映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

へレディタリー 継承 《映画もポスターも伏線はりまくり》

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映画の点数…83点
ポスターの点数…90点

 

今世紀最大のホラー


こんにちは、ピースマイルです。


評論家のつけたキャッチコピーが《今世紀最大のホラー》とかなりのフカシをかました映画【へレディタリー 継承】


今世紀あと何年残ってると思ってるんだ。


さてこの映画、ライムスターの宇多丸さん含め本当に多くの方が絶賛していたので楽しみにしていた作品でした。


ただ個人的にはホラー映画は好きなジャンルでは全くなくて、むしろ避けられるものなら一生避けていたいカテゴリーなんですよね。


なのでホラー映画に関する知識はかなり少ないと思います。


そんなホラービギナーな僕から見てもこの映画は本当に凄まじかったし、もう一度見たい、いや見たくない。そんな映画です。


同時に映画ポスターの出来がこれまた良かったので併せて紹介します。

 

映画の感想


評価が高いだけあって、《今まで味わったことの無い感覚》と《緻密に作られた映画全体の完成度の高さ》を併せ持つ希有な作品でした。


僕が83点とつけているのは「傑作というわけではない」ということではなくて、単純にホラー映画が苦手なのでポジティブな気持ちになれなかっただけです。


映画としては本当に良く出来ていましたね。

 

ライド感


アクション映画などでよくライド感という表現を使いますが、このヘレディタリーもかなりライド感のある作品だなと思いました。


自分が絶対に行きたくない部屋、見たくない方向にゆっくりとカメラが向かうのは本当に怖かったし、それだけ映画の中に自分が入り込んでいたんだと思います。


脚本全体が「この先自分がどこに行くのかが分からない」状態という作りになっているので、自分が全く信用していない人物の運転する車に乗せられてどこか知らない場所に連れて行かれるような恐怖がずっとあるんですよね。


それと、ホラー演出が結構ジャパニーズホラーっぽいというか。


アメリカ式のギャーーーーっ!!ドーーーーン!!!みたいな演出もあるにはあるんですけど、場面の見せ方と雰囲気の作り込みだけで恐怖を与えていく作りはとても日本的だなと思ったり。


このあたりも日本人である自分は映画に乗り込みやすかったかなと。

 

伏線・伏線・伏線


この映画、とにかく細部にわたって緻密な伏線が張られています。


「これは伏線ですよ」とはっきり分かるものから、映画が終わってみないと気付かないレベルの細かいものまで。


伏線ありまくりの映画って「はいはいこれも伏線ね」と気付いちゃってウンザリすることも多いんですけど、この映画の場合は【バレバレの伏線】か【気付かない伏線】のどちらかなのでストレスになりません。


というか、「このあとどうなるんだ!?」といくら予想したってほぼ全部裏切られるような展開が続いていくので伏線を気にしている暇もないというか。


正直中盤あたりで具体的に何も起こらない時間が長く続くところだけは退屈だったんですけど、それも映画が終わって振り返ってみると大したことなかったです。

 

ポスターの感想


この伏線張りまくり映画のポスターもまた、かなり出来のよい仕上がりになっていました。

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まずビジュアル面ですが、ただ表情だけで怖い女優っていうのはもうそれだけで反則なんですけどね笑


とにかく怖いですね。


もうこの時点でけっこう勝利してますけど、この二人の女性がどのような結末を迎えるのかを考えるとさらにゾッとしますね。


この二人は、ポスターの外にいる「誰」を見つめているのか。


下部の方には小さくオブジェのようなものがあります。


これもまた意味深で、映画を観る前だと首のとれた人形のようなニュアンスなのですが。。。。


映画が終わってから考えると「なんて悪趣味な暗示をさせやがる!」というね。

ただ首がとれて横たわっていたように見える人形が、何かを礼拝しているような。。。。

こわ。


いやなこと考えるアートディレクターもいたものですな(褒めてます)。

 

キャッチコピー


今回、日本版ポスターのキャッチコピーがかなり良いと思ってます。

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まずメインの「完璧な悪夢」


これ映画全体をあらわしていていいですよね。


「悪夢」というのは、主人公の一人アニーが夢遊病を患っているところから連想されたのでしょうが、その夢遊病という設定のおかげで観客側は「今見ている画面が現実なのか夢なのか分からない」状態に度々陥ります。


ですが、その夢の切れ端が最終的には全て回収されて現実へと繋がっていく様子はまさに「完璧な悪夢」。


さらに、「“フィナーレ”まで瞬きすら許されない」という箇所の“フィナーレ”に“”がついているのもポイントです。


“フィナーレ”には、舞台やクラシックコンサートなどで使われるようなニュアンスが含まれていると思いませんか?


意味的には別に「ラスト」でも「最後」でも同じ意味なのですが、フィナーレとすることで戯曲的な印象が深まります。


“フィナーレ”としたのは、まさに映画のラストがある種ぶっとんだおとぎ話のような感覚さえ与えるからでしょう。


これもまた映画が終わってから感じる伏線になっていたんですね。


映画をちゃんと読み込んだ方がつけられたキャッチコピーだなと思います。


説明過多でなく、それでいて過不足無く情報を伝えるキャッチコピーだと思いました。

 

まとめ


今年は梅雨がなかなかあけないですが、暑い夏にはピッタリの映画ではないでしょうか。


ただし、出来ればお風呂に入る前の鑑賞をおすすめします。


体がヒンヤリする以前に、緊張しすぎてじっとり汗をかくような映画です。


さらに初々しいカップルで観るのはオススメしませんね。


「てめぇ!!なんてもの見せてくれてんだ!!」と別れ話に突入する可能性も十分にあるでしょう。


その注意点さえ守れば、あまりにも上質な映画体験が約束できると思いますよ。


それでは、また。


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