


ただ単純にカッコイイというわけではなく、キチンと映画の内容にもあっています。


まず、多勢に無勢という基本姿勢がちゃんと表現されています。


いつも多人数相手に戦うジョン・ウィックの勇ましさが出ていますね。


特に今作は映画の中盤から次々に敵に襲われるのでそれを思わせるデザインになっています。


ポスターの内容とビジュアルが合致したこれまた理想的なデザインになりました。

 

まとめ


個人的な考えですが、かなり完璧に近い映画の一つだと思っています。


「人生を変えてしまうような」映画ではないですが、そんなヘビーな映画ばかり観たいわけではないですから。


こういう、いつ観ても面白く、しかもA級に出来が良い映画という作品というのはそれほど多くありません。


これからも度々観ることになりそうな映画になりました。


さぁ3作目が楽しみです。


それでは、また。

 

 

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孤狼の血《面白そうに見えて、やっぱり面白い作品》

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映画の点数…90点
ポスターの点数…80点

 

ジャパニーズ・ノワール


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は孤狼の血です。


監督は白石 和彌さん。


特にここ数年の多作っぷりは異常なくらいですべて鑑賞できてなくて申し訳ないのですが、アウトサイダー達を描かせたら今の日本で5本の指に入る監督と言うのは間違いないんじゃないでしょうか。


ジャパニーズ・ノワールの傑作がまたもや誕生って感じですノワールって言ってみたかっただけです)


主演には役所広司松坂桃李、あとは「あれあなた、アウトレイジにも出てらしたよね?」みたいな極悪俳優達が集合しての豪華な映画になっています。


ベテラン俳優さんだけでなく、僕は存じ上げなかったのですけど阿部純子さんや岩永ジョーイさんなどピカリと光る若手俳優達の名演も観られた作品だと思います。

ポスターの感想


まず映画ポスターから観てみます。

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なんだか久しぶりに観た気がしますね、ここまで汗臭いポスターは笑


このポスターを観た時点で「あ、これは傑作だわ」と思う人間と「これはちょっと…」と思う人とに分かれると思うんですよね。


で、おそらく実際の映画もその通りの反応になると思うわけです。


映画の内容を可能な限り抽出、というかぎゅうぎゅうに絞り出したポスターになっていると思います。


最近見かけないと思いませんか?メインポスターでタバコを吸っているビジュアルなんて。


このタバコだけとっても「よく配給会社はOKだしたな」と思ってしまうくらい。


もっと幅広い客層を呼び込みたいのなら、松坂桃李さんをもっと清潔に大きく載せたり阿部純子さんとのロマンスを感じさせるようなビジュアルにしたら良かったわけです。


でもそうしなかったことに非常に好感が持てます。

 

タイポグラフィ


ちょっと触れておきたいのはタイトルのタイポグラフィー。


定規で書いたような直線的な文字になっています。


「血」という文字にいたっては一部線が省略されてます。


このワイルドなフォントが映画の緊張感を高めていますね。


おそらく普通の明朝体や筆文字でもそれなりに成立すると思うのですが、オリジナルのフォントにすることで硬質な感じや頑固な様子も表現できています。


縁もナシに映画ポスター内に配置するのは難しいのですが、うまく黄色を画面内に調和させています。

 

コントラスト


ポスターの人物達はかなりコントラストを強められています。


普通こういのは失敗として取り扱うのですが、このポスターに関してはこのギラギラ感がマッチしていますね。


同時に、キャラクター達の清濁併せ持つような性格も表しています。


それにしても皆さん間違いなく汗くさいし足もくさいし、みたいな匂いまで伝わってくるようです。


パッと見では映画内のシーンからの雑なコラージュにも見えるのですが、それぞれのキャラクターがいい表情をしているので見応えもあります。

 

映画の良かった点


良くも悪くも「仁義なき戦い」をイメージしてしまう作りになっているのは監督の自信と意地もあるのでしょう。


30年前の広島の混沌を勢いよく作った感じ。


実際、見ていて「今何が起きているんだっけ、誰が敵なんだっけ」とかが分かりにくくなって混乱してくるあたりも仁義なき戦いに通じるものがあります。


シリーズのファンがニヤニヤしながら見るのも良し、何も知らなくても画面を見ているだけでもギリギリ置いて行かれない程度には親切に作ってあるので初心者でも全然オーケーでしょう。


特に役所広司さんは途中から「この人昔からこうだったっけ?」と思うほどの圧倒的な迫力を見せます。


見る前には「いくらなんでも役所広司に強面は無理だろう・・・・」と思っていたのですが、映画全体を乗っ取る見事な演技でした。

 

映画の不満点


これは監督の予想外だったのかも知れませんが、役所広司さんが画面から退場してからの30分は映画全体が失速してしまいます。


それくらい役所広司さんがすごかったと言えばそれまでなのですが、あれだけ大きな磁場のある俳優がいなくなると映画が散らかりだしたような感じになっちゃうんですよね。


それまでが面白かった分、少し残念でしたね。


と同時に、もう一人の主人公・松坂桃李さんが警察官としてある種覚醒するような事態になるのですが、そこがいまひとつ表現できていなかったよに思います。


おそらくですが、あまりブチ切れたり人を傷つけたりとかいうことに慣れていないのでしょう。


演技のうえではすげぇキレてるんですが、やっぱり演技にしか感じなくて。


どこまでいってもちょっと優しそうなんですよね笑


たぶん本当にいい人なんでしょうね。

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まとめ


既に続編も決定しているようで今からとても楽しみです。


可能であれば今作と同じくらいの熱量をもう一度観てみたいのですが、それに見合う俳優さんはいるのでしょうか。


なんにせよここまで骨太な映画を久々に観た気がしてとても幸せですね。


アウトレイジが「カラカラに熱されている」ようなドライさに対し、「ジメジメと湿っぽく燃え上がっている」というようなネチっこさのある作品でした。


映画は少しでも好きならマストな一本だと思います。

 


それでは、また。

 

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ヴェノム 《ザッツ中途半端!!》

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映画の点数…50点
ポスターの点数…50点

 

中途半端映画の見本市


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《ヴェノム》です。


スパイダーマンのライバルとして知られるダークヒーロー・ヴェノムの映画化。


主演にはトム・ハーディを持ってきたりミッシェル・ウィリアムズを入れたりと気合いは十分。


お隣のMCUとの合流も視野に入れつつ「そもそも今のアメコミブームは俺たちソニーが作ったんだぜ」と言わんばかりに堂々の参戦。。。


となったはずなんですけど。


実際の印象としては「これは見事だ」と思えるくらい、本当に何もかもが中途半端な作品になっておりました。


それなりに期待していた作品だっただけに残念ではあるのですが、その中途半端っぷりと振り返ってみたいと思います。

 

企画が中途半端


そもそも企画の走り出しから中途半端だったのだと思います。


スパイダーマンの制作権を持っているソニーは、次はヴェノムの映画を作るぞと10年くらい前から計画していたそうです。

 

そこでなかなかうまくいかずモタモタしているうちに、本家スパイダーマンの方はMCUの方にホームにカミングしてしまいます。


そこでソニーとしては「これはMCUとも関係ない独自の映画だけども、まぁいつかはね、トム・ホランドスパイダーマンと合流なんて出来たら嬉しいよね」みたいな中途半端な態度になってしまいます。


でもそんな経緯はファンにとっては何も関係がないことですよね。


「なんでヴェノムなのにスパイダーマンは出ないの?」というのが当然の疑問ですし、だとしたら「そもそもスパイダーマン無し、ヴェノム単体で1本の映画が成立するほどの魅力はあるのか」という問いに応える必要が出てきます。

 

キャラクターとして中途半端


ではヴェノムというキャラクターにどう魅力を持たせるのか。


間違いなく最初は「今たくさん乱立しているアメコミ達の誰よりも残虐なキャラクター」として描こうとしたのだと思います。


ところが前述の通り、最終的にはMCU側にも介入したいヴェノムとしては観客の年齢制限をかけたくないわけです。


となると出来上がったのは、人をどれだけ殺害しても血の一滴もでない欺瞞的なキャラクターです。


頭から人を丸かじりするというシーンはあるものの、血は出ないし死体も写らない。


これで「俺は残忍だぜ」みたいなこと言われても「はぁ」としか言えないですよね。


別に僕自身は血が出たりする映画が好きとかではないのですが、この映画に関しては(少なくともこの映画の方向性としては)血がドバドバ出る必要はあったと思います。


じゃないと「すごい力を持った奴だが、本質的なところでは残虐で信頼できない」という設定が成立しなくなります。


一言で言えば、特に残虐でもなんでもないキャラクターがチョロチョロっと動き回るだけです。

 

 

映画として中途半端


残虐表現を抜きにしても、映画として中途半端だと思います。


トム・ハーディの演じるエディの描き込みが足りていないと感じました。


「特ダネを狙うジャーナリスト」なのか「正義の実現のために燃える記者」なのかいまいち分からない状態でヴェノムになってしまうので「自分をクビにした世界に復讐したい」のか「やはり正義の為に活動したい」のかいまいち分かりません。


そんなエディがヴェノムとの共存関係を受け入れていく理由もよく分かりません。


「なんとなく気があう」くらいの理由でエディとヴェノムはその後大したトラブルも犯さず一緒にいることを受け入れていきます。


脚本も取り立てて良いわけでもなく、「クビになった主人公」「婚約相手にフられた主人公」「いざとなったら助けてくれる元カノ」「欲望に取り憑かれたヴィラン」と型通りな感じ。


特に見所らしいところもないままにスムーズに映画は終わります。


絶対に許せないようなミスは無いものの、逆に言えば何も感じないままでした。

 

