ローガン・ラッキー 《思わぬ拾いもの映画》
映画の点数…83点
ポスターの点数…10点(日本バージョン)
思わぬ拾いもの映画
こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。
今回取り上げる映画は《ローガン・ラッキー》です。
2017年、オーシャンズシリーズを手がけたソダーバーグの監督復帰作。
配給や制作の形態に工夫のあった作品なのですが、そのへんは各々Wikiってもらえたらと思います。
主演はチャニング・テイタムですが、脇にはアダム・ドライバーとダニエル・グレイグという主演よりもアクの強めな俳優を揃えています。
個人的な思い込みですが「アダム・ドライバーの出ている映画に駄作はない」と思っていて、まさに今作も思った以上の面白い作品でしたよ。
(ちなみに「アダム・ドライバーの出ている映画に駄作はない」という説は、スターウォーズ エピソード8をもって終了したと思ってますが)
そんなローガンラッキーの映画を踏まえた上でポスターにも注目してみたいと思います。
映画のストーリー
映画の内容自体は監督も公言されている通り「オーシャンズシリーズ」と似ている点が多いです。
つまり「チームを組み、あっと驚くトリックを使って大金を盗み出す」という話。
ただしこのローガンラッキーはオーシャンズシリーズとは大きく設定が違っています。
オーシャンズシリーズの方は、盗みのプロフェッショナルがあくまでもスマートに盗みを働くという色気がありました。
ローガンラッキーの方は違います。
「仕事もない、体に障がいもある、娘と嫁も出て行って携帯も止められて今現在刑務所に入ってる奴もいる」チームでの強盗劇です。
言っちゃえば「社会的最底辺」みたいな人達の話と言っていいでしょう。
華麗に盗み出すとかではなく、泥臭くジッタンバッタンしながら計画を進めていきます。
そこに今作における監督からのメッセージがあらわれているようにも感じます。
映画の良かった点
この映画の方向性は「チームでお金を盗む」話なのですが、それを計画している人達から見えてくる「一度失ったものは取り返せるのか」というテーマを描いた話でもあります。
学生アメフトのスーパースターで地元の英雄でもあった人間が、怪我で人生を踏み外したとしたら。
国のために軍役についたが、その結果として腕を失ったとしたら。
バカな兄弟と陳腐な犯罪に手を染め続けた男に未来はあるか。
これら登場人物はまさしく「昔輝かしかったころのアメリカ」を表現しています。
つまりこの映画全体が「アメリカの再生」を描いているのですね。
冒頭からカントリーミュージックが頻繁に使用され、「いつか、あるべきだった自分」というものに想いを寄せるシーンが散見されます。
さらに強盗の舞台はカーレース会場。
まさにアメリカンマッスルな場所がチョイスされています。
登場人物達は愚かでマヌケな犯罪集団なのですが、どこか心の中で「こんなクソッタレな世の中から一発逆転してみせろ!!」とこっそり応援してしまうのが映画の面白いところでしょうね。
ポスターの感想
アメリカ公開版のポスターは、基本的にはかなりいいポスターだと思います。
全体的にイエローのトーンで揃えることで「お金の雰囲気」を出すのと同時に「古き良き時代」感まで演出出来ています。
《ナイスガイズ》もそうだったのですが、あえてレトロな雰囲気のタイトルフォントを使うことで絶妙なバランスでのダサ格好良さも表現できています。
惜しい点としては、黄色い車でしょうか。
わりと目にとまる面積で黄色い車があるのですが、ビジュアルをゴージャスにする以外の機能はないように思います。
実際に映画でメインとして出てくる車はV8エンジンのアメリカンマッスルカー(赤に白のストライプ)や、同じく青のマッスルカー、もしくは年季の入ったトラッカーです。
映画全体が緻密に伏線を張った映画なので、ポスターもそれに習ってほしかったなと思ってしまいます。
例えば隅っこの方にケーキが置いてあったり、グミやカセットテープが置いてあったりとか。
ちょっと贅沢を求めすぎですかね。
日本語版ポスター
問題はこちら。日本語版ポスター。
これはかなりガッカリです。
繰り返し言ってきたように、このローガンラッキーは「過去と現在」を強く意識した作りになっています。
だからこそオリジナルのような少し古くさいデザインでポスターは作られているわけです。
なぜ真っ赤な枠をつけたのでしょうか。
必然性を全く感じません。
まさか「なんか暗くて地味なポスターだな。もっとさぁ、オーシャンズ11みたいなお洒落な感じにしようよ」みたいな事でしょうか。
もしもそうだとしたら非常に残念ですね。
枠の付け方自体も半端だと思うし、デザイン上お洒落になっているとも思えない。
ましてやこんな真っ赤なイメージをつけてしまうと、実際の映画のニュアンスとも乖離してしまいます。
日本語版ポスターにおける改悪の一例を観た気がしますね。
残念。
まとめ
日本語版ポスターこそ残念でしたが、映画は思わぬ傑作だったと思います。
どうやら広告なんかがうまくいかずに興行的には多少コケたらしいですが、だからこそ「お、言い拾いものをしたぞ」感があって満足度はむしろ高いですね。
これに懲りずにソダーバーグ監督にはいいストーリーが浮かんだらすぐさま映画を作ってもらいたいなと思います。
それでは、また。
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