映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

SING 《ポスターワークはライバルよりも上か?》

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映画の点数…76点
ポスターの点数…75点

 

イルミネーション映画について


こんにちは、ピースマイルです。


今回取り上げた映画は《SING》です。


子ども(2歳)がこの映画を観ながらダンスをしているのを観ると「なるほど、動物がノリのいい曲を歌うと子どもは嬉しいよな」と改めて思った次第。


大人の目線から観ると、近年の「ピクサーシリーズが破壊してしまったアニメ界の常識」の中で、唯一と言えるくらい食らいついている会社がイルミネーションスタジオなのかなと思っています。


もちろんミニオンズというキャラクターの大当たりは大きいのですが、それ以外でも「いや、確かに彼らは頑張っている!」と感心するというか。


他のアニメーションスタジオがよりマニアックでニッチな層を狙いにいっているのに対し、あくまでもイルミネーションは「王道で戦う」という姿勢を感じますね。


正直なところ、ディズニー・ピクサーのクオリティには現在のところ全く追いついていないとは感じますが、それでもこういうライバルがいるのはディズニー・ピクサーにとってもいいことだと思うんですよ。

 

映画の感想


一言で言えば「荒っぽいところもあるけど、けっこう好き」という感じです。


まず悪い箇所としては、主人公がけっこうな駄目な奴ってところでしょうか。


映画全体を通して「父親に甘やかされる→いい加減な経営で劇場を潰す→虚偽の報酬を持ちかけてパフォーマーを雇おうとする→劇場を文字通り崩壊させる→バイトを始めるも初日で放棄→劇場に不法侵入してコンサートを開催→金持ちに再び劇場を建ててもらう」といった感じで、これを見たキッズ達に悪影響なのではないか心配するほど。


また全体的にキャラクターの掘り下げが甘く、みんな様々な理由で「自分が思ったように歌を歌えない」という悩みを抱えているのですが、そのいずれも「いや、別に他にやりようがあるだろ」と思うくらいの悩みというか。


キャラクターの数が多めなので仕方ないとは思いますが、せっかく惜しいところまでいってるのになぁという感じです。


あと、よくよく考えてみると「これ、動物でやる必要があったのか??」という疑問もあって。


キリンは背が高いからマイクが高いとか、ハリネズミが興奮するとハリが飛んでいくとかギャグシーンでは機能するんですけど、「ゾウというキャラクターを活かしたゾウならではの歌」とかそういうのはあんまりなくて。


「すごく歌は優しいのに、ライオンだからみんなから恐れられている」とか「真似をするのはとても上手なオウムだけど、オリジナルで歌うのが苦手」とか、なんか方法はありそうなんですけどね。

 

良かった点


良かった点は、もうシンプルです。


歌がいいです。


こんなこと言うと「既存の曲を使ってるんだから当たり前だろ!」って感じですけどそうじゃなくって。


そもそもこの映画で一番好きなのは映画オリジナル曲の「Set it Free」をスカーレット・ヨハンソンが歌うシーンですしね。


この映画ではちゃんと「この歌を感動的に聴かせるならどのような演出にすべきか」をしっかり考えているのが偉いです。


例えば先ほど挙げた「Set it Free」はロックンロールなので、ロックに合わせたカメラワークをしてるんですよね。


おそらくミュージックビデオやコンサート映像をかなり研究されたのだと思います。


「今顔面のアップが欲しい!」「ここで客席の表情が欲しい!」というところでバッチバチに合わせてくるのでグングン気持ちがあがっていきます。


さらに(当たり前といえば当たり前ですが)曲に合わせてストーリーも同時に進行させるので退屈しないよう工夫もされています。


映画のタイトルが「SING」である以上、僕はこの映画は歌唱シーンがうまくいっていれば大成功なんじゃないかなと思います。

 

ポスターの感想


先ほど「ディズニー・ピクサーの方がアニメは上」と言いましたが、ポスターに関してはもしかしたらイルミネーション作品の方が上かも知れません。


まず本国版の2枚なのですが、

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かなり品の良いポスターではないでしょうか。


動物キャラという素材を持っておきながら、その使い方が抑えめでクールです。


だからこそ逆に「どんな映画なんだろう」と興味を持つくらいのバランスにしています。


色使いも絶妙で「ライブ会場独特の暗さと煌びやかさ」を感じさせます。


動物がたくさん出ることでは少し先輩の「ズートピア」のポスターはこんな感じ。

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こっちの方が間違いなく「子どもウケ」はいいと思いますが、大人な印象はないですね。


目的が違うので仕上がりが違うのは当然ですが、SINGのポスターのセンスがいいのは変わりありません。

 

一方の日本語版ポスター


ところがこれが日本語版ポスターになると残念な感じになっていて。。。。

 

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本当に謎なんですけど、なんでブタ推しなの???


映画を観た方なら分かる通り、主要キャラの中で一番「中身のないキャラ」なのがこのブタです。


映画全体を通してコメディ演出を一手に引き受ける魅力的なブタではあるんですけど。


まさかこのブタの表情が面白いってだけなのかな。。


これじゃ「ちょっとどうかしてる主人公のブタを、温かい目で見守る友達の物語」って感じがしませんかね?


それに、アメリカ版にあった品の良さは全く無くなりました。


ギリギリまでキャラを大きくしすぎた結果、逆に見にくくなったと思います。


うーん。
なんでこんな感じになったんだろう。

 

もう一つのポスター


逆にこっちはかなりいいですね。

 

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適度に抑制されていて、「ライブ前の記念撮影」のような雰囲気が出ています。


あえてステージを写さないことで「あくまでもステージではなくキャラクター達の内面の話がメインですよ」と言っているようです。
(前述しましたが、その内面の描写はうまくいってないと思うんですが)

 

まとめ


イルミネーション作品は好んで観るタイプではないのですが、今作に関しては広くオススメできる一本でした。


さらにポスターワークに関しても、ライバルのディズニーとガチンコで渡り合えるセンスが光っています。

 


ミニオンズ推しもこのくらいにしといて、早く新作で戦ってほしいですね。


それでは、また。

 


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