映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

LOGAN 《映画・ポスター、共にシリーズ最高傑作》

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映画の点数…88点
ポスターの点数…95点

 

ウルヴァリンの最後編集https://blog.hatena.ne.jp/peasemile/peasemile.hatenablog.com/edit?entry=17680117127213222414


こんにちは、ピースマイルです。


今回取り上げる映画はX-MENシリーズ成功の第一人者、ヒュー・ジャックマンが演じてきたウルヴァリンの最終章《ローガン》です。


今後もいつかX-MENシリーズは映画化されるでしょうし、ウルヴァリンも誰かが演じるでしょう。


ただそれでも、2000年から続くこのX-MENシリーズを象徴するのは間違いなくヒュー・ジャックマンであり、彼こそがウルヴァリン、彼こそがX-MENと言い切って良いと思います。


広く知られていることなのでハッキリ言いますが、この作品をもってヒュー・ジャックマンはウルヴァリンから引退。


ウルヴァリンがどのような結末を迎えるかは書きませんが、映画の最後には一つの決着がつきます。


シリーズを追いかけてきた人にとっては絶対に見逃せない作品であると共に、今後のアメコミ映画全体に突きつけてくる大きなメッセージも込められた一作です。

 

シリーズ最高傑作


先に結論から言ってしまうと、過去の8作品ほどを含めて間違いなく最高傑作ではないでしょうか。


個人の好みのレベルで言うと人それぞれ好きな作品があると思いますので、そこはもちろん否定しませんが。


シリーズ最高傑作と言える理由には

 

  • 1.映画全体のクオリティ
  • 2.R15指定の正解
  • 3.アメコミ映画への先進的回答


の3点が挙げられると思います。

 

1.映画全体のクオリティ


まず何より、単純にお話自体が面白いです。


話の構造を「身体の衰えが見えてきた主人公が、ボケた老人と話の通じない娘を連れてメキシコからカナダまで車で逃げる」というシンプルな話にしているのでとても観やすいんですね。


監督は前作のウルヴァリン:SAMURAIのジェームス・マンゴールドさんなんですが、とても同じ人の監督作と思えないです。


前作は「今、誰が、何のために何をしているのか」がサッパリ分からなかったのですが、今作はそれがとても整理されているので混乱する人はいないでしょう。


昔ながらのロードムービーのようにじっくり描くシーンでは時間をたっぷりとったり、一方で格闘シーンになると一気に加速して(無駄なスローモーションなどは使わない)メリハリが非常にきいてきます。

 

2.R15指定の正解


今作は今までのX-MENと違い年齢制限が設けられており、これは完全に大正解。


当然子ども達が観ることは出来ないのですが、それはこの作品のメッセージとして合っているので全く問題ないでしょう。


具体的に何が変わったかは一目瞭然で、ウルヴァリンが攻撃する度に腕が吹っ飛び、首が転がり、血が飛び散ります。


それは11歳のローラも全く同様で、11歳の少女が首を切り落とし顔面を串刺しにし、獣のように人を殺戮しまくります。


そこから感じるのは「ひゃっほー!やっちまえー!!」という爽快感では全くなくて「いや、やりすぎだよ。もう観たくないよ」と引いてしまうような慈悲の無い暴力性なんですね。


それこそがこの映画の狙いで、今まで観てきたX-MENシリーズ=子どもも観ることの出来るヒーロー映画は全て表面的な話であって、「人を殺すとか、大事な人が死ぬってのはこういうことなんだよ」というのを逃げずに描いています。

 

3.アメコミ映画への先進的回答


残酷な描写を描きたいからR15指定なのではなくて、むしろその逆。


本当はこんなことがあってはいけないのだと改めて観客に訴えかけるためにR15なのだと思います。


今現在15歳以下で、アベンジャーズX-MENを観てニコニコ楽しんでいる少年少女こそ、15歳になったらこの作品に触れて「ああ、自分たちが観てきた映画にはこういう側面があったのか」と気付くことになると思うんです。


僕はアベンジャーズは大好きですが、そのアベンジャーズでもこの「ローガン」には絶対に適わない点がその「死」の描き方なんですよね。


キャプテン・アメリカが敵の首を切り落としたり、ブラックウィドウが身体を引き裂かれて殺害されるシーンは無いわけですから。


今後の全てのアメコミ映画は、描かれているその先に必ず「本当はローガンで描かれているような世界がある」という前提で認識されるわけですよね。


《ローガン》はその点において間違いなく最も先進的なアメコミ映画となったと思います。

 

ポスターの評価


今作はポスターも素晴らしいですね。


日本でも良く見かけたメインビジュアル。

 


いやー、かっこいい!!

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そもそもR15指定映画であり、少なくとも一回くらいはウルヴァリンが出てくる作品を観たことがある人に限定したポスターになっています。


だからこそ出来る振り切り方ですね。


いつも「日本版のポスターはだから駄目なんだよ」と文句を言ってしまいますが、これなら大満足です。


まずタイトルは「LOGAN」のままにしたのが偉いですよね。


今までウルヴァリンシリーズは、日本用にタイトルを変更してきたんですが、今回はそれがありませんでした(ウルヴァリン: X-MEN ZERO→元々、X-Men Origins: Wolverine)(ウルヴァリン: SAMURAI→元々、the Wolverine) 。


これをダサくするなら「ウルヴァリン ラストミッション」とか変なタイトルつけかねないじゃないですか。


そんなことしなかったのは良かったです。


ビジュアルも、日本にしてはかなり大胆だと思います。


ポスター内にヒュー・ジャックマンの名前もなく、顔もはっきり写っていません。


かろうじて爪があるからウルヴァリンだと分かるだけで、余計な演出を加えませんでした。


そもそもなんと画面内にX-MENという文字すらないんですよね。


それら余計な要素をギリギリまで抑えることによって、ウルヴァリンが少女と二人で何かを目指している(あるいは逃げている)」という切実さが画面全体から伝わってきます。


映画全体がシンプルな構造であるように、ポスターもまたシンプルなメッセージに集約したわけですね。


夕日に浮かび上がるシルエットだけで、彼のこれまでの物語の苦々しさが浮かび上がってきます。

 

キャッチコピー


キャッチコピーである「少女と刻んだ、最後の爪跡。」というのもシンプルながら良いですね。


当然爪跡というのはウルヴァリンのキャラクターにかかっているわけですが、「爪跡を刻む→爪跡を残す」という言葉には映画を見終わってからジンとくるものがあります。


ウルヴァリンは確かに未来への爪跡を残したのですから。


このキャッチコピーをあえてダサくするなら、「ウルヴァリンが命をかけて守ると誓った、一人の少女との愛と感動の物語ー」みたいな感じでしょうか。


こんなのじゃなくて本当に良かったです。。。

 

まとめ


一作限定でしか作れないかなり限定的な映画であることは間違いありません。


だからこそ出来たシリーズ最高傑作なのだと思います。


かつての僕も含めた「X-MENシリーズはあんまりなぁ。。」という人ほど、是非とももう一度注目してもらいたい一作でした。


映画もポスターも大満足!


それでは、また。


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