映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

トゥルーマンショー 《ジム・キャリーでなければ成立しない映画とポスター》

映画の点数…81点
ポスターの点数…85点

 

映画のアウトライン


こんにちは、ピースマイルです。


今回取り上げる映画は「トゥルーマン ショー」です。


ジム・キャリー主演の1998年の映画。


映画の評価自体は高かったと思うのですが、その年には「タイタニック」というお化け映画があったので話題になるには不利な年だったのかなとは思います。


とは言え観てない方がいたらもったいないくらいには十分な良作です。


映画の出来自体が素晴らしいというよりは、僕個人的な好みの問題でかなり好きな作品です。

 

映画の内容


映画の構造として一見大きな仕掛けがあるような感じなんですけど、かなり早い段階で観客にはネタバレするような作りなのでこのブログでも最初にネタバレしちゃいます。


ジム・キャリー演じるトゥルーマンは、人生の全てをテレビで記録されていてそれを全世界の人が生放送で観ています。


そのことに気付いていないのはトゥルーマンだけ。


友達、家族、結婚相手ですらテレビ制作側が用意した役者達でした。


ところがトゥルーマンはついにその不自然さに気付いてしまい、「外」の世界へと飛び出していくーーーー

 


みたいな話です。


「フィリップ・K・ディックみたいな話だな」と思ってたら、案の定ディックの作品をモチーフにした脚本なのだそうです。


ある種SF的な作品でもあるため、わりと序盤から「これ設定としておかしくないか?」という無理な箇所や矛盾が頻出します。


そのへんは「そういうジャンル映画だから」とか「アート映画だから」とかで処理するのがオススメです。


そこで引っかかり出すとすぐにノレなくなってしまいます。
気楽な感じで見ましょう。

 

映画の良いところ


観ている間中、ずーっと不愉快な気持ちになるんですよね。


トゥルーマンが監視されているということが当たり前という世界なのですから。


もちろん、その不愉快さは映画自体がとても面白いということなんですけどね。


映画を観ている側は、親友も演技、奥さんも演技をしているということを知っている分トゥルーマンが明るく振る舞う度にムカムカするという負のスパイラル。


このイライラというか映画の面白さは、実は映画の構造自体の素晴らしさというよりはむしろ「ジム・キャリーの素晴らしさ」によるところがかなり大きいと思うんですよね。


ジム・キャリーといえばコメディ映画というイメージが強いのですが、それをうまいこと利用した「薄っぺらな感じ」とか「張り付いたような笑顔」とかがとにかくうまいなと。


そのペラペラ演技が出来るからこそ、終盤にかけて物語が加速しだしてからが面白いんですね。


おそらく意識的なのでしょうが、終盤の15分くらいはトゥルーマンはあまり顔が写りません。


人生で初めて自分一人のためだけに行動を始めるので、顔を相手に見える必要がなくなったということでしょう。


そして最後の最後、本当に最後の演技をひとつだけして物語から退場していきます。


かなりご都合主義的なエンディングだということは理解しつつも、やっぱりいいエンディングだなと思います。

 

映画の悪いところ


個人的に好きな映画ではあるのですが、映画の出来自体がいいとは特に思いません。


特に中盤で一気にダレるというか、こちらは既に「これがテレビで撮影されてる」ことは知ってるのにそれを延々と語り出したりするのがかなり退屈で。


何故トゥルーマンがこの撮影に選ばれたかとかは知らせなくて良かったと思うんですよ。


「実はこういう設定があって、カメラは5000台隠してあって」とか、聞けば聞くほど冷めちゃうんですよね。


そういうの全部無くして80分くらいの映画にした方が良かったのかなとすら思います。


テレビの撮影クルーは画面内に登場しないくらいの方が良かったんじゃないかな。


使ってる技術もやけに中途半端な未来感というか。


極めてリアリティを持って綿密に作るか、ディストピアを舞台にしたサイコな話にするか他にもやり方はあった気がします。

 

ポスターの評価


ポスターにはよく使われていたものが二種類あって、どちらも違う魅力と同じ魅力があって面白いです。


まずこちら

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日本版も同じ構図なのですが、とにかく「ジム・キャリーが監視されている」ということを一発で分からせる強いビジュアルですね。


このニヤついて寝ているところを観察されるという状況のチョイスがいいです。


よく観ると、ビルの下にはたくさんの国旗が並んでいて、無数の人がトゥルーマンを観察しています。


ですが、観客の顔はうつらないくらい小さいんですよ。


つまり、観客側は無個性の集合体でしかないということを言い表しているようです。


ある意味映画館の観客すらも挑発するようなエッジの効いたポスターです。


続いてこちらのポスター。

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制作費800万くらいで作ったポスターらしいですよ。


ジム・キャリーの顔を映画のワンシーンを切り貼りして制作しています。


一見すると、トゥルーマンの人生祝福するかのようなポスターです。


ですが、映画を観た後からだとそれだけではないという印象になります。


映画は「ジム・キャリーが演じているからこそ、あの薄っぺらな笑顔がとても良い」といいました。


ポスターも同じです。


何枚も重ね合わせた末に出来上がったポスターの顔が、なんともバカっぽい表情なんですよね。


この結局バカっぽいというのがいいですね。


映画全体が嘘で塗り固めたような作りですから。


嘘ばっかりを積み重ねて出来ましたって感じがします。


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まとめ


映画の出来がいいとまでは言えない、ポスターが極めて特殊な作りではない。


けど、ジム・キャリーという役者一人の個性ですべて成立させてしまう剛力さ。


その実力に感心した一作でした。


それがいいことか悪いことかは別として、そこまでの力がある俳優ていうのはいるんですよね。


最近大作でお見かけしない印象ですが、渋みの増した演技を久しぶりに観てみたいなと思いました。


それでは、また。


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