映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

ダークナイト 《記憶に残ったのはジャーカーのみ》

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映画の点数…65点
ポスターの点数…80点

 

こんにちは、ピースマイルです。


アベンジャーズ・エンドゲームの公開前後からどうしてもヒーロー映画を観るのが習慣になっておりまして。


2008年当時鑑賞した際には「こりゃ傑作だ」と感動したのを覚えている「ダークナイト」を観てみました。


何故今更見返そうと思ったかと言うと・・・感動したという割には、全くストーリーを覚えていないことに気付いたからです。


もう、ビックリするくらい何も覚えていない。


ノーラン版バットマンで覚えているシーンを挙げてみると
バットマン・ビギンズでは
・渡辺謙が出ていた
・地下鉄が降ってきた(気がする)
ダークナイトでは
・ヒースレジャー(ジョーカー)が凄かった
ダークナイト・ライジングでは
・アン・ハサウェイが異常に可愛かった
・ラストは核兵器を不用意に使ってた気がする
ことしか覚えておりません。


特にビギンズとライジングに関しては映画自体が面白かった記憶がなく、ヴィランが誰だったかすら覚えておりません。
スケアクロウだったかなぁ。。


それでも今回、ダークナイトは見なおしてみて良かったですね。

 

とにもかくにもヒースレジャー


ダークナイトの撮影後、28歳の若さにして夭逝したヒースレジャー。


彼が演じたジョーカーは(役柄の方向性は違うものの)ジャック・ニコルソン演じたジョーカーよりはるかに存在感があります。


先ほど「映画の内容は覚えていない」と言いましたが、ある意味では当然というか。


ジョーカーが出ていたシーンはほぼ全て覚えていたんですね。


で、他は全部忘れるという笑


それだけ彼の個性がすごすぎました。


ジョーカーという存在が、この世のどこかにいるとしか思えなくなるくらいインパクトがあります。
(一方でクリスチャン・ベイルのバットマンはどうしても存在感が無い気がする。。。)


同じ2008年公開のアイアンマン含むマーベルシリーズが「ヴィランが弱い」と揶揄されるのも、もしかしたらこのジョーカーという強烈なキャラクターを世界中の観客が一度見てしまったからそう感じてしまうのかも知れません。


今後すべてのヒーロー映画(もちろん他の映画も)における敵役というのは、ジョーカーを一つのラインとして考えないといけないというのは辛いところですね。。

 

映画全体の評価


とは言え、残念ながら映画で褒められる点はこのジョーカー周辺のことだけであって、他はどうにもうまくない印象でした。


理由の一つは「死の描写」でしょうね。


公開年齢制限を意識したのでしょうが、そんなの無視しても良かったんじゃないかなぁ。


どうせ15歳くらいにならないと話の内容は理解できないし、逆に12歳くらいだとすでに残酷描写について慣れちゃってるくらいだと思うんですよ。親に隠れてこっそり観るだろうし。


それが気になるくらい、この映画では死の描写が甘いです。


全く血が出ないし、死体もうつさない。


観ているこちらが痛みを感じるくらいでないと、ジョーカーの凶悪さは完全には伝わってこないんでよね。


状況として「あ、誰かが死んだ」というのは映画で分かるとしても、もっと具体的に死を表現しないなら「ジョーカーが本気で怖い」とはどうしても思えません。

 

死の順番


上記のような描写の問題を置いておいても、やはり問題があります。


死についての重さがいまいち分かりづらいんですよ。


序盤の銀行強盗ではまずサラリと5人くらい死にます。


その後、徐々に一人ずつくらいゆっくりと市民が犠牲になります。


そして、ヒロインの女性が殺害されます。


さらに街でのドンパチで多くの人が犠牲になります(多分)。


人が死ぬシーンはいくつか出てくるのですが、いずれのシーンでも死体もうつらないし痛がる様子もないんですね。


そのような感じでトントン死なれても「結構どうでもいいな」と思います。


たくさんの人が死んだのをたっぷり確認してからヒロインが死んだところで「今更一人死んだところでなぁ」としか思えず。


ヒロイン史上、最も涙を誘わないお別れとなってしまいました。


この手の映画で死が恐怖に感じない演出っていうのは失敗だと思います。


ノーラン自身がキャラクターの演出がうまくないのかなぁとも思いますが。。。

 

ポスターの評価


有名なビジュアルが二つある作品だと思っていて、まずはバットマンバージョンの方ですね。

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うん・・・・・まぁ、なんというか、こんな感じですよね。


そもそもノーラン監督の資質というか、一枚の絵として素晴らしいビジュアルを追求しているという印象がありまして。


そういった意味ではこのポスターは正解なんでしょうね。


でもこれじゃさすがに映画ポスターとしては不親切かなと思います。


まず言えるのは「どの作品か分からん」ということです。


別にビギンズでもライジングでもこのポスターでいいわけですよ。


そりゃいくらなんでもどうなんでしょうか。


せめてヴィランが誰かくらい分かるようなポスターにするか、実際に出てくる場面をポスターにするかくらいしても良かったんじゃないですかね。


香港のビル群とか病院でも良かったんじゃないかなぁ。

 

ジョーカー版ポスター

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うん、やっぱりこっちの方がいいんですね!


画面にバットマンが写っていなくても、ロゴが有名なので気にすることないでしょう。


絵作りまで含めてどうみても「あ、ノーランのバットマンだ」と分かるでしょうし。


このポスター、見た目は非常にシンプルです。


ジョーカーが一部破壊されたであろう街の真ん中に立っている、という構図です。


ですが、気付きにくいところで完成度が高められていて、例えばまず色彩です。


ジョーカーはド派手なスーツやメイクが有名なキャラクターですが、こちらのポスターでは限界まで色彩をおさえるような調整がしてあります。


しかし、見れば「髪はグリーン、スーツは紫」と分かるくらいの彩度は残してある。


このバランスによって、むしろ滲み出てくるような狂気を感じることが出来るんですね。


ジャックニコルソンのジョーカーや、スーサイドスクワットのジョーカーはむしろ逆で、より彩度が際立つような見せ方をしているます。


同じキャラクターでありながら、見せ方が違うのは面白いですね。


ジョーカーの目線が外れているのも同じ意図でしょう。


このジョーカーを見る限り「あ、話が通じなさそう」と思ってしまいます。


もっとも、映画内ではむしろ人を睨みつけるような演出がされているんですけどね。


ポスターと映画では違ったアプローチでジョーカーの狂気を演出しています。


そして最後に、画面がグラリと斜めになっています。


画面を斜めにする方法なんてあまりにもありふれた表現なのですが、これがないと全く違う印象なんですよ。


かなり乱暴な加工ですが、ジョーカーを真っ直ぐ立たせてみました。

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ジョーカーの狂気が30%くらい減少していますね。


画面を斜めにする=観ている側を不安定な気持ちにさせるということです。

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ポスターの方を見ても、やはりバットマンよりジョーカーの方が魅力的というのは皮肉な感じがします。

 


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それでは。

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