レディ・プレイヤー・ワン 《映画もポスターも当たり前のように及第点》
映画の点数…81点
ポスターの点数…95点
スピルバーグの贈り物
こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。
今回取り上げる映画は《レディ・プレイヤー・ワン》。
スティーブン・スピルバーグ監督作のSF映画。
怖ろしいことにペンタゴン・ペーパーズという大傑作と同時期公開という冗談みたいなハイスピードで手がけた一作です。
僕はスピルバーグとイーストウッドは「影武者が15人くらいいる」もしくは「そもそも地球の生き物ではない」と確信しているのですが、相も変わらずこのレベルのクオリティの作品を量産し続けています。
どうかしてるんじゃない?
そんなスピルバーグですが、もう72歳になるそうです。
今年イーストウッドが《運び屋》という作品で明らかに自分の人生を投影したような作品を作りましたが、スピルバーグはその1年前にこちらもまるで自分自身を描いたような作品を映画化しています。
原作のある作品なのでスピルバーグが考えたというわけではないにしろ、どう観ても「ああ、これはスピルバーグが自分の映画人生に一つのケリをつけようとしているのだな」と思ってしまいました。
そんなスピルバーグからの贈り物映画です。
映画の一言解説
デジモンアドベンチャーやサマーウォーズ、あるいはマトリックスでもいいですが、VRを通して広がる超巨大な仮想空間が存在する近未来の話です。
そこではお金を稼いだり結婚できたり、現実世界と仮想世界の二つの世界がけっこうシームレスになっているような世界観でしょうか。
その仮想空間の中で、亡くなってしまった創業者の遺産探しをするというのがメインストーリーになります。
その課程で恋をしたり友情を育んだり悪い敵に追いかけられたり。
ストーリー自体はけっこうベタだし分かりやすいエンタメになっています。
映画の良かった点
仮想空間《オアシス》に様々なアバターが登場するのですが、そこにはストⅡのリュウがいたりアイアンジャイアントがいたり。
それら一個一個を探してニヤニヤするのも楽しそうですが、別に本質はそこではないです。
この映画が「仮想よりもリアルの方が大事」とか説教くさいことを言って終わっていたらガッカリだったのですが、ちゃんと「仮想世界での出会いだって、誰かの人生を幸せにすることがあるだろう」というメッセージを残しているのが良かったですね。
まぁ「どっちも大事」なんていうのは玉虫色な回答でしかないのですが、そこにスピルバーグなりの愛があるような気がしていて。
つまり「僕の映画を観ている間は、現実世界にあるイヤなことは全て忘れさせてあげよう。その代わり、映画が終わったそのあとはもう一度現実世界で頑張ってね」っていうことであるというか。
そこまで露骨な言い方ではないにせよ、映画オタクであるスピルバーグなりの映画との向きあい方の提示に見えたんですよね。
アバターをワラワラだしてキャッキャとオタク的に楽しむ方向にはいかず、そこら辺はサラっと済ませるあたりにスピルバーグの手際の良さを感じます。
その一方でちゃんと観客が【上がる】要素としてメカゴジラとガンダムは用意しており、魅せるところでは魅せてくれるんですよね。
映画自体は普通に楽しめて、ディテールはちゃんと細かいといういかにもスピルバーグらしい映画と言えそうです。
映画の不満点
あえて言うなら長さでしょうか。
2時間20分も必要なかったかなとは思います。
ハリス資料館に3回訪れるシーンやヒロインが監禁されるシーンなんかは省略して2時間キッチリくらいで終わっていたらもっとスマートな後味だったことでしょう。
ポスターの感想
これはもうパッと見てあきらか。
80年代初頭くらいまでのポスターワークそのままですね。
キラキラしたSFが一つのピークを迎えた時期へのリスペクトでしょう。
ただしここで気になるのは、僕たちはすでにこれらのSFが「事実にはならなかった」ことや「ジャンルとして一度衰退した」ことは知っているわけです。
そのようなデザインをあえて採用しているのもオアシスを「いつかは終わってしまうもの」として捉えているからではないでしょうか。
ポスター自体は間違いなく楽しくて明るいデザインにもかかわらず、その奥にあるのは「でもこれも幻だよね」という一種の悟りのようなもの。
それは登場人物達にとってのオアシスであって、僕たちにとってのゲームや映画なのでしょう。
そこまで考えられたポスターかは置いておいても、未来を想うワクワクと過去を懐かしむ気持ちが同居したとてもいいポスターだと想います。
まとめ
一言で言い切っちゃえば「さすがスピルバーグ」です。
普通に楽しめるエンタテインメントをちゃんとクリアしつつも、心の中に残るメッセージもサラリと提示してみせるあたり。
やはり前述の通りスピルバーグはお化けか何かなのでしょうな。
もはや観ない理由なんて一個もない映画なので、もし未見の方がいらっしゃいましたらすぐさまご覧になってください。
それでは、また。
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