映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

エイリアン2 ALIENS 《コンセプトによって全く変わる続編ポスター》

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映画の点数…65点

ポスターの点数…55点

 

こんにちは、ピースマイルです。


【今更ながら名作を観るシリーズ】と題して勝手にチャレンジしている今日この頃なのですが、今回は【エイリアン2】です。


現代は【エイリアンズ】で、エイリアンの複数形になってますね。


前作が基本的に1匹しか出なかったのに対し、今作ではたくさん登場するためそのようなタイトルになっています。


日本でこのタイトルをつけるのは難しかったのでしょうか?


そりゃ【エイリアン2】の方が分かりやすいのは間違いないんですけどね。


意味合いとしてはエイリアンズの方が良かった気がします。


というのも、今作はエイリアンの続編ではあるものの、映画の構成が1作目とは全然違っているからです。


この構成の変化は、そのまま映画ポスターにも反映されています。

 

映画ポスターの大幅な変更


まず、前作【エイリアン】のポスターはこちらです。

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かなりシンプルで大胆なレイアウトにすることでより恐怖を際立たせる良いポスターです。


極めて人工的な作りのポスターの印象からは、無機質さと共に神々しさも感じとれます。


一方、【エイリアン2】のポスターがこちらです。

 

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全く違う映画だというのがすぐに分かりますね。


キャッチコピーにもついている通り、【エイリアン2】はエイリアンがいるという条件を利用した戦争アクション映画です。


一方前作【エイリアン】は、ホラー映画的な演出がとても多い作品でした。


コンセプト自体が1作目と2作目で違うということです。


なので必然的にポスターのアプローチも違ってきます。

戦争映画としてのポスター


ポスターのコンセプトは、もろに戦争映画としてのビジュアルになりました。


そもそもかなり未来の話であるにも関わらず、まるでベトナム戦争の時のような大きな銃器を振りかざしています。


共に戦っている男性メンバーもたくさんいるのですが、画面内に女性2人(と、クイーンエイリアン)しか写っていないのは【母と子の物語】というのを強調したかったためでしょう。


このあたりはジェームス・キャメロンの映画哲学のようなものが反映された結果かなと思います。


映画の一場面を切り取っただけに見えるポスターですが、切り取った箇所に工夫がみられます。


二人の視線が大事なのですが、自分の身長よりもかなり上の方を緊張した表情で見上げています。

 

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この場面を切り取ることによって「二人の前には、何か巨大で恐ろしい生き物がいる」ということを暗示させます。


その部分を観客に想像してもらうことで、映画への興味をかき立てるという狙いです。
シンプルなことなんですがこれが非常に大事で、例えばこれが「二人が見つめ合う構図」であったら急に「親子の絆映画」としての側面が強くなります。


「真っ直ぐ先を見ている」とか「二人が別々の方を見ている」構図だと、サバイバル的な要素は強まりますが【エイリアンとの決闘】という要素は弱まります。


視線一つでも映画のコンセプトを正しく表現するのにはとても大事な要素だということですね。

 

映画の感想


映画のコンセプトが変わっている以上、前作と比較して映画を観ることが正しいのか分かりませんが、まず最初に言えるのは「見やすくなっている」ということでしょうか。


前作のリドリー・スコットも今作のキャメロンも、その時点ではほとんど新人くらいの立ち位置でそれぞれの映画を撮っています。


その後二人は「カルト的要素の強い作品」にすすむ側と「大衆的超大作」にすすむ側とに分かれます。


その資質はすでに表れていて、キャメロンが撮ったエイリアン2は全体のルックが非常に見やすく作られていることが分かります。


一作目がやけに美術面でのこだわりをもってエイリアンの神々しさを強調したのに対し、今作ではエイリアンはモンスターとしての面が前面に出されていています。


物語が見やすいかどうかの方がキャメロンにとっては重要度が高いのでしょう。


二作目が最高傑作と言われることが多いのは、何よりこの「ひとつの映画としての見やすさ」が大きいのではないでしょうか。

 

とはいえ


とはいえ、僕自身は一作目にあった「エイリアンという完璧な生命体」の部分が好きでした。


その意味ではアクション映画で描かれた今作のエイリアンはそこまで好きではありません。


このへんは好みとしか言いようがないですけどね。


シリーズものとはいえ、誰がどのタイミングで作るかによって映画というのものは意味を変えるのだなと思った次第です。


それでは。


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