映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

パターソン 《お。日本版の方がいいポスター?》

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映画の点数…88点
ポスターの点数…83点

 

ジム・ジャームッシュ作


こんにちは、ピースマイルです。


全ての作品を観ている訳ではないので語るのもどうかと思いますが、僕はジム・ジャームッシュ監督の作品が好きです。


一番好きなのはダウン・バイ・ローですかね。


そんなジム・ジャームッシュ監督作の【パターソン】という映画とポスターについて取り上げます。


ジム・ジャームッシュ作品の「何が好きか」を語るのは非常に怖ろしい気がしてしまって。


例えば「ありふれた日常の中にこそ幸せがあることを描いている」というのが特徴だと言えるとも思うんですよ。


でも「いやいやいやいやいや!!!ちょっと待ってよ!!そんなファッキン陳腐な言葉でジム・ジャームッシュ作品をまとめないでよ!!」という気持ちもあるわけです。


まぁそんなこと言ってたら映画について語るのはほぼ不可能になってしまうんですけどね。


要は、僕が褒めてるところの7,000倍くらい良い映画なんだよということです。


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映画のアウトライン


こんな言い方本当にしたくないんですけど、ありふれた日常の映画です笑


主演はアダム・ドライバー。


ちょっと前までは「カイロ・レンの人」と言う方が通じた気がするんですが、今や大人気の俳優になってしまいました。


そんなアダム・ドライバー演じるパターソンさんが主人公。


しかもパターソンさんが住んでる街が、ニュージャージー州のパターソンという街。
ややこしいわ。


秋田県を舞台にした映画で秋田豊を主人公にするようなものですかね。違いますかね。


そんなパターソンさんが、月曜から日曜日までを過ごしていく様子をゆっくりと描いていきます。


基本的には6時半くらいに起きる→シリアルを食べる(奥さんは寝てる)→歩いて出勤する→バスの運転手として働く→滝の前で奥さんのお弁当を食べながら詩を書く→帰って奥さんとディナー→犬の散歩をしつつバーで一杯飲む、というのが彼のレギュラーとしての一日として描かれます。


このレギュラーの中に「奥さんが訳の分からない料理を考案して困惑する」とか「奥さんがギターを買ってミュージシャンになりたいと戯言(TAWAGOTO)を言い出す」とか「ギャングに話しかけられる」とか「ラッパーにぎこちなく話しかける」とか「バーでカップルの痴話喧嘩に巻き込まれて危うく死にかける、ような思いをする」とか、大きいとは言えない事件が巻き起こるわけです。


言葉にすると全く面白くもなさそうなエピソードなのに、それをジム・ジャームッシュが撮ることでなんとも言いがたい光に溢れた日常に見えてくるから不思議なんですよねぇ。

 

詩をよむ映画


そして、この映画全体を通してパターソンさんが詩を書いていて。


もちろん英語→日本語に翻訳してしまう時点で詩の美しさは大きく損なわれてしまっているのは百も承知ですが、パターソンが読んでいる詩を聞くだけで「この人は世界を愛そうとしているのだろうな」というのが分かるというか。


本当に何も起こらない映画なんですけど、やっぱり感動するわけですよ。


「退屈な映画」とは思わないで欲しいなぁというか。


それを言い出したら、僕たちが生きている日常だってずーーっと退屈ですよ。


その退屈な人生の中の、どの部分に価値を感じるかが大切なわけで。


「退屈な映画」であり「退屈な人生」であると感じそれを否定したいのであれば、それぞれの人生で必死こいてジタバタするしかないんじゃないのかなぁなどと。


そんなことを映画を観ながら考えたような、そうでもないような。


やっぱりジム・ジャームッシュ監督作品は好きだなぁと思った次第です。

 

ポスターの感想


このブログ内の多くの作品では「英語版ポスターはいいのに、日本語版ポスターにすると台無しになっている!」と怒ることが多いのですが。


今作に関しては「あれ?日本語版ポスターの方がいいかも?」と思ってます。


まず英語版ポスターから観てみます。

 

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極めて限られた情報で整理されたますね。


ベッドで寝ている二人と、キャスト名、監督名、タイトル。


監督名とタイトルが手書きになっているのは当然、作中のパターソンが詩を書くことをイメージしてのことですね。


で、その詩の一編が書いてあるのですが。。。。


意訳すると「あなたがいなくなったら私の心は引き裂かれてしまい、もう二度と元には戻らない」という詩ですね。


これは・・・・・・・・ちょっと良くない気がします。


この詩をじっくり読んで映画を観ると「この二人のラブストーリーを描いた映画なんだな」と思いながら鑑賞してしまうと思うんですよ。


でもそれって映画の本質と少し違うじゃないですか。


例えば「水が落ちてくる」とか他の詩でも良かったと思うんですよ。


この詩ではあまりにもシーンが限定されてしまう気がします。

 

日本語版ポスター


では日本語版ポスターはどうか。

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こちらのポスターの方が、僕はいいと思います。


先に悪いと思う点から書くと、あまりにも映画の説明的な文章がうるさいとは思います。


少なくとも「それは美しさと愛しさに溢れた、かけがえのない物語」は書かない方が良かったと思います。


それは映画を観て感じることなので、キャッチコピーにしてしまうと勿体ないです。


「毎日が、新しい」ってのもちょっと直球過ぎるけど。。でもまぁ何も知らない人にとっては親切な情報とも言えるでしょう。


あとは細かいことですが、キャストのフォントがちょっと強すぎる気がするかな。。。


もう少しサラッとまとめても良かったんじゃないでしょうか。


その他は基本的に英語版ポスターよりいいんじゃないですかね。


まず背景の黄色がいいと思います。


英語版ポスターの黒だと、カップル二人きりで世界が閉ざされているようなイメージをしてしまうんですが、日本語版ポスターの方が「ベッドの外にも希望は広がっている」感じがするじゃないですか。


それに、同じベッドのシーンを縦に三つ並べているのもいいですよね。


悪い例だと、バスを運転するシーンやバーにいるシーンを「これもいつもの日常」みたいな感じで入れることも出来たはずなんですよ。


そうじゃなくて、全く同じ場所の構図を三つ並べることで「同じ、でも違う」というのをうまく表現してますよね。


なんか久しぶりに「おお!日本語版ポスターもいいじゃん!」と思えて嬉しいです。

 

さらに別案


こんなポスターもありました。

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これもいいですね。


映画を観た方なら「あ、マッチのあの感じ?」とかも分かります。


家にポストカードとして飾るのであればこのデザインが一番いいですね。


こういうデザインをサラッと作るあたりが憎いなぁ。

 

まとめ


映画が素晴らしいのはもはや説明不要です。


ですが、そんな映画こそポスターにしたりビジュアルにするのが非常に難しいわけですよね。


その高いハードルを、うまいこと越えてきたなと舌を巻きました。


こういうポスターに出会うととても幸せな気持ちになりますね。


良かったです。


それでは、また。


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