孤狼の血《面白そうに見えて、やっぱり面白い作品》
映画の点数…90点
ポスターの点数…80点
ジャパニーズ・ノワール
こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。
今回取り上げる映画は《孤狼の血》です。
監督は白石 和彌さん。
特にここ数年の多作っぷりは異常なくらいですべて鑑賞できてなくて申し訳ないのですが、アウトサイダー達を描かせたら今の日本で5本の指に入る監督と言うのは間違いないんじゃないでしょうか。
ジャパニーズ・ノワールの傑作がまたもや誕生って感じです(ノワールって言ってみたかっただけです)。
主演には役所広司、松坂桃李、あとは「あれあなた、アウトレイジにも出てらしたよね?」みたいな極悪俳優達が集合しての豪華な映画になっています。
ベテラン俳優さんだけでなく、僕は存じ上げなかったのですけど阿部純子さんや岩永ジョーイさんなどピカリと光る若手俳優達の名演も観られた作品だと思います。
ポスターの感想
まず映画ポスターから観てみます。
なんだか久しぶりに観た気がしますね、ここまで汗臭いポスターは笑
このポスターを観た時点で「あ、これは傑作だわ」と思う人間と「これはちょっと…」と思う人とに分かれると思うんですよね。
で、おそらく実際の映画もその通りの反応になると思うわけです。
映画の内容を可能な限り抽出、というかぎゅうぎゅうに絞り出したポスターになっていると思います。
最近見かけないと思いませんか?メインポスターでタバコを吸っているビジュアルなんて。
このタバコだけとっても「よく配給会社はOKだしたな」と思ってしまうくらい。
もっと幅広い客層を呼び込みたいのなら、松坂桃李さんをもっと清潔に大きく載せたり阿部純子さんとのロマンスを感じさせるようなビジュアルにしたら良かったわけです。
でもそうしなかったことに非常に好感が持てます。
タイポグラフィー
ちょっと触れておきたいのはタイトルのタイポグラフィー。
定規で書いたような直線的な文字になっています。
「血」という文字にいたっては一部線が省略されてます。
このワイルドなフォントが映画の緊張感を高めていますね。
おそらく普通の明朝体や筆文字でもそれなりに成立すると思うのですが、オリジナルのフォントにすることで硬質な感じや頑固な様子も表現できています。
縁もナシに映画ポスター内に配置するのは難しいのですが、うまく黄色を画面内に調和させています。
コントラスト
ポスターの人物達はかなりコントラストを強められています。
普通こういのは失敗として取り扱うのですが、このポスターに関してはこのギラギラ感がマッチしていますね。
同時に、キャラクター達の清濁併せ持つような性格も表しています。
それにしても皆さん間違いなく汗くさいし足もくさいし、みたいな匂いまで伝わってくるようです。
パッと見では映画内のシーンからの雑なコラージュにも見えるのですが、それぞれのキャラクターがいい表情をしているので見応えもあります。
映画の良かった点
良くも悪くも「仁義なき戦い」をイメージしてしまう作りになっているのは監督の自信と意地もあるのでしょう。
30年前の広島の混沌を勢いよく作った感じ。
実際、見ていて「今何が起きているんだっけ、誰が敵なんだっけ」とかが分かりにくくなって混乱してくるあたりも仁義なき戦いに通じるものがあります。
シリーズのファンがニヤニヤしながら見るのも良し、何も知らなくても画面を見ているだけでもギリギリ置いて行かれない程度には親切に作ってあるので初心者でも全然オーケーでしょう。
特に役所広司さんは途中から「この人昔からこうだったっけ?」と思うほどの圧倒的な迫力を見せます。
見る前には「いくらなんでも役所広司に強面は無理だろう・・・・」と思っていたのですが、映画全体を乗っ取る見事な演技でした。
映画の不満点
これは監督の予想外だったのかも知れませんが、役所広司さんが画面から退場してからの30分は映画全体が失速してしまいます。
それくらい役所広司さんがすごかったと言えばそれまでなのですが、あれだけ大きな磁場のある俳優がいなくなると映画が散らかりだしたような感じになっちゃうんですよね。
それまでが面白かった分、少し残念でしたね。
と同時に、もう一人の主人公・松坂桃李さんが警察官としてある種覚醒するような事態になるのですが、そこがいまひとつ表現できていなかったよに思います。
おそらくですが、あまりブチ切れたり人を傷つけたりとかいうことに慣れていないのでしょう。
演技のうえではすげぇキレてるんですが、やっぱり演技にしか感じなくて。
どこまでいってもちょっと優しそうなんですよね笑
たぶん本当にいい人なんでしょうね。
まとめ
既に続編も決定しているようで今からとても楽しみです。
可能であれば今作と同じくらいの熱量をもう一度観てみたいのですが、それに見合う俳優さんはいるのでしょうか。
なんにせよここまで骨太な映画を久々に観た気がしてとても幸せですね。
アウトレイジが「カラカラに熱されている」ようなドライさに対し、「ジメジメと湿っぽく燃え上がっている」というようなネチっこさのある作品でした。
映画は少しでも好きならマストな一本だと思います。
それでは、また。
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