映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

CREED Ⅱ クリード 炎の宿敵 《あれ?!様子がおかしくなった第二作ポスター》

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監督 スティーヴン・ケイプル・Jr
脚本 ジュエル・テイラー
シルヴェスター・スタローン
製作 シルヴェスター・スタローン
製作総指揮 ライアン・クーグラー
マイケル・B・ジョーダン
ガイ・リーデル
出演者 マイケル・B・ジョーダン
シルヴェスター・スタローン
テッサ・トンプソン
ウッド・ハリス
フィリシア・ラシャド
フロリアン・ムンテアヌ
ドルフ・ラングレン


ポスターの点数…60点
映画の点数…83点

 

みなさんが一番大好きな映画はロッキーだと思いますけども(断言)、僕も例に漏れずロッキーは大好きです。

 

そんなロッキーシリーズから全く新しい主人公を作りだし世界中でヒットを飛ばしたCREED

 

その続編となるCREED ⅡのDVDの発売が決まりましたので、改めてこのあたりでクリード2について復習しようと思います。


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対立構造が大迫力のビジュアル

 

邦題についている「炎の宿敵」というタイトルは、1985年の映画『ロッキー4/炎の友情』が元ネタですね。

 

『ロッキー4/炎の友情』で登場したドラゴが今作で再登場するからつけられているわけですが、この発想はそのままポスターにも活かされています。

 

「ロッキーvsドラゴ」「クリードvsドラゴ息子」というシンプルな構図なのですが、ボクシングというテーマともあいまってとても迫力のあるデザインになっています。

 

これを見るだけでも「アポロvsドラゴの再戦!!あがるぜーーー!!!」となるものです。

 

とはいえ、このポスターはそんな単純な構造ではありません。

 


そもそもロッキーとは何だったか

 

ロッキー1のポスターです。

 

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もうこのポスターを見るだけでコンディション次第では泣いてしまいます。

 

ボクシング映画であるにも関わらず、その要素はポスターからは全く感じません。

 

ご存じの通り、ロッキー第一作は「かつて持っていたはずの自分の尊厳を、自らの手で全て取り戻す」という話でした。


そのテーマを描く素材としてボクシングを用いたわけです。

 

ところが、シリーズを重ねるにつれてスポーツ映画としての側面が強まっていきます。

 

それがいいとか悪いとかではないのですが、映画のテーマが変わっていったのは間違いありません。

 

シリーズ2作目の時点ですでにスポーツ映画としてポスターも作られています。

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ドラゴとは何だったのか

 

そしてシリーズ4作目である『ロッキー4/炎の友情』のポスターになるとこうなります。

 

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スタローン自身がそのとき接近していた政治家との影響もあったのでしょう。

 

国家のプロパガンダとしてロッキーは機能していました。

 

「個人の尊厳」を描いていたロッキーが、いつの間にか「国家の象徴」にまでなっていたんですね。

 

星条旗をまとったロッキーの姿をみて当時の映画ファンがどのように思ったのかは分かりませんが、少なくとも映画は大ヒットしています。

 

そして、そのロッキーのかませ犬として生み出されたのがドラゴでした。

 

ソ連という巨大国家によって生み出されたドラゴは、ロッキーに敗れた後は個人の尊厳を失っていきます。

 

ロッキーとは真逆の人生を歩むことになるわけですね。

 

その影響をまともに受けたドラゴの息子であるヴィクターが、敵役ボクサーとして立ちはだかります。

 

かつてのロッキーのように、失われた尊厳を取り戻すために戦います。

 

クリードの置かれている状況

 

一方のクリードは新チャンピオンとして活躍するとともに、結婚、子どもの誕生と人生のピークとも言える状況です。
幸せビッグバンです。

 

そんな時に、かつて父親の命を奪ったドラゴ親子が登場するわけです。

 

クリードは、今の家族のためなのか、父親のためなのか、それとも自分のためなのか、アイデンティティを見つけ出しながらドラゴと戦います。


だからこういうポスターになる

 

クリード2とは、憎き宿敵と戦っているように見えて実は自分自身との戦いを描いた映画なわけですね。

 


クリード1のポスターでは、クリードとロッキーが向き合う構図になっています。

 

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相手に向き合うことで自分自身とも向き合う決意をするという内容でしたよね。

 

それをうまくポスターにしています。


つまりクリード2のポスターにおいても、相手を睨み付けている構図でありながらそれは鏡合わせになっていて自分を見つめているんだという意図があるわけです。

 

これは他の映画でも同じ意味合いのものがあります。

 

「シヴィルウォー・キャプテンアメリカ」のポスターでは、アイアンマンとキャプテンアメリカが睨み合う構図です。

 

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どちらもそれぞれの正義を信じている、どちらも同じ物を見つめているということを表現してるんですね。

 


減点の理由

 

僕はこのポスターは60点くらいだと思っています。

 

というのは、ポスターの意図は十分に分かるのですが、映画の内容とちょっと温度差があると思うからです。

 

現在のポスターだと、あまりにも両者の対決構造に意識が向きがちになってしまいます。

 

ですが実際の映画はもっと、相手ではなく自分自身と葛藤することに多くの時間をつかっています。

 

映画の制作者はそこを感じ取ってほしいのではないでしょうか。

 

だとしたら、今回のポスターでは情報が偏りすぎだと思ってしまいます。

 

もうちょっとだけウェットな表現でも良かったのではないでしょうか。

 

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こっちのポスターの方が、より自分と向き合っている感じが出るので好きです。


映画の感想とまとめ

 

個人的に「スタローンが脚本に口を挟み出すとろくなコトにならない」と思っているのですが、今作もそんな感じです。

 

ロッキーの登場シーンが多すぎるんですよね。。。

 

前作ではグッとおさえた演技が評価されてオスカーにもノミネートされました。

 

それを意識したのか、今作では度々クリードの前に出てきてはもっともらしいことを説教するといったシーンが多すぎます。

 

正直なところ、クリード側を見ているよりもドラゴ親子を見ている時間の方がずっと楽しかったです。

ラストのバトルもこっそりドラゴを応援していました。

 

ネタバレはしませんが、今回の「決着の付け方」は映画史上に残る名シーンだったのではないでしょうか。

 

決着のシーンだけにおいてはロッキーシリーズで一番ぐっときました。

 

本当に色々な意味で「ああ、終わったのだな」と感じます。

 

クリードシリーズが今後どうなっていくのかは分かりませんが、もっと観客を信じてもいいのではないかと思います。

 

ボクシング要素やスタローンの要素をもっと減らしてもいい映画であればちゃんとお客さんは観てくれるはずです。

 

それは映画もポスターも同様ですね。

 


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