ノー・エスケープ 自由への国境 《出た。0点の映画ポスター》
映画の点数…70点
ポスターの点数…0点!!!
映画の見方の問題
こんにちは、ピースマイルです。
僕は映画を観る際に、あまり予告編を見ません。
タイトル、ポスター、監督、俳優、誰が推薦しているかくらいで観るかどうか決めます。
出来るだけ情報が無い方が映画を楽しめる確率が高まるからそうしているのですが、もちろんそれが逆の結果になることもあります。
例えば《GREEN BOOK》という映画では黒人差別の歴史について一定の知識はないと楽しめないでしょうから、予習をしておいた方が映画をより深く理解出来るでしょう。
今作を鑑賞するにあたって、僕はノー・エスケープ 自由への国境 というタイトルと、ガエル・ガルシア・ベルナルが出ていること、メキシコ国境越えというジャンル、そしてポスターを見て映画を観ることを決めました。
そこで僕が勝手にイメージしたのは「主人公が家族を守るために国境を頑張って越えようとするが、麻薬カルテルや国境警察に追われて絶体絶命の危機に陥ってしまう」みたいな話だと思ったんですよ。
そしたらもう、ぜーーーんぜん違っててビックリ。
この全然違うことに関しては下調べをしてない自分の問題なので文句はないのですが、それでもタイトルとポスターには不満がありますね。
そのへんを少し掘り下げようと思います。
映画の感想
まず映画の構造は、メキシコ→アメリカの国境越えをした10人程度のメキシコ人が狂信的な愛国主義者らしいサイコ野郎に一人一人銃殺されてにげまわる、という話です。
まさかそういう「人間狩り」ジャンル映画とは全く思わなかったので驚いたのですが、とりあえず映画が面白いならば問題はありません。
シェパード犬とバディを組んで一人一人銃殺していくハンターの異常性がキモになっているのですが、あまり分かりやすくベタな演出などはせず淡々と抑えめな演出が効いています。
こういうサイコパスの演出には「なぜか真っ白なスーツを着ている」とか「潔癖症らしい描写がある」とか「ブツブツ呪文のように喋っている」とか今まであったと思うんですよ。
そのようなベタさは排除して、そこら辺にいそうな小汚いオッサンが襲いかかってくるあたりがより恐怖感を増していると思います。
ガエル・ガルシアはファンなので観ている間中やっぱりカッコイイなぁなどと思いながら観ていましたが、本当の主役はハンター側のジェフリーモーガンでしょう。
ドラマ「ウォーキング・デッド」において主人公の敵側の圧倒的なカリスマ・ニーガンを演じた俳優さんです。
このニーガンがそりゃあもう憎らしいほどに強くて頭の働くイヤな奴でして。
あれ以上の悪役はいないだろうと思ったらこの映画で軽くそれを超えてきやがりましたよ。
あれだけドラマでは痛めつけたのにまだ反省していないようですね。
いい役者さんだなあと思います。
はっきり言って「一生忘れない傑作だ!」とは思いません。
でも観ている間は少なくともずっと面白いと言えるほどにはレベルの高い一作だったと思います。
タイトルの感想
さて、ここからはタイトルとポスターへの不満です。
まず原題のタイトルはスペイン語で「砂漠」というシンプルな一言なんですよ。
これで良かったのに。。。
それを何故か「ノー・エスケープ 自由への国境 」なんて変えちゃったものだからまるで国境を越えることがメインの話のように感じるじゃないですか。
この映画では国境は最初の10分であっさりと超えます。
そのあと国境自体が出てきません。
なぜ自由への国境なんてつけたんでしょうね。。
これはもう「国境越えサスペンスの方が観客入るんじゃね?」という不純な動機しか感じないんですけどね。。。
ポスターの感想
まず日本でもよく見かけたこちらのポスター
これが一番最悪でしたね。
ここで広報スタッフの完全な悪意が感じ取れます。
一応、小さくですけど正体不明の襲撃者とは書いてあります。
でもすぐさま嘘をついてて「水なし、武器なし……」
いや、水はあったでしょ。比較的たくさん。
わざわざ演出的にも「水はある程度は準備されているんですよ」というのを示すために大きなボトルに入った水を撮ってるくらいです。
これは「逃げる最中に水も無しじゃ砂漠で生きられないのでは?」という疑問を観客にもたせないための配慮です。
水は、あるんです!
そんなことよりも最低最悪のキャッチコピーがこちらですね。
「今、アメリカとメキシコの国境で何が起きているのか?」
はぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ??????!!!!!!
な・ん・の・映画の話???!!!
どこの国境に人食い犬を連れたのんだくれのサイコキラーがいるんだよ!
これは言い訳不可能な完全に嘘のキャッチコピーですね。
まるで今もアメリカとメキシコが抱えている問題みたいな書き方をしています。
こういう嘘は絶対に許せません。
なのでポスターの点数は当然0点です。
映画を台無しにしただけではなく、アメリカやメキシコに対しても大変失礼なことです。
最低。
ビジュアルもこれまた。。。
ビジュアル面も良くないですね。
わざわざ手前に有刺鉄線をはって「国境を越えられるのか、越えられないのか」みたいな雰囲気にしてますがこんなシーンは一切ありません。
だってそういう映画じゃないし。
奥の方に雑なコラージュみたいな感じで砂漠を歩く不法移民者達がのせてありますが、彼らも主役ではありませんしね。
だったらハンターをポスターにのせるべきです。
これも悪意のあるミスリードです。
いい意味でのミスリードではありません。
こういうの大嫌い。
とは言え本国版も
じゃあ本国版が極めていいかと言うとそういうことでもなさそうです。
まずこちらのビジュアル。
ビジュアルに関しては文句なしです。
追ってくるハンターから地形を活かして逃げる主人公。
この一枚で映画の内容を示しています。
特に説明がないにも関わらず、レイアウトや色調の付け方で追われている側が主人公というのも分かります。
あとは堂々と広大な砂漠を背景に用意してあげるだけでこの映画のスケール感が伝わってきます。
とは言え、ちょっと見逃せない点がありますね。
それは「GRAVITY」というデッカいタイトル。
これは監督のお父さんがゼロ・グラビティの監督であるキュアロンさんだということと、スタッフが一部重なっているからつけられているんですけど。
これじゃまるでゼロ・グラビティの監督が作った映画という誤解を生むのが目的のようにも感じます。
そしてこういう表現の仕方だと「ゼログラビティほどに面白くはないけど。。。」みたいな捉え方をされると思うんですよ。
せっかく息子さんもいい映画を撮っているのだし、こういう宣伝はスマートと思えないですね。
ビジュアルはとてもいいだけに残念です。
せめてフォントを変えるくらいの配慮があってもいいのに。
別パターン
もう一つ別パターンのポスターがあります。
こちらはこちらでとてもいいですね。
個人的にはこのポスターが一番好きです。
何かから必死に遠ざかる主人公だけをうつしだし、あとは荒れた砂漠の環境の悪さ、そして巨大なタイトル文字から砂漠の広大さを表現しています。
さすがにこのポスターだけでどのような映画かを伝えるのは難しいので採用されるべきではないと思いますが、色彩の微妙な調整なども含めて一枚のポスターとしてとてもカッコイイですね。
まとめ
こじんまりとした映画ではありますが、佳作として十分な魅力をもった本作。
それを英語版も日本語版もポスターで台無しにしてしまっている部分はかなり残念だなと思います。
特に日本版ね。こっちはもう最低最悪だから。
いい映画にはいいポスターを。
当たり前のことながら改めてそう思う次第です。
それでは、また。
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