アクションシーンの中途半端


アクションシーンですらも例外でなく中途半端だったように思います。


チャチなシーンはありません。


よく出来たCG格闘シーンだと思います。


でも、やはり突き抜けない。


特に夜のアクションシーンがほとんどなので、何をやっているのか分かりにくいシーンも多かったです。


スパイダーマンのライバルであるならば、せめて空を自在に動き回れるくらいのことはして欲しかったです。


原作がどのようになっているか分かりませんが、ヴェノム自体も結構鈍重でノソノソして見えた印象です。

 

ポスターも中途半端


映画ポスターもまた中途半端でございました。

 

せめて「なんだこれは!!ダメすぎる!!」というくらいだったらいいのですが、別に悪いということでもない。。。


エディとヴェノムが融合しているということを伝えるという機能はちゃんと果たしていますし、彩度をぐっと抑えてダークなトーンを演出出来ています。

 


日本語版ポスター


これもまた、いいところは特にないもののやはり機能はしています。

 

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主要キャラの3人と、背景にヴェノム。


実にシンプルな構成。


あえていうならキャッチコピーがあまりにも狙いすぎかなと思います。


「最も残虐な、悪が誕生する」


これじゃ説明しすぎな気がしますね。


そんな映画は無数にあるのだから、もっとこの映画独特な視線があっても良かったのではないでしょうか。


でもこれもまた年齢制限をかけたリミッターが悪い意味で働いていると思うのですが。


まとめ


映画を見終わった感想は「普通だった」でした。


確かに普通には面白いです。


でももはや、普通で満足できる目線ではないというわけなのでしょう。


ずいぶんと贅沢な話です。


これからもアメコミは量産されていく予定です。


そのなかにおいて、明確に「人を食べる」キャラクター・ヴェノムはまだまだ価値のある存在だと思うんです。


ここからの巻き返しを期待するところです。


それでは、また。

 

 

 

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ホタルノヒカリ 《小学校の演劇レベル》

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映画の点数…2点
ポスターの点数…30点

 

ずっと、面白くない


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はホタルノヒカリです。


実際のところ僕はこの映画に全く興味はなかったのですが、いつもチェックしているライムスター宇多丸さんの映画評の中でもトップクラスで批判されていた作品だったので観た次第です。


皆さんもたまにあると思うんですけど、「今日は映画を観たいけど、真剣なテーマのやつではなくてサラッと鑑賞できるやつにしよう」という日。


そういう日をチョイスして観たわけですよ。


仕事に疲れた毎日の、2時間のご褒美タイムみたいなものですね。


はい。
すいません、甘くみてました。


全然ご褒美じゃなかったです。


なんですかね、拷問ですかね。


なにしろですね、映画が始まってから1秒も面白くないんですよ。


1秒も、ですよ。


ですがその感情も映画の残り40分くらいまでで終わります。


そこから先は「俺はこの映画を作った奴を二度と許さない」という怒りに変わっていきます。


冗談でもなんでもなく、とにかくずーーーーと面白くないです。

 

映画の点数


一応映画の点数には2点ちゃんとあげています。


内容としては「動く綾瀬はるかさんを見ることが出来る」で1点です。


まぁこれはコカコーラのCMとかでも見ることが出来るのでどうでもいいんですけど。


綾瀬はるかさんの魅力自体は何一つ伝わってこないですしね。


静止画だったらあと5点あげていたと思います。

 


もう1点は、映画の途中で出てくるシトロエンの車(2CV)がかっこいい。

以上です。


とはいえこれも「なんで舞台がイタリアなのにシトロエンなんだよ・・・・普通にイタ車フィアットとかロメオでいいじゃねえか」というのもありますシトロエンはフランス車)


なので本当は0.5点、計1.5点となります。


他に何かあったかなと思い出そうとするのですが、やはり特に何もないので1.5点です。
おめでとうございます。


僕の中でこれより点数が低い映画は《少林少女》と《ギャラクシー街道くらいですかね。

 

映画の不満点


いいところは本当に無かったので不満点を書くしかないんですけど、逆に言えば全部不満点なんですよね。。。


ただそれでもあえて言うならば、この映画はコメディなわけじゃないですか。


だったら、笑いのシーンは当然真剣に作っている。。。と思うんですけど、いや全然ですね、真面目に作ってない、絶対に。


笑いって、「緊張と緩和」とか「タイミング」とかとても繊細なものですよね。


それをメインキャラの4人全員に求めはしませんよ。


特に藤木さんと手越さんの演技はけっこうひど・・・・・いや、まぁいい、とにかくこちらを映画にしないと意味がなにわけです。


ところが、これが本っっっっっっっっっっっ当につまらない。


ただ脚本に書いてあるセリフをおどけながら言っているだけだから。


なんで観ているこっちが恥ずかしい気持ちにならないといけないんでしょうか。


演者に出来なかったとしても、編集で面白いタイミングに詰めるとかいくらでも出来たでしょう。


それをやってないし、やる気も無かったのでしょうね。

 

ポスターの感想


映画は2点でしたが、映画ポスターの方はどうでしょうか。

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レイアウトは悪くないと思います。


全体に白をベースにして、そこに花嫁姿の綾瀬はるかが寝転がっている。


タイトルのマゼンタがアクセントとして効いていて、ポスター全体の色彩バランスはとてもいいです。


キャラクターの側にはビールの缶や脱ぎ散らかした衣類などが散乱している。


これだけでも映画のテーマとかキャラクター説明は出来ていますね。


その他が全然ダメですね。


なんで下の方に小さい写真をパラパラ並べるんでしょう。


日本の映画ポスターのひどい点の一つですよね。


あえて言えば松雪泰子さんと手越祐也さん以外は完全に脇役なんだしいらないでしょう。


安田顕さんとか、なんであんな変な格好と表情の写真をチョイスされているのか。


さらにその下に並べたローマの観光写真。


こんなの並べたら、より一層この映画が面白くないんだろうなと気付くだけでしょう。


全然面白くなさそうだもん。


それに背景の教会も意味が分からないです。。。。


これを観て「お、今度の舞台はイタリアなのか」って分かる人が日本に何人いるんですか?


だったら「ローマだとすぐに分かるもの=コロッセオ、真実の口」にするとか、「ローマじゃなくてもいいから綺麗な教会」にするとかでいいじゃないですか。


すげえ中途半端でしょう。

 

文字情報


キャッチコピーとかはもう触れたくもありません。


全然面白くない。


このテンションで映画をやりますよという宣言なら、むしろキャッチコピーなんて無い方が100倍良かった。


あとはもう、「アホ宮、ローマだ!」「ぶちょおお」だってなんなの、しかも面白くないとか最低だなと思います。

 

まとめ


もうこれは一言ですね。


見ない方がいいです。


「俺は綾瀬はるかが出ている作品は全て観ないと死んでしまうんだ!」という方や、「どうしても無駄にしたい時間がそこにはあるんだ」という強い決意を持った人だけです。


制作陣の方にお願いしたいのですが、やる気がないんなら映画なんて作らないでください。


それでは、また。

 

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勝手にふるえてろ 《完全な「俺」映画》

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映画の点数…99点
ポスターの点数…55点

 

最も好きな邦画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は勝手にふるえてろです。


松岡茉優さんが初主演を務めてます。


この映画自体は2017年の映画なんですけど、2018年は《勝手にふるえてろ》《万引き家族》《ちはやふるなどで一人で大暴れしていた印象ですね。


今最も好きな俳優さんの一人です。


と同時に、僕はこの《勝手にふるえてろ》が個人的には邦画ナンバーワンの映画だと思っています。


【個人的に】とわざわざ足したのは、映画としての完成度は万引き家族カメラを止めるな!の方が確かに高かったと思ってるんですよ。


もちろん、今までの数多の優れた映画もたくさんあって。


ただしそれでもあくまで個人的にはこの映画が最も大事な作品だし、特に主人公のヨシカとは今後の人生で何度も立ちはだかるのだろうなという愛すべきキャラクターだったり。


だからこそこのブログのヘッダーにもチョイスしてるんですけどね。


とにかく、僕はもはやこの映画を冷静に観ることなんか出来っこないくらいに取り憑かれております。


そういう、ちょっと頭のとろけた人の文章だと思ってお読みください。

 

「俺」映画


この映画を観た方の感想でもたくさん見かけたのですが、「まるで自分を見ているようだ」という印象を強く受ける作品なんですね。


僕もやはりその通りで、主人公ヨシカ(松岡茉優)が自分に見えてしょうがなく。


そのヨシカがあまりにもイタい行動をとる度に「お願いだからもうやめてくれ」と思いながら映画を観ていました。


映画館で途中退席しようかと思ったのは初めてかも知れませんね。


「これ以上この映画を観ていたら僕はもう立ち上がれないかも知れない」というほどに心臓にショットガンをぶっ放された気持ちでした。


それくらい「俺」映画だったからこそ大事な作品になりました。


だから僕は「絶対に面白い映画だから見ないと損だよ!」とまでは言えないというか。


この映画のこと、ヨシカのことを全く理解できない人もたくさんいると思うんですよ。


でももしかしたら僕がそうであったように、生涯忘れられないような出会いになる可能性も秘めている素晴らしい作品だとも本気で思っているので。


やっぱり全ての人に見て欲しい作品だとは思います。

 

映画の感想


もはや好きすぎて冷静な判断は出来ないんですけど、あえて二点だけ苦言を。


残り15分くらいで出てくる花火と卓球のシーンはちょっと過剰すぎたかなと思います。


その直前のシーンでヨシカは「妄想から強制的に現実に引っ張り込まれる」というシーンが連続していたので、再度ファンタジー色の強いシーンは入れない方が良かったのではないでしょうか。


