映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜 《見過ごされがちな良い作品》

f:id:peasemile:20190523171106j:plain

 

映画の点数…77点

ポスターの点数…65点

 

 

こんにちは、ピースマイルです。


今回取り上げたのは「WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~ 」という2014年の映画です。


「ウォーターボーイズ」や「ハッピーフライト」で知られる矢口 史靖監督。


矢口映画をものすごく好きかというとそういうことではないのですが、矢口監督のことは好きなんです。


いや、別に顔が好きとかではないのですが(顔知らないし)、その映画に対する考え方が非常に好きなんですね(利いた風な口調で)


矢口作品に共通して言えるのは「観客が欲しがっている場面」はちゃんと映画内でおさえつつ「自分のやりたいこと」はきっちりやり通すという姿勢です。


誰とは言いませんが、作品を完全に私物化して作品を作り上げる方もいますし、逆に職人監督として一本の映画をまとめあげるのに長けた監督さんもいます。


どの考え方が正しいということは無くて、あくまで自分の好きな考え方ということです。

 

映画のおさえどころ


映画としては極めてシンプルなストーリーです。


「非日常に放り込まれた主人公が成長する話」ですね。


キングスマンとかボーダーラインとかと一緒だと思います(かなり極端ですが)


キングスマンみたいに殺人兵器は出てきませんが、同じ世界とは思えない常識のなかに入り込むという経験を主人公を通して観客も体験できるわけですね。


こちらが「へぇ〜」ってなる情報を勉強になるのもそうですし(今自分たちが植えている木の成果が出るのは100年後の自分がいない世界であるとか)、単純に自然あふれる光景を画面いっぱいに楽しむという良さもあります。


A地点からB地点に行くのに間に合わない!どうする!?みたいなハラハラシーンを入れてきたり、ここぞという見せ場「ふんどしの男達の行進」シーンではスローモーションにしたりと「そうそう、こういうのを見たいんだよ」というところはしっかり押さえてくるんですね(誤解を受けそうな文章)


特に今作では「男の中の男の男映画男ふんどし祭り」みたいな側面があって、作中はっきりと女性差別な発言も見られるのですが、それは監督も十分に承知したうえでの脚本だと思うんですよ。


「良い意味でも、そして悪い意味でも閉鎖的な場所の話」というのを真正面から描いているというのが分かるから、こちらも真正面から鑑賞出来るんだと思います。


変に気を使ったり色気づいたりして「田舎って、いいよね。」とか「現代人って、精神が貧しいよね」みたいな描き方をする映画やドラマが吐き気がするくらい嫌いなんですけど、矢口監督が作るという時点でそういう映画にはならないだろうなという安心感があるわけです。

 

歪な側面


以上のような理由から、矢口作品はひとまず安心して鑑賞出来ると思っているのですが、それだけだったら正直「なんか普通の映画」で終わると思うんですよね。


もちろん普通の映画を作れる時点ですでに良い監督だとは思うのですが、矢口監督の場合そこに「強烈な自分らしさ」をねじ込んでくるタイプでして。


「サバイバルファミリー」での豚との格闘シーンや藤原紀香シーンだったりがそうなのですが、なんか居心地の悪い毒っ気のある箇所を入れてくるわけです。


「Wood job」でもそれは健在で、「マムシに噛まれて異常にふくれあがった耳」とか「車にひかれた鹿が明らかに人形」とか「優香があきらかにビッチな下着をはいてる」とか、絶対に映画に必要ないシーンをガンガンにねじ込んでくる姿勢。


これがどうにもこうにも嫌いになれないというか。


絶対に映画を見終わったあと「あれ何だったの?!」と思い直しちゃうんですよね。


でも、映画体験ってそういう違和感こそ大事なんだよなとも思うわけです。

 

もっと周知されるべき映画


公開がアナと雪の女王というお化け映画とぶつかったという悲劇はあるのですが、それでももっと周知されるべき作品だと思っているんですよね。


そこらの邦画大作に比べても極めてレベルが高いと思うんですよ。


地味な作品であるのは間違いないんですけど、観たらきっと面白い。


配給会社も、パッと見て分かりやすいビジュアルの映画やJ系アイドルが活躍する映画を推すばっかりじゃなくて、単純に作品のレベルで評価していかないといけないんじゃないですかね。


でないと、映画という文化、そしてもちろんお金のまわるエンタメとしての価値も下がっていく一方だと思います。


良かったら観てみてください。

 

ポスターの感想

f:id:peasemile:20190523171106j:plain


ポスターのビジュアル、悪くないと思うんですよ。


「少年よ、大木を抱け」というキャッチが面白いかどうかはおいといて、木に関わる仕事なんだなというのはすぐに分かります。


原作小説は「神去なあなあ日常」というタイトルなのですが、それに「WOOD JOB」というダジャレタイトルを入れたのも親切な配慮だと思います。


林業というジャンルの映画であることから逃げずに真っ直ぐ伝えています。


タイトル文字も、日本語タイトルを入れたりチェーンソーを持っているシルエットを入れたりと細かい気遣いがされています。


抵抗感なく映画を見に来てほしいという広報の努力を感じます。

 

主演俳優は彼だ!


ただし、小さくない不満点として「染谷将太という主演俳優」の扱いがあります。


もっと目立たせてくれ!

 

f:id:peasemile:20190523171122j:plain


これじゃ間違いなく「長澤まさみと伊藤英明主演作」みたいな印象だと思うんですよ。


そもそも染谷将太さんは主張の激しい顔立ちではないので、デザインに落とし込む際にもっと工夫が必要だったのではないでしょうか?


同じように並べてしまうと他の二人に食われてしまうんですよね。


映画を観た方なら分かる通り、染谷将太さんは非常にバランスのとれた素晴らしい演技をされていたと思います。


だからこそもっと正々堂々と「この映画、染谷将太の映画だから」という宣言をしてほしかったんですよね。


伊藤英明さんや長澤まさみさんは、その補助として素晴らしかったのだと思いますし。


主演俳優は、たてるときはちゃんとたてないと勿体ないと思うんです。


そのブレた感じがポスターに残ってしまっているなぁと思ってしまいます。

 

自作に期待


矢口監督は2019年夏に映画の公開が決まっておりまして、2017年にサバイバルファミリーが公開されたばかりですからかなり短いスパンでの作品公開になります。


で、そちらの作品ポスターの方はまさに正々堂々たる作りでして、主演である三吉彩花さんのみがドーーーーンと登場しています。

f:id:peasemile:20190523171046j:plain


三吉さんが出ている作品はいくつか観ていて、役柄は覚えていたんですけど正直名前までは知りませんで。


知名度が滅茶苦茶高いわけではないと思うのですが、それでも一面にポスターにドンと載せる姿勢は大好きです。


観てみないことには作品の良し悪しは分かりませんが、現時点ではかなり期待しています。


フォントがフーツラっぽいフォントとフォークってのがまたいいですね笑


それではまた。


WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜 豪華大木エディション【Blu-ray】 [ 染谷将太 ]

WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~ Blu-rayスタンダード・エディション

 

↓ 面白いと思ったらクリックください!励みになります!

にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村