映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

キングダム 《このやり方ではいつまでたっても…》

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映画の点数…52点
ポスターの点数…6点

 

2019年度邦画実写No.1


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《キングダム》です。


ヤングジャンプ連載マンガの実写化。


主演には山崎賢人さんや吉沢亮さん、橋本環奈さん長澤まさみさん、一番おいしい王騎将軍役に大沢たかおさん等。


ちゃんと10億円くらいの予算をとって制作された日本では大型作品になりますね。
シンゴジラよりも多いのかな?


若手の主演映画でここまで予算をとったってのは今の日本映画産業を踏まえるとなかなか偉いなと思う次第。


日本での興行収入も2019年度でトップ10に入ります。


評判も上々で、近年のマンガの実写化作品の惨敗の歴史を考えると「よくやったぞ!」って感じじゃないでしょうか。


で、僕の感想としては………


ごめんなさい、けっこう普通にダメでした。

 

キングダムというマンガに対して


まず僕自身は、キングダムのマンガのファンです。


全巻所持してるマンガだし、ここ10年のマンガの中で最も優れたマンガの1つだと思ってます。


すでに50巻を軽く超える巻数出ているにも関わらず、大きな息切れもしない作者さんの力量が素晴らしいですね。


そんな大好きなマンガの実写化なので思うところは色々あるんですけど、基本的には「マンガと映画は別物」として観るようにしているので「マンガより良いとかダメ」という感じでなく「普通に映画としてどうか」で考えるようにはしています(もちろん完全には無理だけどさ)

 

映画の良かった点


映画全体の印象になりますが、全体としてはとても良かったです。


まず、「スケール感」に関しては非常に計算されたのだろうなという印象。


2時間の映画の中で、安っぽさを感じるシーンはかなり少なかったです。


登場人物達の衣装もかなりしっかりしており、コスプレ感がする人も少なかったですね(長澤まさみさんはちょっと危なかった気もしますが。)。


CGでの処理や中国でのロケをうまーーーく利用して、「大きく見せる場面では大きく!!」「粗が見えそうな場面では小さく」写すなど工夫が見えて良かったです。


ちゃんと身の丈にあった映画の作り方が出来ていたと思います。


「そういう工夫そのものが安っぽいってことなんじゃないの??」って意見が飛んできそうですが、そんな事言ったって隣の劇場では《エンドゲーム》のような300億円かけた映画も同時にやってるわけですから。


同じ土俵で勝負する以上は、言い訳なんてしてないで精一杯工夫していい映画を作ろうとする姿勢の方が僕は好きです。


マンガのオリジナルストーリーの部分を残す箇所は残し、省略する部分はバッサリ切るあたりも潔くて良いと思いました。


そりゃ一本の映画として考えると河了貂(ハシカンさん)は丸ごと必要なかったし邪魔だなぁとは思いましたが、そこまで言い出すとマンガファンからの反発もありそうだしなぁとか。

 

アクションシーン


アクションシーンはかなり良かったです。


ワイヤーアクションで思い切り人がぶっ飛んでいくのですが、なかなか思い切りが良くて。


「そんなに人は飛ばねぇだろ!!」というツッコミなんてお構いなしにブンブン人が飛び散らかっていくので観ていて気持ち良かったです。


まぁマンガの実写化ですからね。


あのくらい勢いがある方が観ていて楽しいですよね。

 

映画の不満点


これを言っちゃうとお終いなんですけど。。。


でも言わないとしょうが無いので言いますが、主演の山崎賢人さんがダメでした


彼が脇役とかだったら別にいいんですよ。


でも彼が主演である以上、彼を中心に映画は進むし彼の印象そのものが映画の印象になります。


彼の演技が気にならない人ほど、この映画を楽しむことが出来たのだろうと思います。


逆に言えば、彼の演技に引っかかってしまった僕なんかは映画全体に大きくストレスがかかってしましました。。。


山崎賢人さんは、この映画の中での演技パターンが二種類しかないんですね。


「チンピラっぽく(奴隷の身分なので言葉遣いがなっていない)強がる演技」「うわあああああと泣きわめきながら怒る演技」の二種類。


ハッキリ言って、そのどちらも「演技」にしか見えなかったです。

 

演技パターン


まずチンピラ演技の方ですが、おそらく山崎賢人さん自身はとても「いい人」なんじゃないでしょうか。


あのー、全然チンピラ感が出てないんですよね。


怖くもないし、強そうでもない。


ただうるさいだけで、彼が喋る度にストーリーが止まってしまうので邪魔なんですよ。主演なのに。


「泣きわめき演技」の方は、なんていうかホントにいつもの「日本人的泣きわめき演技のフォーマット」でしかなくて。


どっかで観たことあるなと思ったら、進撃の巨人三浦春馬さんとかデビルマンの主演の双子とか(名前も分からん)と一緒なんですよね。。。


なんであの泣き方しか出来ないんだろう。


その泣きわめき演技が映画の中で5回とか6回出てきます。


まぁ落ち着けよ。


親友が死んで悲しいのは分かるが、2時間の映画の中で5回も回想しないでよ。


ひどい時には死んでから2分後くらいには回想してたでしょ。


こっちも一応義務教育は受けてるから、そんなに頻繁に思い出さなくてもちゃんと君の悲しみは覚えてる。


だからもう泣かないで。


映画が止まっちゃうし、なんか敵の人も泣き終わるまで待っててくれてて可哀想。

 

