映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

アリー スター誕生 《意外と薄味だった映画と、無味無臭なポスター》

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映画の点数…65点
ポスターの点数…20点(日本版)

 

「スター誕生」について


こんにちは、ピースマイルです。


今回取り上げる映画は「アリー スター誕生」です。


今回で映画化されるのが4回目という古典的な作品で、すなわちストーリーが普遍的で強固だと言うことなのでしょう(普遍的であることがいい事では全くありませんが)


そんな「スター誕生」ですが、過去作は一度も観たことはありません。


そもそも「こういうストーリー」ということであればスター誕生でなくとも無数に存在していて、最近でも「アーティスト」や「ラ・ラ・ランド」は同じような素質のある映画です。


マンガでも「アイズ」なんて少年マンガは似たような話があったなぁなんて(内容はエロマンガだけど)


それくらい《ありふれた映画》である以上は、再映画化にあたって何かしら新しいアプローチが必要になってくると思います。

 

映画のフレッシュさ


この映画におけるフレッシュさは主に二つあると思っていて、一つは何より「レディー・ガガの初主演映画」という点ですね。


これは完全に大当たりだったと言えるでしょう。


演技力に関しても申し分なし、歌唱力の圧倒的な実力は証明済み。


劇中でも触れられる「誰もがうっとりするような美人ではない」というコンプレックスも映画にとってプラスでした。


もう一つのフレッシュさは、ブラッドリー・クーパーという俳優としてのキャリアは十分な彼が初めて監督を務めるということですね。


さらに主演もやるし脚本もやるし、まさかのギター演奏・歌唱、作曲までやるという狂気。


役柄上とは言え、劇中で失禁シーンまであるという「この人何考えてるの?」というレベル。


さらにはアライグマの声優まで務めるという……こっちは違う映画でしたな。


イーストウッドの弟子という肩書きがあるとはいえ、かなりのギャンブルを見事に成功させただけでもすでに奇跡のような作品といえます。


お見事、ブラッドリー・クーパー

 

映画の良い点


先ほど「普遍的な映画のなかに、何か新しいアプローチはあるか」と書きましたが、そのへんは主に撮影の部分で表現されていたように思います。


グラミー賞受賞会場や、実際のライブフェス会場などのかなり大がかりな舞台を用意しておきながら、ほとんど客席は写さず主役の二人に極端に寄ったような映像が印象に残ります。


この撮り方をしているおかげで「まわりがボケてしまうほど濃密な二人だけのラブストーリー」というのが浮かび上がってきます。


逆にジャック(ブラッドリー・クーパー)が画面の奥の方に小さく写るようなシーンがあると、急激にジャックが孤独感に襲われるような描写へとつながっていったり。


心情の流れをカメラだけで説得力を持たせるなんて、これだけで初監督とは思えない実力を感じるなと思います。


特にラストのガレージのシーンの撮り方の素っ気なさというか。。。


あのシーンは忘れることが出来ない一場面になりそうです。

 

映画の不満点


今までかなり褒めるような内容だったのですが、正直僕はこの映画にノリきれないところがあって。。。


というのも、いくら撮影がフレッシュでもレディー・ガガが主演でも「ここから物語がどうなるのか基本的に全部分かっている話」を観るのは結構退屈でした。


撮影の方法自体が《二人をじーーーーっくり撮っていく》というスタイルである以上、そこを退屈だと思ってしまうと引き返せなくなっちゃって。


早く次の展開にならないかなーなんて思いながら観てしまいました。


それと、これも仕方ないといえばそうなのですが、レディー・ガガはやっぱりレディー・ガガというか。


画面からカリスマが全く消えてないくらいカリスマだなぁと思ってしまったり。


同時期に公開されていたボヘミアンラプソディーではフレディの心の揺れ動きを見事に演技で表現できていたと思うのですが、アリーの方はそれを演じているのがレディー・ガガなので。


「大丈夫大丈夫!だって貴方はレディー・ガガなんだから絶対に成功するよ!」って思っちゃうんですよねぇ。。


それを忘れさせるほどには映画の出来がうまかったとは思えませんでした。

 

ポスターの感想


今回も残念ながら日本語版ポスターの方が出来が良くないというか。。。

 

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まずビジュアルなんですけど、なんなんでしょう、この「必要な情報を並べてみました」感。


画面全体を使って「主演、レディー・ガガ!!レディー・ガガが、ギターを弾く恋人とかと出会って成長したりしてスターになる映画です!」みたいな感じ。


いや、その通りの映画なんですけど、このレイアウトは良くないと思うんです。


キャッチコピーも「歌って、恋して、傷ついて 私は生まれ変わる。」


ダサい!!!!


考えた方ごめんなさい、ダサいです。


なんか昭和のやつ?すごく昭和な感じがします。


キャッチコピーって別に「映画の内容を説明すること」じゃないですよね。


ここまでストレートなキャッチコピーはなかなか無い気がします。


びっくりドンキーに入って「挽肉と、ご飯と、大根サラダ 私はハンバーグディッシュ」って書いてあったら「あ、はい」って感じじゃないですか。


どのような映画か全部説明してあげないと観客が入らないと思ったんですかね。


だとしたら「こういう映画なら別にいいわ」と言って鑑賞を避けた人も結構いると思いますけど。。。

 

本国版ポスター


日本語版ポスターの方のレイアウトの何が良くないって、ブラッドリー・クーパーとレディー・ガガを不用意に分割していることなんですよ。


ではオリジナルの方のポスターはどうかというと、こんな感じ。

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映画を観たら分かる通り、この映画は極端に「二人きり」の映画なのであって、そこが最大の魅力なわけです。


だから当然オリジナルポスターはこうなるわけですね。


日本でこういうカップルがいたら「気持ち悪っ」と思ってしまいますが、そのベタベタ加減をこそ楽しむ映画ですからね。


ではこれが日本で流行した「スイーツ系映画」かと言うとそうではありません。


「スター誕生」というタイトル文字こそキラキラしているのですが、そこに写っている二人はモノクロの写真になっています。


まるで「この二人の姿は過去のもの」であるとか「スターになるために失ってしまったもの」のような雰囲気が出ています。

 

別案


こちらのポスターも同様です。

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ライブのステージという「最も人が輝く瞬間」ですらも、観客は一人もうつらないくらいボケていますし、そしてモノクロの写真を使用しています。


映画を観る前からすでに「笑顔の多いだけの映画ではない」というのは暗示されているわけですよ。


では改めて日本語版ポスターの方はというと。。。

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そういった繊細な表現は何も感じません。


本当に事務的な感じですね。。。


楽しくもなさそうだし、切なくもなさそう。


うーん。

 

まとめ


映画は良い意味でも悪い意味でも「けっこう優等生」な作品だったと思います。


とはいえ嫌いな映画とかそういうことではなくて、ブラッドリー・クーパーは大好きな俳優だし今後も映画を撮ったら必ず鑑賞するでしょう。


ポスターの方は例によってなんとまぁというか。


ちょっと全然駄目だなぁという感じでした。


オリジナルの方だけ使えば良かったのに。


それでは、また。

 


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