映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

キャリー(1976) 《映画は苦手だけどポスターはピカイチ》

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映画の点数…45点
ポスターの点数…85点

 

ホラー映画の古典


1976年公開当時はセンセーショナルな演出で観客を恐怖のどん底に突き落とした《キャリー》


そんなキャリーも今では古典とも言っていいくらいスタンダードな作品になっています。


監督はブライアン・デ・パルマ


原作はスティーブンキングで、主演のキャリー役にはシシー・スペイセクです。


正直、今挙げた三人と母親役のパイパーさんの4人だけの映画と言っても過言ではない映画です。


実際演者の二人はアカデミー賞にノミネートされたくらいだし、彼らの演技を見ているだけでも十分に楽しめます。


そんなベストなキャスティングだったシシー・スペイセクさんですが、映画だけではなくポスターにおいても存在感をみなぎらせています。

 

映画の感想


最後の体育館での大殺戮シーンは確かに見応えがありましたが、残念ながらそれだけ。
それ以外のシーンはほぼ全て苦手でした。


これはもう単純に、僕とデ・パルマの相性が悪すぎるからだと思います。


他のもデ・パルマ作品も大体苦手なのです。


いくつかの名作を撮っている彼だし、世界中ではこの作品は大いに愛されているのでしょうから僕などがいくら小さく文句を言っても特に問題はないでしょう。


なので遠慮なく苦手な箇所を挙げると、まず全体の絵作りが苦手です。


意図的なエフェクトをかけまっくた白っぽい演出が、キャリーの処女性を演出しているのでしょうね。


でもそれは、演出でやられるほどに冷めえてしまうんですよね。


そんなことしなくても、ストレートに表現するだけで彼女の魅力は十分に伝わります。


それと、説明過多な音楽が苦手でした。


なぜ緊迫したシーンで「緊迫してくださーーーーい!!!!」みたいな音楽を鳴らすのか。


逆に冷めます。


ただし前述の通り、体育館の悲劇シーンは見応えたっぷりで面白いですね。
(画面内の出来事は完全なる悲劇なんですけど)


独特の宗教観が悲劇を生みだすというのは、日本だと「八日目の蝉」なんかは近いですかね。


ただどうしても「敬虔なカトリック」がどこまで日常レベルで厄介な人達なのかとかは、実際に会ってみないことには分からないもので。


その点においてちょっとノレない部分があったかなぁなんて思ったり。


このへんは映画の罪ではないんですけどね。

 

ポスターの感想


上記の通り映画は苦手なんですけど、ポスターに関しては素晴らしいと思います。

 

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こわーい。


グラフィックデザインとして優れているということでは特にないんですよ。


文字の組み方やタイトルの表記なんかは、むしろ「学生レベル」みたいな感じです。


ですがこれが大正解!


ポスター全体から伝わってくる未熟な感じこそがより恐怖を演出していると思います。


キャリーという少女の不完全性がうまくビジュアル化されているんですよね。


そのせいでB級映画のような雰囲気も感じさせてしまうのですが、実際の映画もB級映画のような部分も大きいので特に問題はないかと。

 

写真の分割


何よりも目を引くのは当然キャリーの二枚の写真ですよね。


天使のような笑顔のキャリーと、とても同一人物とは思えないキャリー。


動画で怖いと言うのは分かりますが、このキャリーに関してはポスターのこのビジュアルだけでも十分に恐怖を感じる迫力があります。


この写真が同時に並んでいることで「劇中で何が起こったんだろう=どんな映画なんだろう」と興味が沸いてきます。


これが恐怖の顔の方だけをのせていてもあまり効果は無かったのではないでしょうか。


ちゃんと「幸福のキャリー」と「地獄のキャリー」を同時に提示することでその絶望の落差が伝わってくる仕掛けになっています。

 

まとめ


古典作品の弱点でもあり、そしていいところはCGやフォトショップが無いことだと思います。


画像編集能力が低い分、アイデア勝負なところが大きくて。


なのでこうした優れたポスターにも巡り会えるわけなんですよね。


デ・パルマ監督はやっぱり苦手なんですが、少なくともラストシーンを目撃するだけの価値は十二分にありますよ。


それでは、また。


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