映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

モンスターズ 《意味合いまで変えちゃってるポスター》

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映画の点数…68点
ポスターの点数…30点(日本語版ポスター)、77点(英語版)

 

小ぶりな優秀作


制作費130万円という破格の低予算映画。
(実際のところ、ここには監督の自主制作の費用などは入っていなさそうなのでいくらなんでも言い過ぎだとは思いますが)


そんな低予算映画だなんて思わせないほどには十分に楽しめた一作でしたよ。


後から振り返ってみると確かに金がかからない撮り方を心がけていたんんだなということは分かるのですが、それだけ頭の中でしっかりデザイン出来た状態で映画を作ったということですね。


そんなギャレス・ジェームズ・エドワーズ監督作の2010年の映画です。


ギャレス・エドワーズさんはこの後2014年にゴジラのハリウッド版、そして2016年にはスターウォーズのスピンオフ、ローグワンを監督します。


まさにシンデレラストーリーのように駆け上っていった印象ですが、個人的には「結局低予算映画のモンスターズが一番面白かったな。。。。」というのが正直なところ。


スターウォーズはフェイバリットな映画ではあるのですが、ローグワンはけっこう嫌いなのです。。


でもあくまでも今回の「モンスターズ」は面白かったですよ!


まずは映画のアウトラインからお話します。

 

映画のアウトライン


映画の内容自体は基本的にはシンプルです。


「6年前、宇宙人がメキシコあたりに住み着く。
現代、主人公の男女二人がメキシコからアメリカ国境まで宇宙人に遭遇しないように逃げ進む。
旅の途中、二人はお互いの境遇見つめ直し恋心を抱いていく。」


これだけですね。


この手のジャンル映画の目的は、ゾンビやモンスターなどのメタファーを用いて何か別のものを描き出すのが通例です。

 

ウォーキングデッド(ドラマだけど)は、ゾンビを通して「人間社会」を描いているし、第9地区はエイリアンを使って「人種差別」を描いています。


この「モンスターズ」も例外ではなく、宇宙人のいる世界を用いて「あるがままの人生を生きる尊さ」ということをテーマにしているようです(僕がそう感じただけかも知れませんが)

 

 

映画のうまさ


先ほどこの映画を低予算映画と言いましたが、それは映画のテーマとマッチしているからこそ成立しているのだなと感心します。


モンスターズには所謂「見せ場」のようなものがほとんどありません。


つまり、宇宙人が地球人を虐殺したり、ビルを壊したりヒロインを食べようとしたりするシーンですね。


むしろ、最終盤になるまでほとんど姿すら見せません。


この映画の主題はそこではなく、あくまでも男女二人の関係性に焦点を当てているからですね。


90分間ずーーっと歩いたり自動車に乗ったり船にのったりしてるだけの映画ですから。


だからこそ「退屈だ」と思う方もいるでしょうし、それはそれで否定出来ませんが。


個人的には「ああ、うまいなぁ」と思いながら観てました。


僕たちだって戦争や災害が世界中で起こっていたって、実際に自分がやっていることは普通に仕事に行ったり子育てしたりするくらいなもので。


何も全てのシーンをドラマチックにすることだけが映画じゃないよなと改めて思ったりした次第です。


ただまぁその、「うまいなぁ」というところから大きく飛躍して面白くなったりまではしないんですけど。


でも「ふらっと観る映画」としては十分に満足しましたよ。


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ポスターの評価


上記のような映画ですので、ポスターの作り方も工夫が必要になります。


今回の主役は「戦争」や「宇宙人」ではなく、「男女二人」です。


なのでこういうポスターではいけないわけです

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あ、エクスペンダブルズは大好きな映画ですけどね。


さらに、「宇宙人が侵略している」最中ではなく「宇宙人は既に住み着いている」という設定なのでその点も踏まえてポスターにしないといけません。


宇宙人がやってきてドッカンドッカン!している画面では駄目なわけです。


つまりこういうのは駄目なわけです。

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あ、ランボーは当然大好きな映画ですけどね。


というわけでモンスターズのポスターはこうなります。

 

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なるほど。


画面内には二人しか写っておらず、まさに「二人の話」というのが強調されています。


さらに既に廃墟となっている背景にすることで「破壊されたのは過去の話」であることも伝え、さらに後方を飛ぶヘリコプターを見て「まだ終結していない話」であることも分かります。


ガスマスクや看板などの小物から危機感が伝わってくる一方で、主人公達を走らせたりせずに歩かせていることで「アクション映画ではなくロードムービー」であることも自然と分かります。


かなり良く出来たポスターですね。


キャッチコピーは結構長めで
「宇宙人が来て6年になり、彼らはすでに居住者となった。今となっては適応するのは我々人間の番だ」というところでしょうか。


この「宇宙人がいるのに地に足がついた感じ」というのが映画の魅力なのでキャッチコピーのこの浮ついていない感じも好感がもてます。


弱点としては、一度観ただけで忘れられないポスターとは言えない点でしょうか。

 

日本語版ポスター


こっちになると一気に良さが減っています。

 

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よい点は「男女二人の物語である」という箇所が感じられるくらいでしょうか。


あとは全体的に駄目になっています。


まず、今にでも宇宙人が襲ってきそうな雰囲気を出し過ぎです。


タイトルや画面を斜めに振っているのが原因でしょう。


わざわざ不安感を与えるような構図に変更しちゃってるんですね。


こういうポスターにしちゃうから「あれ?思ってた映画と違う」と誤解をうけるのに。


それに、主演二人は前では無く後ろを振り返るような構図に変更されています。


こうすると「前に進んでいる」ではなく「逃げている」という意味合いが高まりすぎます。


足下まで写していないことで「ゆっくり歩いているのか走っているのか」分かりません。


この映画は間違いなく「ゆっくり歩く」ことに意味がある映画です。


足下を写す必要は絶対あったはずです。


キャッチコピーもいけません。


「国境まであと125キロー」


これだと「宇宙人に襲われて大変なのに、国境まで遠すぎて大変死んじゃう!」という意味にしか受け取れません。


ていうか映画内で「あと何キロ〜」みたいな言い方は基本的にしないですからね。


何故こういう悪い方向に誤解をあたえる表現をしてしまうのか。


かなりガッカリレベルのポスターでした。

 

まとめ


タイトルに「地球外生命体」とか加えるまではいいんですよ。


タイトルかぶりの問題もあるし、分かりやすくしていると言えるし。


でも内容を誤解させるような変更はしてはいけないと思うんですよ。


一時的な客を増やしても満足度が絶対下がると思うんです。


それじゃ最終的な映画ファンとして定着しないでしょう。


誰にとってもマイナスな改悪ポスターだなと思いました。


それでは、また。


ポスタ- A4 パターンA モンスタース_/地球外生命体 光沢プリント

 


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