映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

イングロリアス・バスターズ 《一番好きなタランティーノ》

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映画の点数…92点

ポスターの点数…40点

 

タランティーノの復習


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はクエンティン・タランティーノイングロリアス・バスターズです。


書いている現在は2019年8月30日。


今日から新作の《ワンス・アポン・ア・タイム・ハリウッド》が公開されており、それはこれから観に行くので楽しみにしているところなのですが。


気分をタランティーノモードに持って行くためにイングロリアス・バスターズを観たというわけです。


もっとも、《イングロリアス・バスターズ》自体は「いわゆるタランティーノらしさ」とは少し距離のある作品で。


ファンからは「こんなのタランティーノじゃないぜ!」なんて声もあるようですが、そんなもん知ったことではない、俺は好きなのだ!


そう、僕はタランティーノ映画の中でこのイングロリアス・バスターズが一番好きなんです。


多分そんな奴は少数派なのかも知れませんが、好きなもんは好きだ、何が悪い!


というわけで映画とポスターを振り返ってみたいと思います。

 

映画の概要


大雑把に言えば、ナチと米軍、そして数人の復讐者の話ですね。


タランティーノが描く以上、シンドラーのリストのようなナチの描き方では当然なくって、もっとスマートな描き方。


悪魔のような描き方をしている一方で、それでもやはり映画的な魅力に満ちあふれたキャラクターを生み出しています。

 

確かにナチをクズに描いているものの、一方ではアメリカ軍もイギリス軍もクズに描いていると。

 

そういう意味においてはフェアな視点だなと感じます。

 

映画の良かった点


公開からしばらく経つのでここからネタバレします。
ご注意ください。


この映画、身も蓋もない言い方をしてしまうと、ある役者が異常にいいです。


一応主役はブラピということになっていますが、観た方なら分かる通りこの映画内で一番の存在感を放っているのはナチの親衛隊ハンスを演じたクリストフ・ヴァルツでしょう。


冒頭の15分、彼一人がペラペラ喋り続けるだけのシーンがあるのですが、もうそれだけで「この映画、完全に勝った」と言えるくらい素晴らしかったです。


ユダヤ人を追い詰める冷酷なナチを演じているわけですが、彼に目をつけられたら最後、死ぬまで追いかけられるような恐怖を見事に体現しています。


当然のようにアカデミー賞では助演男優賞を受賞しました(さらにタランティーノ次作のジャンゴでも受賞)。


正直、彼の出番が減っていく中盤から後半では退屈だと思えるシーンがあったくらい。
それでもこの映画を僕が好きなのは、彼が演じたシーンだけでも十分に価値があったからです。


もちろん役柄としては極悪非道のクズなのですが、彼は彼で自分の仕事に誇りをもっている、そして見方によっては「すごく仕事の出来るエリート」である点は確かにカッコイイわけです。
(だからこそ「コイツだけは許すまじ!!」とも思うのですが)

 

歴史の改編


史実として決まっていることは、ナチスドイツは敗戦すること、ヒットラーは自決してしまうこと。


これは誰もが知っている歴史としての事実です。


当然映画を観ている側も、これらの事実を頭に入れた状態で観ているわけですね。


そこをうまいことタランティーノにやられました。


この映画ではヒットラーの最期の事実をねじ曲げています。


死亡することは死亡するのですが、ユダヤ人の復讐によって死亡します。


しかも殺害する方法が「映画館に火をつけて、フィルムに引火した炎で殺害する」というもの。


タランティーノは明確なやり方で「映画で世界を変えた」わけですね。


当然、この手法をとると「そういうやり口は好きじゃない」という人や「単純に映画として冷める」という人もいると思います。


ただし僕は、タランティーノなりの戦争映画を描くにあたってのケリの付け方だったのだろうなと思いました。


せめて映画の中だけでも、自分の望む形であの戦争を終わらせたかった。


僕はそこにタランティーノの傲慢さと共に優しさも感じたのですけどね。


映像としては阿鼻叫喚の地獄絵図なのですが、どこかグッとくるものがありました。

 

ポスターの感想


せっかくいい映画なのですからポスターも素直に褒めたかったのですが。。。。


まず、オリジナルのポスターは素直に良いと思います。

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ブラピの挑発的な表情と、レトロなフォントタイトル。


ナチスの旗を思わせる赤いバックと、浮かび上がってくる幾つかの思惑。


格好良さと映画の内容をスムーズに感じさせるいいポスターですね。

 

日本語版ポスター


ところが日本語版ポスターですよ。。。


パッと見て違うのは、背景の黄色。

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僕はこれはいいと思っています。


タランティーノの持つ独特なポップさを表現するにはこのくらい大胆な配色があっても大丈夫でしょう。


タイトルや人物を傾けたのはやり過ぎだとは思いますが、「よくある戦争映画じゃないよ、タランティーノが作ったやつだよ」というニュアンスはポスター全体から感じ取ることが出来ます。


ただしどうしても納得出来ないことが。


なぜクリストフ・ヴァルツが画面にいない!!!!!!


先ほども言ったように、この映画の実質的な主役はハンスを演じた彼です。


彼を差し置いて美女をとにかく並べたらいいやという姿勢。


これはいただけないですね。。。


もちろんヴァルツにそこまでの知名度がないのは百も承知。


それでもこの映画を観た人なら一撃で打ち抜かれるほど魅力があったではないですか。


映画ポスターは、映画を見終わったあとも機能する広告です。


映画を見終わったあと、もしくは数年経ってからポスターを観たときに「そうそう、このナチが怖かったんだよ」と思ってもらえるような仕掛けがあっても良かったでしょう。


少なくとも「ポスターにのせない」なんて選択肢はあり得ないです。ガッカリ。

 

まとめ


タランティーノのナンバーワンに選ばれるような作品ではないのかも知れませんが、随所に唯一無二のシーンが散りばめられています。


それだけでも「やっぱタランティーノ最高!フー!」となるわけですから。


観ないなんて選択肢はないわけですよ。


もしも観ていない方がいたら新作映画と共にいかがでしょうか。


それでは、また。

 

 

 

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