ルビー・スパークス 《個性の強いポスター群》
映画の点数…82点
ポスターの点数…85点
ザ・変な映画
こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。
今回取り上げる映画は《ルビー・スパークス》です。
《リトルミスサンシャイン》《バトル・オブ・ザ・セクシーズ》のジョナサン・ヴァレリー夫妻の映画。
個人的にリトルミスサンシャインが大好きでして、どうやらこの監督さんとの相性が良いみたいです。
いずれの作品も「思ってた映画と違う!」という違和感が必ずある監督ですね。
いつもだったら「内容を正しく伝えきれていないポスターの出来が悪いんだ!」と言うところなんですが、この監督の場合は【映画を観ているうちに、だんだん様子がおかしくなる】というタイプの映画なのでポスターが悪いというわけではないのです。
一言で言っちゃえばいつも「変な映画だったな!」の感想になっちゃうんですけど、その変さを楽しめたらなかなかハッピーな映画体験が味わえます。
映画のストーリー
若くして大ヒット小説を出した主人公カルヴィン。
しかし彼はその後スランプに陥り二作目を書き出すことが出来ずにいた。
友達も恋人もいない彼は、理想の恋人を空想しながら小説を書き始める。
するとある日、目の前に自分の書いた小説の女の子が現れる………
ここまでだったらよくある小説・映画のストーリーです。
主人公にしか見えない幻というパターンですね。
ですがこの映画はここから狂っていきます。
女の子が実体化したことで自分がとうとう狂ってしまったと嘆くカルヴィン。
しかし街の人や兄に確認すると、どうやら本当に実体を召喚してしまったということが判明。
自分の思い描いた理想の恋人との甘い生活を楽しむカルヴィンだが、すべてが思い通りにはすすんでいかず……
みたいな話です。
画面全体はかなりオシャレ映画であるにも関わらず、起こっている事態は「世にも奇妙な物語」というお話。
相変わらず「俺は一体何を観ているんだろう」という気持ちのまま振り回された100分でした。
映画の良かった点
ストーリー自体は、極端に斬新というわけではありません。
理想の恋人を召喚する→理想と現実が乖離していく、というパターンのお話は他にもあります。
ただしこの映画の場合は「相手を巨乳にする(しようと考える)」とか「自分から離れられない」とか性的な欲望にまで踏み込んでコントロール出来る設定で。
そうなると観ている側はホラーにも思えてくるんですよね。
《リトルミスサンシャイン》の時もそうでしたが、この監督の作品は「笑えるシーンなんだけど怖い」とか「幸せなシーンなのに、絶望を感じる」とか感情が多面的にグラつく感覚があって。
話のオチ自体はある程度予想がつくような映画なのですが、感情がいつまでも不安定なままなのでずっと緊張感を楽しむことの出来る映画ですね。
なにはともあれ「変な映画」ですよ。
たまにはそういう変な映画を楽しむのもいいじゃないですか。
ポスターの感想
変わった作りの映画だけあって、ポスターも様々なパターンが見受けられます。
まず日本語版ポスター。
ぱっと見の印象はズバリ「オシャレな恋愛映画」というポスターですね。
背景には女子受けを狙ったかのようなピンクとライトなグリーン。
見つめ合う二人からはのぼせるようなイチャイチャ加減を感じます。
ただこのポスターからは「小説を書いていたらその人物が具現化した」というようなニュアンスはあまり感じません。
コピーを読んでようやく分かる程度でしょう。
日本の広告としては「オシャレ恋愛映画」として売りたがったのが分かります。
アメリカ版
こちらは恋愛映画というニュアンスよりも「小説から女の子が飛び出した」という面の方をビジュアル化しています。
映画のワンシーンを切り取ったデザインではあるのですが、主人公やヒロインの顔すらも分かりません。
スター俳優ではないからというのもあるかも知れませんが、なかなか斬新なスタイルです。
ですがこのポスター自体も元ネタを感じる部分があって、監督の前作である《リトルミスサンシャイン》と構図が似ているんですよね。
しかもキャストまで一緒。
前作を観ているファンへのサービスだったのかも知れません。
このポスターが映画の内容を示す意味でもデザイン的にも一番バランスが良いように感じます。
イタリア・フランス版
こちらはイタリアやフランス版
アメリカ版よりもやはり「恋愛映画より」なデザインになっていますね。
ただやはり色使いやデザインがいわゆる「ヨーロッパ的」な印象を感じます。
どのデザインがいいかは各国の広告会社が判断することですが、国毎の特徴が出ていて面白いですね。
まとめ
映画は「ザ・変な映画」だった分、ポスターがそれぞれ面白い作りになっていました。
映画のどの部分をフォーカスするかは広告屋の仕事なのですが、観る側を極端に制限するようなポスターにはしてほしくないなとは思います。
それでいて楽しいデザインのポスターが生まれてくれたらそれがベストですね。
それでは、また。
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