そして、さすがに効果音・SEが多すぎるかと。


コメディシーンに多用されていて、確かに面白くはあるのですがいくらなんでも説明過多な音の使い方が多かったかと思います。


コメディ映画なので多少はあってもいいと思うんですけどね。


最後に付箋が「燃えるような音をして濡れる」シーンがあるのですが、ああいうシーンでの音の緊迫感を持たせるためにはその他のシーンでも音に気を配る必要があったのではないかと。


気になったのはその二点くらいです。


あとはもうとにかく大好きです。

 

ポスターの感想


愛してやまないこの映画ですが、映画ポスターに関しては少し悔しい思いをしています。


ビジュアル的にはとてもいいポスターだとは思うのですが、映画ポスターとしてはもっとやりようがあったのではないかと思います。


この映画をジャンル分けするなら「コメディ」だとは思うのでコメディ的なポップな絵作りをするのは分かるんですが、ちょっとやりすぎていると思っていて。


コラージュで映画の要素をたくさん入れているのは見ていて楽しいのですが、かえって地味な印象を増しているような気がするんです。


映画の見せ場のようなものを並べているのに、同じ人物が何度も出てきていたり、さすがに不要だと思えるような人物まで載っていたり。


これでは逆に「あんまり見せ場のない映画ですよ」と感じてしまうと思うんですよ。


実際にこの映画は「車が爆発する」とか「血が大量に出る」とか具体的な見せ場はない映画です。


ですがその分、主人公であるヨシカ=松岡茉優という人物をずっと見続けていられる幸福感があるじゃないですか。


だったらもっと正々堂々と松岡茉優のアップのみでも良かったんじゃないですかね。


このポスターにおける松岡茉優さんは本当に見事な表情をしているし、この顔だけでも十分にポスターとして機能したと思うんですよ。


確かにこの顔だけでは暗すぎるので、背景の配色などでポップさを足すのはいいと思いますが。


松岡茉優」「赤い付箋」「キャッチコピー」「タイトル」という要素くらいに絞った方が良かったのではないでしょうか。


この映画内ではヨシカは最後の残り5分くらいまでは実はずっと一人だったので、もはやイチと二の二人も画面からいなくて良いのではと思います。

 

キャッチコピー


キャッチコピーはとてもいいですね。


小説についている「恋愛、しないとだめですか?」というシンプルなキャッチコピーもいいんですけど「この恋、絶滅すべきでしょうか?」というワードはかなりパンチ効いてます。

 

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「この恋、終わらせるべきでしょうか?」では復活の余地が残っているし、次への希望を感じます。


ですが「絶滅」というワードになるだけで「もう二度と蘇らない」とかそれが即ち、それまでの人生の「死」を意味することを強く感じることが出来ます。


変に仰々しくなく、丸フォントでサラッと入っているバランスもいいですね。

 

まとめ


あまりにも自分にとって好きな作品すぎて、映画自体をまともに考えることはもはや難しいなと改めて思いました。


もしも見ていないという方がいたら、とにかく一度でいいから見て貰いたいというのが僕の言いたいことの全てです。


ちなみにですが、映画が終わったあとに流れる黒猫チェルシーの楽曲も本当に素晴らしいです。


劇中、二を演じた渡辺さんはバンドは活動休止して今は俳優業に専念されているようですが、良かったらまたバンドとしても活動を見てみたいと思います。


いつも以上にまとまりのない文章で申し訳ない。


それでは、また。

 

 

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クライシス・オブ・アメリカ《いまひとつ跳ねない一作》

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映画の点数…73点
ポスターの点数…80点

 

ジャンル不明な作品


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はクライシス・オブ・アメリカです。


2004年のアメリカ映画で、監督は羊たちの沈黙で知られるジョナサン・デミさんです。


主演にデンゼル・ワシントンですが、今作のデンゼル・ワシントンは「万能で知的」なイメージとは違い基本的には何も知らなくてフラフラしている役で登場します。


《怒り》という映画の渡辺謙さんの時にも思ったのですが、デンゼル・ワシントンにしろ渡辺謙にしろ登場するだけで「この人なら何でも解決できそう」というキャラに見え過ぎちゃうのが損なところですね。


この映画はサスペンスであり、戦争映画であり、SFでありヒューマンでもあります。


そのあたりのバランスがジョナサン監督は得意とするところなのでしょうが、今作に関してはちょっと散文的な感じもしちゃったのかなとも思います。

 

映画の内容


湾岸戦争にて活躍した英雄レイモンドは、副大統領候補として選挙活動に大忙し。


過激派の過保護ママ・メリルストリープの溺愛を受け「頑張るぞ僕!」と意気込んでいたところ、かつての上官デンゼル・ワシントンが「お前さぁ、ぶっちゃけ湾岸戦争の時活躍したとか嘘じゃね?」と言い出してきたからもう大変。


俺たちは洗脳されているだの、アメリカが乗っ取られようとしているだの妄想ばっかり。


戦争のトラウマを装って記憶を改ざんするなんてあるわけないよね・・・?


みたいな話です。


一部意訳が入っている気もしますが、あえて一言で言うなら「洗脳もの」というジャンルになります。


自分は洗脳されているのか、それとも狂っているだけなのか。


この「得体の知れない誰かにコントロールされている」という間隔はもしかしたら誰しもが考えたことのあることなのかなと思います。


そのあたりにうまくノレるかが映画を楽しめるコツかなぁなんて思ったり。

 

映画の感想


面白かったです。


・・・・・・・・・ある程度は。


なんていうんでしょうね、テーマ全体なんかは「なるほど、面白い」と思えるのに、最後のところでノリきれない感じが残ります。


原因はいずれの題材を扱うにも中途半端だった点ではないでしょうか。


例えば「かつての仲間が精神的に異常を抱えている」というような話が出るわりには具体的な描写は無かったり。


マッドサイエンティストにチップや催眠術を使って洗脳されているというテーマのわりには、その科学者は最後は出てこなかったり。


国家転覆を狙う計画だったわりには、アメリカ政府自体も悪いことしてたり。


特に主人公のデンゼル・ワシントンも含め、キャラクターの演出がうまくいっていない印象があります。


誰が何を考えているのか全然分からないんですよ。


どの人物がその情報をどこまで把握しているかの説明がないから、「バレるかバレないか」みたいなハラハラもしないし。


もう一度脚本をしっかり詰めてから映画を作るべきだったのではないかと思います。

 

映画の良かった点


全体的にはテンポが良くない映画だとは思うのですが、ラストの「撃つのか、撃たないのか」みたいな狙撃シーンは素直にとても面白かったです。


あのシーン自体もキャラの心情が説明されていないのですが、そこは俳優達の微妙な表情の変化なんかであれこれ推理する余地があるので説明を省略したのは大正解でしょう。


あの狙撃シーンがあっただけでもこの映画に十分な価値があったと思います。

 

ポスターの感想


ポスターもこれまた「なんか惜しい」というラインですが。。


でも全体的にはとてもいいポスターだと思います。

 

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ある程度距離をとってポスターを見ると分かりやすいのですが、画面をほぼ半分くらいに区切って白と黒の二分割にしています。


そこにキャッチコピーである「全てはコントロール下にあるのか?」というテーマがうまく映えています。


「自分であって自分でない感覚」というのをデンゼル・ワシントンの表情と色のコントラストだけで表現出来ているのがすごいですね。


そういうダークなテーマにも関わらず、タイトルにはアメリカを象徴するような星のマークがついているあたりに皮肉があっていい感じです。


「惜しい」と言った点は、いくらなんでも説明が足りなすぎるということです。


情報はデンゼル・ワシントンの顔と「全てはコントロール下にあるのか?」ということだけ。
(映画自体はリメイクなので、内容を知っている人は知っているのですが)


せめてほんの少し戦争の要素を入れるとか、催眠を思わせる要素があっても良かったのかなと思います。


説明過多になると冷めちゃうのでバランスが難しいのは百も承知ですが。

 

まとめ


繰り返しますが、面白い映画でしたよ。


でも最後のところで跳ねない。


それだけに心残りな映画だなと思います。


いくつかのボタンの掛け違いでグッと面白くなりそうだったのに。


だからこそ映画は面白いんですけどね。


それでは、また。

 

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ジョン・ウィック 《実はキアヌの最高傑作??》

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映画の点数…85点
ポスターの点数…50点


殺し屋ブームの中の一作


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はジョン・ウィックです。


来月にはシリーズ3作目の公開を控えており、ここで改めて「やられたらやりかえす。70倍返しだ!!」でお馴染みのジョン・ウィックさんの功績を振り返ってみようと思います。

 

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70倍返しだ!というのは、ジョン・ウィックさんはなんとも過激な愛情の持ち主でして、飼い始めて数日の子犬を殺害されたことに腹をたてて最終的に70人以上の人間をオーバーキルしてしまう方なんですね(大雑把なあらすじ)


うかつに犬を殺すものではありませんな。


ジョン・ウィックの公開は2014年ですが、同じ時期にたくさんの「有名俳優達が殺し屋になるシリーズ」が作られまして。


リーアム・ニーソンの《96時間》を皮切りにデンゼル・ワシントンの《イコライザー》、トム・ハンクスの《アウトロー》などなど。


どの作品も好きなんですけど、その中でも僕はこの《ジョン・ウィック》が一番好きなのです。


他の作品との違いは「ジョン・ウィックは続編も申し分なく面白かった」点だと思ってます。


他の続編は、残念ながら1作目は越えられていない印象で。


なので否応なく《ジョン・ウィック3》には期待してしまいます。

 

