映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

全員死刑 《パワフルな映画とポスター》

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映画の点数…72点
ポスターの点数…90点

 

大牟田4人殺害事件


こんにちは、ピースマイルです。


今回取り上げる映画は全員死刑


2004年に実際に起こった【大牟田4人殺害事件】を題材にした映画です。


実際にあった事件を取り上げる際には被害者や加害者の心情に配慮する必要があるのは当然ですが、今回はあくまでも「映画で描かれていること」をベースにお話します。


まぁ少し調べてみるとこの事件、加害者側も全員クレイジーだし、被害者側もクリーンではないタイプの金貸し業だったみたいでなかなかのカオスだなぁと。


ちなみに僕は昔、大牟田の不良に絡まれてボコボコにされた事があります。


その場で現行犯逮捕になった犯人の顔を思い出すと、この映画に出てくる主人公の兄に結構似てるんですよね笑


そんなことはどうでもいいんですが、別に大牟田が悪い街というわけではないですよ。
(いい街とも言えませんが。。。)

 

映画の感想


とてもパワフルな映画でした。


パワフルという表現が一番的確かと思ったのでそう言いますが、画面で写っていることは紛れもなく暴力であり殺人であり爽快感のかけらもないものです。


ただその中にも必ず「人間としての愚かさ、ゆえの可笑しさ」があって。


その可笑しさがちゃんとパッケージされてるなぁという印象です。


僕は絶対に友達にはなりたくない人種ばかりが映画に登場するのですが、とにかく全ての人が生命力にみなぎっていて。


それだけは素直に「完全に悪い意味だけど、パワフルな人達だなぁ」と感心します。


僕自身はこの手の筋金入りの悪人達との交流は当然無いんですけど、普通の会話すらもままならない人種というのは確実に存在するというのは知っています。


そういう「次の展開が全く読めない」人達が主人公なので、映画も本当に何が起こるか分からなくて。


だからこそスリリングだし興味をひかれる場面がたくさんありました。


俳優陣は特にこの映画において重要な役割を担っていたのではないでしょうか。


褒め言葉ですけど、本当に全員頭が悪くみえました笑


繰り返しますけどいい意味で、ですよ。それくらいうまかったですよね。

 

スコセッシのような映画


観ていて一番連想した映画はマーティン・スコセッシの映画のような感触でした。


スコセッシの映画に出てくる人物も「何に怒っているのか、なんで急に怒鳴りだしたのか分からない」ようなキャラクターがよく登場します。


初期の傑作のタクシードライバーなんかもそうですが、主人公がかっこいいのは分かるし、とても魅力的ではある。


でも何を考えているのか全然分からないし友達には絶対なりたくない、みたいな人達。
それを2017年現在の地方都市のアウトサイダー達に置き換えるとこうなるのかな、と思います。


まぁスコセッシの映画自体に似ているとは思わないんですけど、独特の魅力をもつ登場人物達という意味では共通しています。

 

不満点


不満点というか、映画の構造上仕方ない部分もあるのですがとにかく登場人物達がとる行動がメチャクチャすぎて。


人を殺害する時には何も躊躇はしないのに、隠す段階になって変に心配したり。


と思ったら次の日には普通にカラオケに行ったり生まれてくる子供の心配したり。


そういう人物達を楽しむという映画なので仕方ないんですけど、普通に映画として観てしまうと「メチャクチャすぎて退屈」にも思えてしまうのかなと。


とはいえ100分程度の短い映画なので、飽きてしまう前には駆け抜けて映画は終わるので大した弱点ではないとは思いますが。

 

ポスターの感想


この映画はとにかくポスターがいいなと思います。

 

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デザイナーは高橋ヨシキさんのようですが、またいい仕事をしてますよね。


ライティングと背景のラインを活かすことで映画の疾走感と妖しさを見事にパッケージしてます。


「お前ら全員〜」の文字に隠れる形で被害者の目が隠れてしまっていますが、これはわざとなんでしょうか。


だとしたらそれもいい感じに働いているかと思います。


映画の終盤あたりから、主人公は被害者の目の幻影を観るようになるのですがそれを暗示させます。

 

別案

 

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こちらの別案もいい感じです。


昔の実録ヤクザ映画のようなザラついたお洒落さを感じます。


コメディっぽさもあるんですけど、内容が内容なのでやっぱり怖さもあるし。


この《全員死刑》に関しては、映画ポスターのパワフルなビジュアルに惹かれて観に行った人もかなりいるんじゃないでしょうか。


そのくらい今作はポスターが強烈で素晴らしかったです。

 

まとめ


映画とポスターの理想的な関係性の見本のような一本だと思います。


「映画の良さを引き出し、正しくパッケージし、観客を映画館に引き寄せる」という当たり前の役割。


それが非常に難しいからこそ面白いものではあるのですが。


同じデザイナーとしてちょっと悔しさすら感じる一本でした。


まいりました。


それでは、また。


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