映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

未来のミライ《低評価は納得、だけど…》

 

f:id:peasemile:20191212170113j:plain



映画の点数…82点
ポスターの点数…95点

 

細田守監督作品


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は細田守監督作品未来のミライです。


まぁ細田守作品といえば、映画ファンならマスト、映画ファンじゃ無くても一応観ておこうとなるくらいのブランドは既に獲得していると思います。


僕自身はというと、大ファンだとは言いませんが作品が出る度にやはり感動し感心し嫉妬してしまうような素晴らしい作品群だなと思っています。


ところが今作《未来のミライ》、公開当初から「こ…これはどうなんだ???」とまわりがザワザワしていて、結果的に興行収入的には全作バケモノの子などには遠く及ばずとなったようです。


というわけで僕自身もそこまで期待せずに鑑賞したのですが、いやいやどうして、個人的には「やっぱすげぇ面白いじゃん!」と思いましたよ。

 

映画のお話


お父さん、お母さんと愛犬と仲良く暮らす「くんちゃん(4)」の元に、妹となる「未来」がやってきました。


最初こそ可愛がることを約束したくんちゃんですが、お父さんもお母さんも妹につきっきりになることに嫉妬してしまいます。


どうしても妹を可愛いと思えないくんちゃん、そしてその子育てに奮闘するお父さんとお母さんの成長物語です。


と、言えば普通の物語なんですが、細田監督らしいファンタジー要素もたっぷり詰まっており、擬人化された愛犬や未来からやってきた妹、青年時代のひいじいじ等との出会いと体験を通じながらくんちゃんは成長していきます。


この映画が低評価だった理由の一つに「事件おこらなすぎ」という問題があると思います。


大人が全部消えてしまうような危機は訪れないし(オトナ帝国の逆襲)、くんちゃんが車にひかれたりしないし(赤ちゃんと僕)、人類を超越した存在・スターチャイルドになることもありません(2001年宇宙の旅)。


「新幹線のオモチャで妹を殴る」とか「黄色いパンツが洗濯中だから履けない」とかそういうレベルの事件しか起こらないのです。


それをもって「つまんねぇよ」と言う人の気持ちも分からんではないのですが、前述の通り僕は楽しかったです。

 

映画の良かった点


まずは何を置いても「くんちゃんが可愛かった」という点が最大の魅力です。


逆に言えば「このガキ全然可愛くねぇな!」と感じた人にはこの映画はツライでしょうね。


これは「男の子を子育てしたことあるか」で決定的に映画の評価が変わると思いますし、細田監督もそんなこと分かって作っているはずです。


観ていたらもう本当にあるあるというか、まず映画冒頭「おもちゃ片付けといてね」と言った数分後に何故か壮大な散らかり方をしているとか日常茶飯事です。


お尻をプリリンとさせて寝る姿勢とか、信じられないような寝癖をつけて起きるとかもあるあるですね。


そして「可愛いと思えないくらい憎たらしい」点の描写すらも見事です。


こちらの言うことを聞いているようで理解はしてないとか、我が儘を言ってもしょうがない場面でこそ傲慢になるとか。


あらゆる子どもが出てくる映画に比べてくんちゃんは本当に「可愛くない」んですよ。


つまり、それくらい実在感があるということなんですけど。


「こんな子がいるとしか思えない」というレベルでキャラクターを作り上げる細田監督はやはり世界トップレベルだと言い切れるし、そこだけ観るだけでも十分に魅力のある映画です。


そんなくんちゃんが、色々な不思議な体験を通じて少しずつ成長していくのを観ているだけで泣けちゃうんですよね。


自転車の練習シーンとかたまらんかったです(でもいくらなんでも4歳児にはハードすぎないか?)。

 

映画の不満点


この映画の不評な点を観てみると、「未来から妹がやってくる設定の意味が解説されていない」とか「東京駅で迷うシーンが意味が分からん」とかあるようです。


これはですね、僕にもさっぱり分かりませんでした。


とはいえ、僕はそこはそんなに不満を感じなかったんですよ。


そういう「よく分からんところ」を楽しむのも映画だと思ってるし、子どもって「いつ学習したのか全く分からないことをいつの間にか知っている」ということが本当に良くあるので。