映画のストーリー


映画の内容自体は特に難しいことはありません。


愛する妻を失い、失意の底にいる元軍人・元殺し屋のジョン・ウィック


そんな愛する妻の残してくれた飼い犬を「ロシアン・コックサッカー」に殺されたもんだからもう大変。


「ぜってーぶっ殺す!」なんて野暮なことは言わず、ダークスーツに着替えて粛々と復讐を開始します。


こう書くとまるでB級映画のような概要です。


実際のところこの映画は20億円程度で制作されており、巨大なヒットを狙った作品でもなかったのでしょう。


ところが蓋を開けてみるとB級映画の皮をかぶった、とんだA級映画」だというのが分かってきます。


この映画の美点は「とにかくシャレていること=非現実感」と「丁寧に作り込まれたアクションシーンの迫力=現実感」のバランスが非常に良かったことだと思います。


殺し屋が集まるホテルや独自のルール設定なんかは見ていてニヤニヤしちゃうし、逆にアクションシーンではキアヌが自ら取り組んだ体術をしっかり誤魔化さずに見せてくれます。


まさに観たいシーンをとにかくたっぷり詰め込んでくれた素敵な一作です。

 

映画の良かった点


僕がこの映画の好きな点は「色彩」です。


そもそも「殺し屋が大暴れする」という非現実的な話、おとぎ話を観ているわけです。


それを実在感を持たせて描くのも一つの方法でしょうが、少なくともジョン・ウィックでは「極端にデフォルメして」描いていますし、そこがカッコいいのです。


冒頭の「サッド・キアヌ」なシーンでは青色のトーンで画面が統一されています。


いざ復讐が始まるとネオン・ピンクやピアノブラックなど艶のあるトーンで鮮やかさが際立ちます。


キアヌのスーツも間違いなく動きにくいはずなのに艶のあるダークスーツ。


とにかく画面全体が色っぽくて惚れ惚れするんですよね。


ストーリー自体はわざとと言って良いくらいチープにしてあって、その分演出やアクションシーンに集中出来るようになっています。


前に挙げたリーアム・ニーソントム・ハンクスデンゼル・ワシントン達には無くてジョン・ウィックのみが持っている魅力はこの「艶っぽさ」ではないでしょうか。

 

ポスターの感想


映画自体はメチャクチャ面白いのですが、何故かポスターに関しては少し物足りないです。


まずは日本語版でよく見かけたポスター。

 

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エキセントリックな配色や、ある意味チープなフォントなんかは確かに映画本編の良さを感じるんですよ。


でも肝心の主人公ジョン・ウィックが「なんでこの写真をチョイスしたんだろう。。。?」というくらい魅力を感じないんですよね。。


このキアヌだけ観ても「凄腕の殺し屋」とか「止められない復讐者」とかには見えなくって。
ただ銃を持っているだけの人にしか見えないんですよね。


トリミングも中途半端で、もっとグッと寄ってジョン・ウィックの狂気を映し出すとか、逆にもっと引いて艶っぽいスーツ姿を全部見せるとか出来たと思うんです。

 

キャッチコピー


日本語版のキャッチコピーは、とてもいいと思います。


「見惚れるほどの、復讐。」


復讐という物騒な言葉に見惚れるというワードをくっつけたのはとても良いセンスを感じます。


実際にそのような内容ですからね。


だからこそポスターも、もっとうっとりするような美しさが欲しかったところですね。

 

アメリカ版ポスター


こちらのポスターもカッコイイとは思うんですけど、あくまでも「まあまあ」ですかね。

 

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銃口の箇所をタイトルにかぶせるというワンアイデアは悪くないですし、微妙ながらタイトルがブレているのも彼の精神性を表しているようです。


不気味な緑色の配色も悪くないし、まさに殺される寸前に見るキアヌの表情を表現した構図も悪くないです。


でも、そこが限界というか。


このジョン・ウィックという映画が持つポテンシャルほどには映画ポスターが機能しているとは思えないですね。


やはりこの映画の魅力は色っぽさであり美しさであり艶感ですよ。


次作であるチャプター2ではそのあたりを反省したのかポスターのビジュアルが改善されています。


それはまた次の機会にでも。

 

まとめ


思わぬ形で登場したとも言えるジョン・ウィックというシリーズ。


もしかしたらキアヌすらもここまで魅力的な映画になると思っていなかったのではないでしょうか。


個人的には《スピード》よりも《マトリックス》よりも大好きなシリーズになりました。


だからこそ、もっと広くこの映画を正しく魅力的に伝えるために映画ポスターにはもうちょっとアイデアを持って欲しかったところですね。


それでは、また。

 

 

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スリービルボード 《地域性が大事な映画とポスター》

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映画の点数…91点
ポスターの点数…60点(やむを得ず)

 

アカデミー賞に半歩届かなかった一作


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はマーティン・マクドナー監督作《スリービルボードです。


アカデミー賞では作品賞含む6部門にノミネートされたのですが、ギエルモ・デルトロのシェイプ・オブ・ウォーターに作品賞と監督賞は持って行かれてしまいました。


あくまで個人の意見としてはスリービルボードの方が心に刺さるものは多かったので少し残念です。


あ、もちろんデルトロさんは大好きな監督ですよ。


とはいえ主演女優賞と助演男優賞はキッチリ受賞したのは良かったですね。


どちらも最高の演技でしたが、特にサム・ロックウェルは本当にいい仕事をしたなと思っています。


ただしこの映画、役者陣だけが良かった映画では当然なくて映画本編もぶっとんで最高です。


映画ポスターと合わせて振り返ってみたいと思います。

 

映画の概要


元々の映画の原題は「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri」です。


ミズーリ州・エビングの外れにある三枚の看板広告、が直訳でしょうか。
けっこう長めのタイトルですが、もちろん意味があってのことです。


ミズーリ州という、アメリカにおいてかなり保守的で有色人種や性的マイノリティへの差別意識を強く残した場所が舞台であるというのは、この映画において非常に重要なことだからです。


さらにそのミズーリ州の中でも片田舎の方の話。


いよいよ限定された閉鎖的な雰囲気がタイトルだけでもフガフガただよってきます。


邦題は「スリービルボード」とかなり簡略化されているのですが、確かに無理はないでしょう。


多くの日本人にとっては「なんとなく南部の方が黒人差別が強い」くらいの知識しかないでしょうし、ミズーリ州がどこにあるのかさえ分からない方が大半でしょうから。


そんな片田舎で起きた未成年の少女がレイプされ焼死体で発見された事件を元に映画は動き出します。


殺害された少女の母親ミルドレッドは、犯人を逮捕できない警察に対し不信感を強めます。


(基本的には)善人である警察署長は、自身が批判されることに戸惑いながらも事件の解決を目指します。


差別主義をむきだしにした新人警察のディクソンは、署長を非難する母親ミルドレッドに対し攻撃的な姿勢をとります。


レイプ犯の追及そのものが映画の本ストーリーではなく、狭いコミュニティの中で交錯していく人間模様が描かれた映画となっています。

 

ポスターの感想


前述したことを踏まえ、映画ポスターを観ていきます。


まずはアメリカ版の一つ。

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大自然の中に3枚の看板とパトカー。


そしてタイトルや役者名のみというシンプルな構成です。


ですがそれぞれの要素が絡み合ってこれだけでも大きなメッセージを持っています。



空はほとんど夜に近い夕暮れで、ポスターの面積のおよそ6割程度は黒い雲に覆われています。


どっしりと重く巨大な空が、小さな小さなパトカーにのしかかってくるようです。


これは「一件の小さな事件ごときは、大きな現実の前に解決できないことだってある」という暗示でしょう。


これだけでもすでに、自分たちの存在がちっぽけに感じる息苦しさを感じます。


そこにうつるタイトルには………ミズーリ州の形が縁取られています。


これを観て「ああはいはい、ミズーリ州の話ね」というだけでも少なくともアメリカ人にとっては一種の意味合いを持つわけですね。このあたりは日本人には伝わりにくい部分なのでちょっと悔しい。

 

日本語版ポスター


では日本語版ポスターではどうなるかと言うとこうなります。

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なんていうんですかね。


困ったんでしょうね笑


自分もグラフィックデザイナーとして働く以上「こりゃ参ったな」みたいな仕事はいくつかあります。


この映画のデザイン担当の方も結構困ったのでしょうか。


だって何をデザインしたらいいのか良く分からないですよねこの映画笑


というわけで、人間同士が交錯しているようなビジュアルということにしています。


観客動員に当たっては「映画ファン」以外は結構無視したのでしょう、ポスター内にまさかの町山さんの推薦コメントが載っています。


映画ファン以外での町山さんの知名度はグッと落ちるでしょうが、それよりも映画ファンの一定のフォロワーに宣伝する方が得策と判断されたのでしょう。


ミズーリ州の地図の形を見せたところで、それがどこなのか分からないというのは大きなハンデです。


まぁ仕方ないんですけどね。


日本の映画だって大阪とかはよく出てきますが、外国人にとって大阪がどこにあってどのような人がいるのかなんて分からないのでしょうから。


ただ不満点としては、いくらなんでも暗すぎる印象なのが気になります。


あまりにも背景が暗すぎて、まるで本格ミステリーのような雰囲気。


でも実際のこの映画はコメディ的な要素もたくさん入っています。


ブラックジョークとはいえ、声を出して笑ってしまうようなシーンもとても多いですからね。


むしろ「娘がレイプされて殺されて、犯人を捜す話」という要素を前面に出す方がお客さんが入るという読みからこのようなポスターになったのでしょうか。


だとしたらちょっと浅薄かなぁなんて思ったり。

 

まとめ


「地域性」というものが非常に重要な映画というのは、取り扱いが難しいのだなとポスターを観て感じます。


映画本編を思い切り楽しむには一定の知識が必要ですからね。


ただしそれを抜きにしても、自分に置き換えてしまいたくなる登場人物がたくさん出てくる映画です。


まだご覧になっていない方がいましたら、暗いパッケージに騙されず、普通に楽しむ感じで観られてください。


それでは、また。

 

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ジョジョの奇妙な冒険 《映画もポスターもどっちも無駄無駄無駄無駄》

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映画の点数…20点
ポスターの点数…10点

 

大人気シリーズの映画化


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けないです。


監督は三池崇史。主演に山﨑賢人、脇には神木隆之介山田孝之伊勢谷友介ら豪華メンバーを揃えました。


僕自身のジョジョとの距離感としては、小学校の時にまさにこの東方仗助編をやって読んでました。


そのあと一通り全巻読んでいて、個人的に一番好きなシリーズはジョルノ・ジョバーナ編ですね。


マニアというほどではないですが、そこそこのファンくらいの感じです。


そんなジョジョの奇妙な冒険


実写化が決まった時に誰もが思ったことでしょう。

 

大丈夫か?

