映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

ミスティック・リバー Mystic River 《一見さんお断り?ポスター》

ポスターの点数…75点
映画の点数…93点

 

こんにちは、ピースマイルです。


今回はクリント・イーストウッド作(2013)の映画【ミスティック・リバー】とポスターを取り上げてみたいと思います。


アカデミー賞に6部門でノミネートされ、主演男優賞をショーン・ペン、助演男優賞をティム・ロビンスが獲得した作品でした。


この時点で70代になっていたイーストウッドですが、まだまだやれるぞと世間に知らしめた作品なのですが、まさかそれから15年以上たった今でも「まだまだやれるぞ」となっているとは思わなかったんじゃないですかね。


それではまずはポスターの方から振り返ってみたいと思います。

 

ワールドクラス「不在」のポスター

 

この映画の売りの一つは当然「ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコンの共演」という点でしょう。


何しろ結果的にそのうちの二人がオスカーを受賞していますし、なんならケビン・ベーコンが受賞していても全くおかしくなかったと思います。


そのくらいレベルの高い演技を見せてくれた俳優3人ですが・・・・・


なんとポスターには誰一人登場していないわけなんですよね。

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これはなかなか大胆ですねぇ。


もちろんシルエットでは登場してるんですけど、誰が誰かは全く分からないですからね(と言いつつも、一番大きいのはティム・ロビンスでしょうな)


日本ではこのようなポスターは考えづらいなと思います。


予算が25億程度かかっている作品で、スター俳優が3人でていて(脇役も一流)、もっと大々的な広告がなされてもおかしくなかったでしょう。

 

実際、この映画を最初に観に行ったのはイーストウッドや俳優陣の元からのファンが主だったと思うんですよ。

 

つまり、一見さんにはかなり厳しいポスターということです。


ちなみに予算20億円と言えば「怪物くん」がそれくらいかかってるみたいです。完全に余計な情報ですけど。

 

制作陣の狙い


このようなポスターに対して「オッケー、これでいこう」と許可した方々は本当に素晴らしいなと思うんですよね。


まず間違いなく「映画を真剣に隅々まで観た」結果としてこのようなビジュアルになったはずです。


「この映画の内容であるならば、このポスターでなければならない」という、ごく当たり前の判断なのですが、これがスムーズにいかないからこそ広告というのは難しいものでして。


大体どこかのタイミングで「やい、うちの俳優をもっと前面に出せ」だの「これじゃ売り上げあがらねえだろ!もっと明るいポスターにしろ!」とか偉い人が出てくるものなんですけど(僕の話ですよ)


それでもこのポスターで行こうと決めたのは、何よりも映画の内容に絶対の自信があったからではないでしょうか。


映画を見終わったあとに改めてこのポスターを観ると、なんとも切ない気持ちになるはずです。


映画を観る前にインパクトのあるポスターではないのは百も承知のうえで、映画を観た人にとっての強烈な思い出としてこのポスターは機能しているわけですね。


短期的な視点ではなく、長期的な視点から映画ポスターをとらえるという発想は日本ではあまり見かけないので羨ましいなと思います。

 

 

効いている小技

 

目立たない箇所ですが、ポスター内にある文字情報にも気を配っています。

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グラデーションが「左から右」に消えていくようなデザインになってるんですね。


こういうグラデーションってあんまりしないんですよ。


文字の終わりが見えにくくなると、可読性が下がりますしイライラします。


だからこそこの映画にはふさわしいわけですね。


思い出も現実も、すべて川の中に消されていく儚さをうまく表現しています。

 

日本版ポスター


メインとなる川のポスターバージョンの他にもこんなポスターがありました。

 

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これ、以外といいキャッチコピーだなと感心しました。


もうひとつの「スタンド・バイ・ミー」、ですか。


なるほど、確かにこの映画をそのように観るとまた違った感想になってきて面白いですね。


どちらも極めて地域限定的な話であるということ、少年時代の話がキーになっていることという共通点があります。


ですがそれ以上に、このキャッチコピーがあることで「お前の人生が、こうだった可能性もあるんだからな」と急に耳元でささやかれるような気持ちになります。

 

映画の感想


何回かこの映画を観ているのですが、恐ろしいことに何回観ても面白いんですよね。


映画の基本構成はサスペンスなので、一度観れば「誰が犯人なのか」や「誰が死亡するのか」などは分かるわけですよ。


それでも何度観ても面白いのは、やはりイーストウッドの演出とそれにこたえた俳優陣の凄まじさだと思います。


映画の中ではほぼアクションシーンなどはなく、ずーーーーっと町をウロウロしたり会話をしたりしているだけなんですよ。


それなのに面白くてたまらない。


映画がすすむにつれて、人々の関係性や心情があふれ出てくる時の緊張感。


よくそんなものをフィルムに収めることが出来るなと感心します、というかむしろ呆れます。

ショーン・ペンのすごさ


個人的に大ファンなショーン・ペンなのですが、この映画のショーン・ペンは本当に好きですね。


役柄としては「昔ワルだったが今は落ち着いた家庭人」みたいな感じなんですけど、彼の揺れ動く感情が素晴らしいなと。


映画に出てくる大物ギャングのような、堂々としていて余裕のある感じとは違うんですよ。


かと言ってコメディ的なチンピラでもない。


行き当たりばったりな判断をしているようにも見えるし、人を睨むシーンでは本当に怖いみたいなバランス。


全身にあるタトゥーを見て確信したんですけど、やっぱりワルと言っても田舎限定的な中途半端さがあるんですよね。


なんとも微妙なタトゥーからそれがにじみ出ているというか。


その本当に繊細な役柄を演じきったあたりがショーン・ペンの素晴らしさなんだなと思いました。
(ま、ホントに彼はそれなりに悪い人なんですけどね)

 

それでは


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