そんな時は「ああ、この子もきっと時空を飛び越えて学習したんだな」と思うことにします。


それよりも何よりも、僕ははっきりと一点不満があります。


それは「くんちゃんの声優」です。

 

声優問題


メインキャストの方々の多くは俳優さんや女優さんがやっています。


これは細田監督がかつて所属していたスタジオジブリのやり方と似ています。


そのやり方による成功例もたくさんあると思います。


例えばトイストーリーの唐沢&所コンビなんて完璧な組み合わせだと思いますし、近年でもアナ雪の松&神田コンビも素晴らしかったですね。


でも今作はダメだ。。。


あえてここでは名前を出しません。


だってその方は、ちゃんとオーディションで選ばれて全力で演じたのですから。


でもどこをどう観ても「まっっっっったく4歳の声に聞こえない」んですよ。


仕方ないから、観ているこちら側で「大人の女性の声を4歳児にもう一度変換して観る」というような工夫をしながら観ていました。


そんなのおかしいでしょう。


途中、公園で出会う少年達がいて、彼らはおそらくプロの声優さんが声をやっていると思われます。


ああ、あの声優さんでこの映画を観ていたらもっと楽しめるのに、と強く思いましたね。


だってレベルがあまりに違いすぎるんだもの。


俳優さんが声優やった方が本当に宣伝になりますか?良い効果生みますか?


この映画ほど「子どもとしてのリアリティ」が求められる作品はないのですから、ちゃんと声優を決めてもらいたかったです。


最近は映画版のアンパンマンドラえもんもゲスト声優がやるのが定番になっていますが、はっきりとレベルが低いものが目立ちます。


重ねて言いますが、俳優さん達が悪いとは言いません。


そんなのサッカー選手が「お、お前サッカーうまいから運動も出来るだろ、ちょっと野球やってみろよ」と言われていきなり東京ドームに立たされるようなもんでしょ。


今回ははっきりと声優さんの件でガッカリしました。

 

ポスターの感想


未来のミライのポスターの感想というよりも、もはや細田守監督作品のポスター全体に通じるものです。

 

f:id:peasemile:20191212170113j:plain

 

 

f:id:peasemile:20191212170105j:plain

 

 

f:id:peasemile:20191212170111j:plain

 

f:id:peasemile:20191212170108j:plain

 

f:id:peasemile:20191212170059j:plain

 


共通点は、黄色い文字、もしくは白い文字、であること。


ゴシック体のフォントで作られていること(というかどれも受ける印象は同じというくらい一緒)。


いずれも青空が背景にあること。


なんなら入道雲の形すらほぼ一緒だということ。


などですね。


特に未来のミライ時をかける少女のポスターをかなり連想させるし、それが狙いなのでしょう。


変わっていないところがないというわけではなく、人物の描写などは作品を重ねる毎にむしろシンプルにフラットになっています。


それでいて人物の実在感はむしろ増しているというのだから怖ろしい話ですよ。


これらのポスター達を観ていて感じるのは「もはやキャラクターとシンプルなレイアウトだけで細田守監督作品と瞬時に理解出来るほどにブランドが確立した」ということ。


そしてそれを可能にしている極めてレベルの高いグラフィックデザインだということです。


素晴らしいの一言ですよ、本当に。


いつの日かは分かりませんが、今までの細田守監督作品とは全く違うルールのポスターも観てみたいですね。

 

まとめ


やはりというべきか、僕は今作も「なんだよ、やっぱりちゃーーんと傑作じゃん」という感じです。


不満点がないとは言いませんが、それでも「日本には細田守という人がいる」というだけでも感謝感謝じゃないですかね。


特に3〜4歳のお子さんがいる方は観ないなんて選択肢ありませんよ。


是非ご覧になってくださいませ。


それでは、また。

 

 

↓ 面白いと思ったらクリックください!励みになります!

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村