フォードvsフェラーリ 《爆音で浴びる映画館用映画》
映画の点数…92点
ポスターの点数…80点
アカデミー作品賞ノミネートへ
こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。
今回取り上げる映画は《フォードvsフェラーリ》です。
そもそも多少車好きなので興味はあったのですが、マット・デイモンやクリスチャン・ベイルのファンというわけでもないし、J.マンゴールド監督は作品によって出来のムラの大きい人なので慎重になっていたのですが結果的には「観といて良かったー!」と言える素晴らしい作品でした。
映画を見終わったあとに入った情報では、アカデミー作品賞にノミネートされたとのこと。
アイリッシュマンやジョーカーなどライバル達が強敵なのですが、少なくともノミネートされるだけの価値は十分にある作品だと思います。
特にクリスチャン・ベイルは素晴らしいキャラクターを作り上げたと感動しました。
今年のアカデミー主演男優賞はジョーカーのホアキン・フェニックスでいいとは思いますが、どちらが「好きか」と言われれば僕はクリスチャン・ベイルの方が好きでしたね。
もしノミネートされてたら「バットマンvsジョーカー」になって面白かったと思うんだけどな。
映画のストーリー
このブログをお読みの方で映画を未見で「いや車なんて興味ねぇし」と思われている方がいるとしたら、ちょっともったいないです。
そこで今回は、車のことなんて何も知らない方に興味を持ってもらえるように、洋服のブランドで説明します。
時は1960年代、今や世界的メーカーとなった巨大企業ユニクロ(フォード)は、さらなる事業拡大を目指し世界トップブランドであるエルメス(フェラーリ)の買収を持ちかけた。
その頃のエルメスは芸術的な作品を作らせたら世界一ではあったが、事業の面では苦戦していたという背景がある。
意気揚々と買収を持ちかけたユニクロであったが、エルメスは「お前らみたいなブランドは、工場で大量生産された洋服でも売ってろ!」と吐き捨てます。
これに怒ったユニクロ柳井社長、「エルメスの野郎調子に乗りやがって!次のパリコレの舞台が奴らの墓場だ!」とまさかの逆ギレ。
勝負は「世界一の洋服の祭典、パリコレ(映画の中ではル・マンレース)」で決着をつけることになりました。
このままでは勝てないと知るユニクロは、外部からルメールやJWアンダーソン(マット・デイモンやクリスチャン・ベイル)などのデザイナーを連れてきます。
あくまでも洋服ブランドのイメージを大切にしたいユニクロと、ただ素直に最も美しい洋服を作りたいルメール達とで争いも発生するなか、果たしてユニクロはエルメスに勝つことが出来るのでしょうか。
という、映画です。
まぁ、こんな冗談は全て忘れて映画を観てください。
ある程度ちゃんと説明してくれるので、ストーリーに置いていかれる心配はさほどありません。
かもめのジョナサン
個人的にこの映画で連想したのはリチャード・バック作「かもめのジョナサン」という小説です。
一羽のかもめが、餌もとらず、集団行動もせず、ただただ最も早い速度で急降下することを目的に飛んでいるという内容です。
群れの仲間からはおかしな奴扱いされ仲間はずれにされますが、本人は気にせず最速ということのみに取り憑かれます。
フォードvsフェラーリに出てくる主人公達は、そんなかもめのジョナサンが社会人になったらということを描いています。
本人達はただ速く走りたいだけなのに、家族を守ったり会社のイメージを守ったりしているうちに本質から外れていってしまいます。
最速のみにとらわれた主人公が、最後に選択する行動とは何かに注目して観ると興味深いものがあります。
映画の良かった点
この映画がモータースポーツとして初めてアカデミー作品賞にノミネートされたのは、実に多層的な意味合いをもっているからだと思います。
一つは巨大資本の会社が金に糸目をつけずに世界一の車を作るという、アメリカンマッチョな視点。
大迫力のカーアクションを存分に味わうことの出来る贅沢な映像。
親子の友情、愛情物語。
そのいずれもが高水準でした。
何より、カラッと抜けた映画であるにも関わらず映画全体を通してのっぺりと死の匂いを感じるのが良かったです。
ぶっちゃけワイルドスピードやミッションインポッシブルからは死の匂いは感じないじゃないですか(それが悪いということではなく、映画のテーマの問題)。
このフォードvsフェラーリからは、常に死の匂いがする。
何かのトラブルがあれば、あっさりと人は死ぬのだという恐怖。
それが映画全体をグッと引き締めています。
マシンへの深いリスペクトがあるうえで、あくまでも扱うのは人間だというバランスを守ってあるのが見事だと思います。
爆音・爆音・爆音
もしもこれを読まれているかたで「DVDが出てからでいいかな」と思っているとしたら非常にもったいない。
是非ともこの映画は映画館の爆音で浴び喰らってください。
僕は残念ながらIMAXでの鑑賞はしなかったのですが、時間が戻せるのならもう一度IMAX上映か見直したいです。
アクセルを回す音、シフトチェンジの音、タイヤゴムが焦げる音、そしてフェーン現象の音。
この映画においては、音の情報がものすごく大きな意味を持っています。
ポスターの感想
1960年代を舞台にしていることも踏まえ、ポスターもどこかノスタルジックな雰囲気になっています。
とても好ましく思う点は、タイトルこそ《フォードvsフェラーリ》ですが、あくまでも男二人の挑戦の物語であるということを強調するポスターになっていることです。
車というのはもちろん工業製品なのでメタリックな印象なのですが、それをポスターにおいてはイラストにすることでむしろ生と死の生々しさや温度を感じます。
全体的な色の彩度は抑え気味なのですが、タイトルなどにパキッとした彩度の強い色を持ってくることでバランスをとっています。
逆にこちらのポスターは写真を使っておりマシンの無機質な表情からはスピード感を感じることが出来ます。
その分背景が夕景になっており、やはりノスタルジックな雰囲気は画面の中に残していますね。
日本版ポスター
日本版ポスターも今回は元のポスターに準じた作りになっており、過剰な情報で映画の全体像をぼかすようなことはしていません。
ホワイトスペース(ポスターの中の白い余白部分のこと)をたっぷりとることでむしろ他のポスターとの差別化も出来ていますね。
まとめ
アカデミー作品賞ノミネートも納得の一本。
今年はさすがに乱発された「貧困家族映画」が受賞、もしくは大作アイリッシュマンあたりが受賞する気はするのですが、仮に本作が受賞することがなくても個人的には忘れがたい一本になりましたよ。
大満足です。
それでは、また。
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