映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

バトル・オブ・ザ・セクシーズ 《一目では分からない映画、一目で覚えるポスター》

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映画の点数…82点
ポスターの点数…93点

 

小ぶりながらの佳作


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画はバトル・オブ・ザ・セクシーズです。


監督はジョナサン・デイトンさんとヴァレリー・ファリスさん。


主演にはラ・ラ・ランドのエマ・ストーンです。


主演がエマ・ストーンでタイトルがバトル・オブ・ザ・セクシーズだとなんだかドキッとしますが、内容はセクシーではありません。


セクシーズはSEX(性別)のことで、性別間の戦いのことですね。


1970年代に起こった女性の権利向上を訴えたウーマンリブ運動の中の一つで、女性テニスプレーヤーが賞金を男性と同じにするよう求めたのをきっかけに女性だけのプロリーグを作りました。


その中心人物であったビリー・ジーンさん(エマ・ストーン)が、男性テニスプレーヤー、ボビー・リッグス(スティーブ・カレル)と対決するというお話です。


近年のMeToo運動もありタイミング的にはバッチリな映画化だったとは思うのですが、話題を呼ぶほどのヒットにはならなかった印象です。


ですが話の内容、映画の出来、演者達のパフォーマンスなどどれを観ても一級品で、もう少し評価されてもいい佳作だと思いますよ。


同時に映画ポスターも特徴があって面白いので振り返ってみようと思います。

 

映画の良かった点


実話をベースにしている以上、どこかをピックアップしたりそぎ落としたりする必要があるのですが、そのバランスがとてもいい映画だと思いました。


この手の映画を手腕のない監督がとると「徹底的に迫害される女性達→女だけで一致団結→理解してくれる男性があらわれてトキメキ!→感動的な音楽とスローモーションで迫害してきた男性をぶっ飛ばす!→女の未来は明るいわ!」で終わりそうなものなんですけど、そんなダサいことにはなってなくて。


戦えば戦うほど疲弊していく様を描いたり、自らの行動がキッカケで自分や他人を傷つけたり、明るいだけの未来ではないことを暗示して映画を締めくくるあたりにビターな面白さを感じました。


最後の最後に用意されているテニスバトルにいたっては、本当にテレビの中継を観ているかのように突き放した視点で淡々と見せるのですが、それもそれまでの構成があってこそ出来ることで。


つまり、それまでに丁寧な人物描写がしっかり出来ている分、最後に余計な説明を足さなくてもただテニスをしているシーンを見るだけで感情が揺さぶられるような作りになっています。


女性差別があってはならないということなんてもはや当然のことで、それを踏まえた上での新しい手時を試みた作品だと思います。

 

ポスターの感想


この映画のポスターはこちらです。

 

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鮮やかな色彩が気持ちいいポスターですね。


主演の二人の面積が小さくなることなど恐れずに、鮮やかな背景、ポップなタイトルデザインなどで綺麗にレイアウトされています。


1970年代を意識してかレトロな感触もいい感じですね。


もちろんデタラメな色彩というわけではなく、ちゃんとテニスをイメージできるグリーンやイエローがベースになっています。

 

その他のポスター


これは偶然なのか意図的なのか、ジョナサン&ヴァレリーさんの映画ポスターには共通点があります。


それは「ベタ使い」です。

 

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リトル・ミス・サンシャインもルビースパークスも、そして今作バトルオブザセクシーズも、綺麗なベタのあるポスターを採用しています。


おかげで登場人物はどのポスターにおいても小さめな配置になるのですがそんなことはお構いなし。


それもあっていずれも一度観たら忘れられないインパクトのあるポスターになっています。


映画自体は何回でも楽しめる内容であるのに対し、ポスターは一度観たら忘れられないデザイン。


映画とポスターとしては理想的な関係といえそうですね。

 

まとめ


傑作と言えるような作品ではないかもしれませんが、観た方のすべてに何かしらのメッセージを残す素敵な作品だったように思います。


テーマ自体は重めですが、サラッと観るのに適した映画だと思いますよ。


それでは、また。

 

 

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