映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

ナイスガイズ《もっと高く評価されてほしい傑作》

 

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映画の点数…93点
ポスターの点数…海外版90点、日本版20点

 

ライアン・ゴズリング週間


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


突然ですが、僕が最も好きな俳優はアル・パチーノです。


これは長い間ずっとそうなのですが、その次に好きな俳優となるとライアン・ゴズリング堺雅人さんになります。


この三人だけは「こりゃあ面白くなさそうだな…」という映画でもとりあえず観ることにしております(あ、ごめんなさい、「鎌倉デスティニー」って映画は観てないし今後も観ないと思います)。


そんな大好きなライアン・ゴズリングですが、その中でもベスト・オブ・ライアン・ゴズリングの一本がこの《ナイスガイズ》です。


日本での公開がアメリカから遅れること7ヶ月の2017年の2月になったこともあり、当時話題だったラ・ラ・ランド》と公開時期が丸かぶりするという現象が起こりました。


だからなのかどうにもナイスガイズの方の評価がいまいち高くない気がしており、勿体ないなぁと思うところ。


(一応、ラ・ラ・ランドは一方で評論家から酷評されたりすることもありましたが、僕自身は2017年で一番好きな作品でもあります)


そんなナイスな映画を映画ポスターと一緒に振り返ってみたいと思います。

 

映画の内容


一部省略してあらすじを書くと、暴力的だが男気のある便利屋(ラッセル・クロウ)といい加減で酔っ払いだが憎めないところのある探偵(ライアン・ゴズリング)がバディを組んで、一人の売春婦の死をキッカケに明らかになっていく巨大な陰謀劇に首を突っ込んでいくというお話です。


そこに探偵マーチの娘(13歳くらい?)も巻き込んで、個性豊かなキャラクター達のドタバタコメディ&ミステリーが展開されていきます。


全体的には「不謹慎&デストロイ」な映画で、わりと簡単に人は死んでいくし、それすらもジョークで処理するくらいに軽いトーン。


それを「人の命をなんだと思っているんだ!」と言われれば「ですよね。すみません」としか言えないんですけど、この軽さこそがこの映画の魅力なので。


女性のヌードもちょこちょこ出てきたりするし、そもそもの目的が「自動車産業の不正を暴露することを目的に作られたポルノ映画のフィルムを見つけ出せ」という、もっと簡単に言うと「AVを見つけ出せ」って話ですからね。


不謹慎だということはこれっぽっちも否定しません。

 

ナイス・ライアン・ゴズリング


ではこの映画のライアン・ゴズリングの何が素晴らしいって、彼のキャリアの中でも飛び抜けて「ダサくて、卑怯で、軽くて、しょうもない」という点ですよ。


情けない男というキャラクターは《ブルーバレンタイン》や《ラ・ラ・ランド》でも披露してますが、ナイスガイズではそれに加えて「明るくてバカ」という要素がくっついています。


元々クールな役者が「今までのイメージを変えるためです!」みたいにハイテンションな役柄にチャレンジすることはままありますが、その成功例の最たるものじゃないかと。


観ていて本当に酔っ払いのクズにしか見えないし、それで何度も笑ってしまう。


キャスティングの時点でどこまでを期待していたのかは分かりませんが、見事にマーチというキャラクターを作り込んだなと惚れ惚れします。


もちろんですが、その他の役者陣も全て素晴らしいです。


実直だけどジョークの通じないラッセル・クロウとのコンビで続編も観たいんだけどな。。。

 

映画の不満点


まぁ一応不満点を書いておくと、細かいジョークとかを楽しんでいるうちに「あれ?なんで今はこの人を探してるんだっけ?」とか「なんでフィルムを追いかけてるんだっけ?給料は払われるんだっけ?」とかがよく分からなくなります。


でも別にまぁいいかと思うくらいにストーリーが軽やかに進んでいくので、特に気にすることでもないかという感じです。

 

ポスターの感想


今回もまた「海外版はこんなにいいのに、なんで日本語版ポスターはダメなんだ!」というトーンになってしまいます。


まず本国版ポスター。

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衣装、表情、立ち姿だけで二人のキャラクターが実にうまく表現されています。


バディムービーである以上、この二人の個性というのは非常に重要です。


そのキャラクターの差を実にうまくまとめていると思います。


写真だけでも「この二人の映画ならハズレはないな」という安心感を感じますね。


背景にある線や色、そしてタイトルデザインの組み合わせからも「1970年くらいのお話なんだな」というのはすぐに分かります。


情報がかなり少ないポスターにもかかわらず、映画の魅力はたくさん伝わるとてもいいポスターです。

 

日本語版ポスター


一方で日本語版ポスター。

 

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本国版ポスターの良かった点がまるで感じられません。


ライアン・ゴズリングは普通にきれいめな格好なので、ラッセル・クロウとの対比が全く出来ていません。


この写真だけではライアン・ゴズリングが今回はコメディ的な役割を持つということが何も分からないではないですか。


他のキャラクターもゴチャゴチャしすぎです。


上と下で敵と味方を分けているわけですが、わざわざポスターにいれるような情報でもないでしょう。


特に敵側の後列二人なんてただの噛ませ犬でしかないですし。


だったら主演二人、もしくは娘を入れての3人でいいじゃないですか。


ライアン・ゴズリングが体を張って笑いをとりにいった映画に対してのポスターとしては出来が悪いとしか言えないですね。


また、背景もわざわざ白と黒に変えてますけど全く良い効果を生んでいません。


1970年代のノスタルジーな雰囲気は消えているし、上下と白黒で「正義と悪」を分けたのでしょうけど、そもそも主役の二人も「ルパン一味」みたいな感じで正義とも悪とも言えないキャラクターです。


だからこそ魅力的なキャラクターなのに、これじゃ台無しですね。

 

唯一いい点


ただまぁ、唯一ですが褒めるべき点もあると思っていて。


タイトルをマゼンタにしたのは良かったかなと。


映画全体が怪しげでアダルトでちょっとエッチな要素もある映画なので、それにこのマゼンタは雰囲気が出ていていいかも知れませんね。

 

まとめ


ということで、「いい映画だから!もっとみんな観てね!」という希望を持ちつつも、それを邪魔しているのが映画ポスター、あるいはDVDパッケージだなと思います。


もしまだ未見の方がいたら、本国版ポスターの方を観てから鑑賞することをおすすめしますよ。


全体的な雰囲気はそちらの方が直感的に正しいです。


それでは、また。