犬猿 《少しずつ説明過多な映画とポスター》
映画の点数…72点
ポスターの点数…45点
𠮷田恵輔監督作品
こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。
今回取り上げる映画は《犬猿》2018です。
主演は4人いて、窪田正孝さんと新井浩文さんの本格派演技兄弟コンビと、ニッチェの江上さんと筧美和子さんという役者以外で揃えた姉妹コンビ。
監督は𠮷田恵輔さん。
映画の点数に72点と「まぁまぁ」くらいでつけちゃってますが、これは𠮷田恵輔さんの前作「ヒメアノ〜ル」がとにかく好きすぎるので相対化して低くなっただけです。
そこらへんの映画よりはそもそも面白いのであしからず。
「ヒメアノ~ル」は冗談抜きに邦画史に残る作品だと思っていて、特にタイトルが出るシーンなんかは「うおおおおおおおおおお!!!!」と叫んで拳を突き上げたような突き上げてないような。
特に「もはやこういう人としか思えない」という人物を作り上げていた森田剛さんが素晴らしくって。
その吉田監督が描く「兄弟達のいがみあい映画」と聞くとそりゃあ楽しみでしかなかったですよ。
ちなみに僕も兄弟が多いので、身近な家族の地獄には見覚えはあるのです。
とまぁそんなわけでけっこう過度な期待してたんですけど、良くも悪くも今作は「目線をさげた」作りになってるかなと思いました。
映画の良かった点
特に前半の1時間くらいは良かったです。
兄弟と姉妹がお互いにじわーーーーーーーーっと相手を不快にしていく様を描いていて。
その不快にさせる方法も「あからさまにやるが無自覚(新井)」「堂々とやるし、自覚もあるが、不快にさせている点が思惑とはズレている(ニッチェ)」「自覚はあるが、バレないようにやる(窪田)」「自覚もあるし悪意もあるしバレたところでおかまいなし(筧)」と様々なパターンがあって。
ただしいずれも「はいはい分かるわ」と思う人は多いんじゃないですかね。
あるあるネタとして楽しむというよりは、登場人物の思想に自分が触れた瞬間に「俺にもこういうところがある」と自覚してズキズキくるタイプの演出です。
新井浩文さんと江上さんはある意味イメージ通りのキャラクターなので良いのですが、窪田さんと筧美和子さんは結構偉いなと思いました。
「ニコニコしてるけどウラでは人のこと見下してるんでしょ?」と言われそうな窪田さんがその役をやっていたり、「巨乳でビッチなバカなんでしょ?」という最悪なレッテル貼りなキャラクターを筧さんが体現していたり。
かくいう僕も筧さんはテレビで見ていて性的な魅力を感じるタイプだったので「所詮俺もこういう風に彼女見ているのかなぁ」などと自分にガッカリですよ。
でもやっぱ可愛い。
映画の不満点
前半のチクチクしたやりとりは楽しかったのですが、残念ながらそれぞれが感情をむき出しにし始めたあたりからは逆に退屈になっていって。
とにかくキャラクター達が思っていることを喋りすぎだと思うんですよ。
いくら感情が高ぶっているとはいえ「私はあんたに嫉妬してるわよ」なんて言わないでしょう。
そういうのは本人達も分かっているし観客も分かっているからわざわざセリフにしなくてもいいかなと。
新井浩文さんはいついかなるシーンにおいても演技がズバぬけてるので安心して観ていられるのですが、他の三人は少し厳しい箇所もあったと思います。
窪田さんはおそらく本当にいい人すぎて、あんまり怒鳴ったりが苦手なのかなと。
筧さんは泣きの演技とかになるとなかなか。。
だからこそ、セリフや表情にこだわらなくても演出だけでもノリきれたんじゃないのかなーと。
前半の「セリフにはない悪意のやりとり」が楽しかった分、それを説明されちゃうとなんだかガッカリ。
幅広い観客向けを想定したのかは分かりませんが、それでもやっぱり説明過多でしたね。
ポスターの感想
ポスターの感想も同じなんです。
あきらかに「犬猿」な顔をしすぎです。
映画内でもそうだったのですが、特に窪田さんはあまり人を怒鳴ったりしたことないのではないでしょうか。
とにかく顔が怖くないんでよね。。。
こうやってポスターで睨まれても「どうしたの、お腹痛いの?」くらいにしか見えなくて。
ポスター内で一番いい表情なのは筧さんじゃないですかね。
内側からにじみ出てきているような憎悪がうまく表現できていると思います。
彼女だけカメラを向いていないのは、本当は正面から撮ろうと思ったけどこの表情がうまくいきすぎたからかなーなんて思ったり。
映画もポスターもどこか説明過多な感じがして少し残念でした。
キャッチコピー
キャッチコピーは結構いいと思います。
愛憎が、溢れ出す。
文字がすべてバラバラに散らばっていて、「愛も憎しみもコントロールできていない」という感じがうまく表現されているなと思いました。
まとめ
「分かりやすく伝える」のはポスターの役割なんですけど、それをやりすぎちゃうと「くどさ」も出ちゃうのだなと思いました。
もう少し抑え気味な演出にした方がより良かったと思います。
とはいえ繰り返しになりますけど、とはいえ吉田監督作品ですから。
鑑賞はマストだと思いますよ。
それでは、また。
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