 

実写化、大丈夫なのか?


多くのファンは、ひどい結果になるようだったらいっそのこと実写化なんてしないでくれ、というのが本音だったことでしょう。


さぁ果たして、この映画は大丈夫だったのでしょうか。

 

大丈夫じゃなかった


やっぱダメでした。


それはもう、ダメでしたねー。


三池監督の作品には大好きな作品も複数あるので監督自身の手腕を疑うわけではないのですが、これはイカんですな。


その前に実写化したテラフォーマーズもひどくって、さすがにテラフォーマーズよりはマシだとは思っています。


でも実はテラフォーマーズよりも脚本はひどかったのではないかと思ってます。


そのへんのことをポスターの感想と共に取り上げてみようと思います。

 

ポスターの感想


まずポスターの方から見ていきましょう。

 

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率直に聞きたいんですけど、この映画面白そうですか???


ポスターの役割って「お、今度ジョジョの実写化やるのか、観にいこう」という人から「マンガは知らないけど映画は面白そうだな」とか「きゃー!山﨑賢人くんカッコイイ!映画観に行こう!」とか思ってもらうことが目的なんですよね。


そのいずれも満たしていないんですよ。

 

ジョジョのファン目線


まずジョジョを知っている人からすると「こんなのどう観てもジョジョじゃない」と思いますよね。


ジョジョの魅力って、コマの全てが芸術作品のようになっているようなマンガで。


当然表紙や巻頭カラーなんかでは「ジョジョ立ち」なんて言葉も生まれるくらい奇天烈なポージングを決めてしまうほどに非常にグラフィカルな表現をされます。


そのマンガの実写化として、なんですかねこのヌル〜〜いポスターは。


全然芸術的なセンスも感じない、ただ登場人物を並べただけ。


タイトルの文字もコピーの文字も全然ジョジョっぽくないし。


ジョジョファンから観てはっきりと0点ではないですかね。

 

一般の観客目線


ジョジョのことを知らない人からたらどうでしょうか。


これまた全然ダメですよね。


何やら超能力を使うような映画だというのは分かります。


でもその他のことがまっっっっっったく分かりませんよね。


何故背景にヨーロッパっぽい建物が建っているのか、伊勢谷友介の髪型はどうなっているのか。


ていうか全員ただのコスプレにしか見えないし、こんな人が実際にいるだなんて全く思えません。


ハードルは高いとは思いますが、コスプレに見えたらその時点で失敗なんですよ。


似たような衣装を作ればいいだなんて当然なくて、もっとゼロから美術スタッフと協力して世界観を作らなければならなかったと思います。

 

役者陣ファンの目線


山﨑賢人ファンや神木隆之介ファン目線からみてもこのポスターはダメでしょう。


だって全然カッコ良く見えないし。


理由としては先ほどと同じですが、コスプレにしか見えないからですよね。


ただの「演技をしてる人」にしか見えず、まさかこういう人物がいるだなんてとても思えないクオリティです。


ちゃんとキャラに乗り移ってはじめて「カッコイイ!」となるべきじゃないですか。


近年のハロウィンパーティーの方がもっとクオリティ高いですよ。

 

映画の感想


ポスターの体たらくと同様の映画でした。


終始「今、この場面で、何が言いたいのか」が分からないんですよ。


とにかく映画化するに当たっての脚本のブラッシュアップが出来ていません。


言い訳としては「続編を作った際の伏線として」みたいなことなのでしょうが、不要な情報があまりにも多すぎます。


マンガでは非常に重要な空条丞太郎ですが、この映画においてはストーリー上まったく必要ないでしょう。


それよりも東方仗助と友人くらいにキャラは絞って「俺たちの町は俺が守る!」と整理した方が良かったじゃないですか。


普通に映画を観てると「この伊勢谷友介はものすごく強そうだし、この人に全部任せればいいんじゃない?」としか思えません。


主役の邪魔をしているだけですよね。


敵の配置にしてもそうです。


今回は山田孝之岡田将生が敵として登場するのですが、ボリュームがどう考えてもおかしい。


前半1時間を山田、後半を岡田みたいな感じなのですが、そんな作りならドラマでやればいいじゃん。


映画としてのつながりも全然うまくないし、ストーリーが途中でブツンと切れるような印象なので気持ちも盛り上がっていきません。


別にラスボスの吉良を出せとは言いませんが、「こいつを倒すことが映画のゴール」とか「あと30分で敵を倒さないと誰かが死ぬ」とか映画に目標がないと。


ただただ目の前で起こっていることに一つ一つ向き合ってるだけで、映画としての起伏が全くないんですよね。


一言で言っちゃえば、すごく退屈でした。

 

まとめ


なんか久しぶりに「映画もポスターも救いが無い」作品に出会った気がします。


逆にどうして続編を作れる気でいたのか聞きたい。


少なくとも山﨑賢人さんではもう無理でしょう。


オーディションで選んだか指名で選んだか押しつけられたか知りませんが、どうみてもジョジョに見えませんでしたけどね。。。


だいぶ辛辣な意見ばかりになりましたが、一言だけ言わせてください。


マンガは面白いです。


それでは、また。

 

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レディ・プレイヤー・ワン 《映画もポスターも当たり前のように及第点》

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映画の点数…81点
ポスターの点数…95点

 

スピルバーグの贈り物


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《レディ・プレイヤー・ワン》


スティーブン・スピルバーグ監督作のSF映画


怖ろしいことにペンタゴン・ペーパーズという大傑作と同時期公開という冗談みたいなハイスピードで手がけた一作です。


僕はスピルバーグイーストウッドは「影武者が15人くらいいる」もしくは「そもそも地球の生き物ではない」と確信しているのですが、相も変わらずこのレベルのクオリティの作品を量産し続けています。


どうかしてるんじゃない?


そんなスピルバーグですが、もう72歳になるそうです。


今年イーストウッド《運び屋》という作品で明らかに自分の人生を投影したような作品を作りましたが、スピルバーグはその1年前にこちらもまるで自分自身を描いたような作品を映画化しています。

 


原作のある作品なのでスピルバーグが考えたというわけではないにしろ、どう観ても「ああ、これはスピルバーグが自分の映画人生に一つのケリをつけようとしているのだな」と思ってしまいました。


そんなスピルバーグからの贈り物映画です。

 

映画の一言解説


デジモンアドベンチャーサマーウォーズ、あるいはマトリックスでもいいですが、VRを通して広がる超巨大な仮想空間が存在する近未来の話です。


そこではお金を稼いだり結婚できたり、現実世界と仮想世界の二つの世界がけっこうシームレスになっているような世界観でしょうか。


その仮想空間の中で、亡くなってしまった創業者の遺産探しをするというのがメインストーリーになります。


その課程で恋をしたり友情を育んだり悪い敵に追いかけられたり。


ストーリー自体はけっこうベタだし分かりやすいエンタメになっています。

 

映画の良かった点


仮想空間《オアシス》に様々なアバターが登場するのですが、そこにはストⅡのリュウがいたりアイアンジャイアントがいたり。


それら一個一個を探してニヤニヤするのも楽しそうですが、別に本質はそこではないです。


この映画が「仮想よりもリアルの方が大事」とか説教くさいことを言って終わっていたらガッカリだったのですが、ちゃんと「仮想世界での出会いだって、誰かの人生を幸せにすることがあるだろう」というメッセージを残しているのが良かったですね。


まぁ「どっちも大事」なんていうのは玉虫色な回答でしかないのですが、そこにスピルバーグなりの愛があるような気がしていて。


つまり「僕の映画を観ている間は、現実世界にあるイヤなことは全て忘れさせてあげよう。その代わり、映画が終わったそのあとはもう一度現実世界で頑張ってね」っていうことであるというか。


そこまで露骨な言い方ではないにせよ、映画オタクであるスピルバーグなりの映画との向きあい方の提示に見えたんですよね。


アバターをワラワラだしてキャッキャとオタク的に楽しむ方向にはいかず、そこら辺はサラっと済ませるあたりにスピルバーグの手際の良さを感じます。


その一方でちゃんと観客が【上がる】要素としてメカゴジラガンダムは用意しており、魅せるところでは魅せてくれるんですよね。


映画自体は普通に楽しめて、ディテールはちゃんと細かいといういかにもスピルバーグらしい映画と言えそうです。

 

