映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

ディパーテッド 《映画は傑作!でもポスターは佳作??》

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映画の点数…90点
ポスターの点数…65点

 

第79回アカデミー賞作品賞受賞作


こんにちは、ピースマイルです。


今回取り上げる映画は第79回アカデミー賞作品賞受賞作《ディパーテッド》です。


マーティン・スコセッシ監督が長い間【無冠の名監督】と言われ続けた中、ようたく手にしたオスカー像でした。


とはいえ、この《ディパーテッド》がスコセッシ監督の最大の傑作と思ってる方はそんなにはいないんじゃないですかね。(もちろんそう思ってる方がおかしいという意味では全くありません)


どちらかと言うと「今までお疲れ様!」的な意味合いも込めての受賞だったような気はしますし、アカデミー賞自体がそのくらいのノリで考えた方がいいと思ってるのでそれで良かったと思います。


10年前に初めてこの映画を観たときは「なんだこの後味の悪い映画は!」と驚いたものですが、改めて観てみると映画自体の作りの素晴らしさなんかにも気付くことが出来ました。


スコセッシやタランティーノの映画を観ていると「あー、映画が好きで良かったなぁ」という気持ちと「やべーな、俺はまだまだ映画のことが何も分かってないぞ」という気持ちでグラグラします。


特に今作はカトリック的な知識やアメリカにおけるアイリッシュの立場なども多少知識が必要になるので全て理解するのは大変なんですけど。


とはいえやっぱり誰が観ても最高に面白い映画なので、観ていない方は是非ともネタバレ無しでご覧になってください。

 

映画のアウトライン


ネタバレ自体はしませんが、映画のアウトラインを少しお話します。


まぁ有名な映画なので今更ですけど。


役名で書くとややこしいので、役者名で書いていきます笑

 

舞台はボストン南部、アイリッシュ系マフィアのジャック・ニコルソンが支配する街。


マフィアとつながりを持つマット・デイモンは、刑事としてマフィア側のネズミになる。


逆に警察としての経歴を抹消してマフィアに潜り込むディカプリオ。


マフィアvsマフィアのネズミvs警察のネズミの戦いが始まる。。。

 

みたいな映画です。


あとはいつものようにジャック・ニコルソンが悪趣味な下ネタをガンガンに放り込みながらニヤニヤしているという映画です(ちょっと違います)。


撮り方が下手だと誰が何をしているのか分からなくなりそうですが、映画を観ている観客側には「この人はいい人、この人は悪い人」というのが明確に示されるので混乱せずに観ることができます。


「本当は警察なのか、マフィアなのか?」というのは映画内の人物達だけで探り合うので、こちらはれがバレるかバレないかだけに集中していればいいんですよね。


当たり前のように映画を観てるけど、どこまで情報を出してどこまで出さないようにするのかが本当にうまいなぁと思います。


最後あたりの「封筒の結末」や「赤ちゃんのこと」の情報は匂わせる程度で回答まではしてないんですよね。


憎いですねぇ。

 

ポスターの評価


上記のような映画であることを踏まえポスターにするとこうなります。


まず海外版。

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タイトルの文字の中から思い切りはみ出すように主要人物の3人がうつっています。


この「全体が収まっていない」という表現の仕方は「=正体が分からない」ということを思わせます。


わざわざ写真自体にもぼかしのフィルターを加えており、あえて見にくいようにしていますね。


この「あえて極端な拡大をして全体を写さない」という手法は、例えば車のCMなんかでよく使われますね。


全体が見えないからこそ興味が沸くということです。


使われている色も「黒と白、差し色として赤」を使っているだけで、スコセッシ映画特有の乾いたバイオレンス感を強く感じます。


キャッチコピーは「警察だろうと犯罪者だろうと、銃を目の前にしたら違いはないだろ?(意訳)」といったところでしょうか。


映画内に銃が登場した途端、あまりにも一瞬で登場人物が映画内から消えていくドライさがこのディパーテッドの最大の魅力です。


それを意識したいいキャッチコピーですね。


劇中使用されたセリフからの引用ではあるのですが。


それと、うまく言い表せられないのですが、スコセッシ映画にはスコセッシ映画特有のポスターやビジュアルがあります。


フォント(文字)の使い方もそうですし、画面全体のレイアウトもそうです。


大雑把に言えば「シンプル、クラシカル、太字のゴシック体」みたいな感じでしょうか。


恐らくですが、映画オタクでもあるスコセッシが青年期までに観てきた映画ポスターの影響がかなり強いのでしょう。

 

とはいえ。。。


ポスター自体に不満は別にないのですが・・・一方で少し物足りないのも事実。


ちょっとあまりにも淡泊すぎるなという感じがします。


このへんは日本版でも同じですね。

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もう少し、どちらかに寄せた方が良かったと思うんです。


どちらかと言うのは、極端にドライにするか、宗教色すら強めにするかのどちらかです。


主要人物が一瞬にして死んでしまうディパーテッドらしく、かなり乾いたポスターにするか(例えばモノトーンにするとか、ミーンストリートのようにイラストにする等)


それか、カトリック的な要素を強く残す映画らしく、荘厳な雰囲気すら感じる仰々しいポスターにするか(宗教画を思わせる構図にするとか、ジャックニコルソンをサタンに見立てた配色にするとか)


映画自体が何回も何回も観たくなるような重厚な作りなのに対して、ポスターがちょっと物足りなかったなと思いました。


でもこのへんもまたスコセッシらしい気もするけど。。。

 

まとめ


映画自体もポスターも、スコセッシ作品の中で最高傑作とは思ってません。


ただし、誰にでもお勧め出来るという点においてはスコセッシ最高の作品かもなとは思っています。


もしもまだ未見の方はご覧になってみてください。


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