マリッジ・ストーリー《皮肉の効いたポスターの構成》
映画の点数…92点
ポスターの点数…75点
絶好調!ネトフリ×アダム×スカヨハ
こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。
今回取り上げるは《マリッジ・ストーリー》です。
監督はノア・バームバックさんですが、どちらかと言うと「またNetflix制作による傑作が出てきたな」という印象。
もはやNetflixが本気で作った映画は必見というレベルになってきています。
映画に対する常識の意識変化が必要なんですねぇ。。
スカーレット・ヨハンソンは再評価、アダム・ドライバーは評価があがる一方という中での共演。
見事に二人ともアカデミー賞の男優・女優賞にノミネートされる快挙です。
いわゆる「離婚もの」映画ですが、クレイマーvsクレイマーではダスティンホフマン、メリルストリープが揃って受賞。
今回はどうなりますかね、楽しみです。
映画のストーリー
クレイマーvsクレイマーやブルーバレンタインなどの離婚映画と違うのは、映画の冒頭ですでに「離婚する」ことをもう決めている点です。
「色々考えた結果離婚する」ではなく、「離婚するのはいいけども、子どもの事はどうするの?住むところはどうするの?」という、いわば整理整頓をしていく内容です。
僕は幸運なことに離婚したことはないですが、他の映画では描いていないこの整理整頓が大変なんですよね。
例えば、ダスティン・ホフマンは映画の中で裕福な設定でした。
逆にライアン・ゴズリングはそもそもお金がありませんでした。
今回のアダム・ドライバーは、お金がないわけでも余っているわけでもありません。
ですが絶対に子どもと過ごす時間は確保したいし、金銭的な援助はしたい。
アダムもスカーレット・ヨハンソンも、基本的には「子どものことを第一に」考えているはずなのにどんどんおかしな方向に転がってしまうという点が面白かったです。
整理整頓していたはずなのに、もう取り返しがつかないくらい散らかっていってしまうという矛盾。
映画を観ている間中、心臓が発火しそうな痛々しさを感じました。
映画の面白かった点
監督の体験をベースにしているというのもあってか、やたらと生々しいのが魅力です。
普通に会話をしていたはずなのに余計な一言などが原因でいつの間にか喧嘩腰になっていく様子などは、誰しも経験があることではないでしょうか。
特に終盤の10分間長回しによる二人の大げんかのシーン。
普通の会話から始まって、最後には涙を流しながら「死んでしまえ!!」くらいの絶叫に変わっていく(実際のセリフは違いますよ)。
この会話がそのまま結婚生活をあらわしているようで、はじめこそ相手を思いやった言葉を探しているのに、気付けば自分が思ってもいないような言葉で罵ってしまうという。
映画を観ている側としては「この夫婦はまだ修復可能なのではないか?」と余計なおせっかい心を持ってみているのですが、途中から「やっぱダメかも知れない…」と思い始めたり。
映画を観ているだけなのに、何故かこちらまで疲れるくらいリアリティがありましたね。
映画の不満点
これは意図的なことだと思うので、不満ではない人も多いと思います。
それは、子どもが空気だという点です。
クレイマーvsクレイマーでは、ビリー少年も離婚に向かう二人と同じ「当事者」として描かれていました。
ですが今回の子どもであるヘンリー君は、基本的に「部外者」のような立ち位置にいます。
親が必死に「お前を愛してるよ」とアピールしても、本人は面倒くさそうで。
ニューヨークからロサンゼルスに引っ越しても、子どもらしい柔軟さで誰よりも早く適応してしまうんですよね。
まぁ確かに、子どもって実際そんな感じですよね。
親の心子知らずというか。
なのでいまいち子どもの心境は伝わってくることがなく、となると親が必死にアピールすることが滑稽に見えてしまうというか。
監督はそのように撮っているのでこれで正解なのですが、僕はそこがちょっと気になった点です。
ポスターの感想
不思議なことに、先ほどあげた「離婚もの映画」とポスターはいずれも構成が同じという現象がおきています。
テーマは離婚ものなのですが、ポスターでは「家族が仲が良かった瞬間」をチョイスしているんですね。
イジワルですねぇ。
とはいえポスターとしての機能としては理にかなっています。
仲の良い家族の状態をポスターで印象づけることによって、映画を観る人は余計に「なんでこの人達がこんな目に遭わなくちゃいけないんだ…」みたいな気持ちになります。
あるいは、どのような経緯で仲が悪くなっていくのか興味深く鑑賞してくれます。
特にクレイマークレイマーのポスターの方が分かりやすいですね。
記念写真をチョイスしているのは「写真=既に過去のこと」という意味合いがあります。
別案
マリッジ・ストーリーに関してはこちらのポスターも非常に良いと思います。
連作として観ないと機能しないのは難点ですが、夫と妻、それぞれのアイデンティティーが今どこにあるのかがシルエットで分かります。
開放的な景色(LA)と、知的な都会的風景(NY)は互いに相容れないような印象を与えます。
それにしても、スカーレット・ヨハンソンの方はともかくアダム・ドライバーはシルエットだけでも誰なのか大体分かりますね。
まとめ
今まさに絶好調の二人の共演による映画は、まさに大成功を生み出しました。
映画の内容ももちろん、妙にドライだったり妙にイジワルだったり妙に泣かせにきたりと不思議なバランスなのが良かったです。
噂によると、Netflixは監督に対しあまり口出しをしてこないのだとか。
それが本当なら、のびのびと作りたいように作った映画がここまで評価されたということになります。
これからもまだまだ二人とNetflixの快進撃は続きそうだなと思わせる一本でした。
それでは、また。
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