映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

アイリッシュマン《僕たちへの贈り物》

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映画の点数…92点
ポスターの点数…88点

 

老人達のラストダンス??


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はアイリッシュマン》です。


監督はマーティン・スコセッシ、主演はロバート・デ・ニーロですが、アル・パチーノジョー・ペシハーヴェイ・カイテルなどの豪華共演。


「あの、1970年代を駆け抜けた男達」による映画です。


上映時間は実に3時間30分にもおよび、どの角度から観ても超大作。


あえてハッキリ言いますが、これはもう上記の俳優達の最後の大型共演映画になるでしょう。


みなさんもうおじいちゃんですからね笑


イーストウッドのようなバケモノもハリウッドにはまだ存在していますが、みんなが元気なうちにデ・ニーロが銃をぶっ放したりアル・パチーノが大声で怒鳴りつけたりというような映画は今後間違いなく減るわけですから。


僕のような「世界で一番好きな俳優はアル・パチーノ」というような人間にとっての、あまりにも素敵な贈り物だと思っています。


そんな老人達のラストダンス、可能な限りフラットに見ていきます。

 

映画のストーリー


主演、つまりロバート・デ・ニーロ演じるマフィアの構成員フランクの視点で描かれています。


ですが実質的な中心人物はアル・パチーノ演じるジミー・ホッファ。


全米のトラック協会の支配者であり、巨大すぎる組織ゆえに大統領選やマフィアにも多大な影響力を持った人物です。


そんな二人の関係を中心に、登場人物達の人生と、ギラギラとべとついた時代の狂騒をテンポ良く描いています。


敵対者の殺害、大統領選の画策、それに伴う裁判、失脚、復権へのたくらみ。


僕の大好物のような展開が次々と巻き起こります。


3時間半という大作ながら退屈する箇所はほとんど無く、むしろラストには「え!これで終わりなの?!」と驚くくらいバッサリと突き放されるような印象すらあるくらい。


考えてみるとジミー・ホッファが謎の失踪を遂げるのが1975年ですから、時代的にはアルとデ・ニーロがゴッドファーザーを作っていた時、スコセッシがタクシードライバーを作っていた時代の話なんですよね。


そんな彼らがこうやってもう一度同じ時代の映画を作っているなんて奇跡のような話です。

 

映画の良かった点


まず大前提なんですけど、彼らが演技をしていてスコセッシが監督をしている時点で完全に100点なんですよ。


それはそれとして、出来るだけフラットに感想を言ってみようかなと。


まずオープニングの一発目、老人ホームのような病院のような施設をカメラがグーーーーーーっと進んでいき、軽やかに音楽が流れている。


これだけで既に「スコセッシ映画が始まった!!!」感がえげつないわけですよ。


あとはもう、3時間半この調子というか。


テンション的に近いのはグッドフェローズなんですけど、グッドフェローズほどにはハイスピード感はなく、ほどよいテンポで軽やかに進んでいく感じです。


グッドフェローズは本当にハイスピードで人が死んでいきましたが、アイリッシュマンもやはりテンポよくサクサクと死んでいく笑


とはいえ死を軽く扱っているというわけではなく、例えばジミー・ホッファが失踪した日を描くパートではバックで流れる音楽がなくほとんど無音の状態に。


特に派手な演出もしていないのに「ああ、何か怖い」と感じるあたりはもうベテラン技の極致。


見終わった後は確かに体は疲れているんですけど、不思議と気持ちは疲れていなくて。


「ああ、いい映画見たなぁ」というほどよい爽快感があります。

 

映画の不満点


あくまでも、あえて言うなら。


さすがにデ・ニーロ達が30代を演じているのは無茶がありましたね。


いくらCGで誤魔化そうにも、歩き方がおじいちゃんなんですよね。


逆に、「ああ、おじいちゃんって歩き方が若い人と違うんだな」と発見になってくらいです。


最新技術で彼らを若返らせるのは面白いチャレンジだと思いましたが、「まったく違和感が無かったよ」などとはどうしても言えません笑


とはいえやはり、その不自然さも含めての映画体験だと思ったのでやはり不満点はありません。

 

ポスターの感想


たまりませんなぁ、このビジュアル。。。

 

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主演のデ・ニーロを中心に、メインの3人が配置されています。


役柄上彼らは協力関係、というよりも共犯関係に近いものがあるのですが、ポスター内では全員がバラバラの箇所を見ています。


つまりそれぞれに目指すものが違う、意見や考えが違うということが暗示されています。


高いビルを背景に、抜けの悪い構図になっています。


このことにより、この街でタフに生きていくことの窮屈さ・圧迫感を感じます。


光の当たり方も絶妙で、表情もアルやジョーは表情すら分かりにくいところに光りがあたっており、全体の彩度もかなりおさえられています。


光の表現だけでも、無機質さや冷酷さが伝わってきます。


下手におじさんファンに媚びるわけでもなく、現代版のかっこいいポスターになっていますね。

 

別案


こちらの方は、逆に1970年代を感じさせるポスターワークです。

 

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これはこれで非常に大好物なポスターなんですけど、こっちがメインにされなくて良かったなぁと思います。


2019年の最新作として堂々たる魅力のある映画なのですから、変に懐古主義なイメージを観客に与える必要はありませんからね。


やはりメインビジュアルで使われている先ほどのポスターがベターです。

 

まとめ


別に僕は「スコセッシの最高傑作だ!」などとは言いません。


他の方もそうではないでしょうか。


それでもやはり、もはやこのアイリッシュマンは《存在しているだけ》で大きな価値のある一作だと思うんですよ。


2019年に誕生し、そのままアカデミー賞にもノミネートされるおじいちゃん達の映画。


なんとカッコイイことでしょうか。


全ての方におすすめは出来ませんが、それでも「俺映画が好きなんだよね」と思われる方は100000%で鑑賞マストな映画なのは間違いありません。


是非ご覧になってください。


それでは、また。

 

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