映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

スプリット 《意図が改変された最低なポスター》

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映画の点数…75点
ポスターの点数…2点(日本版)

 

シャマラン監督作


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は《スプリット》です。


シックスセンスやサインで知られるM.シャマラン監督作。


具体的なネタバレはしませんが、本作は他のシャマラン作品とリンクしていたりと特殊な位置づけの作品です。

 

映画のストーリー


23(+1)人の人格を持つケヴィン(ジェームス・マカヴォイ)。


その主人格の一人が女子高生3人を誘拐してしまいます。


レイプや身代金目的というわけではなく、新たに生まれてくる人格“ビースト”への捧げ物として連れてきたとのこと。


女子高生3人は脱出を目指し、ケヴィンは人格の誕生を待つ。


映画のジャンルがいまいち掴みきれないあたりがシャマラン監督らしいとも言えます。


ホラーなのかサスペンスなのかヒューマンなのか。

映画の良かった点


特に前半は良かったですね。


サスペンス要素とホラー要素をうまく組み合わせてドキドキしっぱなしでした。


やはりジェームス・マカヴォイの演技が素晴らしいの一言で、さすがに24人分は無理でも(というかそもそも映画内に出てこない)7人くらいは見分けがつくくらいに演技だけで人格を表現できていました。


今の時代ちょっと人格のチェンジをCGで手伝ってあげたりも可能だとは思うのですが、ちゃんと正統に演技だけで表現しています。


ちゃんと「別の人に見えた」というだけでもすごいことだなと思います。


まぁあとこれを言っちゃあなんですが、女子高生側の主人公の女の子が可愛すぎてスタイル抜群で


彼女を見ているだけで幸せというのは正直あります。

 

映画の不満点


前半は良かった映画なのですが、後半すべての謎や目的が判明したあとは「すごく普通」な映画になってしまいます。


自己のトラウマを克服したり、もう一人の人格が誕生したり、友人が死んじゃったり。


起こっていることは確かによくある映画のパターンなんですけど、僕がシャマランに求めていることとは違うというか。


シャマランに期待しているのは「ちょっとピントがズレた恐怖」であって、ストレートな映画運びをされちゃうとちょっと残念でしたね。

 

ポスターの感想


まず日本語版ポスター以外をいくつか紹介します。


一番シンプルなポスターがこちら。


もはや説明すら不要かも知れませんが、人格が分かれているということをガラスのヒビで表現していあます。


それと同時に、「今まさに人格が壊れようとしている(24人目の人格が解放されようとしている)」という予感も感じさせます。


もっと言えば、ガラスを割ってこちらに犯罪者が来るという恐怖感の表現でもありますね。


イデアはシンプルながら、いくつかの意味合いを持たせることが可能ないいデザインです。

 

デザイン2


先ほどのポスターたはまた違ったデザインですが、意図は共通していますね。

 

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下に様々な人格の影がシルエットとして確認できます。


さらに24人目の人格・ビーストが誕生しようとしているという予感もポスターから伝わってきますね。


先ほどのポスターもこのポスターも、書いてあるキャッチコピーは同じです。


「ケヴィンの中には23人の人格があって、24人目が解放されようとしている(意訳)」とあります。


ポスター内にはケヴィン以外はまったく存在していません。


このことからもこの映画は「ケヴィンという人間の多重人格」がメインテーマであることが分かります。

 

日本語版ポスター


では日本語版ポスターはどうなのか。

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はい、非常に残念なポスターになってしまいました。


なんですかねこれは。。。


色々と突っ込みたいところが多くて心配になってきます。


まず許容範囲というか、色々な人格をガラスの中にうつしだしたのはアリなアイデアだと思います。


日本人すべての人が「スプリット=分かれる、分離する」ということをすぐに理解は出来ないでしょうし、だったらあらかじめ「多重人格の話ですよ」と提示してあげるのはいいですね。


ところがその割れたガラスの中に、誘拐された女子高生達まで出てきています。


そうなると急に話は変わります。


ガラスは「分離した人格」を表現しているわけで、そこに他人が混ざっちゃうと「ただのデザイン」に見えちゃうんですよね。


そもそもこんなにゴチャゴチャしてたら何が何だかどうせ分からないでしょう。


あと「2週連続No.1ヒット」って煽り文字。


真っ赤な上に黒のシャドーに極太フォント。


ダサい。


すげー芋っぽい。


元のポスターのスタイリッシュさをここまで台無しに出来るかね。


ひどいデザインだと思います。

 

キャッチコピー


なぜ女子高生達をポスターにのせたかというと、キャッチコピーを見ると理解出来ます。


「誘拐された女子高生3人vs誘拐した男23人格」というビックリするようなキャッチコピー。


え、そういう映画じゃなかったでしょ???????


このキャッチコピーをつけた人は映画を全く見ていない、もしくは「こっちの方が緊迫感あっていいよね」ということでしょうね。


まぁおそらく後者でしょう。


非常に腹立たしいなと思います。


この映画を見たら分かる通り、後半は特に「女子高生の脱出」という要素は無くなっていきます。


それよりももっと「自分との対峙」の話であって、誘拐犯も女子高生も「自分を解放する」というクライマックスがシンクロするような作りになっています。


おそらく「誘拐された女子高生3人vs誘拐した男23人格」というキャッチフレーズにつられて映画を鑑賞した人は「こんな映画と思わなかった」と感じたのではないでしょうか。


このような行為って、監督やスタッフに対する冒涜ですよね。


映画のテーマをねじ曲げて宣伝して、鑑賞した人の感想までねじ曲げて。


ここまでひどい改悪のキャッチコピーってそうないんじゃないですか?


「とりあえず勢いでつけた!」みたいなキャッチコピーの方が1000倍いいですよ。


この映画のキャッチコピーは、明らかに映画のテーマ自体の改変です。

 

まとめ


映画自体は最終的にちょっとこじんまりしたエンディングになります。


とはいえこの映画も続編があるわけで、評価はまた後日になるとも言えますが。


それより何より、映画ポスターの改悪があまりにもひどかった一作だと思います。


こんなの見せられると非常にガッカリしちゃいますね。


気分が悪いです。


それでは、また。

 

 

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