演出の問題


この演技がダメな問題って、佐藤監督の演出の問題なのかなとも思いました。


何故なら、山崎賢人さんとか橋本環奈さんとかはダメなんですけど、吉沢亮さん、長澤まさみさん、大沢たかおさんとかは普通にいいんですよ。


特に吉沢亮さんなんて一人二役という難しい役どころなのですが、本当に別人に見えたし素晴らしかったです。


大沢たかおさんに至っては、一人だけ「完全にマンガ的なキャラ」にも関わらず、ギリギリ魅力的に見えるラインで演技を見つけ出してて感動しました。


これってたぶん、「もともと演技レベルが高い人は良い」ってことなんじゃないでしょうか。


つまり、それぞれの役者のレベルがそのままキャラクターの良さに繋がっているんじゃないかと。


例えば長澤まさみさんは、「普通に喋る演技」の時は良いんです。


ですが、アクションシーンになると急にダメダメになるんですよ。


これって、長澤まさみさんのアクションの演出がうまくいってないってことですよね。


アクションシーンがダメならダメで、ちゃんと「最強の女戦士」に見えるように演出するべきでしょう。


めちゃくちゃ鍛えて練習してもらうのか、CGで誤魔化すのか、アクションダブルを使うのか。


そのへんが全て役者さんまかせになってるから、映画全体の役者さんのトーンがチグハグに見えるんだと思います。


僕は別に山崎賢人さんが嫌いとかではありません。


でもね、そりゃ人には向き不向きがあるでしょうよ。


ジョジョの奇妙な冒険の実写化を観て、誰もが分かったはずです。


山崎賢人さんに、オラオラ系の役は向いてないです。


これはもう、キャスティングの時点でまずかったんだろうなと思います。

 

ポスターの感想


うーん、、


ポスターもなんていうか、いつもの日本ポスターって感じですね。

 

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キャラクターをどんどん積み上げていったら、そりゃ迫力は出るけどカッコイイかと言われるとどうにもなぁという感じ。


こういうポスターって、「今までのキャラクター達が大集合!」してるからカッコイイ部分ってあるじゃないですか。


例えば《エンドゲーム》のポスター。

 

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11年かけて積み上げた歴史があるからカッコイイんですよね。


でもキングダムは初の映画化なんだし、誰も知らない人達なわけでしょ。


こんな風に積み重ねても、単純に見にくいだけだと思いますよ。


ここはもう、山崎賢人さん一人、もしくは山崎賢人吉沢亮&本郷さん3人とかの方が良かったでしょ。


そして、ビジュアルとしての美しくない原因は配色に問題があるようです。


全体的にホコリっぽくしてあるうえに色もバラバラ大きさもバラバラで何がなんだか分かりづらい。


このへんも進撃の巨人と全く一緒。

 

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ていうよりポスター作った人まで同じなんじゃないかと思うレベル。。


例えばですが、スターウォーズのポスターはこんな感じです。

 

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全体を青と赤の2色で統一して、敵と味方で分けています。


キャラクター自体は多いのですが、大きいキャラ、中くらいのキャラ、小さいキャラと大きさのバランスも揃えてあり、それぞれがあまり重なりあっていないのでスッキリして見えます。


キャラクターが多いからってゴチャゴチャするかどうかはあまり関係ないわけですね。

 

まとめ


けっこうお金もかけたチャレンジングな映画だったし、ハッキリと良いところもたくさんあった映画だと思います。


それでもやっぱり、今のような映画の作り方をしている以上はとても世界に輸出出来るような映画は出来ないと思うし、そうなると産業として先細る一方なわけですよ。


そういう意味においては個人的にけっこうガッカリした部分も大きかったです。


続編があったら観てみたいとは思いますが、とにかく「まず一本の映画として面白いものを作ろうぜ」という映画を作ってほしいなと。


今年日本で最も売れた映画は「天気の子」ですが、あれなんかは「売れるかどうかは知らんが、こういう映画を俺は作りたい」という極めて作家主義的な映画でもあったと思うんですよ。


映画に希望があるとしたら、そっちの方向だと僕は思うんですけどね。。。


そうやって映画全体のレベルを上げたあとに、ちゃんと商業的な映画が作られると思うのですが。


それでは、また。

 

 

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