シャイニング 《映画もポスターもクラシック》
映画の点数…85点
ポスターの点数…90点
クラシック・ホラー
こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。
今回取り上げる映画は《シャイニング》です。
いよいよ40年ぶりの続編映画《ドクタースリープ》の公開が今月に迫っています。
まぁさすがに40年ぶりとなると「よっ!待ってました!」というよりは「どれどれ、あの映画をどう料理するのか」みたいな関心になってしまいますが。
なにせキューブリックが手がけた一作目の強烈なインパクトをそのままトレースするのは不可能なので、何かしら別のアプローチは必要だとは思いますが。
そのくらい一作目は映画として完璧なバランスだったと思いますし、その結果として原作者のスティーブン・キングはアレンジのしすぎで映画版シャイニングが大嫌いだったというエピソードもあるくらいです。
続編の公開に合わせ久しぶりにシャイニングを見直してみたのですが、さすがキューブリックというべきかほとんどのシーンを丸ごと記憶していました。
すべてのシーンに規律や美しさがあり、40年たった今でも全く古くなっていないのが分かります。
この映画は語り継がれるクラシックでもあり、現代でも通じる完全にフレッシュな作品だと言えそうです。
映画の不満点
まずはこの映画の不満点から書いていこうと思います。
後述するのですが、この映画の不満点と良い点は裏表になっているとも言えます。
なので今から書くことも人にとっては評価ポイントだったりマイナスポイントだったりするんだと思います。
まずこの映画、ジャンルはホラーです。
ホラー映画なのですから、映画の第一条件は「怖いかどうか」だと僕は考えます。
そう考えるとこの映画、僕は怖いとは全く思わないんですね。
もちろんジャック・ニコルソンの迫真の演技自体は「すげー」とは思うのですが、目を背けたくなるような恐怖はありません。
僕にとって映画の“怖い”とはリングや呪怨といったジャパニーズホラーが最高であって、洋画におけるホラーもイットフォローズとかは怖いんですけどジャパニーズホラーほどではないと。
シャイニングのような「人に取り憑いて豹変させる」みたいなやり方がそもそもあまり怖くないんでしょうね。
ここらへんは映画の趣味や性質が大きく関係してるのでシャイニングが悪い映画であるということとは全く違うのですが、とにかく僕は怖くなかったよということです。
映画の良かった点
先ほどの話の裏返しになるのですが、とにかくグラフィカルで画面が美しい映画だというのが分かります。
かなり作り込まれた映像だからこそ僕は恐怖を感じなかったのですが、確かにこの映画のように均整のとれた世界が崩壊していくという恐怖があるというのは分かります。
画面全体がおとぎ話のようで、何が真実か分からなくなりグラグラしていく様子は映画としてのスリリグでした。
観た人に強烈な印象を残すパワフルな映画なのは間違いないです。
役者を徹底的に追い込み演技を引き出すキューブリックの演出も加わり、役者にとっても監督にとっても映画界にとってもかけがえのない一本だったのだとおもいます。
ポスターの感想
映画ポスターもまた映画界、そしてデザイン業界にも影響を与えたポスターです。
まずはこれ。
このポスターを知らない人は映画好きには一人もいないでしょう。
確か「カメラを止めるな」でも娘役の彼女がTシャツとして着ていましたね。
もしかしたらジャック・ニコルソンという俳優よりも知名度のあるビジュアルかも知れません。
けっこうこのポスター自体がこの映画の本質でもあると思うんですよね。
というのも、このビジュアル、怖いですか笑?
多くの方が不気味だしギョッとはするが、恐怖を感じるようなビジュアルではないと思うんです。
なんならちょっと笑えちゃうんですよね。
奥さんの表情もあまりにも過剰な恐怖表現で、それが笑えちゃうという。
行きすぎた恐怖表現ってちょっとコメディにもなるんだよなと思います。
リングの貞子しかり、エクソシストの階段降りしかり。
グラフィックデザイン的な観点から言うと、白の使い方がとてもうまいですね。
ポスターのかなりの部分を白地にしておりそこにタイトルなどの情報があるのですが、本来は全面に写真がきてもいいはずなんです。
そうではなく白地をたっぷりととってあるところにグラフィカルな映画表現だった映画の質に近い部分を感じます。
このあたりのデザインは2001年宇宙の旅や時計仕掛けのオレンジでも共通するものがありますよ。
新作のポスター
続編であるドクタースリープのポスターはどうなっているのでしょうか。
こちらは英語版から一つ。
三輪車、奥から迫っている真っ赤な恐怖(超大量の血液)、そして左右対称な背景。
映画を観たことがある人ならすぐにピンとくるデザインですね。
ただし特に前作とポスターのテンションを合わせるつもりなどはなさそうです。
むしろその他の要素は特に似てもいなくて、かなり巨大なタイトル、色彩や重力のバランスがおそらく意図的にマッチしていない主人公。
この「なんだか気持ち悪い」と感じるところまで含めてのポスターワークなのでしょう。
日本語版ポスター
こっちは日本語版ポスター。
これはこれで「はいはい、シャイニングね」と分かるデザインです。
とはいえこちらもやはりそこまで前作に寄せすぎるようなことはしていません。
多少雑に切り取られた背景に主人公の顔がのっているだけです。
ポスターワークが前作よりもいいとは一切言えませんが、余計な情報は排除して「あのシャイニングの続編だよ、見てね」という姿勢はなかなか潔い判断ではないかとも思います。
まとめ
先にこんなことを言うのはあれですが、キューブリックのシャイニングを超えるなんてことはあり得ないと思うんですよ。
というのも、あれは唯一無二の映画監督の唯一無二の作品だから。
そことの勝負は初めからしないで、オリジナルの次回作を楽しませてくれたらと思いますよ。
それでは、また。
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