映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

ボーダーライン ソルジャーズデイ 《もうちょっとどうにかならなかったのか?なポスター》

映画の点数…95点
ポスターの点数…35点(日本版ポスター)

 

2018年最高傑作の一つ


こんにちは、ピースマイルです。


今回取り上げる映画はボーダーライン ソルジャーズデイです。


個人的なランキングなのですが、2018年に公開された映画の中でトップ3がありまして。


それが【カメラを止めるな!】と【デトロイト】、そしてこの【ボーダーライン2】なんですよね。


好きな理由がそれぞれ違うので「全員一位!!」としか言いようがないのですが、いずれの作品も本当に大好き。


そんな今作だからこそ「うーん、もっとお客さん入ってもいいのに…」とか「ポスターどうにかならなかったの?」って思っちゃうんですよね。


映画の感想と共にそのあたりを掘り下げてみたいと思います。

 

映画の構造


今作は2015年に公開されたボーダーラインという映画の2作目という位置づけではあります。


なのですが、観た方なら分かる通ほとんど別の映画と言ってもいいくらい映画全体の作りが違っていて。


共通してるのは「メキシコとアメリカ国境が舞台」「メインキャストの二人が続投」「映画の雰囲気(画面の質感や音楽)はそのまま」と言うくらいでしょうか。


別に今作から映画を観たとしてもほとんど混乱することなく観ることが出来るでしょう。


そもそもこの映画は1作目も2作目も「今何が起こっているのか全然分からない」という混乱を楽しむ映画なので、予備知識なんてあまり意味ないですしね。


1作目と違う点としては「ベネチオ・デル・トロが完全に主役になった」点が大きいと思います。


前作は主人公が3人いるくらいのバランスだったのですが、本作はとにかくベネチオ・デル・トロ。


世界で彼しか持っていないであろう「完全に死んでる人の目」をたっぷりと楽しむ映画です。


そして前作では「俺たちはメキシコ麻薬戦争のプロだから、誰よりも事情に詳しいんだ」という姿勢だった主人公達が、今作では「そうは言ってもやはり現場のカオスぶりに翻弄されてバタバタする」という目線から描いています。


というわけでこの映画は「アメリカもメキシコも関係なく、とにかく混乱した世界の中で人々がバタバタする。その混乱に自ら巻き込まれたベネチオ・デル・トロの視点から世界を観る話」と言えると思います。

 

映画の感想


とにかく傑作だと思っているので逆にあまり詳しく書くことはしませんが、僕はこの映画の「始まってから終わるまで一瞬も途切れない緊張感」と「一度たりともこのあとの展開が読めないストーリー」にゾクゾクしました。


普通の映画だと、緊張感が途切れないと疲れてきちゃうし、展開が読めなさすぎると退屈しちゃうんですけどね。


そんなこと全くなく楽しめました。


脚本も美術も役者陣も音楽も、とにかく全てが一級品なので観ていて本当に飽きないんですよね。


あえて言うなら「過去最高のベネチオ・デル・トロが出てくるからとにかく観ろ!」の一言です。

 

ポスターの感想


上記のように、とにかく傑作だと思っている今作。


だからこそポスターに対する不満が結構強いんですよね。


こちら日本語版ポスター

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はい。悪くはないと思います。


でも、良くもないと思います。


というのも、何が言いたいポスターなのか非常に分かりづらいんですよ。


画面の要素の中に「メキシコらしさ」や「敵か味方かも分からない混乱」のようなものが見えてこなくて。


単純に「二人の兵隊が勇敢にも敵に向かっていく」といった感じにしか見えなくて。


せっかくいい映画なのに、これじゃ「なんか銃とかでバンバン撃ったりするジャンル映画でしょ?そういうの好きじゃないんだよね。」みたいなお客さんを逃しちゃうと思うんですよね。


それじゃもったいないじゃないですか。


ただし、キャッチコピーは的確でいいと思います。


「ルール無き戦いに終わりはあるのか」の短い一言でこの映画全体のテーマを表していますよね。

 

本国ポスター


では本国版ポスターはどうなっているのか。

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カッコイイ!

 


こちらのポスターも残念ながら、何が言いたいポスターなのかは分かりません。


ですが、彩度を極端に抑えてザラついた雰囲気を押し出した「乾いたバイオレンス」な空気感がしびれます。


このポスターの方が確実に「こいつら、絶対修羅場を踏みまくってるプロだろう」という迫力を感じます。


何故このポスターを日本語版で採用しなかったのか分かりません。


こちらの方がお客は入ったと思うのですが。。。

 

前作のポスター


おそらくですが、前作のポスターに雰囲気を多少合わせたのでしょう。

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前作はエミリー・ブラントを中心に画面を二つに割ることによって「ボーダー」感を出していたいいポスターだと思うのですが、今作までそれに合わせることも無かったように思います。


ちなみに前作の本国版ポスターはこちらです。

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やはり本国版ポスターの方がビジュアルはカッコイイのですが、主人公のエミリーが何も分からず右往左往する話であるということを伝える意味では日本語版ポスターの方にチューニングを合わせたのは理解できます。


この、前作に引っ張られた結果としてすごく中途半端なポスターになってしまったのではないでしょうか。

 

別案のポスター


ちなみに。別案としてこんなポスターもありました。

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めちゃくちゃカッコイイ!!!!


個人的にはこのポスターが完璧です。


メキシカンスカルを大胆に配置してかなりグラフィカルなポスターになっています。


正直実際にこのポスターを採用したらお客さんの数は減ったとは思います。


あまりにもジャンル映画の匂いが強いですからね。


ただし、前作を知っているファンであるならば興奮間違いなしの快作ポスターではないでしょうか。


「お客さんを集客する」目的としては良いポスターとは言いませんが、「映画を的確に表現する」という点においては完璧な一枚だと思います。


素晴らしい。

 

まとめ


いい映画ほどポスターに恵まれていないと悔しい気持ちになってしまいます。


もしも「銃撃バカ映画なんでしょ?」と敬遠されている方がいらっしゃいましたら迷うこと無く是非観てみてください。


超絶オススメですよ。


それでは、また。

 


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