ゼロ・グラビティ 《キャッチコピーの改変が痛いポスター》
映画の点数…87点
ポスターの点数…30点(日本版)
こんにちは、ピースマイルです。
今回取り上げる映画は《ゼロ・グラビティ》です。
2013年公開で、その年のアカデミー賞では7部門最多受賞の傑作です。
僕ももちろん大好きな映画なのですが、映画ポスターにした際のジレンマを強く感じた作品でもあります。
改めて【英語で作られた映画を日本で公開する】難しさを感じました。
映画について
まず話題になった原題【グラビティ】を【ゼロ・グラビティ】と改題したことについては、本気でムカついてるくらい最悪の改題だと思っています。
映画を観た人なら何故原題がグラビティだったのか当然分かるでしょうし、タイトルが出るタイミングまで含めて計算されつくした作品であるにも関わらずそれをタイトル一つで台無しにしています。
このあたりは他にも多く語られているところですのでこのあたりにしときます。
映画の内容は、本当に宇宙で撮影したとしか思えない映像技術をたっぷり堪能出来るというのが第一点の素晴らしさ。
しかしその映像に負けることのない力強いメッセージ、「それでも人は立ち上がる」という人類にとって不変のテーマが同居しているからこそこの映画は評価されているのだと思います。
個人的な感想としては「おっしゃー!人間ナメんなよ!」と強く思った次第です。
序盤のあらすじについて
映画のポスターについて語る前に、映画序盤のあらすじを振り返ってみます。
最愛の娘を亡くし人生に対しての希望を持てずにいるライアン(サンドラ・ブロック)と、今回のミッションで引退を決めている明るいナイスガイのマット(ジョージ・クルーニー)が事故に巻き込まれ宇宙に放り出されます。
マットの機転のおかげでなんとか生還した二人ですが、燃料が切れたことにより再度マットとライアンは窮地におちいります。
ロープ一本でつながっているマットとライアンですが、マットはライアンの生還を優先し自らロープを手放し暗闇の宇宙に消えていきます。
マットによって救われたライアンですが、自分はマットを救うことは出来ませんでした。
そのような状況におかれたライアンが、再び「必ず生き延びてみせる」と立ち上がるのが後半のストーリーとなります。
ポスターについて
では映画ポスターを見てみます。
まずは日本語ポスター。
ビジュアル面に関しては英語ポスターとの差はありません。
宇宙に放り出された宇宙飛行士と、その背景にある巨大な地球。
「地球から見ると人間なんてちっぽけな存在だ」ということや「地球から遠ざかる=死んでしまう」という緊張感がうまく表現されています。
ほぼ画面を二分割するようなレイアウトがアート感を際立たせ、映画ポスターでありながら美術面での美しさも一級品です。
キャッチコピー
ただし、褒めることが出来るのはここまで。
キャッチコピーに「宇宙の 暗闇を 生き抜け」とあります。
悪くないコピーだと思います。
確かにそういう映画だからです。
特にこの「生き抜け」というのは映画全体のテーマであり、ライアンを救出したマットのセリフとも一致します。
しかし英語版のポスターを見てみると
ビジュアルはほとんど同じです。
ただしキャッチコピーが
「DON’T LET GO」となっています。
いやーーーーー!!!完璧なキャッチコピーですね!!!!
これ以上のコピーはあり得ないのではないでしょうか。
直訳すると「放さないで」になります。
また「行かないでくれ」という意味でもありますし、他にも「(生きることを)諦めないでくれ」や「忘れないで」と意訳することも出来るでしょう。
つまりこの「DON’T LET GO」だけでライアンがマットに対する「ロープを放さないでくれ」という意味でもあるし、マットからライアンに対する「生き抜けよ」というメッセージにもなります。
言葉は一つであるにも関わらず、それが双方に対するメッセージになっているんですね。
その「DON’T LET GO」という言葉を意識しながら映画を見終わったあとにポスターを見ると、それだけで泣けてくるような仕掛けにもなっています。
初見の段階ではこのポスターにいるのが誰なのか分からないのですが、映画を見終わった段階ではそこにいるのが誰なのか分かる。
分かってしまう。だから泣ける。
映画を見終わってさらにもう一度ポスターが輝きだすという圧巻の完成度。
完璧ですね!
さすがに「GRAVITY」というタイトルを変えるのは現実的ではないですが、「DON’T LET GO」がタイトルだとしても成立するほどに素晴らしいキャッチコピーです。
上記で「ポスターの点数…30点」としましたが、英語版ポスターに関しては95点くらいあるんじゃないですかね。
いやー。
こういうキャッチコピーを生涯で一度でいいので思いつきたいものです。
日本スタッフを責めたいわけではない
このように英語版のキャッチコピーをべた褒めしましたが、別に「日本語のキャッチコピーはクソだ!!」と言いたいわけではありません。
仮に日本語版ポスターでのキャッチコピーを「はなさないで」や「あきらめるな」としたところで、さすがにピンときません。
あまりにも抽象的なメッセージになってしまい観客が映画を見る前に毛嫌いする可能性もあるかと思います。
日本語版キャッチコピーを「宇宙の 暗闇を 生き抜け」にしたスタッフ側も、なんとかひねり出した結果だと思うんです。
こんなこと言いたくないですが、仕方ないのかと。
ここに【英語で作られた映画を日本で公開する】難しさが詰まっているように感じました。
僕たちの母国語が日本語である以上、英語でつくられた映画を100%で楽しむことは出来ません。
分かってはいたことですが、やはり少し寂しい気持ちになりますね。
そんな最高の映画と、切ない気分を味わった一作でした。
それでは、また。
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