グエムル -漢江の怪物-《既に完成間近な異常なクオリティ》
映画の点数…83点
ポスターの点数…30点(韓国版)
祝!アカデミー賞作品賞記念!
こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。
今回取り上げる映画はポン・ジュノ監督作の【グエムル 漢江の怪物】です。
先ほど(2020年2月10日)アカデミー賞の発表がありまして、ポン・ジュノ監督の【パラサイト】が作品賞!監督賞!脚本賞!国際映画賞!と4部門をかっさらいました。
Webで観ながら鳥肌がたちましたね。
こんなことが起きるんですね、本当に。
英語以外の映画では初、アジア映画としても初、パルムドールとのダブル受賞も2例目?かな、とにかくとんでもないことが起きたわけですね。
これが日本映画であったならなお喜びも数千倍であったのでしょうが、特に近年は韓国映画の良作がドッカンドッカン出てきていたのである意味では奇跡ではなく必然であったのかも知れません。
そんなわけで、今回はそんなポン・ジュノ監督のおそらくパラサイトを除いて一番知名度の高いこの作品をレビューしてみたいと思います。
映画のストーリー
無責任な化学実験によって、韓国の漢江に巨大な人食い生物が出現します。
最愛の娘を生け贄としてさらわれた父(ソンガンホ、パラサイトでも主演です)は、自身の父や兄弟と協力して娘の救出を試みますが……
という内容です。
大きなところでのストーリーは「怪物パニック映画」と「父娘感動もの」となるのでしょうか。
ただしそんな常識におさまらないからこの映画は面白いわけですね。
プレデターとかジュラシックパークを観たい人にはオススメ出来ないし、96時間みたいな作品が好きな人にもオススメ出来ません。
それでも映画ファンには強くお勧め出来る一本です。
パラサイトとの共通点
話のスケールこそ違う映画ですが、グエムルとパラサイトには共通点がいくつかわります。
まず、頼りのない父親ソンガンホ。
ブツブツと言い訳ばかりしているどうしようもない人物だが、基本的には常識や優しさもある。
そして主人公達は生活レベルの低い社会的弱者であるという点。
パラサイトではそれがメインテーマ、グエムルではそれが要素として機能しています。
最後に、「僕は今一体、どんな映画を観ているのか分からない」という状態にすぐに放り込まれてしまう点が同じです。
これが苦手だという人もいるでしょうが、個人的には大好きなふわふわ感ですね。
例えばですが、「お前ら、兄弟同士で仲良くするんだぞ!兄ちゃんをバカにするな!」と父親が演説するシーンでは肝心の妹と弟は居眠りしていて、何より馬鹿にされているソンガンホ本人も熟睡している、みたいなシーンがあります。
感動っぽいシーンをギャグシーンにすることで観客側もどういう目線で観たらいいのか戸惑ったはずです。
さらにそこからいきなり怪物パニックシーンにつながったりと、観ている映画が分単位でジャンルを変えていくんですよね。
このあたりは特にパラサイトとの共通点を感じます。
映画の良かった点
14年ほど前の映画ながら、すでにポン・ジュノ監督の確かな手腕は感じることが出来ます。
ただの怪物バカ映画では全くないんですね。
例えば、主人公の妹であるペ・デュナはアーチェリーの国際大会で3位という実力を持っています。
いざ本番という場面で、慎重になりすぎて失敗したというのがさりげなく示されます。
怪獣映画でアーチェリーが写る時点で、「ああ、武器として使うんだろうな」というのまではすぐに予想がつきます。
しかしそこから「3位という実力だけあって、どうしてもクリティカルヒットが撃てない!」とか「慎重になりすぎて期を逃す」という演出がそこに追加されるんですよね。
各キャラクター毎にそういった細かな設定が用意されているため、ただの怪獣映画を観ているつもりがちゃんと人間の成長物語にもつながっているんです。
さらにカメラの撮り方なんかも既にレベルが異常に高く、観客が混乱しないように位置関係を整理しながら分かりやすく撮るとか、いざという見せ場ではスローモーションでじっくり撮るとか、とにかく「観やすい」映画なんですよね。
この時点でとっくにポン・ジュノ監督のレベルの高さは突出していたのでしょう。
ポスターの感想
個人的にはこの映画、実は映画ポスターこそがこの映画の価値を大きく引き上げているのではないかと思います。
この「なんか、なんか分からんが、とにかく後ろに非常にやばいものがいる」ことがたった一人の少女の表情のみで表現されています。
こりゃあ観たくなるでしょう笑
ところがですね、これがどうも韓国本国ではメインのビジュアルではなさそう。
既にスター俳優であるソンガンホさんを大きくビジュアル化したこちらがメインビジュアルっぽいんですよね。
これは明らかに日本版ポスターの方が素晴らしいと思います。
日本版ポスターの方もポスタービジュアルと映画の内容にズレが大きいのが気になるので高すぎる評価はしにくいのですが、それでも十分に「うわ!面白そう!」と思わせるビジュアルです。
パラサイトのポスターはここからさらにレベルが数段あがって「ホラー……なんだけどちょっと笑える」みたいなバランスすらポスターで表現出来ているんですよね。
まとめ
あらためまして、オスカーの獲得を今は心から祝福させていただきます。
ギエルモ・デル・トロもそうですが、かつて怪獣映画なんか撮ってた人がアカデミー賞までたどり着くんだから夢しか感じないですよ。
非常に興奮した一日でした。
これからまたポン・ジュノ監督作品を鑑賞しまくりたいと思います。
それでは、また。
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