映画のように平面デザイン

年間200本映画を観る地方グラフィックデザイナーが、色んなものを平面デザインでとらえてみます

若おかみは小学生! 《あかんオッサン泣いてまうわムービー》

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映画の点数…85点
ポスターの点数…50点

 

「子ども向け映画」とは


こんにちは、グラフィックデザイナーのピースマイルです。


今回取り上げる映画は昨年ヒットした若おかみは小学生!です。


一部映画ファンの評判も良かったので鑑賞したのですが、なるほど、これは観て良かったです。


僕には小さい子どもがいるのですが、親としては「どの作品を見せてどの作品を見せないか」はジャッジに悩むところで。


例えばトイストーリーとかは自信を持って見せていますし、本人も楽しそうです。


でもルパン三世なんかはある程度理解力がないと見せるのは危険ですよね。


最終的にはスコセッシでもタランティーノでもガンガン観たらいいと思うんですが、それまでは多少のコントロールは必要なわけで。
(まぁ僕自身はコントロールされるのは大嫌いだったし、放っておいても勝手に色々なものを観たりするようになるでしょうが)


そんな悩みを持つなか、この「若おかみは小学生」のような作品は非常にありがたいわけですよね。


自分が観ても楽しいし、子どもにも自信を持って勧められる。


まぁかなり荒唐無稽な話なので、素直に鑑賞できるのは小学校2年生くらいまでかなぁ。。。


でもそれくらいの年齢までに義務教育的にこの作品を見せてもいいんじゃないというくらいには素晴らしいと思いましたよ。

絵のタッチについて


前もって言っておくと僕は「こんな感じのタッチのイラスト」は非常に苦手でして。


そこだけはどうしても最後まで全く馴染めなかったし、それ故に評価に影響しているのは否定できないです。


当然それは「自分の好み」と「自分の年齢」だけの問題なので、それを理由に作品を批判することはありませんけどね。


キャラクターの造形は苦手なのですが、舞台の作り込みなどは異常なほどにハイレベルなのでそこを観るだけでも十分に楽しめます。


有名なところでは「卵焼きを切る包丁に、切った卵焼きが写りこんでいる」などの丁寧さ。


出てくる旅館の料理はいずれも美味しそうなので、それが自然と人間達の存在感にリアリティーを持たせているあたりは見事です。

 

映画のアウトライン


もともとあった児童文学の中から映画用にシナリオをアレンジしたのがこの映画です。
両親を自動車事故で亡くした小学6年生の「おっこ」が、祖母の経営する旅館で若女将として働くことになるが、そこにはクセのある同級生や幽霊などが住み着いていてーーー
みたいな感じですね。


この時点で「小学6年生が若女将。。。?雇用形態はどのように。。」などと考え出す僕のような奴は多少ノリきるのに疲れますが、よく考えたら「ドラえもんが家に住んでるよりは現実的じゃね?」とも思うのでオールオーケー。


大人として楽しむのであれば「どのような条件が揃ったときに、幽霊の存在を確認することが出来るのか」とか「何故、このタイミングでこの宿泊客と交流するのか」なんかを考察しながら観ると面白いですね。


そのあたりが隙無く練られている脚本だからこそ大人の支持率も高かったのでしょう。

 

映画の感想


両親を突然失った主人公を、どのようにして救ってあげるかに対してとても深い愛情を感じる一作です。


時には厳しく、時には甘やかし、時間を与えたり、声を聞いてあげたり、画面に映っていない場面でまで愛情を感じるようです。


特に宿泊者達の位置づけが絶妙で、「おっこと立ち位置が非常に似ている客」や「おっこが憧れるような魅力を持った客」、そして「おっこが絶対に目撃してはいけないはずだった客」など、シーンに応じておっこが健やかに成長できるような工夫がされています。


一応ライバルキャラクターのような立ち位置で「ピンふり」が出てくるのですが、そのキャラにしたって「誰よりも努力をしている」ことを周りも認めていたりフェアな扱いになっています。


大人の目線から見ていると、いかに「まわりの大人達が、子どもに対して配慮しているのか」が分かるのでそれも面白いですね。


こうなってくると「別に幽霊っていらなくないかな」と思ってしまうのですが、これも大人だから言えることで。


出てくる幽霊達がうまいこと物語の展開を繋いで説明してくれる役割になっていたりと、本当にうまく出来てます。


今や幽霊がストーリーテリングをする時代なんですね。うらめしや。

 

ラストシーン


90分のうち75分くらいは、やっぱり小学生向けなテンションですすむ映画で、急にファッションショーや挿入歌が挟まれたりしたときにはこっちは赤面してしまうのですが、ラストシーンは違います。


ついにおっこが「いつか絶対に乗り越えなくてはならないこと」つまり、父と母の死に強制的に向き合わなくてはならない状況が待っています。


こっちとしては「なんて非道なことをしやがる!!!」と制作者側に怒るくらいツライ状況なのですが、そこからのシーンは圧巻ですね。


今まで何かしら流れていたBGMがすべて無くなって、完全に無音のようなシーンが続きます。


キッズアニメとしては結構踏み込んだ演出だと思いました。


凡百のアニメならここで「哀しーーーーーい音楽」をのっけるのでしょうが、そんなことしなくても今おっこが何を考えているのか、どれほどツライのかは観客も理解できているのでそういった余計な演出は必要ありません。


ある意味ですごく「大人向け」で正統派な作り方だと思いました。


実際におっこも、改めてしっかりとその場に向き合い「自分がやるべきことをする」という成長を見せます。


いやーー。泣かされましたね。こりゃ泣くわ。


誰でもいいからおっこを抱きしめてあげてくれ。

 

ポスターの感想


まぁポスターには別に言うこともないというか笑


まぁ、まぁこういうポスターになるよねって感じでしょうか。


変にウェットな雰囲気を足して小学生の気持ちを削いでもいけないですからね。


あえていうなら「ピンフリさんと背景のデッサンがおかしい気がする。。。」くらいでしょうか。


なんかすいません。

 

まとめ


バカっぽい言い方になってしまいますが、とにかくいい映画だったなーと。


こういうのをいい映画と言わずして、何を褒めるというのか。


この前ブログに挙げたデスウィッシュみたいな作品も良いですが、いやいやまずはこういう映画こそ「いい映画」って言わないとですね。


大人から観ると、実は少しホラーに見えるのも良かったですね。


時々おっこが「大丈夫?」というくらい様子がおかしい時があるのですが、それが本当に怖い。


でも子どもって本当にそんな瞬間があるよなって思うし。


だからこそこの映画は、是非多くの方が鑑賞すべきだと思うわけですよ。


絵のタッチで抵抗がある人も、騙されたと思って一度鑑賞されてみてください。


それでは、また。

 


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