青い春《完全私情込完璧映画》
映画の点数…93点
ポスターの点数…85点
「自分的」傑作映画
こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。
今回取り上げる映画は《青い春》です。
監督は豊田利晃さん、主演は松田龍平、原作は松本大洋という布陣。
共演には新井浩文、高岡蒼佑、瑛太、渋川清彦、塚本高史などここからスターになっていく俳優がゾロゾロいます。
さらにさらに、主題歌や劇中歌にはミッシェルガンエレファント。
もっとオマケで言えば、まだピースを結成前の又吉さんが出ていたり。
あくまでも今から考えれば冗談みたいに豪華なメンバーが揃った映画です。
映画のクオリティ
先に結論から言ってしまえば、一本の映画としてはかなりイビツで、ハッキリと不出来な点も多いと思います(シーンの冗長さが目立つ等)。
とはいえですね、この作品は僕にとって非常に重要な一作なのは間違いなくて。
誰しも青春時代に観て喰らってしまう作品ってあると思うんですよ、映画でもマンガでも音楽でも。
僕にとってはまさにこの映画がそうで、この映画を観たおかげで僕の十代後半を棒に振るという悲劇を生んでいます。
同時にミッシェルガンエレファントというバンドに取り憑かれたのもこの映画がキッカケで。
今まで「スピルバーグみたいな超大作」と「J-POP」しか知らなかった自分が、インディー映画の素晴らしさや本物のロックンロールの格好良さを体感した瞬間なんですね。
僕もこのブログの中で映画の出来や倫理観で批判することはあるんですけど、一方で「出来に難があっても倫理的におかしくても、人間一人の常識をひっくり返す作品はこの世にたくさんある」ことは十分に分かっているつもりです。
映画のストーリー
基本的には原作の松本大洋さんのマンガに沿っています。
とはいえ原作はたしか30ページくらいのマンガなんですよね。
極めて突き放してドライなタッチの漫画に対し、映画ではもう少しだけウェットなニュアンスを持っています。
それでも他の映画に比べたら随分とドライな行動をとる人物達が多いですが。
目標もなく、目的もなく、ただダラダラとした日常を過ごす高校生達の日常をとらえた映画です。
劇中で殺人事件も起きればヤクザに入る奴もいるし、それぞれ「命」に対しての価値観を薄めることで痛みをともなった快楽に逃げていくような。
まぁこういう説明自体がそもそも出来ないからこそマンガや映画にするんですけど、一定の男子高校生だったら理解できるような感情なんですよね。
最近「アオハル」なんてマンガが流行りましたが、僕にとっての「青い春」とはこういう「ああもう、生きていること自体が痛々しい」というような状況で。
あ、もちろん今となっては当時の自分は随分と幼稚だったしパフォーマンスだらけだったし、自分に出来ないことを言い訳にダダをこねてたガキだってのは分かるんですけど。
「ちはやふる」みたいな高校生活が送れていたらなぁなんて本当に思いますよ。
そんな気持ちをブリンブリンに揺さぶってくる内容です。
映画の良い点
最近になって改めて見直してみて思ったのは、とにかく「松田龍平と新井浩文が飛び抜けている」という点です。
松田龍平さんは初主演、新井浩文さんはたしかほとんど映画に出ること自体が初めてだったはず。
ですが、二人が演技をしている瞬間だけはかなり他の場面とのクオリティの差が大きいんですよね。
もちろんこの先にスターになる俳優さん達もたくさんいるんですけど、この映画においては二人の完成度が頭3つくらい出ている印象です。
もっと正確にいうと、技術的なところは未熟だとは思うのですが「生身の人間がその場に存在している」という実在感が全然違うんですよね。
もうこの二人を観るためだけに映画を観てもいいくらい。
それと、いかにもPVチックな使い方が若々しいテンションの音楽の使い方がいいですね。
映画音楽というよりは、音楽のための映画とも言える場面もあって。
特にオープニングの「赤毛のケリー」をバックに極端なスローモーションで登場する不良達と、エンディングの「ドロップ」をバックにこれまた極端なスローモーションで退場していく不良。
ミッシェルガンエレファントはこの映画の翌年には解散するのですが、解散ライブでもこの2曲は演奏しています。
映画の悪い点
前述の通り、悪い点は悪い点で普通にあります。
まずはハッキリとレベルの落ちる役者が何人か目立つこと。
松田龍平さんとかと比べるのはどうかと思うものの、そこはうまく演出でごまかすとかあっても良かったんじゃないかと思います。
それと90分くらいの短い映画とはいえ、それでもカットしていい場面は多かったかと思います。
ダラダラ話すことで不良達の目的のなさを表現するのはいいんですけど、いくらなんても会話として成立していないくらい引き延ばされたセリフのシーンなんかは現実感が無さすぎかと。
現実感はなくてもいいのですが、現実感のある台詞回しと、ファンタジーよりは台詞回しはシーンごとに使い分けた方がうまくいったんじゃないかと思います。
ポスターの感想
うーん、このそこはかとないダサさがいいですねww
いつもならこういう「キャストを並べただけ」みたいなレイアウトは嫌いなのですが、この映画に関してはこれでいいと思います。
例えばクローズだったらもっと「俺たち、不良です!」って感じなんですよ。
でもこの松田龍平さんなんかは、別に改造した制服でもないし線も細いんですよね。
でも表情だけで「ああなんかタダもんじゃねぇな」って分かる。
つまりは「松田龍平がすごい」ってだけでもあるんですけど、それをうまくパッケージできていると思います。
文句を言うとしたら、わざわざタイトルに鎖をつけたり有刺鉄線をつけたりするのは蛇足でしょう。
やはりここは松田龍平の眼光だけを信頼してもう少し控えめなタイトルデザインにしたほうが良かったと思います。
まとめ
今回は完全に私情が入りまくった映画でした。
でもみなさんもあるでしょう?、世間は知らんが俺はこの映画が好きで好きでしょうがねぇの!って映画。
そういう映画に出会えるかどうかだけで、人生まるごと印象が変わることもあるから油断なりません。
そんな映画のお話でした。
それでは、また。
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