映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン 《映画もポスターも“パッケージ”がうまい》

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映画の点数…78点
ポスターの点数…85点

 

“3”スターのそろい踏み


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はキャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン》です。


日本語になおすなら「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」みたいなことらしいです。
ごっこの際に使われる言葉みたいですね。


大胆不敵な若手詐欺師【ディカプリオ】と、それを追うFBI【トム・ハンクス】、そして監督に【スピルバーグ】という、もはや2大スターならぬ3大スター映画です。


さらには脇にクリストファー・ウォーケン(アカデミーノミネート)らしっかりとした役者陣を揃えています。


今から考えるとですが、スピルバーグや制作陣には「役者がしっかりしてないと、けっこう簡単につまらない映画になるぞ」という危機感があったのかも知れません。


その危機感をクリア出来る人材こそがスピルバーグだったのだろうし、見事にそれに応えていると思いました。

 

映画のストーリー


16歳で家出した主人公フランク(ディカプリオ)は、小切手を使った詐欺を繰り返していました。


さらにはパイロットや医者、検事になりすまし社会的ステータス・地位まで確立。


名前を変え場所を変え職業を変え詐欺行為を続けるフランクを、FBI捜査官カール(トム)が徐々に追い詰めていく……


みたいな映画です。


やっていることは大胆で軽やかさも感じる犯罪映画です。


実際、劇中で陰惨なシーンなんかは描かれず、基本的にはコメディと言ってもいいくらいのバランスになっています。


ただそこには弱点もあって、多額のお金が詐欺に遭った大事件にも関わらず「映画的には地味」なんですよね。


画面で起こっていることは「文字を消したり書いたりする(偽造)」とか「たまに走って逃げる」くらいなもので。


銃をぶっ放したりカーチェイスがあったりなんかはしないんですよ。


それもあってスピルバーグは信用のおける役者を準備したんじゃないでしょうか。


また、映画のオープニングの時点ですぐに最終的にフランクは逮捕されてしまうということが判明します。


これもいかにも映画らしい大捕物のシーンがないと分かっているからこその脚本だったのかも知れません。

 

映画の良かった点


やはり「さすがスピルバーグという評価になってしまいます。


音楽も盟友ジョン・ウィリアムズ


地味なシーンやセリフだけのシーンでも「それっぽく」まとめあげています。


スピルバーグらしさを特に感じるのは父親に対する描写にとても力が入っているところです。


脚本はスピルバーグではないのですが、スピルバーグ作品はいつも映画に出てくる父親が「ダメな父親」とか「大人になりきれない父親」とか「そもそも父親がいない」とかだったりします。


今作では「尊敬されたいのに、どうしてもうまくいかない父親」をクリストファーが見事に演じています。


息子であるフランクも父親に尊敬されたく、そして父に威厳を取り戻してほしいとずっと願って行動しています。


ただの地味な小切手詐欺事件を、誰しもが共感出来る親子の話にまとめるあたりが素晴らしいなと思いました。


それとやっぱりトム・ハンクスはいいですね。


映画の中ではほとんど犯人に振り回される可哀想な役なんですけど、その「犯人逮捕に右往左往する仕事人の側面」と「どれだけ痛い目にあっても人としての優しさを忘れない人格者としての面」「家族と離婚してしまった独身者としての面」を見事に体現しきっています。


陽気で強い人なのにどこか寂しげな人とかを演じさせたら右に出る人はいないですね。

 

映画の不満点


不満点もあげておくと、単純に上映時間が長すぎると思います。


この内容で2時間20分は不要だったでしょう。


女性をナンパしたりするシーンやパーティーでバカ騒ぎするシーンなんかは丸ごとカットでも良かったんじゃないですかね(ウルフ・オブ・ウォール・ストリートなどではパーティーシーンは必須なのですが)。


いらないシーンをタイトにまとめて1時間50分くらいに出来ていたら密度の濃い映画になっていたように思います。


それと、トム・ハンクスとは対照的にディカプリオが良くなかった気がします。


今でこそ文句のつけようのない素晴らしい役者だと思っていますが、2002年時点ではまだ少し経験値が足りていないように感じました(偉そうに何言ってんだか)。


このフランクという役は先ほどのトム・ハンクス同様「大胆不敵な天才詐欺師の側面」「家族の愛に飢えたティーンエイジャーという側面」という多面的な人物を演じる必要があります。


でもそのどちらも中途半端なバランスになっちゃっていて、結果的に「いまいち何を考えているのか分からない」人物に見えちゃったのかなと。


まぁ今となっては「クズでワガママでダメ男」を表現する天才であるディカプリオですが、この時点ではまだまだアイドル的な面が前に出すぎていたのかな、とは思います。

 

ポスターの感想


映画のオープニングムービーがまさにそうだったのですが、この映画はグラフィカルな遊びがあってとても面白かったですね。


そんな映画ポスターがこちら。

 

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これだけですでに楽しそうじゃないですか。


ディカプリオとトムという役者名はハッキリと可読出来るのに対し、二人がとても早いスピードで逃げたり追いかけたりしているので顔が全く見えません。


普通顔が見えないなんてデザインとして一発アウトなのですが、これはディカプリオとトムの知名度が世界中で十分にあるからこそ出来る表現ですね。


タイトルのCatch me if you canも、行ったり来たりしながら逃げたり追いかけたりという映画のストーリーに合っています。


パイロットに偽装するところから映画が本格化するのを考えると、空を思わせるような配色も納得です。

 

キャッチコピー


このポスターで個人的にいいなと思っているのはキャッチコピーです。


「The true story of a real fake」

 

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日本語版ポスターの翻訳を借りるならば「本物の偽物を描いた真実のドラマ」です。


この映画が実在の人物をモデルにしているので、真実のドラマです。


かつ主人公が詐欺師なので偽物を描いています。


という、なんだかゴチャゴチャしてて一瞬「ん?何言ってんの?」と思ってしまうあたりがこの映画らしいですね。


軽やかにはぐらかされる映画の魅力を一言でうまく表現しています。

 

日本語版ポスター


先ほどのデザインバージョンも日本語版ポスターにあるので「日本語版ポスターがダサいぞ!!」と言うつもりは全くないです。


単純に別デザインですね。

 

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このポスター、二人の顔がハッキリ見えるから作られたと思うんですけど、それにしてもなんでディカプリオはこの衣装なんでしょう笑?


劇中こんな衣装をしていたことすら思い出せないのですが、特に理由はあるんですかね?


もしも僕が衣装を担当していいなら、白衣の上にパイロットの帽子をかぶせて、手には小切手を大量に持たせます。


そういうのじゃダメだったのかな?


ちょっとよく分からないデザインですね。

 

まとめ


さすがスピルバーグ、の一言ですね。


傑作とは思いませんが、やっぱり観ている間中はずっと楽しいですよ。


スピルバーグ×トム・ハンクスの映画はおそらく全部見ていると思うのですが、いずれも大傑作ばかり。


ここ数年で立て続けに2本傑作も出ていることですし、良かったらまたこのコンビで映画とってもらえないでしょうか?


お願いしますお二人さん。


それでは、また。

 

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