映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

パラサイト 《韓国映画のひとつの結実》

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映画の点数…88点
ポスターの点数…95点(日本版0点)

 

絶好調!韓国映画の集大成


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《パラサイト》です。


ここ10年くらいでしょうか、国際化に力を入れてきた韓国映画がとんでもないスピードでレベルをあげてきていました。


少し前の認識だと「昔の日本映画みたいで懐かしい気持ちになるなぁ」なんて評価があったのが信じられません。


今となってははっきりと「韓国映画の方が日本映画よりもレベルがはるかに高い」と認めざるをえないと思います。


もちろん僕にも大好きな日本映画は山ほどありますし、日本語を母国語としている以上は日本映画の方が馴染みやすいです。


ですがフラットな視点から見るとどうしても韓国映画の方が上回っている要素が多いんですよね。。


そのへんはまたいつか書けたらいいなと思うのですが、パラサイトはついに韓国映画として「アカデミー作品賞ノミネート」というところまで上り詰めました。


日本映画では未だ果たせていないこの快挙、正直なところ悔しい気持ちでいっぱいです。


でも最近の韓国映画を観ていたら遅かれ早かれこんな日はきたでしょうね。


アメリカにおいてはすでに「アメリカ内で最もヒットした外国映画」となっています。


世界の黒澤、北野、宮崎といえど、ここまでヒットをさせることは出来なかったわけです(いや、作品のエンターテイメント度が全く違うことは百も承知です)。


少なくともこのパラサイトも、極端に金のかかった映画というわけではありません。


予算の問題ではない以上、日本にだって出来る!そう願いながらレビューしていこうと思います。

 

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※2月10日追記
周囲の映画評論家等の前予想を飛び越えて、パラサイトがアカデミー賞・作品賞・監督賞・脚本賞という凄まじい快挙を達成しました。
発表の直後にこの文章を書いていることもあり、興奮がおさまりません。
このブログの内容通り、僕自身が大傑作と言っていたわけではないので恥ずかしい限りですが、本当に心から感動しております。
決して偶然や奇跡の結果ではなく、近年の韓国映画の良作の積み重ねがこの快挙を生んだのだと思っています。


本当におめでとうございます!!!!!

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映画のストーリー


貧民層として半地下の住居に住んでいる4人の一家のお話です。


ふいに沸いてきた「お金持ち一家の家庭教師」という仕事をキッカケとして、徐々にそのお金持ち一家に浸食していく主人公一家の様子を、5割コメディ・3割ホラー・2割ドキュメンタリックに描いた作品です。


映画を観ながら少しずつ映画のテイストが変化していくのが非常にうまく、最初こそニコニコしながら鑑賞していたら終盤ではドッシリと重い宿題をもらって家に帰ることになるという作りになっています。


日本でも既に「とにかく喰らってしまった…」という感想が多発しており、公開館数が少ないのが気になるものの近いうちに傑作の一本として記録されることになるでしょう。

 

政治的ニュアンス


こんなことを書くこと自体がバカらしいのですが、日本と韓国で抱える政治間の衝突や歴史間の問題などは映画の評価には全く影響しません。


実はパラサイトの中でも一部旧日本軍のことをコケにするようなセリフが出てくるのですが、それを言う人物の性格を考えると、さほど気にならない作りになっています。


政治は政治、映画は映画です。

 

映画の良かった点


まずはやっぱり脚本、というより「構想」ですかね。


どこまでを計算で作られたのか分からないくらい、映画のジャンルがシームレスに切り替わっていくことに驚きます。


最初こそゆったりした気持ちで観ていたものの、後半に向けて映画全体が重力をもって加速してくようで。


シートに押しつけられるようなGを感じるような体験でした。


基本的には家の中や車の運転だとか映像的には地味目なシーンが多いのですが、お金をかけるべき場所ではしっかりと使って迫力ある画面を作り出しています。


例えば大雨で自宅が浸水するシーンなどは「ああ、こりゃあもうダメだ」と観ている側が絶望するくらい迫力がありますし、そういうシーンをサボらないからこそ「この人達は、ここで生活している」ということをリアリティをもって感じることが出来ます。


そのリアリティの集大成として「痛みを画面から感じるような暴力」が最後に用意されているのは見事ですね。


映画の序盤から暴力シーンが散発していたら後半のサスペンスな場面はもっとチープになっていたと思います。


かと思いきや、最後の最後にはもう一度「これは…ファンタジーなのか??」とも錯覚するようなオチまで用意されています(このへんはジョーカーにも通じますね)。

 