映画の不満点


あえて言うなら長さでしょうか。


2時間20分も必要なかったかなとは思います。


ハリス資料館に3回訪れるシーンやヒロインが監禁されるシーンなんかは省略して2時間キッチリくらいで終わっていたらもっとスマートな後味だったことでしょう。

 

ポスターの感想


これはもうパッと見てあきらか。

 

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80年代初頭くらいまでのポスターワークそのままですね。


スターウォーズやバックトゥザフューチャー、グーニーズ


キラキラしたSFが一つのピークを迎えた時期へのリスペクトでしょう。


ただしここで気になるのは、僕たちはすでにこれらのSFが「事実にはならなかった」ことや「ジャンルとして一度衰退した」ことは知っているわけです。


そのようなデザインをあえて採用しているのもオアシスを「いつかは終わってしまうもの」として捉えているからではないでしょうか。


ポスター自体は間違いなく楽しくて明るいデザインにもかかわらず、その奥にあるのは「でもこれも幻だよね」という一種の悟りのようなもの。


それは登場人物達にとってのオアシスであって、僕たちにとってのゲームや映画なのでしょう。


そこまで考えられたポスターかは置いておいても、未来を想うワクワクと過去を懐かしむ気持ちが同居したとてもいいポスターだと想います。

 

まとめ


一言で言い切っちゃえば「さすがスピルバーグです。


普通に楽しめるエンタテインメントをちゃんとクリアしつつも、心の中に残るメッセージもサラリと提示してみせるあたり。


やはり前述の通りスピルバーグはお化けか何かなのでしょうな。


もはや観ない理由なんて一個もない映画なので、もし未見の方がいらっしゃいましたらすぐさまご覧になってください。


それでは、また。

 

 

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ローガン・ラッキー 《思わぬ拾いもの映画》

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映画の点数…83点
ポスターの点数…10点(日本バージョン)

 

思わぬ拾いもの映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はローガン・ラッキーです。


2017年、オーシャンズシリーズを手がけたソダーバーグの監督復帰作。


配給や制作の形態に工夫のあった作品なのですが、そのへんは各々Wikiってもらえたらと思います。


主演はチャニング・テイタムですが、脇にはアダム・ドライバーとダニエル・グレイグという主演よりもアクの強めな俳優を揃えています。


個人的な思い込みですが「アダム・ドライバーの出ている映画に駄作はない」と思っていて、まさに今作も思った以上の面白い作品でしたよ。
(ちなみに「アダム・ドライバーの出ている映画に駄作はない」という説は、スターウォーズ エピソード8をもって終了したと思ってますが)


そんなローガンラッキーの映画を踏まえた上でポスターにも注目してみたいと思います。

 

映画のストーリー


映画の内容自体は監督も公言されている通りオーシャンズシリーズ」と似ている点が多いです。


つまり「チームを組み、あっと驚くトリックを使って大金を盗み出す」という話。


ただしこのローガンラッキーはオーシャンズシリーズとは大きく設定が違っています。


オーシャンズシリーズの方は、盗みのプロフェッショナルがあくまでもスマートに盗みを働くという色気がありました。


ローガンラッキーの方は違います。


「仕事もない、体に障がいもある、娘と嫁も出て行って携帯も止められて今現在刑務所に入ってる奴もいる」チームでの強盗劇です。


言っちゃえば「社会的最底辺」みたいな人達の話と言っていいでしょう。


華麗に盗み出すとかではなく、泥臭くジッタンバッタンしながら計画を進めていきます。


そこに今作における監督からのメッセージがあらわれているようにも感じます。

 

映画の良かった点


この映画の方向性は「チームでお金を盗む」話なのですが、それを計画している人達から見えてくる「一度失ったものは取り返せるのか」というテーマを描いた話でもあります。


学生アメフトのスーパースターで地元の英雄でもあった人間が、怪我で人生を踏み外したとしたら。


国のために軍役についたが、その結果として腕を失ったとしたら。


バカな兄弟と陳腐な犯罪に手を染め続けた男に未来はあるか。


これら登場人物はまさしく「昔輝かしかったころのアメリカ」を表現しています。

 

つまりこの映画全体が「アメリカの再生」を描いているのですね。


冒頭からカントリーミュージックが頻繁に使用され、「いつか、あるべきだった自分」というものに想いを寄せるシーンが散見されます。


さらに強盗の舞台はカーレース会場。


まさにアメリカンマッスルな場所がチョイスされています。


登場人物達は愚かでマヌケな犯罪集団なのですが、どこか心の中で「こんなクソッタレな世の中から一発逆転してみせろ!!」とこっそり応援してしまうのが映画の面白いところでしょうね。

 

ポスターの感想


アメリカ公開版のポスターは、基本的にはかなりいいポスターだと思います。

 

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全体的にイエローのトーンで揃えることで「お金の雰囲気」を出すのと同時に「古き良き時代」感まで演出出来ています。


《ナイスガイズ》もそうだったのですが、あえてレトロな雰囲気のタイトルフォントを使うことで絶妙なバランスでのダサ格好良さも表現できています。

 

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惜しい点としては、黄色い車でしょうか。


わりと目にとまる面積で黄色い車があるのですが、ビジュアルをゴージャスにする以外の機能はないように思います。


実際に映画でメインとして出てくる車はV8エンジンのアメリカンマッスルカー(赤に白のストライプ)や、同じく青のマッスルカー、もしくは年季の入ったトラッカーです。


映画全体が緻密に伏線を張った映画なので、ポスターもそれに習ってほしかったなと思ってしまいます。


例えば隅っこの方にケーキが置いてあったり、グミやカセットテープが置いてあったりとか。


ちょっと贅沢を求めすぎですかね。

 

日本語版ポスター


問題はこちら。日本語版ポスター。

 

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これはかなりガッカリです。


繰り返し言ってきたように、このローガンラッキーは「過去と現在」を強く意識した作りになっています。


だからこそオリジナルのような少し古くさいデザインでポスターは作られているわけです。


なぜ真っ赤な枠をつけたのでしょうか。


必然性を全く感じません。


まさか「なんか暗くて地味なポスターだな。もっとさぁ、オーシャンズ11みたいなお洒落な感じにしようよ」みたいな事でしょうか。


もしもそうだとしたら非常に残念ですね。


枠の付け方自体も半端だと思うし、デザイン上お洒落になっているとも思えない。


ましてやこんな真っ赤なイメージをつけてしまうと、実際の映画のニュアンスとも乖離してしまいます。


日本語版ポスターにおける改悪の一例を観た気がしますね。


残念。

 

まとめ


日本語版ポスターこそ残念でしたが、映画は思わぬ傑作だったと思います。


どうやら広告なんかがうまくいかずに興行的には多少コケたらしいですが、だからこそ「お、言い拾いものをしたぞ」感があって満足度はむしろ高いですね。


これに懲りずにソダーバーグ監督にはいいストーリーが浮かんだらすぐさま映画を作ってもらいたいなと思います。


それでは、また。

 

 

 

 

 

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インデペンデンス・デイ 《愛は溢れた映画とポスター》

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映画の点数…60点
ポスターの点数…75点

 

ID4


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はインデペンデンス・デイ、通称ID4です。


念のためにだけお伝えすると、インデペンデンス・デイアメリカの独立記念日【7月4日】のことを指します。


なので略称がID4なんですね。


ローランド・エメリッヒの代表作である今作、主役にはジェフ・ゴールドブラムやウィル・スミスを迎えた豪華な作品です。


役者陣が豪華なのもありますが、これはもう単純に映画が豪華です。


1996年当時、まだまだCGの可能性を探り探りだったあの時代においてのディザスタームービーの最初期の傑作なのは間違いないでしょう。


この後にアルマゲドンタイタニックが登場するわけですが、「地球の大都市を丸ごとぶっ飛ばす!!!」という映像を大衆に広く知らしめたのは今作が最初だと思います。


ターミネーターとかもすでに核で荒廃した世界は描いているんですけど、あれは限定的な地域に絞った映像でしたからね。


映画の目的そのものが「派手でゴージャスな映画」だったと言えそうです。

 

映画のストーリー


知らない方はほとんどいないでしょうが、ストーリーを少しだけ。


独立記念日を直前に控えたアメリカに、突如として巨大宇宙船が飛来する。


混乱するアメリカ国民と政府、軍。


しかも飛行体は一機ではなく世界各国の主要都市にいくつも飛来しているとのこと。


これはマズイぞ。


そこで立ち上がったのは、彼女はストリッパーで空軍の一兵卒ウィル・スミスと、町の電気屋さんジェフ・ゴールドブラム


「お前らに任しちゃおけねえ」と自らも戦闘機に乗り込むアメリカ大統領。


果たして世界の運命とは……


みたいな感じですね。


こうやって書くとしちゃかちゃなんですけど、実際に映画もしちゃかちゃなので問題なし。

 

ポスターの感想


こりゃあもう、一言ですね感想は。


未知との遭遇オマージュでございます。

 

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映画の中でもけっこう直接的なオマージュはちらほら見かけることから、意識的に狙ったのは間違いないでしょう。


確かに映画全体が「未知との遭遇でやってきた宇宙船が、実は攻撃的な奴らだったら」みたいなもしもシリーズとも言えます。


もっとも、道との遭遇よりも設定が近いのは《宇宙戦争》の方です。


どちらもスピルバーグではありますが、宇宙戦争の方は原作がありますのでそちらに似ているという感じでしょうか。


未知との遭遇》のポスターの方は青色をベースに。


だったらとインデペンデンスデイでは赤色をベースにして不穏感を増幅させています。
一目で「これはただ事ではないぞ」と思わせるのがやはり「デカさ」ですね。

 

