映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

検察側の罪人 《惜しい映画、惜しいポスター》

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映画の点数…81点
ポスターの点数…55点

 

原田監督×キムタク映画


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は検察側の罪人です。


木村拓哉さん、二宮和也さん、吉高由里子さんらが主演を務める法廷サスペンス……ではないんですよね。


主役達が検察であるにも関わらず、法廷シーンというものは全く登場しないというのが特徴とも言える映画かも知れません。


また、テーマや脚本がどうであれ「原田眞人×木村拓哉」という組み合わせこそを楽しむ映画だと思います。


個人的な印象も含みますが、原田監督と木村さんには共通するところがあって「リアリティと、非リアリティがグラグラ揺れ動く感じ」がとても魅力的なんだと思っています。


また言うまでもなく木村×二宮という日本のトップアイドルの二人が共演するということに注目するなという方が難しいでしょう。


映画を観る際にフラットな姿勢で観ることが出来るとしたら人生で一度もテレビを観たことがない人くらいでしょうね。


そういう「アイドル映画」というフィルターも込みで楽しい映画かどうか、というのも焦点だと思います。

 

映画の物語


詳しい映画の脚本には言及する必要はないと思うのですが、要は「俺の正義とアイツの正義、どっちが正しいか」「大きな正義の為なら、小さな悪は許容すべきか」といった内容が主になります。


ひらたく言えば「大きな正義の為なら、真実をねじ曲げたり不正をしたりする木村」と「不正はしないけど、先輩を疑いつつもなかなか告発できない二宮」という構図でしょうか。


どちらが正しいかどうかについては映画内で直接的な決着はつかないので、あとは観た方の倫理観や価値観で判断されたらいいと思います。


映画を観ていていいなと思ったのは、(役名で言うとややこしいので本名で言いますが)木村さんにしろ二宮さんにしろどちらも不完全で気持ちがフラフラしている点ですね。


だからこそ決着がつかずに不完全燃焼を感じる方もいるとは思いますが、そもそも正義や悪自体が不完全なものなのでそれでいいんじゃないかなーと思ったり。

 

映画の良かった点


先ほど原田監督と木村さんの特徴を「リアリティと、非リアリティがグラグラ揺れ動く感じ」と言いましたが、まさにその点が面白かったです。


例えば劇中、リアリティがあるとはとても言えない大げさな台詞回しが多用されます。
まるで舞台を観ているような感じですかね。


一方で作品のテーマは「正義と悪」という普遍的なものなのでリアリティがあります。


木村拓哉さん側も「アイドルという枠から外れたカジュアルなスタイル」というリアリティがある一方で「とはいってもあまりにも巨大すぎる存在感のある非リアリティ」という側面もあります。


その二人が組み合わさるとどうなるかというと、「極めて変なバランスの映画」が出来上がるんですね笑


実際に僕の母親は「演出がわざとらしくて不快だった」そうです。


逆に僕はそういうヘンテコなところが映画を面白くしていると思いました。


リアリティと非リアリティをいったりきたりしている気持ち悪さが、正義と悪をいったりきたりしている感じとシンクロしていると僕は感じたんですよね。


そしてそういう特殊なバランスの映画が成立するのも、木村拓哉さんというドッシリとした核があるからではないでしょうか。

 

映画の不満点


これは他の方も指摘されている点ですが、映画に関係のない(少なくともそう感じる)箇所が多いのは気になりました。


しかもそれが二つに分かれていると思っていて、一つは「現安陪政権に対する批判的姿勢」。


そしてもう一つが「第二次世界大戦時のインパール作戦に対する批判」ですね。


一応、一応ですが「これは現代にも通じるテーマなのだ!」とされるシーンもあったりするんですけどいくらなんでも「映画にいれるには突然すぎる」という感じでして。


盛り込むなら盛り込むで、もっと自然に出来なかったのかなと思うんですよね。


本当に突然インパール作戦時の兵隊さん達のショットが出てきたりするんです。


そういう尖った演出が嫌いというわけではないですが、映画として不自然さの方が勝ってたなぁという感じです。


なんというか、現政権を批判するにしてもかなり直接的な描写が目立ちすぎて。


仮に「アベヤメロー」派の人が観たとしても「映画としては余計だなぁ」と思うと思うのですが。

 

ポスターの感想


ポスターもなかなか惜しい作りになっています。

 

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キャッチコピーの「一線を、越える。」という言葉にしたがってポスターが作られているわけですね。


たしかにビジュアルとして赤が強烈な印象を持っていて目にとまるデザインだと思います。


また当然ながら「木村×二宮」というトップスターが画面たっぷりに登場しているというだけで大きな宣伝効果があるのは間違いなにでしょうし、それをアテにするの当然だと思います。

 

線をいれる箇所


とはいえその赤い線をいれる箇所とかがよく分からないというか、「なんでそこなの?」というのもあって。


これ単純に木村さんと二宮さんを分断するような線じゃダメだったんですかね?


単純なアイデアだとは思いますが、より木村VS二宮という構図を作った方が観客も映画の世界にスムーズに入りやすいと思うのですが。。。

 

写真のチョイス


一番の不満点はこれです。


なんでこの写真なの?

 

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この写真からは、特になんのメッセージも感じないんですよね。


正義の顔でも、悪の顔でも、悩む顔でも、絶望した顔でもない。


「どちらとも言えない表情」と言えば聞こえはいいですが、そんなのお二人なら十分に表現できる実力のある方じゃないですか。


ちゃんと専用の撮影をされた方が絶対に良かったと思います。


申し訳ないんですけど、これじゃホントに「ジャニーズの二枚看板揃えました!」みたいなニュアンスしか伝わってこないですよ。


せっかくお二人ともこの映画に対して真正面から素晴らしい演技をされているのに、ただのアイドル映画として思われたらもったいないじゃないですか。


ここではもっとポスターからして本気度を伝えた方が良かったと思います。

 

別案のポスター


こっちのポスターの方がはるかにいいですね。

 

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むしろこっちをメインのポスターにするべきだったでしょう。


映画のテーマとも、映画のテンションとも一致しているいいポスターだと思いますよ。


キャッチコピーの言葉遊びも面白いじゃないですか。


せっかくだから読んでみようと思うくらいの効果は十二分にありますよね。


このくらいのレベルをメインのポスターにも求めたかったところです。

 

まとめ


こういう尖った何か魅力のある映画は大好きです。


その題材に木村拓哉さんがドンピシャだったと思いますし、新たな木村拓哉像を作り上げた作品だと言えるでしょう。


一方で映画としてもポスターとしても「なんかあとちょっと…」な箇所もあるかなと。


とはいえその「あとちょっとかゆいところがある」感が原田監督の魅力のような気もする事実。


うーん。


何はともあれ一度ご鑑賞されることをお薦めしますよ。

 



それでは、また。

 

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