セブン・サイコパス 《アカデミー賞がないうえでの宣伝》
映画の点数…85点
ポスターの点数…30点(日本版)
まずは映画ポスターを
こんにちは、ピースマイルです。
今回取り上げる映画とポスターは「セブン・サイコパス」です。
どのような映画かなどお話する前に、まずは映画のポスターをご覧ください。
まずは日本版ポスターです。
そしてこちらが英語版のポスター
どうでしょうか?
同じ映画をポスターにしたとは思えないくらい違うビジュアルになっています。
どうしてこのような仕上がりになったのか、今回はそれを掘り下げていこうと思います。
マーティン・マクドナー監督作
セブン・サイコパスはマーティン・マクドナー監督作の映画です。
名前に聞き覚えがある方は一定以上は映画好きな方ではないでしょうか。
2018年アカデミー賞で話題になった「スリービルボード」の監督ですね。
惜しくも脚本賞など主要な賞は逃しましたが、最も知名度をあげたのは同監督ではないでしょうか。
そのマーティン・マクドナー監督の前作にあたる作品がセブン・サイコパスです。
つまりセブン・サイコパスの公開時点では「あのスリービルボード監督作!!」とは当然言えないわけです。
ほぼ無名だったと言っても過言ではないでしょう。
また、主演俳優含めスーパースターと言える俳優は出演していない本作。
映画好きならコリン・ファレルやサム・ロックウェルくらい知っているでしょうが、一般的に知られているとは言えないはず。
2012年公開時点で多くの人にとって「誰一人名前の知らない人達の映画」だったわけですね。
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映画をビジュアル化する
さて、その「誰も知らない映画」をいかに広告していくかが制作会社やデザイナーにとって大事になるわけです。
映画をビジュアル化するということですね。
そしてたどり着いた答えが日本ではこのようなポスターだったわけです。
改めて見てみると、制作側の狙いが見えてきますね。
何よりも目立つ文字で「イカれた奴、募集」とキャッチコピーが入れられています。
映画のタイトルや俳優の顔よりも目立つ位置にです。
背景には燃えている車、フェンス、手元には銃と子犬。
これだけですでにこの映画どのように売り出そうとしているのか分かりますね。
広告する側はこの映画を「コメディ寄りのクライムサスペンス」として売り出したかったのでしょう。
確かに映画の内容の一部はそれで合っていると覆います。
コメディだし、暴力もあるし謎解きもある。
ですが、実際の映画にこのようなシーンが一切無かったことは映画を観た方ならすぐにお分かりでしょう。
むしろ主人公のコリン・ファレルは銃を持ちたくない性格の持ち主です。
ある意味で観客に嘘をついてまで映画のビジュアル化をしたわけです。
映画の内容
では映画の内容はどうだったのか。
前半こそ「ああ、映画脚本家の主人公はアルコール依存気味なのね。で、友達は精神年齢が幼い役者志望の人ね、で、映画を今作ろうとしてるのね」とスルスル情報が入ってきます。
ただし中盤からは文字通りサイコパス達の異常な行動や言動や妄想がバンバン画面内に登場してきて「自分は一体、何を見せられているのだろう」と混乱してきます。
決して「脚本がズタズタだから」ということではなく、実に心地よく脳みそがグラングランに揺さぶられる感じなのです。
正直なところこの映画が「何を言いたかった」かなどは僕には分かりません。
ただとにかく、映画を観ている間はとても楽しかったとは言えます。
あまりこういう言い方をしたくないのですが「お洒落でセンスのいい映画」だったと思います。
本国版ポスター
では本国版ポスターのポスターではどのようになったのか改めて
このようなビジュアルになっています。
僕はやはりこちらのポスターの方がはるかに映画の内容に近いと思います。
一見スッキリとしたお洒落なレイアウトのビジュアルなのですが、背景がサイケデリックなグリーン一色で塗りつぶされ、ゴシック体の同じような大きさのフォントだけで映画の情報を表示しています。
また、キャラクター毎に振り分けられた番号が出演者として表示されているのですが、それが実に読みにくくて分かりにくい。
この「ん?なんか読みにくい」という感じこそが映画の魅力でもありますし、ある意味で不親切なポスターのバランスが映画の本質を見抜いていると思うんですよ。
ポスター内にいる7人の人物が「実はセブン・サイコパスじゃない人も含まれている」というミスリードも素晴らしいと思います。
というか5分も出てこない人もポスターに堂々といますからね。
セブン・サイコパスという映画の「お洒落で、センスが良くて、分かりにくくて、イカれている」という良さを見事にビジュアル化していると思います。
大好きなポスターですね。
改めて日本ポスター
このように対比しちゃうと、日本語版ポスターはやはり良くないなと思います。
広告制作側の気持ちは十分に分かるんですよ。
分かりにくい映画をとにかく分かりやすく形にしたのですから。
でも、それじゃこの映画は駄目だったと思うのです。
むしろ「なんかよく分からんが面白そう」な本国版ポスターのまま売り出して良かったんじゃないでしょうか?
映画の内容自体は素晴らしかったわけですから、口コミで「あの映画良かったよ」とジワジワ支持を広げていった可能性は十分にあったと思います。
でも日本語版ポスターの、言っちゃ悪いけどあのダサさだと全然映画が面白そうなんて信じられないじゃないですか。
「映画好きな映画オタクが好きな映画」なんて閉鎖的な考え方は僕は嫌いですが、それでも「映画好きな映画オタク」こそが素晴らしい映画にいち早く気付き宣伝してくれる部分は確かにあると思うんです。
もともと「超絶ヒット」を狙った映画ではないのですから、もっと観客を信じてあげても良かったんじゃないですかね。
まとめ
今後、マーティン・マクドナー監督の作品はおそらくこのようなポスターの改悪は無くなるでしょう。
なぜならすでに「マーティン・マクドナー監督」そのものがブランド化されたから。
それがいいことか悪いことかは分かりませんが、無名な監督の作品であろうと映画の内容にしっかりと合ったポスターにしてほしいなと願います。
それでは、また。
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