映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

ウルフ・オブ・ウォールストリート《誰のための改正?改悪?なポスター》

ポスターの点数…20点(日本版)

映画の点数…95点

 

こんにちは、ピースマイルです。


ジョーダン・ベルフォートさんの半生をレオナルド・ディカプリオで実写化した本作。


監督はまだまだバリバリキレキレの現役巨匠、マーティン・スコセッシ。


個人的な好みで言えば、スコセッシ監督作の中でもトップ3に入るくらい大好きな作品です。


ですが、そんな大好きな作品でもポスターでは改正と言う名の改悪がされていたので取り上げてみました。

 

R15指定


まず日本版のポスターがこちらです。

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金融街の狼と呼ばれたジョーダンさんですが、日本での知名度は低かったでしょう。
僕も全く知らなかったです。


キャストもディカプリオとスコセッシ以外の知名度はいまひとつ。


今でこそ大活躍のマーゴット・ロビーやジョン・バーンサルも2013年時点ではあまり知られていなかったように思います。


マシュー・マコノヒーが最高の演技をしていますが、登場時間は5分くらいしかないイメージです。


となると当然、宣伝は「ディカプリオ推しでいこう」というのはクレバーな判断ですよね。


ちょっとうるさいくらいにつけられているキャッチコピーなども、金融街という馴染みない舞台の映画を宣伝するのですから、このくらいの情報は必要だったでしょう。


堅苦しいイメージを避け、コメディ的なタッチにしたのも悪くないと思います。


ただし、褒められるのはそこまで。


とても大事なことなのですが、この映画R15指定映画なんですよね。。。


だとしたらちょっと納得のいかない改悪がされているのです。

 

アメリカ版のポスター


アメリカ版のポスターはこちらです。

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どうでしょうか?


日本版と比べて全く印象が違うと思いませんか?


違うのは一点、背景を隠してあるかどうかです。

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このポスターの本来の意図というのは「ベビーフェイスなディカプリオが余裕のある涼しげな顔でこちらを向いて立っている。しかし、その裏では狂乱そのものの金融街の闇が垣間見える」というものです。


そのギャップをこそ伝えたいわけですよね。


このポスターに興味を持った人こそが「どれどれ、面白そうだ」と映画を見に行くわけです。


日本よ!!隠してどうする!!!!!!


確かにシルエットでは何があるのかうっすら分かりますが、本来のポスターが持っている毒々しさが半分以下に減っていますよね。


そこから逃げたら駄目でしょう〜。


おそらくですが、「小人症の人が写っている」ことやことを理由にボカしたんでしょうね。


その「どう考えてもおかしい」様子こそ、この映画が言いたいことなのに。


そして先ほど言ったように、この映画はR15指定なんですよ。


ちゃんとリテラシーのある年齢であれば、このメッセージはちゃんと理解できるはずです。


背景をボカしたことでお客さんは増えたんですかね?


僕はそんなことないと思いますけど。

 

ディカプリオにも失礼


「ディカプリオ推し」でいくのは賢明と言いました。


しかし、それは「ディカプリオ王子の格好良さ推し」とは全く違います。


そんなミーハーな人はもうほとんどいないでしょう。


というか残念ながらそういうミーハーな態度の人はこの映画を観に行きません(別に排他的に考えているわけではないです。当然そういう人にも観てほしいです)


ディカプリオは2000年代以降、王子キャラやベビーフェイスキャラを払拭するために本当に様々なキャラクターを積極的に演じてきました。


そんなディカプリオが「女たらしでヤク中で詐欺師」というベスト・オブ・クズを見事に演じたのが本作なんですよね。


今ディカプリオが好きという人は、ストイックな役者として好きなんですよ。


それなのにポスターで変な気をつかうようなことは、ディカプリオにも観客にも失礼です。


英語版ポスターがかなり出来がいいだけに、そして映画の出来がいいだけに非常に残念でした。

 

ちなみにこんなポスターも


こんなポスターもあるみたいですね。

 

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「俺にこのペンを売ってみろ」


映画を観た方なら一度は考えたことがあるんじゃないですかね。


「俺ならばペンを売れるだろうか。もし売れるのならば、億万長者になれるのだろうか」と。

 


ウルフ・オブ・ウォールストリート 上 / 原タイトル:THE WOLF OF WALL STREET (ハヤカワ文庫 NF 396)[本/雑誌] (文庫) / ジョーダン・ベルフォート/著 酒井泰介/訳

ウルフ・オブ・ウォールストリート 下 / 原タイトル:THE WOLF OF WALL STREET (ハヤカワ文庫 NF 397)[本/雑誌] (文庫) / ジョーダン・ベルフォート/著 酒井泰介/訳

映画の感想


前述の通りめちゃくちゃ大好きな映画です。


好きというだけでなく、映画の出来としても非常によく出来ているなと思います。


上映時間が3時間という大作にも関わらず、映画のテンションは異常に高いままに保たれているのが不思議です。


それこそ、映画内からコカインが微量に出ているんじゃないですかね。


ほとんど真っ直ぐ進行する映画でありながら退屈しないのは、ベルフォートの人生が加速していく様子と映画が加速していくスピードを見事に調整しているからだと思います。


そのへんは本当に巨匠はうまいですね。


映画内で会社が大きくなっていくことを、事務的な数字上での売り上げで表現するのではなくて「車が高級になっていく」「ストリッパーが大量に登場する」「絶世の美女と結婚する」などと絵的に表現しています。


逆に会社がヤバい状況になっていくと「ドラッグの量が異常になる」「船が沈没する」「妻とうまくいかなくなる」などで示すわけですね。


ベタな手法ではあるんですけど、とにかくテンポと見せ方がうまいのでずっと集中して観ていられるんです。


最後あたりになると、映画の締めくくりとして演出や音楽がグッと抑えられた緩やかなテンポに変わっていきます。


そして後味の良い映画体験とともにスムーズに幕は閉じていく。


完璧だ!


かなり長い映画とは言え、何度も見返してしまう魅力的な作品です。

 


マーゴット・ロビーの裸が観たいわけではないよ。


それでは。


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