役者陣はパーフェクト


僕は韓国語は使えないので、英語以上に画面から伝わってくる情報は字幕に頼りっきりになります(英語の場合、喋っている英語と字幕のニュアンスの違いを自分のなかで整理できるので)。


全く言語が使えないというハンデがあるにも関わらず、役者陣は全ての人物がパーフェクトだったのではないでしょうか。


ソン・ガンホさんは当然のことながら、個人的には女性キャストが良い人が多かったと思いましたね。


貧乏一家のお姉ちゃん、家庭教師として指導する女の子、気の良いバカな役回りを演じきったお金もち一家のお母さん。


それぞれ違うパターンでの生々しい色気を感じさせつつ(色気があるということは、実在感を感じるくらいイキイキしているということ)、もはや「そんな人」にしか見えないくらいキャラクターを作りあげていました。


時にはオーバーアクションなシーンもあるのですが、そういうシーンはしっかり笑えるコメディアンのようなことまでキッチリこなしていて。


役者さんもお見事だし、演出がまた素晴らしかったのでしょうね。

 

映画の不満点


この映画がアカデミー作品賞にノミネートされたことに対し何の不満もないのですが、僕自身としては少しだけ不満点はあります。


まず、映画前半が少し退屈だったこと。


具体的に「この一家をのっとるぞ〜」となるまでが長すぎる気がしたことと、それが成功するまではあまりにもスムーズすぎたこと。


もうちょっと「やっべ!バレそう!」「でも乗り切ったー!」みたいなシーンがあっても良かった気がしますけどね。


それと、殺意に至るまでの心情的なプロセスが分かりづらいこと。


後半で「ぶっ殺してやる!」と二人の人物がなる場面があるのですが、どちらの人物も「あいつだけは許さねぇ!」という気持ちに至るまでが分からないんですよね。

 

「あいつらイヤだな」から、実際に行動するまでに24時間もたっていないというのもちょっとどうなのかな、と。

 

そこをもう少し丁寧に描けていたら、主人公達にもっと同化できたのかなと思うのですが。

 

ポスターの感想


まず韓国版ポスターのポスター。

 

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これはもう95点あげちゃいますよね。


だってこのポスターを観るだけですぐに映画観たくなっちゃうでしょ。


パッと見た感じではホラーの匂いが強く感じられますが、陽気な空や衣装デザイン、無造作に横たわった足からはどことなくコメディさも感じます。


「日常の中に異物が紛れ込んだ感じ」というのがうまく表現されていますね。


この「何かはまだ分からないが、とにかく強烈な違和感を感じる」というギリギリのバランスを発明したデザイナーに拍手です。


また、映画を見終わってからもう一度ポスターを観ることで「ああ、このアイテムが写ってるのか」とか「ということは、これはアレ、か」とかもう一度楽しむことが出来るようになっています。


宣伝の効果としてもバッチリ、デザインも素晴らしい傑作ポスターではないでしょうか。

 

日本版ポスター


書きたくもないくらい残念な出来です。

 

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まぁ、100歩譲ってパルムドール受賞の表記とかはいいでしょう。


韓国映画を普段見ない方へのアピールは必要でしょうから。


でも、その他は全く必要ないですね。


まずコピーを二つに分ける意味が全く分からない。


そしてあろうことか、文字を斜めにして勢いのある表現をしているのが本当に神経を疑います。


このポスターの中に、あれだけ余計なものをよく入れることが出来るなと。


ましてや100%予測不可能〜とか鳥肌〜とか。


全然必要ないじゃんこのコピー。


そして何より、足ですね、足。


なんでとったの、足。


これを観るだけでもうウンザリします。


僕のようなある程度映画に興味がある人はいいですよ。


でも、なんとなく街をぷらぷらしていて、パッと映画館のポスターを見た時にこんな府抜けたポスターで興味を持ってもらえますか??


誰が決めたのか知りませんが、ハッキリと「無能」だなと思いました。


かなり強い言葉を使ってしまって気がひけますが、でもこれはいかんでしょ。


無能です。

 

まとめ


噂通りの傑作映画でした。


これから10年以上は軽く、30年くらい語り継がれる作品になるのではないでしょうか?


もはや韓国映画というよりは、映画史において「パラサイトありき」の歴史が始まったんだと思いますよ。


そのくらいの映画だったと思います。


同じアジア組としては、日本映画も頑張って欲しいですけどね。。。


それでは、また。

 

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