アイアムアヒーロー 《典型的な「これじゃない」ポスター》
映画の点数…90点
ポスターの点数…10点
ざまぁみろ世界!!
こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。
今回取り上げる映画は《アイアムアヒーロー》です。
同名の原作マンガの実写化。
監督は《GANTZ》《新デスノート》《キングダム》の佐藤信介さん。
これがなかなか評価の難しい監督でして、GANTZやキングダムは少なくとも世間的には大ヒット作でした。
一方でデスノートはなかなか目も当てられない惨劇だったと思っていて。
いずれもマンガの実写化ではあるものの、ムラのある監督さんなのかなという印象。
ではこのアイアムアヒーローはどうかと言うと、もうほとんど文句なしの大傑作だと思っています。
ファンというほどではありませんが、ゾンビ映画は基本的に好きで観ている身としては「やっぱウォーキング・デッドみたいなハリウッドには勝てねぇなぁ」と思っていたわけですよ。
それがこのアイアムアヒーローを観てひっくり返ったのですよ。
「全然ハリウッドに勝ってるじゃん!」と。
もちろん、銃社会のアメリカと同じ路線でのアプローチではないとはいえ、「日本にゾンビがいたら」という視点を見事に作品にトレース出来ていると思いました。
ざまぁみろ世界!!ですね。
映画のストーリー
古今東西のゾンビ作品と、フォーマットは同じです(そこも偉い)。
ある日どこからともなく現れたゾンビ達。
みるみるうちに感染はひろがり、政府や自衛隊もすぐに機能しなくなりました。
最愛の恋人もゾンビ化で失った主人公は、趣味で所持していた散弾銃を手に安息の地を目指します。
大きなルールは…
- 噛まれたら感染する
- 感染したら治療法は(少なくとも映画内では)ない。
- 脳に致命的な損傷を与えないとゾンビは死なない
- ゾンビに高度な知恵はなく、直線的に生きている人間を襲う
つまりは、よくあるゾンビものと同じですね。
このフォーマットの中に
- 日本が舞台なので、基本的に銃が存在しない
- 主人公は銃を持っている貴重な存在
というあたりが特殊ルールと言えるでしょう。
映画の良かった点
まずは何より、よくぞここまでのゾンビ描写を可能にしたということですね。
演出も良くて、一人目のゾンビが片瀬那奈さんという誰が観ても美人な方をチョイスしたのが偉いです。
あの綺麗な片瀬さんが目もひんむいて歯もガタガタなゾンビに変身したというショッキングな映像だけで「こいつぁ本気だぜ」というメッセージはビシビシ伝わります。
もちろんその仕事を受けた片瀬さんも偉いですね。
というより片瀬さん以降は美人な方がゾンビになるという描写がないので、片瀬さんは偉いうえにおいしいとも言えます。
そしてゾンビを破壊するシーンも全く逃げていなくって、ちゃんと血液も臓器もぶっ放します。
長澤まさみさんと有村架純さんがいようがおかまいなし、血みどろの大虐殺シーンが連続します。
特にラストの駐車場での銃撃戦は「ウォーキングデッドでもここまでのシーンは無かったんじゃないかなぁ」というくらい撃ちまくりです。
単にアクションやゴア描写がすごいというわけでもなく、ちゃんと主人公の成長物語としても素晴らしいです。
前述した「日本にゾンビが出現した場合」という点を踏まえ、「そもそも銃を撃ったり、ましてやゾンビといえども人間に対して発砲することなんて出来ない」という日本人らしさを活かした自分との葛藤シーンがあります。
ゾンビ映画とはいえ「自分だったらどうなのだろう」と物語内に入り込めるので、決して置いてけぼりにならないんですよね。
ポスターの感想
えー、せっかくのいい映画なのにこんなこと言いたくないんですけど、映画ポスターは酷いと思っています。
ビジュアルとしてはインパクトもあるし色使いもうまいと思うんですよ。
でも、映画のレベルに対してこのポスターはないんじゃないですかね。
まずそもそも何の映画か分からないじゃないですか。
大きな銃をもった大泉洋さんが、まるで長澤まさみさんと有村架純さんに向けて銃を向けているとすら思いかねないですよ。
一応背景に小さくゾキュン(ゾンビ)や荒廃した街を入れていますが、レイアウトの問題で全然目にも入ってきません。
もしも「ゾンビをドーンとのせるとお客さん減っちゃうからさぁ」というんだったらそもそもそんな映画作るなって話だし。
そうじゃなくてもマンガの第一巻のように「ありふれた日常の風景の中で銃を持っているという違和感」みたいな表現の方法はあるわけですよ。
キャッチコピーも散漫だしポスターのトーンとも合っていないでしょう。
長澤まさみさんが真剣な顔をしている横でこんなキャッチコピーをあてちゃうのは失礼じゃないですかね。
韓国版ポスター
これは韓国版ポスターです。
こっちのポスターはものすごくいいじゃないですか。
なんで日本もこれにしないの?
先ほど言ったようにゾンビが直接ポスターに登場するわけではないですが、「パーカーにキャップというカジュアルな格好の男性」が「大型の銃器を持ち」「無数の亡骸らしきものの中央に立っている」という違和感と不気味さ。
こっちの方がよっぽど映画に対しての関心が高まりますよ。
まとめ
典型的な「映画はいいのにポスターは残念な映画」の代表ですよ。
せっかく正々堂々とした本格ゾンビ映画だったのに。
なんでポスターで茶化すようなことしちゃうですかね。
もちろんこの映画はコメディ的な楽しさもたくさなる映画ですよ。
でもそれをポスターで全面に出したら絶対にダメです。
死の緊張感が常にあるからこそ、ちょっとしたことがコメディになるんですよ。
このポスターからは全然死の匂いがしません。
それでコメディシーンを見たって笑いは半分になるんですよ。
本当に残念です。
映画は本当に面白いので是非観てくださいね。
それでは、また。
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