Song of the sea 《美麗な映画に対してポスターは控えめ…》
映画の点数…83点
ポスターの点数…45点
アイルランド発のアニメーション
こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。
今回取り上げる映画はアイルランド発のアニメーション作品《song of the sea 海のうた》です。
直訳するほどの英語でもないだろうと思いますがそれはそれでいいとして。
アイルランドの映画が何故話題になったかで言えばやはりアカデミー賞にノミネートされたからでしょう。
その年は《かぐや姫の物語》が候補作品にのぼっていて、結局はどっちも受賞できずにベイマックスがオスカーを持っていったんですけどね。
ベイマックスはベイマックスで好きなんですけど、映画賞を与えるというのであればこのソング・オブ・ザ・シーやかぐや姫みたいな作品にあげてもいいのになぁなんて思ったり。
というのも、この両者の作品は共通して「見たことのない映画を見せてくれる」魅力があるからです。
見たことのない映画
かぐや姫の物語は、筆のタッチで画面いっぱい踊るように描いた映像的傑作でした。
手法の一つとしては究極までいった作品だと思っているし、今後100年歴史的価値を持つことになると思ってます。
同時にソング・オブ・ザ・シーも同様の魅力を持った傑作だと思います。
ソング・オブ・ザ・シーの手法は言葉で説明しづらいのですが、極端に平面化された人物や背景がだまし絵のように動き回ります。
リアリティとは対局にある表現ではあるのですが、それが映画全体の持つ「おとぎ話」のようなテイストと見事にマッチしています。
この作品がアイルランドの作品だと知らずに観たとしても「なんとなく北欧っぽい」という鮮やかな色彩感覚をうまく用いながら、独特としか表現しようのない幻想的でありながら生き生きとした映像を楽しませてくれます。
かぐや姫の物語もソング・オブ・ザ・シーも、映画の題材に合わせてこれ以外には考えられない表現方法の極致を導き出したなと感じます。
ベイマックスが素晴らしい作品なのは何一つ否定しませんが、全く新しい表現技法があった映画とは思えなかったので。
せっかくアニメに対してのアカデミー賞があるのなら、そこは評価すべきポイントなんじゃないかなーと愚痴を言ってみたり。
映画のストーリー
神話や言い伝えを元にしたストーリーらしく、海にいる間はあざらし、陸の上では人間になるセルキーと言われる種族のお話です。
妹の誕生と共にセルキーである母を失った主人公ベンが、母と同じくセルキーとしての能力を身につけた妹と共に冒険に巻き込まれていく
というようなストーリーです。
細かい脚本があるような作品ではなく、それよりもやはり場面の移り変わりや歌を歌うシーンでの映像の煌びやかさを楽しむタイプの映画と言えそうです。
アイルランドの神話なんて当然僕も知りませんでしたが、それはあまり気にしなくても映画の面白さには影響しないと思います。
心情の変化や場面で起こっている事態は全て映像と音楽が情報としてフォローしてくれるので置いてけぼりをくらうことはないでしょう。
「妖精なのか、人なのか」みたいな展開は不思議とかぐや姫の物語と共通する点がありますね。
映画の良かった点
言うまでも無く、映像です。
目に見えているものは平面的なキャラクターや舞台なのですが、それをダイナミックにグワングワンと動かしてくれるのでとても大きな世界観を感じます。
とはいえ設定上の舞台は小さな港だったり町だったりで、その閉鎖的な空気感というものもちゃんとパッケージングされています。
だからこそ妖精の国での冒険や海の中のシーンなどでは巨大で圧倒的なスケールを対比的に描けています。
映像的なトリックで世界観を表現できるということが実写と違いアニメ作品の大きなメリットです。
アニメ作品であることを最大限に活かしたアイデアの数々を見るだけでも大変感心しました。
音楽
また、音楽もこの映画のキーワードです。
タイトルがソング・オブ・ザ・シーなので当たり前なのですが、歌や音楽がかかるシーンはとても楽しかったですね。
おそらくアイルランドの音楽感というものに馴染みがないからなのでしょうが、初めて聞くような音楽体験ができて。
音楽映画としてもとても良い作品だなと思ったり。
映画の難点
アイルランド発のおとぎ話を扱った映画と言いましたが、最初の5分くらいでその話は一気に説明しきってしまいます。
僕のように最初ボーーーっと観ていた人はその後に戸惑うことは必至です。
せめて用語説明だけでも後々出てくるキャラクターにさせても良かったのではないかと思いました。
知らないワードが急に飛び交ったりするので「マカって誰のことだっけ。。。」とか考えちゃうシーンがいくつかありましたね。
ポスターの感想
映画の良さにたいして何故かポスターがイマイチなのが今作の残念な点です。
うーん。
なんでこのようなポスターになったのかちょっと不明ですね。
映画の方では本当に生き生きとした映像が楽しくてしょうがないのですが、ポスターは何故かのっぺりと平面なだけ。
海の話だから海をポスターにするのは問題ないんですけど、それにしたってちょっと暗すぎる。
このビジュアルでは作品の神話性もあまり感じないというか。
キャラクターの魅力にしたって、繊細に書き込まれた緻密な背景があるからこそシンプルな線で描かれた顔とかが引き立つんですよね。
でもうこういう構図で見せられるとただ単に地味なイラストに見えちゃう。
非常に勿体ないなと思います。
キャラクターは小さくても問題ないから、もっと世界観の美しさをポスターの画面いっぱい大きく見せた方が良かったと思いますけどねぇ。。。
別バージョン
こちらのポスターはまだ少し良い気がします。
ただそれでもやっぱり物足りないかな。。
映画やストーリーを理解している人でないと、中央にいる「なんか白っぽいフードをかぶった女の子」にしか見えないですよね。
あと何故このポージングなのかよく分からない。。。
彼女はアザラシであって歌い手でもあるのだから、そのどちらかを表現したビジュアルの方が良かったのではないでしょうか。
いずれにせよ、やっぱりもうちょっとレイアウトを考えた方が良かったと思います。
まとめ
ビジュアルが最高の映画だからって、ポスターまで最高になるとは限らない一例になってしまいました。
同年にアカデミー賞を獲得したベイマックスは、本国版と日本版で似ても似つかないポスターに変更したことが話題になりました。
別にズルをするということではなく、物語をどの部分をポスターにするのかというのはやはり特別に大事な作業だと思うんですよ。
そのビジュアルが映画を鑑賞した人の映画の思い出そのものになりかねないんですから。
素晴らしい映画だっただけに、少し残念な気持ちです。
それでは、また。
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