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とにかく宇宙船が巨大。


都市を丸ごと覆うぐらいデカい。


逆に言えば、その他の情報はまるで分からない。


どんな生き物が乗っているのか、敵なのか味方なのか。


この映画のキモはまさにそこなので、その点を強調するのはとても自然だし効果的です。


オマージュでもあるしシンプルな構成ではあるものの、必要な情報を過不足無く伝えているいいポスターです。

 

映画の感想


映画本編の方はある意味ではすがすがしいです。


とにかく「俺たちの自慢したいアメリカ」を存分に楽しませてくれます。


どんな敵であろうと負けないアメリカ、軍紀は多少無視しても家族を大事にするのがアメリカ、地球を救うミッションでも、やる気があればアルコール依存症の人も雇っちゃうアメリカ。


細かい点が異常にいい加減に作られている映画であるものの、要所要所で「見せ場」を作ることでフォローしている点が救いです。


なんと言っても最終決戦前の大統領演説。


そもそもあんないい加減な場所で演説を始めるのもどうかと思いますが、「今日という日の独立記念日を祝福しよう!!」の一言で全部持ってっちゃうあたりが憎いですねぇ。


映画全体のことを言わせてもらうと「ダメ映画」だとは思いますよ。


でもなんだかんだで楽しめちゃうのもこの映画。


ツッコミありきの態度でのぞめばそれなりに面白いです。

 

映画の不満点


以前観た時はさほど気にならなかったのですが、特に大統領がひどかったですね。


扱いとしては「人情味のあって責任感の強いリーダーシップのある大統領」として描いているように見えます。


でも実際のところ「地球に危機が迫っているときに奥さんや子どもの心配ばっかり」とか「職務を全うしているだけのタカ派国務長官を突然クビにする」とか「一刻も早く退避してくださいと言われているのに、いや!俺は残る!」と駄々をこねたり、最後には「俺はパイロットだ。宇宙船は俺がやっつける」と軍歴を離れて長いにも関わらず空に飛んでったりとか。


とにかく自分勝手な人なんですよね。


お前そりゃあ支持率40%切ってもしょうがないよ。


というかよく40%もあると思うよ。


そもそもですね、映画の冒頭で「大統領の支持率が下がっている」なんて情報は入れるべきではなかったんですよ。


あのシーンがあることによって「これは実は自身の支持率をあげるための作戦なのでは?」なんて余計なことが気になっちゃうんですよ。


映画全体を通してやたらと家族の交流のシーンを入れたり、結婚するだのしないだのいれているせいで無駄に上映時間が長いんですよね。


2時間20分くらいあるんですけどそんなにいらないですよね。

 

まとめ


僕はこの映画を傑作だなんて思ってはいませんが、何故でしょうか、数年に一度思い出したように観てしまうんですよ。


脚本とかはあれだけど、CGと設定で目をくらませて強引に観客をつかみ取るような姿勢は嫌いではありません。


そんな映画があってもいいじゃないの。


そんな気分を味わいたい方は、久しぶりに鑑賞されてみてはいかがでしょうか。


それでは、また。

 

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デビルマン 《もはや伝説。しかしポスターは…》

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映画の点数…3点
ポスターの点数…75点

 

伝説の映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《デビルマン》2004 です。


永井豪原作マンガの実写化作品。


ただし映画ファンには別の意味で広く知られた伝説の映画です。


映画ファンとは愚かな生き物で、絶品の最高級フレンチを食べたい時もあれば、B級どころかC級スナック焼きそばのような作品を好んで鑑賞する日もあります。


一番苦手なのは「栄養があるんだか無いんだか、味があるのか無いのか分からない」ような作品。


しかしさらにその奥には「これはもはや食べ物なのかも怪しいぞ!」という珍品に巡り会う日も時々あります。


つまり「映画と呼んでいいのかすら怪しいレベル」の一作ですね。


デビルマン》はまさにその代表格の映画で、数多の映画ファンを呼び寄せては「ほほう、これは噂に違わぬ一品じゃて」とよく分からない口調でテイスティングを繰り返す有様です。


僕もまさにその一人ではあって、どれどれ、相手に不足はないぞと意気揚々と挑んだわけでございます。


久しぶりの鑑賞でしたが、いやはや、その味に衰えはまったくみられずまだまだ伝説は続く予感をビンビンに感じた次第です。

 

映画の感想


一応この映画には3点をつけました。


内訳としては


「主人公が高校生だけどプジョーのオープンカーに乗っている(僕はプジョーが好き)
「女子高生達がたまにパンチラしそうになる(でもギリギリ見えない、多分)
「未来のスーパースター、染谷将太君が出ている(今回初めて気付いた)


以上です。


きっちり正確に3点でしたね。


あとは全部良くなかったです。

 

「悪い映画」ではない


3点という点数をつけときながらあれですが、決して悪い映画ではないんです。


「悪い映画」とは《少林少女》とか《ギャラクシー街道》とか《スタンドバイミー ドラえもんとか「観ている人をゴリッゴリに怒らせ不快にさせる作品」のことであって。


デビルマンはそんな作品ではないんです。


別に怒りなどわいてこないし、なんなら穏やかな気持ちで鑑賞することだって可能です。


特に気持ちが上がったり下がったりすることもなく、春風のような心地よさすら感じました。


なにせ「起こっていること全てがどうでもいい」タイプの映画なので、70億人くらい人が死んだ気がしますが何も思わないんですよね。


天使とか悪魔とかが出てきていた気もしますが、なんかよく分からなかったしゴメンナサイ、あんまり話も聞いてなかった気もします。


でも大丈夫、聞いていてもいなくても、演技が全員ファンタスティックに崩壊しているので「ああ、これは全部演技なんだね」ってのが分かるから。


演技だと分かっている以上、地球が崩壊したって別に関係ないじゃないですか。


だから安心して観ていることが出来るんです。


うん、別に褒めてないよ。

 

一方その頃ポスターは


地球以上に大きな崩壊をしているデビルマンムービー。


そんな映画ですがわずかな希望を残していました。


それは映画ポスター。


ここまでひどい映画であるにも関わらず、影響ポスターはというと。

 

あれ。


意外とカッコイイぞ。


少なくとも「ちゃんとしている」のは分かります。


マンガ原作の実写化だとよく「そんな奴現実世界にいねぇだろ。。」というコスプレになることが多いのですが(ハガレンとか)デビルマンはそんなことありません。


ちゃんと現代のCGの力でデビルマンを復活させようという意志は感じます。


キャッチコピーとかはもうひどいもんなのでサラッとスルーしますが、このポスターだけ観るなら「もしかしたらワンチャン楽しい可能性あんぞこれ!」とまでは思わせることができますね。


まぁその願いは叶うことはございませんでしたが、それができているだけ大したものです。

 

例えばガッチャマンとかはポスターの時点で「これはマズイな」という予感はあったのですが、キャシャーンは「あれ、これはまだ可能性が残されているぞ」と思えるじゃないですか。

 

君はヒーローを信じるか


一言で言えば、作り手側がどれだけヒーローを信じているかが大事なわけです。


キャシャーンデビルマンは、作り手達がヒーローの存在を信じて作ったと思うんですよ。


一方のガッチャマンからはそれを感じない。


その姿勢がポスターにも現れている、と考えるのは考えすぎですか?


どうなんですか?笑

 

まとめ


あらためて鑑賞するとやっぱりすごい映画だったと思います。


とはいえですね、ポスターにはわずかに可能性を感じた。


僕はそう思いますよ。


もうそれでいいじゃないですか。


どんな奴にもいいところはあるって昔聞いたことあるよ。


デビルマンだってそうさ。


ポスターは良かった。


この思い出を頼りに、そろそろデビルマンをネタとして記憶するのは辞めにしようと思います。


それでは、また。

 

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スノーデン 《結果的に地味な映画とポスターに??》

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映画の点数…65点
ポスターの点数…50点

 

半ドキュメンタリー・半サスペンス

 

こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《スノーデン》です。


2013年にアメリカ安全保障局(NSA)の国際的な監視網を告発したことで知られるエドワード・スノーデンさんを取り扱った映画です。


詳しくはグーグル先生にでも聞いて頂きたいのですが、大まかに言えば
アメリカの安全と平和の為に色々な国や人の盗聴とかをしてるけど、そんなのってやっぱりいけないんじゃない?」と感じたスノーデンさんがそれをメディアに暴露しちゃったわけですね。


日本にも「特定秘密保護法案」なんてものもありますが、この手の問題は各自で自分なりの意見は持っておくべきことだとは思います。


とはいえこれは映画の感想なんかを述べる場なので、スノーデンさんのとった行動の成否については僕は全く意見する気はございません


あくまでも「映画として」、秘密を盗んで暴露することを「成功」として取り扱います。

 

オリバー・ストーン監督の立場


監督はオリバー・ストーンさん。


代表作はなんといってもプラトーンでしょう。


リベラルで知られる監督なので、この映画がどのように作られているかはある程度予想できました。


やはりスノーデンさんのとった行動は正しいものであり、NSAを告発しアメリカ国民に問いを投げ抱えたことは有意義なことであった、というお考えなのでしょう。


それこそが真の愛国的な行動であると。


前述の通りそれが正しいかは分かりませんが、少なくともオリバー・ストーン監督はそのような撮り方をしているわけです。


その前提を踏まえて映画とポスターを観ていこうと思います。

 

ポスターの感想


まずポスターを観ていきます。

 

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僕の大好きな俳優、ジョセフ・ゴードンさんがスノーデンさんを演じているのですが意図は明らかですね。


