映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

千と千尋の神隠し・中国版 《悔しいが本当に良いポスター》

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ポスターの点数…90点

 

こんにちは、ピースマイルです。


今回は中国本土にて【千と千尋の神隠し】の公開が決定し、その公式ビジュアルが発表になったのでレビューします。


既に「おいおい、かっこいいじゃないかよおい」という声もチラホラ出てきてるようですね。


もちろん僕も【ポスターの点数…90点】とつけただけあって素晴らしいアートワークだと思います。


ただし、映画ポスターとしては【特別ルール】で作られたようなものでして、そのあたりを少し考察してみます。

 

日本版ポスター


まずは改めて日本版ポスター。

 

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おなじみのビジュアルとは言え、改めてよく出来ているなぁという感想です。


ジブリ作品のポスターは、比較的シンプルなデザインのものが多いです。

 

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主人公+世界観を示す要素を一つ、くらいな感じですね。

 

ところが【千と千尋の神隠し】に関しては、他の作品よりはゴチャゴチャしています。


これは映画の内容自体を反映しているのではないかなと思います。


トンネルを抜けたあとは、何が何だか分からない世界に放り込まれてぐちゃぐちゃになる映画ですから。


カオスな感じがそのままポスターに現れているようです。


とは言えポスター自体が見にくいということは決して無く、何よりもまず主人公・千尋の顔に目がいきます。


この「なんとも言えない感情の顔」もまた、映画の内容と一致していますね。


その千尋の後方に広がる歪な街並みの不穏さ、やたらとリアルな豚、お化けのような黒い影が映画への興味をかき立てます。


さらに、映画を見終わってからポスターを見ると「あ、これ家族みんなで写ってる一枚なんだ」とか、「千尋のこの表情は、何かを決意したときの表情なんだ」などと分かってもう一度楽しめます。


決してお洒落なポスターではないものの、世界観をうまく一枚のビジュアルにおさえていますね。


忘れてはならないのは「トンネルの向こうは、不思議の町でした。」という素晴らしいキャッチコピーもまた、語り継がれる名作だと思います。

 

中国版ポスター


では本題の中国版ポスターがこちらです。

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かっこいい!!


そして中国っぽい!


中国っぽく見えるのは、主に目の描き方にあるのですがそこは置いておいて。


登場人物達が勢揃いした背景と、そこにうづくまる不安でギリギリの千尋。


これだけで「もう一回映画観たい!」と思いますね。


さらに次の一枚。

 

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これもまたカッコイイわぁ。。。。


大胆な画面構成で一直線の線路を描いています。


そこを真っ直ぐ駆け抜けていく千尋と、影のみがうつる龍の姿。さらにカオナシ。


線路の先を描いていないことで、「先が見えない不安感」を見事に表現しています。


このレイアウトを考えた時点で既に勝ってたようなものですね。


いいポスターだなぁ。


さらにもう一枚。

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これは誰でも分かる通り、映画のクライマックスにあたるワンシーンです。


ただ単に映画のワンシーンを表現しているかのようですが、注目すべきは画法にあると思います。


まるでゴッホの油絵を思わせるようなグニャグニャとスパイラルした背景は、「この世界が虚像である」ことを表現しているようです。

 

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特別ルール、とは


ポスターが素晴らしいのは書いた通りですが、前述の通り中国版ポスターには【特別ルール】のようなものが存在します。


ポスターを観察すれば分かることなのですが。。。


それは、「ネタバレしても良い」という特別ルールです。


映画ポスターは、当然のことながら「映画の魅力を伝える」ことは当たり前ながら、「映画の中身を全部教える=ネタバレする」のは原則的に禁止です。


そりゃそうですね。


シックスセンスのポスターを見て「なるほど、●●●が●●のか」と分かってしまっては台無しです。


ところが今回の中国版ポスターでは結構なネタバレを堂々と含んでいます。


ハクが当たり前のように顔を出していたり、ラストシーンがポスターになっていたり。


映画を観る前にこれらのポスターを見てしまうと、映画内でのサプライズがかなり無くなってしまいますよね。


では何故今回はこのようなポスターになったのか。


それはどうやら、中国の方は既にDVDなどで映画を観たことがあるという前提のようです。


違法アップロードなど(絶対あってはならないが)を含めると、宮﨑アニメは既に知名度はかなり高いようです。


今回は【映画館で上映される】という意味での【千と千尋の神隠し】の公開なのですね。


その「多くの人が映画の内容を知った上での映画ポスター」という、極めて特殊なルールのうえでの素晴らしいアートワークの出来だったというわけです。

 

中国と映画


中国では外国語映画が公開される本数が年間で決まっておりまして、なんでもかんでも上映は出来ません。


そういう意味では【千と千尋の神隠し】はようやく中国政府お墨付きをもらった(安倍政権との蜜月ぶりのパフォーマンスとも噂されます)わけですね。


映画に政治を持ち込まれるのは好きではありませんが、切っても切れない関係であるのは間違いないようで。


まずは日本映画が外国で評価されていることを嬉しく思おうかなと思います。

 

まとめ


最後に昨年公開された「となりのトトロ」のポスターです。

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なんじゃこの格好良さは!!!


これからも中国公開にあたってのジブリ作品ポスターは必見かもしれませんよ。


それでは、また。


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