似ているからというのもありますが、「あまり頼りになりそうもないインテリ」というような出で立ちこそが大事だったのでしょう。


ポスターからもその雰囲気は伝わってきます。


肩の落ちたゆったりとした立ち姿。


スーツでは無くTシャツで、覇気をあまり感じない表情。


「どこにでもいる(少しオタクな)青年」としてパッケージしたかったのが窺えます。


その頼りなさげな青年の肩に、アメリカ国旗がかかっています。


さらにその背景には愛する恋人。


ただの一青年に過ぎない彼にのしかかる重圧というのを表現しているわけです。

 

とはいえ


とはいえ、ですが。


ポスターの意図は正確に伝わるんですけど、かと言って良いポスターかと言えばそうでもない。


正直に言ってしまえば、いくらなんでも地味すぎます。


そもそも映画の内容自体がコチョコチョパソコンをしたり、秘密の会話をしたり、インタビューを受けたりするという非常に地味な内容なわけです。


それを「わあ、面白そう」と思わせるのであれば、もう少し工夫が必要だったでしょう。


例えばですが、イーストウッドとディカプリオの《エドガー》という映画。

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こちらなんかは「彼はアメリカにとっての正義なのか、悪なのか」微妙なラインをポスターでうまく表現できています。


もう少し観客自身に「心の揺らぎ」を与える演出は必要だったかなと思います。

 

映画の感想


映画の感想もポスターの感想と少し似ています。


やはり、とにかく地味なんですよね。


「ストーリー上仕方ないではないか」というわけでもありません。


それをエンタテインメントにするのが映画なのですから。


思うに、ドキュメンタリー映画」と「サスペンス映画」の融合が中途半端だったのが原因ではないでしょうか。


スノーデン青年の半生を丁寧に描くことでドキュメンタリー的な要素がある一方で、「この国はもしや間違っているのではないか」と思い立ち少しずつ行動に移していく要素があります。


そしてそのどちらも成功しているとは言いがたいように感じます。

 

恋人が邪魔…


映画の中心にはスノーデンさんの恋人がいます。


彼女はリベラル派であり、スノーデンさんの考えに影響を与えているというのは分かります。


一方、スノーデンさんは国家的な秘密を扱う仕事をしているので、仕事のことを恋人に打ち明けることができません。


そこで「私と仕事どっちが大事なのよ!!」みたいな感じでよくケンカをしています。


あのー、これ、映画に関係なくないですかね???


「自分の仕事を信じるのか、それともアメリカを敵にまわすか」で悩んでいることと、「仕事と私どっちが大事問題」は全然関係ないというか、むしろ出さない方がいいレベルだと思うんですよね。


だったら「このままじゃ彼女の命が危ない」とか「自分の彼女に話せない仕事だったら辞めてしまおう」とかそういう状況があるなら分かるんですよ。


そういうことじゃないからなぁ。。。


基本的にずっと「彼女のシーンいらないなぁ」と思いながら観てました。

 

全体的にはバランスはいい


彼女のシーンはまるごといらないと思いましたが、全体的にはスッキリ観やすく作ってあったと思います。


そのへんはさすが巨匠ですね。


難しい用語が山ほどあるので混乱しがちなのですが、演出や表情やナレーションを適度に挟むことで観客が置いてけぼりにならない配慮はされています。


当たり前なことではあるのですが、誰にでも出来ることではないですからね。

 

まとめ


題材としてはとてもいいし、誰しもが一度は観ておくべき映画であるとは思います。


だからこそ「惜しい」というか。


余分な要素を減らすこと、もしくは逆に焦点を絞って研ぎ澄ますことでもっとより良い映画になったのになと思います。


それでは、また。

 

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イングロリアス・バスターズ 《一番好きなタランティーノ》

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映画の点数…92点

ポスターの点数…40点

 

タランティーノの復習


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はクエンティン・タランティーノイングロリアス・バスターズです。


書いている現在は2019年8月30日。


今日から新作の《ワンス・アポン・ア・タイム・ハリウッド》が公開されており、それはこれから観に行くので楽しみにしているところなのですが。


気分をタランティーノモードに持って行くためにイングロリアス・バスターズを観たというわけです。


もっとも、《イングロリアス・バスターズ》自体は「いわゆるタランティーノらしさ」とは少し距離のある作品で。


ファンからは「こんなのタランティーノじゃないぜ!」なんて声もあるようですが、そんなもん知ったことではない、俺は好きなのだ!


そう、僕はタランティーノ映画の中でこのイングロリアス・バスターズが一番好きなんです。


多分そんな奴は少数派なのかも知れませんが、好きなもんは好きだ、何が悪い!


というわけで映画とポスターを振り返ってみたいと思います。

 

映画の概要


大雑把に言えば、ナチと米軍、そして数人の復讐者の話ですね。


タランティーノが描く以上、シンドラーのリストのようなナチの描き方では当然なくって、もっとスマートな描き方。


悪魔のような描き方をしている一方で、それでもやはり映画的な魅力に満ちあふれたキャラクターを生み出しています。

 

確かにナチをクズに描いているものの、一方ではアメリカ軍もイギリス軍もクズに描いていると。

 

そういう意味においてはフェアな視点だなと感じます。

 

映画の良かった点


公開からしばらく経つのでここからネタバレします。
ご注意ください。


この映画、身も蓋もない言い方をしてしまうと、ある役者が異常にいいです。


一応主役はブラピということになっていますが、観た方なら分かる通りこの映画内で一番の存在感を放っているのはナチの親衛隊ハンスを演じたクリストフ・ヴァルツでしょう。


冒頭の15分、彼一人がペラペラ喋り続けるだけのシーンがあるのですが、もうそれだけで「この映画、完全に勝った」と言えるくらい素晴らしかったです。


ユダヤ人を追い詰める冷酷なナチを演じているわけですが、彼に目をつけられたら最後、死ぬまで追いかけられるような恐怖を見事に体現しています。


当然のようにアカデミー賞では助演男優賞を受賞しました(さらにタランティーノ次作のジャンゴでも受賞)。


正直、彼の出番が減っていく中盤から後半では退屈だと思えるシーンがあったくらい。
それでもこの映画を僕が好きなのは、彼が演じたシーンだけでも十分に価値があったからです。


もちろん役柄としては極悪非道のクズなのですが、彼は彼で自分の仕事に誇りをもっている、そして見方によっては「すごく仕事の出来るエリート」である点は確かにカッコイイわけです。
(だからこそ「コイツだけは許すまじ!!」とも思うのですが)

 

歴史の改編


史実として決まっていることは、ナチスドイツは敗戦すること、ヒットラーは自決してしまうこと。


これは誰もが知っている歴史としての事実です。


当然映画を観ている側も、これらの事実を頭に入れた状態で観ているわけですね。


そこをうまいことタランティーノにやられました。


この映画ではヒットラーの最期の事実をねじ曲げています。


死亡することは死亡するのですが、ユダヤ人の復讐によって死亡します。


しかも殺害する方法が「映画館に火をつけて、フィルムに引火した炎で殺害する」というもの。


タランティーノは明確なやり方で「映画で世界を変えた」わけですね。


当然、この手法をとると「そういうやり口は好きじゃない」という人や「単純に映画として冷める」という人もいると思います。


ただし僕は、タランティーノなりの戦争映画を描くにあたってのケリの付け方だったのだろうなと思いました。


せめて映画の中だけでも、自分の望む形であの戦争を終わらせたかった。


僕はそこにタランティーノの傲慢さと共に優しさも感じたのですけどね。


映像としては阿鼻叫喚の地獄絵図なのですが、どこかグッとくるものがありました。

 

ポスターの感想


せっかくいい映画なのですからポスターも素直に褒めたかったのですが。。。。


まず、オリジナルのポスターは素直に良いと思います。

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ブラピの挑発的な表情と、レトロなフォントタイトル。


ナチスの旗を思わせる赤いバックと、浮かび上がってくる幾つかの思惑。


格好良さと映画の内容をスムーズに感じさせるいいポスターですね。

 

日本語版ポスター


ところが日本語版ポスターですよ。。。


パッと見て違うのは、背景の黄色。

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僕はこれはいいと思っています。


タランティーノの持つ独特なポップさを表現するにはこのくらい大胆な配色があっても大丈夫でしょう。


タイトルや人物を傾けたのはやり過ぎだとは思いますが、「よくある戦争映画じゃないよ、タランティーノが作ったやつだよ」というニュアンスはポスター全体から感じ取ることが出来ます。


ただしどうしても納得出来ないことが。


なぜクリストフ・ヴァルツが画面にいない!!!!!!


先ほども言ったように、この映画の実質的な主役はハンスを演じた彼です。


彼を差し置いて美女をとにかく並べたらいいやという姿勢。


これはいただけないですね。。。


もちろんヴァルツにそこまでの知名度がないのは百も承知。


それでもこの映画を観た人なら一撃で打ち抜かれるほど魅力があったではないですか。


映画ポスターは、映画を見終わったあとも機能する広告です。


映画を見終わったあと、もしくは数年経ってからポスターを観たときに「そうそう、このナチが怖かったんだよ」と思ってもらえるような仕掛けがあっても良かったでしょう。


少なくとも「ポスターにのせない」なんて選択肢はあり得ないです。ガッカリ。

 

まとめ


タランティーノのナンバーワンに選ばれるような作品ではないのかも知れませんが、随所に唯一無二のシーンが散りばめられています。


それだけでも「やっぱタランティーノ最高!フー!」となるわけですから。


観ないなんて選択肢はないわけですよ。


もしも観ていない方がいたら新作映画と共にいかがでしょうか。


それでは、また。

 

 

 

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